やはり俺がウルトラセブンなのはまちがっている。   作:断空我

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今回でひとまず、最初の過去編は終了です。

次回から本編へ戻ります。


過去編:レイオニクスの美少女

 

「おや、おいしくなかったかな?」

 

 宇宙船の中で雪ノ下雪乃は丸いテーブルに置かれている紅茶をみていた。

 

 そんな彼女に女性の姿をしている宇宙人が問いかける。

 

「いえ、味わったことのない素晴らしいものです」

 

 置かれているカップの中の紅茶を味わいながら雪ノ下は頷いた。

 

「それは良かった、地球にはないものなのでキミの口に合うか不安だったのだよ」

 

「はい……」

 

「不安かな?」

 

「いえ、その」

 

「怯えることはない。キミ達の星はまだ宇宙へ進出していないからね……広大な宇宙で一人だけというのは辛いものだろう」

 

 優しく諭してくる宇宙人の言葉に雪ノ下は戸惑うばかりだ。

 

 ワームホールに飲み込まれた彼女はゼットン星人と名乗る目の前の宇宙人に助けられた。

 

 最初に彼女の本来の姿をみて、気絶してしまったことは申し訳ないと思う。

 

 置かれているカップに口を含む。

 

 飲んだことのない味だが、不思議と気持ちが落ち着いた。

 

 目の前の彼女の話では地球にない茶葉らしい。

 

 雪ノ下は自身を落ち着かせながら記憶を手繰る。

 

 リムジンで移動していた途中に車道へ飛び出してきた犬と少年を運転手が急ブレーキを踏んで止めたところまでは良い。

 

 その後、空に現れた黒い渦に雪ノ下と犬と飼い主の少女、そして、少年が吸い込まれた。

 

 宇宙の空間に放り出されたと思ったところで彼女の宇宙船に助けられて今に至る。

 

「それで、どうして、助けてくれたんですか?」

 

 落ち着いたところで雪ノ下は尋ねる。

 

 助けてくれたことに感謝はしているが、助けたことに何か裏があるのではないかと考えていた。

 

 人というのは打算的な生き物だ。

 

 雪ノ下が知る限り、無償の善意で行動することはない。

 

 今までに汚い大人たちをみてきたからだろう。

 

 それ故に目の前の宇宙人が助けてくれたことにも何か裏があるのだろうと考えている。

 

「警戒しないでほしいな、別にとって食べるとか、実験動物としてビーカーに入れるような真似はしないよ」

 

「不安にさせるようなことを言わないでもらえるかしら」

 

 ため息を雪ノ下に宇宙人は笑う。

 

「安心してくれ、乱暴な宇宙人もいるが、私は紳士、いや、淑女であるつもりでいるよ。一応、キミを助けたことに理由はある。それが聞ければ満足かな?」

 

「えぇ」

 

 雪ノ下が頷いたことを確認してゼットン星人は笑みを浮かべる。

 

「キミは冷静だね。普通の人間ならパニックを起こして混乱や悪ければ、自我が崩壊することもありえるというのに、益々、気に入ったよ」

 

 理由はわからないがこの宇宙人は自分のことをいたく気に入ったらしい。

 

 警戒を強めるかどうするか悩んでいたところで宇宙人は話を切り出す。

 

「キミには怪獣使いになってもらいたい」

 

「怪獣使い?」

 

「……これを」

 

 宇宙人が机の上に青と黒い長方形のアイテムを置いた。

 

「バトルナイザー、怪獣を操ることができるアイテムだ」

 

「……バトルナイザー」

 

 雪ノ下は置かれたバトルナイザーへ視線が離れない。

 

 彼女の姿に宇宙人は満足したような笑みを浮かべる。

 

「どうして、このアイテムを私へ?」

 

「残念なことに私では使うことができなくてね、適合するための条件があるのさ」

 

「その条件に私が合致しているというの?」

 

「嬉しいことにね。キミにはそのバトルナイザーを使って怪獣使いとして戦ってほしいのさ」

 

「私は普通の生活をしていた女の子よ?いきなりこんなアイテムを渡されて怪獣を操れと言われても出来ないわ」

 

「そんなことはない」

 

 雪ノ下の言葉を宇宙人は否定する。

 

「キミがこのバトルナイザーを手にして、戦う覚悟を持てば、これが自然と教えて、導いてくれる……なぜなら、キミはレイオニクスなのだから」

 

 ゼットン星人は語る。

 

 レイオニクスとはバトルナイザーを使って怪獣を使役することができる存在であるとゼットン星人が説明する。

 

