体調崩したり、プラモデルを作ったり、映画をみてきたり、色々やっていて遅れました。
申し訳ありません!
「ここって、いつの時間もやっているよね?」
八幡達は繁華街の片隅にある小さなお店へやってきていた。
普通の人なら気付かないような薄暗い場所だが、八幡は超能力を用いて目的の店を発見する。
「いつも、いつも店の場所変えているよね?」
「あの人は気まぐれだからな」
肩をすくめながら八幡は店の扉を開ける。
さび付いた音を立てながら開くドア。
薄暗い室内へ八幡達は足を踏み入れる。
階段を降りるとそこはバーカウンターと小さなテーブルが設置されているお店だった。
室内は薄暗く、静かな音楽が室内を包み込んでいる。
「おや、珍しい来客ですな」
バーテンダーのような格好をした強面の男が八幡達の姿を見つけると笑みを浮かべた。
「久しぶり、マスター」
男はこの喫茶店の店主であり、客からはマスターと呼ばれている。
室内には読書をしている女性やタバコを吸っている男性など、ちらほらと客の姿があった。
客は八幡達の姿を見るもすぐに興味を無くしたように視線を外す。
カウンター席へ八幡が座ると左右に由比ヶ浜と雪ノ下が腰かける。
「相変わらず両手に花ですな」
「揶揄うのはやめてくれ」
「あら、美少女が一緒じゃ不満かしら?」
にこりと女王のような笑みを浮かべる雪ノ下。
その姿に男性客たちの体がぶるりと震えだす。
「お前までやめてくんない?俺を揶揄って楽しい?」
「(楽しいけれど、ここで照れてくれないのは悔しいわね)」
「どうやら、相変わらずのようですな。ところで、何にします?」
「コーヒーを三つ、他のメニューはないのでしょう?」
「いいえ、実は最近、ピラフに懲りまして」
「アンタ、どこに向かおうとしているんだ?」
このマスター、元々はコーヒーだけしかメニューになかったのだが、少し前の騒動からラーメンやらお茶漬けやら、わけのわからないメニューの幅を広げ始めているのだった。
お客からは好評であるのだから、八幡の感性からすれば、よくわからない話である。
「じゃあ、そのピラフ下さい!」
ここで迷わずにチョイスするのが由比ヶ浜結衣である。
八幡がため息を零す中、マスターが準備を始めた。
「マスター、前よりもお客が減っているような気がするのだけれど」
「あれ、言われると……」
三人は周りを見る。
記憶が確かなら、もう少し客がいたはずだ。
この店は場所をころころ変えているが常連が変動することはなかった。その常連の数が減っているのである。
「みんな、出て行ってしまわれたのですよ」
「え?」
「出ていった?」
「出来ましたよ」
マスターは笑みを浮かべながらコーヒーの入ったカップを八幡達へ差し出す。
本来なら砂糖を沢山いれるところなのだが、我慢してコーヒーを飲む。
「「「うまい」」」
飲んだ三人は感嘆とした声を上げる。
ここのコーヒーは砂糖といったものを不要としている。地球産ではない豆を使っているのだが、とてもおしいのだ。
MAXコーヒーしか飲まない八幡でも大好きである。
子ども舌であるペガはまだここへきていないが気に入るかもしれない。
マスターが作ったピラフを由比ヶ浜はおいしそうに食べている。
さっきの戦いで余程、お腹が減ったのだろう。
山盛りのピラフがどんどん減っていた。
「マスター、常連が出ていったという話だけれど、それはこの星からという事?」
「えぇ、この星から逃げ出している者達が日々、増えていっています」
「それは、どうして?」
雪ノ下の問いかけにマスターは告げる。
「悪魔がこの星にいるからですよ」
「……悪魔?マスター、それはなんなんだ?ザム星人も悪魔によって星を滅ぼされたと言っていた」
「そういえば、貴方はザム星人と出会っていたのでしたね……悪魔、奴の名前を我々が恐れて、その名前を言うことを避けているからです。奴、ゴーデスはとても恐ろしい存在です」
「ゴーデス……」
マスターは小さく体を震わせる。
「奴がどこの星で生まれて、なぜ、あぁなったのかは誰も知りません。ただ、誰もが共通で理解しているのはゴーデスの細胞がばらまかれた惑星の生態系はおかしくなり、やがて、ゴーデスの一部になるという事です」
「まるでウィルスね」
「一部の者達はゴーデスを惑星ウィルスともいいます」
「なぁ、マスター」
八幡は携帯端末を取り出す。
画面の中に撮影した石板などをみせる。
「これ、何かわかるか?」
マスターは胸ポケットからメガネを取り出して覗き込む。
「これは既に滅んだ惑星の文献ですな」
「滅んだ?」
「先ほど話したゴーデスに食われたのですよ。その時の記録です」
