短編で、感想が多ければ、続きをのせていくかも……。
とりあえず、この話を含めて、三話ほど、掲載して、判断する予定です。
もし、運命というものがあるというのなら、あの日が俺の……いや、俺達の運命がはじまった日だろう。
高校の入学式の日、俺達は運命というものに遭遇してしまった。
――地球は狙われている。
かつて、地球防衛軍の参謀がテレビで告げた言葉だ。
人類が宇宙開発を始めてから長い年月が過ぎた。
その中で様々な問題が地球人類へ降りかかってきた。
自然破壊による怪獣の出現。
炭鉱に現れたゴメス、
発電所を襲撃したネロンガ、
古代人が封印した悪魔、バニラとアボラス。
そういった怪獣の出現と同時に地球を侵略しようと外敵、宇宙からの侵略者が次々と空の彼方からやってくる。
ガラモンを地球へ送り込んだセミ人間、
子供を諭して地球を支配しようとしたメフィラス星人、
自らを遊星からきた兄弟として信頼を得て裏から支配しようともくろんだザラブ星人、
人を拉致監禁して降伏勧告をしたクール星人。
そんな事態に地球防衛軍は撃退と迎撃を繰り返してきた。
今思えば、平和から一番遠い選択を人類はとってきたのかもしれない。
敵が強大な兵器を使えば、それを上回る兵器で撃退する。
人類はマラソンを続けているのかもしれない。
血を吐きながら続ける悲しいマラソン。
そのマラソンのゴールは誰もが幸せの平和なのだろうか?それとも何もかもなくしてしまうのだろうか?
その結果は誰にもわからない
二年F組 比企谷八幡
「比企谷、これはなんだ?」
日本の高校、総武高校の生徒指導室。
そこで現国の担当教師で生徒指導も請け負っている平塚静はため息を吐きながら目の前の“メガネ”をかけた男子生徒、比企谷八幡へ問いかける。
「作文です」
「私の課題はなんだったかな?」
「平和です。ただ、途中で今朝みたニュースを思い出して気づけば、このような出来栄えに……反省はしていますが後悔はしていません」
メガネを胸ポケットに入れて八幡は答える。
「お前という奴は」
平塚は呆れながら目の前の相手を見る。
総武高校の制服を纏って、胸元のポケットにはメガネが入っていた、何より特徴的なのは目。
濁り切った目は見る者を委縮させるだろう。
見慣れた平塚は気にしないが初対面の教師は必ず怯える。
「比企谷、お前に友達は……いなかったな」
「はい」
「まぁいい、部活などに……励んではいるな」
「まぁ」
「作文は書きなおせ、今日は部活へ行くように」
「その予定です」
頷いた八幡は立ち上がって生徒指導室のドアを開ける。
「比企谷」
出ていこうとした彼を平塚は呼び止める。
「今の世界は平和だとキミは思うか?」
「平和になろうとしている途中じゃないっすかね」
短く答えながら八幡は生徒指導室を後にした。
八幡は自販機でMAXコーヒーを購入して一口。
千葉のソウルドリンクと呼ばれるものを含みながら青空をみあげる。
「空はどこまでも澄み切っているっていうのに」
ぽつりと漏らしながら周りを見る。
グラウンドでは生徒達が部活に励み、教室を見れば残った生徒達がだらだらしながら世間話に花を咲かせていた。
そんな光景を見ていると誰もが平和と思うのだろう。
「(自分達だけの世界が平和っていうことだけどな)」
飲み干してもう一つ、購入。
こういう甘いものを飲んでいる時だけ、色々と忘れられるというものだ。
一年前の交通事故、あれからすべてが狂って――。
「さて、行きますかね」
首を振りながら自販機のあるスペースから部室棟へ入る。
誰も使用していない空き教室のドアを開けた。
「うーっす」
「遅刻よ」
中に入ったところで咎める声が響く。
教室内には二人の少女がいる。
一人は文庫本を手に持ち、流れるような黒髪、総武高校の制服に身を包んだ少女。
もう一人は片方の髪を団子にして、制服を着崩して胸元を大きく開けている少女。
「由比ヶ浜に遅れる旨の連絡はしていたが」
ちらりと八幡は咎めた雪ノ下雪乃へ説明をする。
長い髪を揺らしながら首を振った。
「他人任せにするからいけないのよ。ちゃんと私へ連絡しない貴方のミスね、遅刻谷君」