 説明を聞きながら雪ノ下はバトルナイザーをみた。

 

「これはただの機械でしょう?」

 

「見た目はね?これは普通のアイテムじゃあない。ナノマシンと有機体で構成されているハイブリッドだ」

 

「……そんなもの、どうやって」

 

「さぁね?生まれた経緯を説明しても良いけれど、時間がない」

 

「え?」

 

 直後、室内が衝撃と揺れに襲われる。

 

「何が……!?」

 

「どうやら来てしまったようだ」

 

「来た?」

 

「黙っていたんだが、私は今、野蛮な宇宙人達に追われていてねぇ」

 

「………………え?」

 

 ぽかんとしてしまう雪ノ下だった。

 

 暗黒に広がる宇宙。

 

 ゼットン星人の宇宙船を三隻の宇宙船が追跡していた。

 

 自動操縦にしていたが、追跡の宇宙船から放たれる光線が掠める。

 

 正面スクリーンで三隻の宇宙船を見ているゼットン星人は冷静であった。

 

「しつこいねぇ、近くの小惑星へ着陸するよ」

 

「え、待って」

 

「無理だね」

 

 戸惑う雪ノ下を置いてゼットン星人の円盤は近くを浮遊している小惑星の一つへ着陸する。

 

 少し離れたところで着陸する三隻の宇宙船。

 

 そこから姿を見せるのはサーペント星人、ナックル星人、ギロン人だ。

 

「やい、ゼットン星人!星間連盟から奪ったバトルナイザーを返してもらおうか!」

 

 光線銃を構えながらゼットン星人の宇宙船へ叫ぶサーペント星人。

 

「応答がなければ破壊する!」

 

「そんなちまちましていで、とっとと爆破して残骸から探せばいいだろう?」

 

「いいや、無傷で回収するように指示がでてくる」

 

 宇宙船の爆破を提案するナックル星人だが、ギロン人に止められて、渋々、下がる。

 

 ゼットン星人の宇宙船が開いて、そこからゼットン星人がゆっくりと降りてくる。

 

 その後ろに続くのは雪ノ下雪乃だ。

 

「ゼットン星人、返答を聞かせてもらおうか?」

 

 サーペント星人の言葉にゼットン星人は考えるそぶりをみせる。

 

「悪いが、断るよ。これを星間連盟へ渡すと面倒なことになるからねぇ……それに、レイブラッド星人の野望に協力するっていうのも嫌だしねぇ」

 

「そうか、ならば、死ね」

 

「嫌だよ」

 

 光弾がサーペント星人の体を貫いた。

 

 ゼットン星人の手に光線銃が握られている。

 

「てめっ」

 

 武器を構える暇もないまま、ナックル星人の頭部を光弾が射抜いた。

 

「流石はゼットン星人ということか、知能だけで戦闘能力は低いと思っていたのだが?」

 

「ふむ、普通のゼットン星人ならそうだろう、だが、私は少々、変わり者でねぇ、肉体も少しばかり鍛えているのさ」

 

「ふむ」

 

 銃口を向けられているというのにギロン人は冷静だった。

 

「キミはさっきの二人よりいくらか冷静みたいだからねぇ、大人しく引き下がってくれないかなぁ?私、無駄な殺生は好きじゃないんだ。ほら、汚れるし」

 

 

「確かに、今の戦闘能力を見せられたら引き下がるしかないだろう、だが」

 

 ギロン人は手に持っていた光線銃を捨てる。

 

 片手に握られているのはバトルナイザー。

 

「こちらのレベルアップに協力してもらおうじゃないか、いけ、アリブンタ!」

 

【バトルナイザー!モンスロード!】

 

 輝くバトルナイザーから現れるのは大蟻超獣 アリブンタ。

 

 肉食のアリと宇宙怪獣で合成された超獣。

 

 両手の爪を鳴らしながらアリブンタはゆっくりとゼットン星人の円盤へ近づいてくる。

 

「驚いた。そちらにレイオニクスがいたとは」

 

「偶々、星間連盟にいた方が情報を入手しやすいのでね」

 

 ギロン人はバトルナイザーを構えた。

 

 指示を受けたアリブンタが動き出す。

 

 ゼットン星人は光線銃で迎撃を試みるがやはり超獣、光線銃を受けても平然としていた。

 

「さて、こうなっては仕方ない。戦ってもらえるかな?」

 

 ゼットン星人の視線は後ろにいる雪ノ下へ向けられている。

 

「このままでは私とキミはあの超獣に潰されてしまう。何もできないまま、何かを見つけることもできないまま、そして、元の世界へ帰る方法を探す機会も失われる」

 

