やはり俺がウルトラセブンなのはまちがっている。   作:断空我

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第二話、色々な反響があって、驚きです。

今回、ウルトラ警備隊が絡んできます。

本来ならカタカナで表記すべきかなと悩みましたが、ここでは漢字表記でいきます。

漢字は当てはまるものを選んでいます。実際の設定では異なる可能性もありますが温かい目で見守ってください。

ちなみに第二期ウルトラ警備隊は六人編成なのであしからず。


第二話:怪獣、拾いました!

 

 今でも鮮明にあの日のことを俺は思い出せる。

 

 入学式当日、自転車通学をしていた俺は飼い主から離れた犬を助けようと車道に飛び出したところで運悪くリムジンと激突。

 

 その後、急に現れたワームホールに吸い込まれて俺達は別宇宙に飛ばされた。

 

 宇宙空間に放り出された俺はゆっくりと自分が死んでいくことを嫌でも痛感させられる。

 

 まさか車にはねられた後に宇宙で死ぬことになるなんて誰が想像できるだろうか?

 

 徐々に体が凍り付いていく、命が失われていく感覚。

 

 本当に死ぬと思った時、俺は嫌だと叫んだ。

 

 死にたくない。

 

 まだ、生きたい!生きたいんだ!

 

 生きていたいんだ!そんな俺の叫びに赤い光が接近してきた。

 

 その日、俺は運命というものと出会ったのだろう。

 

 

 M78星雲のお人好しの宇宙人と出会った瞬間でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙、そこには人類の知らない様々な生物が存在している。

 

 その日、宇宙ステーションV3は群れを成して渡っている大量の渡り鳥怪獣を観測した。

 

 当然のことながらその情報は地球防衛軍極東基地内にあるウルトラ警備隊司令室にも伝えられている。

 

 ウルトラ警備隊司令室には第一期隊員から隊長へ昇格した古橋茂(フルハシ・シゲル)をはじめとした五人の隊員が待機していた。

 

「渡り鳥怪獣?」

 

 ウルトラ警備隊の隊長、古橋は報告してきた観測員へ尋ねる。

 

「えぇ、十年に一度、群れを成して宇宙を渡っている怪獣です。大人しく、攻撃性のない怪獣ということが過去の観測結果でわかっています」

 

「つまり、危険性はないという事ですね?」

 

「はい」

 

 観測員は頷く。

 

「その渡り鳥怪獣っていうのが地球へ来る可能性はないんですか?」

 

 東郷隊員の疑問に観測員は首を振る。

 

「渡り鳥怪獣は地球よりも温かい場所に渡る怪獣なので、地球へ来ることはないでしょう。問題があるとすれば、その渡り鳥怪獣の天敵が現れないかという事です」

 

「天敵?」

 

 梶隊員がオウムのように繰り返す。

 

「スペース・ジョーズと呼ばれている凶暴な肉食怪獣です」

 

「古橋隊長!ステーションV3から緊急連絡です!」

 

 通信隊員の報告に古橋は通信機を受け取る。

 

「古橋だ!なにぃ?わかった、すぐに向かう」

 

 通信機を置いて古橋は振り返る。

 

 隊員達は整列していた。

 

「ステーションV3から緊急報告、渡り鳥怪獣の群れを一匹の怪獣が襲撃している。その群れが地球へ向かう可能性がある。俺達はホーク2号で迎撃準備の為に出撃する!」

 

「了解!」

 

 隊員達はすぐに出撃準備に入る。

 

 極東基地からウルトラホーク2号に搭乗した古橋隊長と梶隊員が出動。

 

 司令室では東郷隊員、リサ隊員、ユキ隊員、渋川隊員が何かあればすぐにウルトラホーク1号で出撃できるように待機。

 

 ウルトラホーク2号で宇宙空間へ出た古橋隊長と梶隊員がみたのは沢山の渡り鳥怪獣。

 

 ある方向へ進んでいく姿はまさに渡り鳥を連想させる。

 

 そんな彼らを一匹の怪獣が襲撃していた。

 

 怪獣は次々と渡り鳥怪獣を食らう。

 

 一匹、また一匹と食らっていく姿はサメのようなもの。

 

「酷い、隊長!迎撃の許可を」

 

「許可はできない」

 

「どうしてですか!?」

 

 敵意のないものが一方的に蹂躙される姿に梶は攻撃を提案するが古橋は許可しない。

 

「バカ!俺達の目的を忘れるな!地球防衛以外の目的であの怪獣を攻撃して万が一、地球へ飛来させてみろ!大災害につながる可能性がある」

 

「ですけど!!」

 

 梶は悔しそうに目の前で食い殺されていく渡り鳥怪獣をみているしかなかった。

 