「……オーケー、次からはそうするよ」
雪ノ下の隣にいる由比ヶ浜はふぅーと息を吐いた。
「言伝を受け取っているならちゃんと伝えないといけないのではないかしら?由比ヶ浜さん」
「うえぇ!」
話の矛先が自分へ向けられたことに気付いて由比ヶ浜結衣は声を上げる。
わたわたして慌てている由比ヶ浜を横目にみながら八幡は二人の少女から少し離れた場所に腰かけた。
これが彼らの距離感。
入学式当日に数奇な運命で出会い、その間に濃密な時間を過ごした三人。
紅茶を飲みながら文庫本を読む雪ノ下。
由比ヶ浜はそんな雪ノ下へその日起こった話を伝える。
二人の話を聞きながら新聞や図書館で借りた本を読みながらMAXコーヒーを飲む八幡。
これが三人の今の日常。
大事なひと時である。
夜。
一色いろはは夜道を歩いていた。
自分へ話しかけてくる男子達をいなしながら帰路へ向かっている。
いつものように自分へアプローチをしてくる男子達、心の中で辟易としながらもそんな感情は決して見せない。
――ヒタ、ヒタ。
「……っ!」
後ろから聞こえる足音のようなもの。
暗闇で一色いろはしかいないこの空間でその足音は不気味なくらいに響く。
いろはは鞄を抱きかかえるようにして足早に夜の自然公園を歩く。
家へ帰るための近道がこの自然公園を抜ける事だった。
しかし、ここのところ、この道を通ると決まって不気味な足音が聞こえてくる。
最初は気のせいだと思っていたが日が過ぎるごとに足音が大きくなり、段々と近づいてきている気がした。
目の前の出口に向けていろは足早に駆け抜ける。
少し歩けば人が行き交う通路へでられる。
そうすれば。
ふと、目の前に人の気配を感じていろは顔を上げた。
そこには――。
「比企谷、いるか!」
放課後、いつものように三人だけの空間にいたところでノックもなしに平塚先生がやってくる。
「平塚先生、ノックをしてください」
雪ノ下が文庫本を閉じて顔を上げる。
鋭い眼光に平塚はものとせずに話し出す。
「奉仕部に相談したい生徒がいるという事で連れてきた、入ってくれ」
「失礼しまぁす」
間延びした声で入って来るのは女子生徒。
一年生でまぁ、可愛い部類に入るだろう。
だろうというのは俺の傍にいるこの二人がとにかく美少女過ぎるので感覚がマヒしているのである。そもそも、宇宙一美しい存在をみたこともあるから可愛い程度で今更、揺れる八幡ではないのだよ。
何より仕草がいちいちあざとく感じる。
おそらく自分がどうすれば男を魅了させられるかわかっているのだろう。
「あざとい」
「へ?」
「ちょっと、ヒッキー!」
横にいた由比ヶ浜が慌てて口をふさいでくる。
ヤベッ、声に出していたか。
「それで、一色いろはさんだったわね。貴方の相談事というのは何かしら?」
「はい、その、帰り道なんですけど、誰かが後から追いかけてくるような気がするんですぅ」
「え、それって、ストーカー!?」
「そうかもしれないんですぅ、いつも決まった場所で足音がして一定の距離でついてくるようでぇ、もぉ、怖くて、怖くてぇ」
ちらりとこちらを見るんじゃない。
俺は興味ないという風に雪ノ下へ続きを促すように求めた。
「警察に相談はしたのかしら?」
「しましたよ!でも、この話に続きがありましてぇ」
「早く話してもらえるかしら」
段々と雪ノ下がイライラしているのがわかる。
あざとい話し方に我慢ができないのだろう。表情に変化はないが付き合いの長さからわかった。
「これなんです」
「何、これ?」
画面を覗き込んだ由比ヶ浜がぽつりと漏らす。
一色の携帯端末の画面にブレているが白と黒の魚眼のような何かの画像が映っていた。
「宇宙人です!」
断言する一色に俺と雪ノ下は呆れたような表情を浮かべていることだろう。
「お前、それ、警察に言ったのか?」
「はい!」
俺はそこで沈黙している平塚先生を見る。
「もしかして、ここへ連れてきたのは」
「警察が頼りにならない!そこで最低限の自衛としてしばらく集団で帰宅したらということでキミ達を選んだ」