「それは……」

 

「戦わなければ、目的を果たせない」

 

 差し出されるバトルナイザー。

 

 真剣なゼットン星人の言葉に雪ノ下は震える手でバトルナイザーへ手を伸ばす。

 

 バトルナイザーへ雪ノ下が振れた刹那。

 

 眩い輝きを放つ。

 

 あまりの輝きにゼットン星人は目を閉じる。

 

【バトルナイザー!モンスロード!】

 

 青と黒のバトルナイザーから輝きが放たれる。

 

 揺れと共にアリブンタの前に現れるのは漆黒の怪獣。

 

「あれは!」

 

 ギロン人もその姿に驚きを隠せない。

 

 全身が黒く、頭部と胸部の部分に黄色く発光する器官をもつ、頭部にある二つの角。

 

「ゼットォォォォン」

 

 低い声と共に宇宙恐竜ゼットンがアリブンタと対峙する。

 

 アリブンタは現れたゼットンに驚きながらも走り出す。

 

 対してゼットンは冷静に両手を前に突き飛ばす。

 

 攻撃しようと爪を振るおうとしていたアリブンタは吹き飛び、地面へ倒れる。

 

 ゆっくりと近づいていくゼットン。

 

 アリブンタは両手から火炎を放つ。

 

 不意打ちにゼットンは少しばかり仰け反りながらもゆっくりとアリブンタへ近づこうとしている。

 

「潜れ!アリブンタ!」

 

 ギロン人の指示で地面へ潜る。

 

「そのまま、四次元蟻地獄へ落としてしまえ!」

 

 地面から姿を見せないまま、ゼットンの足元が突如、蟻地獄のように沈んでいく。

 

「ゼットォォォォン」

 

 飛翔しようとするゼットンの足を現れたアリブンタが捕まえる。

 

 アリブンタの口から溶解液が放たれた。

 

 溶解液をかけられたゼットンが苦悶の声を漏らす。

 

「ゼットン……!」

 

 雪ノ下は苦しみの声を上げるゼットンをみて、バトルナイザーを握り締める。

 

「(そろそろ、か)」

 

 不安そうに揺れる雪ノ下をみて、ゼットン星人は小さな笑みを浮かべる。

 

「どうすれば、どうしたら」

 

「戦えばいい」

 

 戸惑う雪ノ下へゼットン星人が近づく。

 

「戦う?」

 

「そうだ、キミは怪獣使い……キミ自身が戦うことを望めば、ゼットンは応える」

 

 段々と雪ノ下の意識がぼんやりと沈んでいく。

 

 同時にバトルナイザーの輝きが強くなる。

 

「さぁ、願うんだ。ゼットンに勝利することを」

 

 ゼットン星人が雪ノ下へ囁く。

 

 その姿は悪魔が人へ企みを教えようとする姿と酷似していた。

 

「ゼットンへキミが勝利するために祈れば、どんな敵だって倒せるさ。なぜなら」

 

――ゼットンは最強なのだから。

 

 ゼットン星人が囁いた言葉がトリガーになったのかはわからない。

 

 雪ノ下雪乃の瞳が真っ赤に輝く。

 

「ゼットン!」

 

 バトルナイザーを握り締めて、ゼットンへ叫ぶ。

 

「テレポートして、抜け出しなさい」

 

 指示を受けたゼットンがテレポートする。

 

 アリブンタの拘束から抜け出したゼットンは地面へ降り立つ。

 

「ゼットン」

 

 赤く輝いた瞳の雪ノ下は次の指示を出す。

 

「燃やしなさい」

 

「ゼットォォォン」

 

 一兆度の火球をアリブンタへ放った。

 

 アリブンタは逃げることも四次元の蟻地獄へ潜ることも叶わずに炎によって焼き尽くされる。

 

「バカな、アリブンタが、超獣だぞ!?」

 

 動揺を隠せないギロン人にゆっくりとゼットンが近づいていく。

 

「おい、何を」

 

「おやおや?わかっていないのかい」

 

 ギロン人へゼットン星人は呆れたように告げる。

 

「この宇宙は弱肉強食、レイオニクスであるのなら、尚更だろう?つまり、弱者は消え去るといい」

 

 ぞっとするほどの低い声と共にギロン人の眼前に現れるゼットン。

 

「な、なぁ、助けてくれ!アンタ!」

 

 ギロン人はバトルナイザーを握り締めている雪ノ下へ訴える。

 

 雪ノ下は柔和な笑みを浮かべた。

 