 その時、一匹に渡り鳥怪獣が天敵相手に突撃した。

 

 不意打ちを受けた怪獣は驚きながら渡り鳥怪獣へ襲い掛かる。

 

 攻撃を受けた渡り鳥怪獣の一体が地球へ向けて落ちていく。

 

「あぁ!」

 

「梶、攻撃準備だ!」

 

 地球へ落ちていく渡り鳥怪獣を追いかけようとするスペース・ジョーズにウルトラホーク2号が攻撃を開始した。

 

 凶悪な怪獣を地球へ向かわせてはならない。

 

 地球防衛を理由にウルトラ警備隊は行動を起こす。

 

 機首のレーザー砲で怪獣へ攻撃する。

 

 怪獣は攻撃を受けて苦しそうな声を上げながら離れていく。

 

 ウルトラホーク2号はスペース・ジョーズを追跡する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地球。

 

 

 

「何でピクニックなんだよ」

 

「いいじゃん!三人で仲良くお出かけだよ!」

 

 三連休。

 

 学生ならのんびりとした休日を送るだろう。

 

 比企谷八幡なら、そうする。

 

 そのはずだったのだが、由比ヶ浜の希望によって近くの山でピクニックをすることになった。

 

「怠け谷君は諦めなさい。あぁなった由比ヶ浜さんは止まらないわ」

 

「ペガは楽しみだよ!」

 

 ひょっこりと八幡の影から現れるペガ。

 

 影から姿を見せながら嬉しそうにしていた。

 

「ペガちゃんも大好きなおかず!ママと一緒に作ったからね!」

 

「え、あぁ、はい」

 

 由比ヶ浜の料理と聞いてペガは曖昧に答えながらダークゾーンの中に戻る。

 

 随分前に由比ヶ浜のマズイ料理を食べてしまったから苦手意識を持っているのだろう。

 

「あぁ、酷い!今回はちゃんとママ監修なんだから!ちゃんとゆきのんにも見てもらっているし」

 

「それなら安心……なのか?雪ノ下」

 

「大丈夫だと思いたいわ」

 

 ぽつりと漏らした言葉に八幡は肩をすくめて、ダークゾーンにいるはずのペガがブルブルと震えた、様な気がした。

 

 周囲の山の景色が見渡せる位置でレジャーシートを広げて弁当箱を由比ヶ浜が開ける。

 

「「「おぉ~!」」」

 

 中身を除いた面々が驚きの声を上げる。

 

 少し形の崩れたおにぎり、少し焦げ目が入っている卵焼きやから揚げ。

 

「見た目は一応、大丈夫だな」

 

「ヒッキー!ひどい!」

 

「当然の意見だ。バンデラス星系で炭を食わされた事、わすれちゃいねぇからな?」

 

「あれは酷かったねぇ」

 

 八幡とペガは遠い目をする。

 

 由比ヶ浜は頬を膨らませながら箸で卵焼きを突き刺して八幡へ差し出す。

 

「ほら!食べてみて!」

 

「……」

 

「八幡、ファイト~」

 

 ペガは助ける気がないことはわかった。

 

 八幡は意を決して卵焼きを食べる。

 

 もぐもぐと数回、咀嚼をして飲み込む。

 

「……うまい」

 

「でしょう!」

 

 えっへんと胸を張る由比ヶ浜。

 

 メロンほどの大きさの果実も揺れていたが八幡は信じられないという表情で気づかない。

 

「じゃあ、いただきまーす」

 

 箸を伸ばしてペガが卵焼きを掴むとそのままダークゾーンの中に飛び込む。

 

「いつも思うけれど、普通に食べればいいじゃない」

 

「えぇ~、恥ずかしいよう」

 

「よくわからないわ」

 

 恥ずかしがるペガ。

 

 由比ヶ浜と雪ノ下は不思議そうにする。

 

「その星それぞれの文化があるからな。しつこく言ってやるなよ」

 

「わかっているわ」

 

 もぐもぐとおにぎりを手に取って食べる雪ノ下。

 

 しばらく談笑しながら昼食を味わっていた時だ。

 

「あれ?飛行機?」

 

 由比ヶ浜が青空の中を飛行する飛行機を発見する。

 

 八幡は目を凝らす。

 

「あれ、ウルトラホークだな」

 

「何か事件かしら?」

 

 雪ノ下も空を見ていた時。

 

「何か落ちてくるよ!」

 

 ペガが落下してくる赤い火の玉のようなものに気付く。

 

「伏せて!」

 

 雪ノ下が叫んで全員がその場に伏せる。

 

 落下、衝撃が広がった。

 

 飛ばされないように、そして守るように八幡が二人へ覆いかぶさる。

 