「詳しい内容はメールで送っておきます。申し訳ありませんが悪魔の話はあまり他のお客様の迷惑になるので」
「わかりました、すいません、無理を言って」
「大丈夫ですよ。お三方には助けてもらった借りがありますから」
にこりとほほ笑むマスターに感謝を告げて、八幡達は“喫茶 ブラックスター”を後にした。
店の外に出たところで由比ヶ浜が安堵の息を吐く。
「ふぅ、緊張したぁ」
「そこまでか?」
「由比ヶ浜さんが緊張しているのはオーナーではなく、周りの人達よ」
「あぁ、そういうことか」
雪ノ下の言葉で八幡は理解する。
地球における宇宙人たちの憩いの場といわれる“喫茶 ブラックスター”。
そこは侵略者であろうと争いの場にしてはならないといわれる一種の不可侵条約の場所。
光や闇の勢力を問わず、誰もそこを攻めること、侵略に利用することは許されない。
仮にそんなことを実行に移したバカがいたとすれば、店の名前になっている惑星が総力を挙げて、そこの星を滅ぼすだろう。
その時の勢力の一端を思い出して八幡は自身の体を震わせる。
「お、オーナーからだ」
端末にメールが届いた音が鳴り響く。
画面を操作してメールの内容を確認する。
「そういうことか……」
「何かしら?」
「みせて、みせて!」
八幡は二人へ端末の画面をみせる。
彼が撮影した石板などは既に滅んだ惑星の記録。
ゴーデスは自らの細胞を惑星に落とした。
細胞は時に雨、流星群へ形を変えてその惑星へ降り注いで住まう生物の体内へ侵入。急速的な進化を促す。
その進化は生物の理性を奪い、怪獣として生まれ変わらせる。
暴れる怪獣によってその星の文明は滅ぶ。
だが、その惑星は光を生み出した。
生み出された光はその星に住まう者達へ力を与えてゴーデスと抗おうとする。
結局のところ、その星はゴーデスに食われた。
「ここからは愛染誠の推測らしいな」
文献の下に書き足された言葉があったらしい。
敗北した光は本来の姿を失い、力はクリスタルとなって宇宙へ散った。
その力の一つを手に入れて、オリジナルと酷似した存在を集めてデータを収集して、器を用意すれば、ウルトラマンに変身できる可能性がある。
「だから、あの人は黒いウルトラマンへ変身できたのね。凄まじい執念だわ」
「何か、キモイ」
さらっと毒を吐いた由比ヶ浜。
愛染誠が聞けば目を見開いて文句を言っていただろう。
「問題はどうやってゴーデスを倒すかという事よ。この文献の通りなら、この星を食らおうと怪獣を生み出していることになる」
「じゃあ、地球防衛軍にこのことを伝えるとか!」
「まず無理だな、俺達は一介の高校生だ。話をしたとしても信じてもらえるかわからない。何より、事実を理解した途端、超兵器を用いてこの星を逆に壊すなんて最悪な結末もありえる」
ウルトラセブンの記憶を一度だけ見た時に、そのような結末になりかけたことが何度かあった。この星がそうなるとは限らないが強大な力を持っている組織へ事実を伝えるタイミングは色々と気をつけないといけない。
「そうなると……あたし達がなんとかしないといけないってことかな?」
「絶対というわけではないかもしれないけれど……」
「はぁ、何でこういうことばっかり起きるんだか」
だが、事態は八幡達が想定していた以上に進んでいた。
その日、世界各地にゴーデス細胞に侵された怪獣が大量発生する。
「大変なことになっているねぇ」
比企谷家。
リビングで放送されている怪獣出現のニュースをみていた小町の言葉に八幡は鋭い目でテレビの画面を見ている。
「はわわ、大騒動だ!」
右往左往するペガ。
小町は平常通りに見えるが、その目は不安そうに揺れていた。
テレビでは防衛空軍が暴れている怪獣と戦っている場面が映される。
映像の一部にはウルトラ警備隊のウルトラホークの姿もあった。
「(これで、ゴーデスの復活はより確実になったということなのか?)」
これからのことを考えるためにどうするかと携帯端末を取り出した時。
「は?」
八幡が困惑の声を漏らすと同時に窓ガラスが割れ、中へ入って来る武装した集団達。
悲鳴を上げる小町。
何かを言う前に後頭部を殴られて八幡の意識は落ちていく。
「ようやく会えたな?ウルトラセブン」
意識を失う直前、囁かれるような声を聴きながら。
喫茶ブラックスター
ウルトラマンオーブに出てきた喫茶店、オーナーは勿論、あの人。
あの役者さん、大好きなので出てもらいました。
次回でゴーデスの使者と対決予定、その次でゴーデス編を終わらせる予定です。
時間かからないように頑張ります。
それでは。
どっちの作品が好き?
-
怪奇大作戦
-
ウルトラQシリーズ