「……勝手過ぎます。そもそも、依頼を引き受けるという事も」
「いいんじゃないかな?ゆきのん」
反論しようとした雪ノ下をやんわりと由比ヶ浜が待ったをかけた。
「だってぇ、同じ女として嫌だよ。ストーカーなんて、それがもっと変態なら尚のこと、助けてあげたいなぁって思わない?」
「……由比ヶ浜さんの気持ちもわかるわ。そうね、一色さん」
「はい!」
「私達がしばらくの間、貴方の帰宅の付き添いをするわ。勿論、しばらくは部活などの類も控えてHRが終わり次第、すぐに帰ることを条件だけどね」
「え、でも、私ぃ」
「それが嫌なら私達では手に負えないわ……それに、自分で最低限なんとかしようという気持ちが貴方から感じられない。ここは最低限の手助けをして自力で問題解決を促すという方針で活動している部なの。それがないなら、私達ができることはないわ」
提案ならぬ最終通告のような雪ノ下の言葉に一色は戸惑い、目をさ迷わせながら俺を見る。
おれなら助けてもらえると期待しているのだろう。
甘い。
「俺も雪ノ下の意見に同意だ。諦めろ、あざとい後輩」
「だ、誰があざといですか!いいですよ!お願いします!」
よくわからんが負けず嫌いではあるらしい。
了承したことを確認して俺達は平塚先生へ話を通してもらうことにした。
一色は平塚先生と一緒に出ていく。
残されたのは俺達のみ。
「さっきの写真、比企谷君はどう思うかしら?」
「画像が荒れすぎてなんともいえないがおそらく宇宙人だろうな」
画像を解析してみないことにはわからないだろうけれど、あれはおそらく宇宙人だ。
経験と直感のようなもので俺は断言できた。
この世界は昔から宇宙人やら怪獣らが猛威を振るってきた。その度に人類の手で撃退してきた。近年は侵略者の出現の報道も少ないが完全にいなくなったというわけじゃない。
「あー、じゃあ、いろはちゃんは」
「何らかの理由で宇宙人に狙われているのでしょうね」
由比ヶ浜はその事実を聞いて不安そうに瞳を揺らす。
「ま、ただの変態という可能性もゼロじゃないからな」
彼女の不安を少しでも取り除こうと俺はそういった。
一瞬だったがあの姿は知識として該当するものがある。
だが、果たしてそうなのかどうかはわからない。
――こういう時、彼が表にでていればどれだけよかったか。
「比企谷君、変なことを考えていないかしら?」
「いいや、別に」
「そう。ならいいけれど」
ぽつりと、けれど雪ノ下の鋭い眼光がこちらへ向けられた。
危ない、危ない、由比ヶ浜と同じくらい“あの件”に関しては神経質な雪ノ下だ。
悟られないように気をつけなければ。
「それじゃあ、今日から一色さんと一緒の帰宅をしましよう……はぁ」
「ゆきのん?」
「何でもないわ。平塚先生も少しは相談などをしてほしいと思うわ」
「まー、あの人、悪人ではないんだがなぁ」
強引ささえなければ結婚もできただろうに。
「ね、ねぇ、宇宙人の可能性があるならほら“ウルトラ警備隊”に通報という事は?」
「あの乱れた画像だけじゃ、一色さんを襲ったのが宇宙人だという証拠がない。警察も同じで悪戯と捉えられてしまうのが関の山といったところかしら」
「そっかぁ」
それぞれ帰宅準備を始めて正門の前で一色を待つ。
平塚先生に話を通しておいたおかげで一色は十分も経たずにやってきた。
「よろしくお願いします」
ぺこりと頷いた一色と共に俺達は帰路につく。
「ただいま~」
初日は当然というか何事もなく帰宅できた。
一色を家へ送り届けて、その後は雪ノ下と由比ヶ浜を送り届けたことで俺はくたくただった。
「お兄ちゃん、お帰り~」
玄関で靴を脱いでリビングに向かうと妹の小町が出迎えてくれる。
そして、もう一人。
「あ、八幡、お帰り~」
ふわふわと床の黒いモヤ、ダークゾーンと呼ばれる場所からひょっこりと姿を見せるのは黒と白い体、円筒形の頭部の左右についている小さな目、パーカーとズボンを履いているが人ではない。
ペガッサ星人ペガ。
我が家の居候であり宇宙人である。
「ペガ、何やっているんだ?」
「目覚まし時計の修理だよ。よし、できたよ~」
机の上にファンシーなデザインの目覚まし時計が置かれていた。