 しばらくして衝撃が収まって三人は顔を上げた。

 

「びっくりしたなぁ」

 

「何だったのかしら?」

 

「隕石、とかではないみたいだ……この周辺に落ちたのか?」

 

 二人で話している時、移動していた由比ヶ浜とペガは地面にめり込んでいる巨大な卵らしきものを発見する。

 

「大きな、卵ぉ」

 

「危ないよぉ、結衣ちゃん」

 

 少し離れた場所だったが由比ヶ浜は小さなクレーターを作っている卵へゆっくりと近づいていく。

 

 ペガが止めることも聞かずに由比ヶ浜は卵に触れる。

 

 直後、卵に亀裂が入った。

 

「結衣ちゃん!」

 

 慌ててペガが卵から引き離す。

 

 少し遅れて卵から黄色い嘴、そして愛くるしい顔が姿を見せる。

 

「わぁ、可愛い!」

 

「でも!大きいよ!」

 

 由比ヶ浜は気にせずに卵から産まれた雛へ触れる。

 

 彼女に撫でられると嬉しそうに目を細めた。

 

「由比ヶ浜さん!」

 

「あ、雪乃ちゃん!八幡!結衣ちゃんが!」

 

「ペガ、落ち着け、こいつは危険な生き物じゃない」

 

 慌てるペガをやんわりと八幡はなだめながら由比ヶ浜に甘えている怪獣を見る。

 

「間違いない。コイツは渡り鳥怪獣だ」

 

「渡り鳥怪獣?」

 

「十年に一度、温かい惑星を目指す宇宙怪獣だ。肉食というわけでも攻撃的というわけでもない。温かい場所を目指す姿から宇宙の時の流れを教える怪獣ともいわれている」

 

 八幡は頭に流れてくる知識を伝えると雪ノ下はゆっくりと渡り鳥怪獣へ触れる。

 

 他の人間に触れられても嫌がらない、むしろ嬉しそうにちろちろと雪ノ下の手を舐めた。

 

 にこりと雪ノ下は微笑む。

 

「ねぇ、この子に名前を付けてあげようよ!」

 

「由比ヶ浜さん、まさか、飼うつもり?大きすぎるわ」

 

「でも、赤ちゃんじゃん!放っておけないよ!それに、私に何か懐いているし」

 

「あー、そのことだがな、由比ヶ浜」

 

 

 

 

「キミ達!そこから離れるんだ!」

 

 いつの間にか茂みをかき分けてグレーの隊員服に白と赤のメットを装着した人たちが独特な形をした銃を向ける。

 

「あれは……」

 

「ウルトラ警備隊ね」

 

 ひそひそと八幡と雪ノ下が会話をする。

 

 ペガは八幡の影に避難していたおかげで彼らにその姿を捉えられることはなかった。

 

「待って!」

 

 ウルトラガンを構えるウルトラ警備隊のメンバーを前に由比ヶ浜が手を広げた。

 

「キミ!危ないぞ!」

 

「この子は何も悪いことしていないです!」

 

 警戒するウルトラ警備隊員へ由比ヶ浜は渡り鳥怪獣が脅威ではないと訴える。

 

「みて、怯えている」

 

 リサ隊員は由比ヶ浜に隠れようとするように怯えている渡り鳥怪獣の姿に気付いた。

 

 怯える怪獣へ武器を向けていることに罪悪感を覚えたのか渋川や東郷はウルトラガンをホルダーへ仕舞いながら近付いていく。

 

「とにかく、この怪獣は我々が保護する。キミ達も事情聴取のため同行してもらえるか?」

 

「はい!」

 

「まぁ、仕方ないな」

 

「わかりました」

 

 その後、八幡達は地球防衛軍の管理している施設へ同行して事情聴取が行われた。不用意に怪獣へ近づいたことの厳重注意と他言無用の確約、最後に連絡先の記入をすることでようやく三人は解放された。

 

 

 

「疲れたぁ」

 

「地球を防衛している組織ということもあるけれど、通路もピリピリしていて辛いものね」

 

「つっかれたよぉぉぉぉ」

 

 くたくたになりながら三人は地球防衛軍の施設を後にする。

 

 帰りのバスに揺れながらふと、由比ヶ浜は疑問を漏らした。

 

「あの怪獣、どうなるのかな?」

 

「少なくともいきなり殺されるという事はないはずだ。どこかで保護して生活することになるんじゃねぇかな、まぁ、短い期間になると思うが」

 

「短い期間って?」

 

「渡り鳥怪獣は幼くてもすぐに成長して飛行できるようになる。まぁ、二~三週間もすれば、宇宙空間へはばたくんじゃないか?」

 

「暖かい惑星へ旅立つということね」

 