 ギロン人は希望を見出したような表情になる。

 

「ゼットン、潰しなさい」

 

 冷酷な少女の言葉と共にゼットンがギロン人を踏みつぶした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、素晴らしい初陣だったよ」

 

「そう、だったかしら?」

 

「勿論だとも、晴れてキミはゼットンを操る怪獣使いになったのだからね」

 

「少し、疲れたわ」

 

「初の戦闘で疲労がたまっているのかもしれないね。部屋でゆっくり休むといい」

 

「そうさせてもらうわ」

 

「……お休み、雪乃ちゃん」

 

「えぇ、姉さん」

 

 ぽつりと漏らして雪ノ下は部屋に消える。

 

「まぁ、計画通りかな」

 

 雪ノ下の姿が見えなくなってゼットン星人は女性の姿から本来のほっそりとした一つ目の姿へ戻った。

 

「それにしても、姉さんか、彼女の心象の中にある憧れの姿をしてみたものだが、まさか、実際に姉と”また”呼ばれることになると感慨深いものだ」

 

 そういいながらゼットン星人は空中に映像を表示する。

 

「宇宙恐竜ゼットン、特別に調整したとはいえ、まさかあれほどの性能を発揮したことは、彼女が特別なのか、しかし」

 

 ちらりとゼットン星人は別室、雪ノ下雪乃が眠る部屋へ視線を向けた。

 

「ソリチュランの葉を潰して紅茶に混ぜてみたら、想像以上に精神へ影響を与えてしまった……まぁ、これから怪獣使いとしての成長を期待しよう、強くなれば、忌々しい光の国へ攻め込むこともできるだろう」

 

 計画を練りながらゼットン星人はこれからのことを思案する。

 

 雪ノ下雪乃をどのように自分を手駒、否、右腕として利用できるかどうか。

 

 

 

 

 

 

 ゼットン星人の計画は順調に進み始めていた。

 

 しかし、小さなイレギュラーが起こり始めていたことに気付いていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雪ノ下雪乃の寝室。

 

 疲れたように眠っている彼女の傍、置かれているバトルナイザーが小さく輝いた。

 

「ゼットォン」

 

 ポンと音を立てて現れるのはミニサイズの宇宙恐竜ゼットン。

 

 ゼットンはピポパポと音を鳴らしながら雪ノ下を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現代。

 

「以上が俺達のはじまりってところなんだが」

 

 奉仕部の部室で八幡が半眼で一色をみる。

 

「お前、なんでポップコーン食っているの?」

 

「え?ペガが勧めてきたんですけど?」

 

「話を聞くなら必要かなって」

 

 八幡の影からひょこと出てきながら一色の手の中にあるポップコーンを掴む。

 

「一応、確認なんですけれど、先輩がウルトラセブンなんですよね?」

 

「まぁな、他言無用だからな」

 

 釘を刺す八幡に一色は頷いた。

 

「絶対に言いません!」

 

「とにかく、今日はここまでだ」

 

「えぇ!?」

 

「残念だけど、一色さん、下校の時間よ」

 

 本を閉じて雪ノ下が時間を確認する。

 

「ちぇ~、続きを聞きたかったのに」

 

「機会があれば、また話してやるよ」

 

「絶対ですよ!?約束ですからね!」

 

「はいはい」

 

「じゃあ、帰ろうか!」

 

 由比ヶ浜の言葉で八幡と雪ノ下も鞄を手に取る。

 

「あ、私、鞄を取りに教室へ戻るので、先に帰っていてください」

 

「そう……気を付けてね」

 

 雪ノ下に言われて一色は頷きながら奉仕部の部室を出ていく。

 

「少し、わかったかなぁ?」

 

 ぽつりと漏らしながら一色は奉仕部の部室をみた。

 

「(あの人たちの関係って、一体、何なんだろうなぁ)」

 

 彼女の疑問はおそらく過去の出来事にある。

 

 話の続きが気になりながらもまたの機会ということで一色は廊下を歩いていく。

 

 






ゼットン星人
ワームホールに飲み込まれた雪ノ下雪乃を助けた人物であり、過去に地球へ部隊を率いて科学特捜隊の本部の破壊工作を行ったゼットン星人の姉である。
星間連盟が入手したバトルナイザーを奪取して、自身の計画の為に雪ノ下を抱き込んだ。
雪ノ下を手駒として利用するべく、彼女の心象の中にあった最愛の人物の姿を利用している。


サーペント星人、ナックル星人、ギロン人
星間連盟の配下、ギロン人はレイオニクスであった。

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