手先が器用なペガは機械いじりが趣味でこうして小町の頼みをよく聞いている。
「あれ、八幡、お疲れみたいだね」
「まぁな」
ペガの隣の椅子へ腰かける。
「もうすぐご飯ができるからねぇ~、先にお風呂入る?」
「あ、いいね!ペガも入る!」
「え~、偶には一人で入らせてくれよ」
「いいじゃないか~」
ペガはダークゾーンからバスセット一式を取り出した。
便利だよなぁ、ダークゾーンって。
横で見ながら風呂へ入ることにした。
「なぁ、ペガ」
「なぁに?」
「宇宙人が女の子を狙う理由ってなんだと思う?」
「うーん、わかんない。宇宙は広いから色々な宇宙人もいるし」
「だよなぁ」
ペガも宇宙人だ。
ペガッサ星から様々な経験を積ませようという両親の方針で宇宙を旅していたが奴隷売買を生業としている宇宙人に狙われて地球へ避難してきた時の騒動から比企谷家の一員として生活することになった。
我が家の両親は共働きで中々、家に帰ることがないのと仕送りはしっかりしてくれるのでペガが一人増えたところで何ら問題もない。
「ねぇ、八幡」
「なんだ?」
「もし、悪い宇宙人がこの地球で悪さをしたらどうするの?」
「止めるさ」
ペガの問いかけに迷わずに答える。
俺を助けてくれた“彼”への恩返しだと思っていた。
翌日、その次の日も八幡や雪ノ下達は一色と帰宅をしていたのだが、不審人物は影も形もない。
「もう、現れないってことですかね?」
笑顔で一色はいう。
「二日、三日も姿を見せないからもう大丈夫というのは気が早いわ」
雪ノ下は一色の考えを否定する。
「私達と帰っているからしばらく様子を見るという可能性もある。数日で答えを出すのは危険すぎるわ」
「でも……こんなことが続くのは息が詰まります!」
我慢できないという風に一色は叫ぶ。
「何で私がこんな目にあわないといけないんですか?どうして我慢しないといけないんですか!おかしいですよ!ストーカーが悪いのに」
「そうだな」
一色の心からの叫びに八幡は頷いた。
「本当ならお前がこういうことになるのは間違っている。だが、相手にそれを言って通用しなかったらどうする?」
「それは……」
「いろはちゃん、もう少しだけ頑張ろうよ!何かあってからじゃ、遅いんだし」
由比ヶ浜の励ますような言葉に一色も小さく頷いた。
「あら、あれは何かしら?」
帰宅途中、警官がある一角を封鎖していた。
「何かあったのですか?」
雪ノ下が警官へ問いかける。
警官の話によるとコスプレした不審者が暴れまわって逮捕されたという。
「じゃあ!」
「終わったとみるべきかしらね」
破顔する一色。
予想外な形で奉仕部の依頼は完了となった。
「何かあっけなかったねぇ~!」
「タイミングが良かったと思うべきなのかもしれないけれど、少し良すぎるような気もしなくはないわ」
一色を家へ送り届けようとしたのだが、もう大丈夫だと彼女が断りを入れた為に道中で解散となった。
後はぶらぶらと帰るだけだったのだが。
「最近、物騒よねぇ」
ふと、主婦達の会話が聞こえてきた。
「そういえば、家出している人も多いわよねぇ?三丁目の岩田さん、奥さんが出て行ってもう一週間くらいですって」
「あら、そういえば、隣町でも似たようなことがあったわよ」
聞こえてきた声に八幡は歩みを止める。
「ヒッキー、どうしたの?」
「なぁ、雪ノ下」
「何かしら?」
「この町周辺の失踪事件がどのくらい起きているかってすぐにわかるか?」
「近くのネット喫茶で調べられると思うわ……急にどうしたの?」
「さっきの主婦達の会話が気になってな。とにかく、行こう」
八幡達は近くのネット喫茶に入る。
支払いは八幡が済ませてネットブースで検索を始めた。
「そろそろ教えてもらえるかしら、何を気にしているのかしら?」
「主婦の話では周辺で連続失踪が起こっているらしい。ただの偶然なら良いんだが、結果は?」
「この町周辺で四件も起こっている。でも、年齢、職業、すべてバラバラね……唯一共通点があるとすれば」
「女性か?」
「えぇ、警察は家出などで詳しい捜索をしているか、怪しいところね」
「どういうこと?」
ぽかんとしている由比ヶ浜を横に八幡はパソコンでハッキングする。
表示されたのは地球防衛軍のモンスター&エイリアンのデータベース。
「ちょっと、比企谷君!」
「え、これ!?」
「これだ」
短い時間で目的のファイルを表示する。
「DADA?」
「今から四十年ほど前に宇宙線研究所を襲った宇宙人だ。データによると人間の標本を集めることを目的としていたらしい」
「標本?え、人間って標本にできるの?」
おバカな由比ヶ浜はさらに横へ置いといて。
「貴方はこの失踪事件がダダの仕業とみるの?」
「おそらく、失踪事件が標本採取という点からみれば、このバラバラな理由は納得できる。それに知っているか?」
八幡はかつて知った情報を伝える。
――地球人の女は宇宙人の標本としての売買は高値で売れるらしい。
二人の女性が顔をしかめた。
「とにかく、一色が危ない、急ごう」
パソコンを閉じる。
「えっと、この場合、ウルトラ警備隊に知らせるとかは……」
「そうね、一応、通報はしておきましょう。彼らが信じてくれるかは置いといてね」
“ウルトラ警備隊”
宇宙からの侵略者が多発した時代、地球防衛軍内で多くの侵略から地球を守ってきたエリートチーム。
今は第二期編成になっているらしいが、宇宙人による怪事件はウルトラ警備隊を呼ぶという認識は今も変わらない。
由比ヶ浜が通報しているのを横目で確認しながら八幡は急ぎ足で一色の家まで向かう。
嫌な予感をひしひしと八幡は感じ取っていた。
一色の家が見えてきたところでドアが開かれる。
「先輩!」
泣きそうな顔をしている一色がこちらへ手を伸ばしてくる。
部屋の中から魚眼の顔で白と黒の宇宙人が細長い武器を構えていた。
「一色、伏せろ!」
「え、あ、はい!」
うずくまるように座った一色、ダダへ八幡は右手を握り締めるようにして前へ振る。
念動力による攻撃でダダは吹き飛ぶ。
「え、なに、なに!?」
「一色、こっちへこい!」
戸惑う一色の手を引きながら後ろへ身を隠す。
攻撃を受けたダダはふらふらと姿を見せる。
身構える俺の前でダダはテレポートした。
逃げた?
「先輩!」
後ろから一色の悲鳴が聞こえる。
振り返るとダダが自らの武器で殴りかかってきた。
一色を守りながら手で受ける。
痛みに顔を歪めながら腹を蹴り飛ばす。
少しのけ反りながらダダが手の中にあるミクロ化機を構えた。
一色を守ろうと念動力を発動させようとした時。
バコンとダダの後頭部に石が激突する。
「今よ!」
雪ノ下の叫びに念動力を放つ。
攻撃を受けたダダは派手に吹き飛ぶ。
バチバチとミクロ化機が爆発を起こした。
「ダダダダァ!」
顔を抑えて仰け反るダダ。
再び顔を上げたダダの顔半分は火傷で醜くゆがんでいた。
怒りでプルプルと体を震わせているダダは転移する。
一瞬の隙を突いて、八幡を突き飛ばして一色を連れていく。
「いや、いやぁあああ!」
悲鳴を上げている一色へ手を伸ばそうとしたが間に合わずダダと一緒にテレポートしてしまう。
「いろはちゃん!」
「比企谷君!」
「クソッ、ペガ」
「発信機をつけておいたよ!」
八幡の影からひょっこりとペガが姿を見せる。
ペガから受信機を受け取った。
「よし、雪ノ下と由比ヶ浜はここでウルトラ警備隊に事情を説明してくれ」
「え、ヒッキーは!?」
「このままダダを追いかける。彼はこの星の生命に手を出している。それは重大な罪だ」
「貴方……比企谷君、よね?」
雪ノ下の問いかけに八幡は柔和な笑みを浮かべながら胸ポケットの奥にしまい込んでいる変身アイテム、ウルトラアイを取り出す。
「デュワッ!」
二人の前でウルトラアイを装着した八幡は瞬時にM78星雲人であるウルトラセブンに変身する。
赤い体に銀の兜、頭頂に輝くアイスラッガー、体のプロテクター。
ウルトラセブンは空へ舞い上がりペガの発信機の反応の場所へ降り立つ。
町外れにある廃工場。
降り立ったウルトラセブンはそのまま廃工場内に突入する。
中にはダダが数体、そして部屋の中心には円筒形のカプセルが複数、置かれていた。
その中の一つに一色いろはがいる。
「一色!」
ウルトラセブンの声にダダ達が振り返り一斉に襲い掛かる。
襲い掛かっていたダダを殴り飛ばし、一体は投げ飛ばす。
ミクロ化機を構えたダダにはウェッジ光線を放つ。
光線を受けたダダは爆発を起こして地面に倒れる。
残り一体、顔に火傷を負ったダダが後退った。
「ダダよ、星に住まう者達を勝手に連れ出すのは重大な罪だ。すぐにこの星から立ち去るんだ。そうすれば、私も命までは取らない」
「ウルトラ……セブン……くそっ」
ウルトラセブンの言葉にダダは小さく下がりながらそのまま逃げようとした。
――かと思えば、落ちている光線銃を手に取ってセブンへ向ける。
それよりも早くセブンは額のビームランプの前で指を構えた。ビームランプからエメリウム光線がダダを直撃。
ダダは体から炎をまき散らして消える。
ウルトラセブンはカプセルを覗き込む。
そこでは助けを求めている女性達がいた。
「もう大丈夫だ」
テレパシーで彼女達を安心させるように優しく声をかける。
三十分後、通報を受けて駆け付けたウルトラ警備隊の隊員は星人から解放された人たちは口をそろえていう。
――ウルトラセブンが助けてくれたと。
翌日の奉仕部
「おっはようございます!」
MAXコーヒーを飲んでいた八幡はドアを開けてやってきた人物に面倒そうな表情を浮かべる。
「あれ、先輩だけですか?」
「二人はそれぞれ用事で遅れている。もしかしたら来ないかもな」
「そうなんですか!先輩、少しお話いいですか?」
「なんだ」
一色は笑顔を浮かべながら尋ねる。
「助けてくれてありがとうございます」
「あ?それならウルトラ警備隊の人達に言えよ。俺は何にも出来てないよ」
「そんなことないです!先輩があの宇宙人から私を守ってくれたじゃないですかぁ!感謝しているですよぉ」
「感謝しているならそのあざとい発言やめろよな」
「えぇ~、そんなことないですよぉ」
既にやっていますよね?
心の中で思いながら八幡は誤魔化すようにMAXコーヒーを飲む。
「ところで先輩達は何者なんですか?」
「いきなり何の話だ。俺達は地球人だぞ?」
「ふーん」
不満そうな表情の一色。
八幡は気にしない。
「まぁいいです。これから時間があれば遊びに来ますね?」
「勝手にしろ」
「はい!勝手にします!」
にこりとほほ笑む一色。
苦手だなぁと心の中で思いながら八幡はMAXコーヒーを飲み干した。
――地球は狙われている。
しかし、理不尽な侵略に正面から挑む人類を助ける者がいる。
遠い別の宇宙にあるM78星雲からやってきた地球を愛する宇宙人。
名前を、ウルトラセブンという。
比企谷八幡
高校二年生、自称ボッチ。濁った目を普段はメガネで隠しているが瘴気が漏れだしたりしているため、あまり効果は薄い。
高校の入学式の日に交通事故に巻き込まれるも発生したワームホールによって宇宙空間に放り出されてしまう。
死にたくないという意思がミュー粒子となって一人の宇宙人が感じ取ったことで一名をとりとめる。
その後、多くの戦いや出来事を経て本来の世界へ戻ってきている。
超能力が少しほど使えるが人間としてのスペックは中の上程度。
専業主夫を夢見ていたが、今は少し違う模様。
次の話、誰のメインがみたい?
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川崎沙希 キリエロイド登場予定
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チェーンメール事件 メトロン星人登場予定
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戸塚彩加 ゴドレイ星人登場予定
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小町 謎のダークマター編
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ウルトラ警備隊 キリエロイド登場予定