「あぁ」

 

「じゃあ、大丈夫だね!」

 

 笑顔で答える由比ヶ浜。

 

 その表情に八幡と雪ノ下は笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二日後、

 

 いつものように授業をダラダラと受けていた八幡。

 

 放課後になって奉仕部の部室へ向かおうとした時だ。

 

「あん?」

 

 頭上の校内放送で由比ヶ浜が呼び出しを受けた。

 

 空耳かと思ったが二回も放送されたので間違いではない。

 

「結衣、アンタ、何かしたの?」

 

「うーん、心当たりないなぁ」

 

 クラスメイトのトップカーストである三浦の質問に由比ヶ浜は本当に覚えがないのだろう、不思議そうに首をかしげていた。

 

「ちょっと、行ってくるね!」

 

 ちらりと八幡の方を見ながら由比ヶ浜は教室を出ていく。

 

 まぁ、後で部室に来るだろう。

 

 そう考えた八幡は廊下へ出る。

 

 奉仕部の部室へ到着すると既に雪ノ下が読書をしていた。

 

「あら、一人かしら」

 

「由比ヶ浜は職員室に呼び出しだ、理由は本人もわかっていないらしい」

 

「そのようね、校内放送は聞こえていたわ」

 

「何だろうな」

 

「貴方もわからないなら、私も知らないわ」

 

 話し合いながら八幡は一つのスペースを作って用意したMAXコーヒーを飲む。

 

「偶には違うものを飲んだらどうかしら?」

 

「それをいうならそっちも紅茶以外を飲んでみたらどうだ」

 

「あら、反論するなんて良い度胸ね」

 

 笑みを浮かべているが目は笑っていない。

 

 こわっ、と心の中で思いながら鞄の中にあった新聞紙を広げようとした時。

 

 ガララ!と部室のドアが開いた。

 

「ヒッキー!!」

 

 部室に飛び込んできたのは由比ヶ浜だった。

 

 何やら慌てた様子で室内に駆け込んでくる。

 

「なんだ?」

 

 慌ただしい姿はいつものことなので、八幡は気にしていなかった。

 

 しかし、次の発言に八幡はおろか雪ノ下も言葉を失う。

 

 

 

「私、ママになっちゃった!」

 

 

 

「……ゴフッ」

 

「ハイ?」

 

 珍しく雪ノ下が紅茶を吹き出し、八幡は呆然と尋ね返すしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウルトラ警備隊が保護した渡り鳥怪獣について参謀会議の結果、渡り鳥怪獣は成鳥になるまで保護することが決定した。

 

 地球に害を与えないという事がわかっていることから電磁バリアを怪獣の半径ニ十キロ周辺を囲む形で展開されることとなる。

 

 そこで新たな問題が発生した。

 

 渡り鳥怪獣がグズりはじめたのだ。

 

 突然のことにウルトラ警備隊の面々は戸惑いながらも渡り鳥怪獣をあやそうとしたが効果がない。

 

 そこで宇宙怪獣などの研究について第一人者と言われる城野重蔵博士の話によって渡り鳥怪獣は生まれた時に初めて見たものに懐くという地球のひな鳥と似たような習性があるという。その話を聞いて、東郷隊員が由比ヶ浜に懐いていたことを思い出した。

 

東郷隊員とリサ隊員の二人は総武高校へ私服姿でやってきて由比ヶ浜に渡り鳥怪獣の面倒をみてほしいと協力要請をしたのである。

 

 由比ヶ浜は驚きながらも引き受けた。

 

 一部始終を聞いて八幡と雪ノ下はふぅと息を吐く。

 

「寿命が縮まった気分がしたわ」

 

「そこまではいかないが、驚いたのは事実だ」

 

 身振り手振りで話す由比ヶ浜を横に八幡と雪ノ下は肩をすくめる。

 

「それで、引き受けるのは良いが大丈夫なのか?」

 

「うん、ウルトラ警備隊の人も傍にいてくれるみたいだし……ねぇ、ヒッキー」

 

「なんだ?」

 

「私に、出来るかな?」

 

「やる前から不安になるのは当然のことだが、それを他人である俺へ尋ねるのは間違いだろ」

 

 不安そうに揺れる由比ヶ浜へ八幡は厳しく接する。

 

「お前は渡り鳥怪獣が巣立つまで面倒を見るという依頼を引き受けたんだからな、奉仕部の部員ならば最後まで責任をもってやり遂げるべきだ」

 

「そこの冷酷谷君に同意するわけじゃないけれど、由比ヶ浜さん、やる前に不安になるのは仕方のないことだわ。でも、不安で踏み出す勇気を躊躇うのはよくないと思う」

 

「ゆきのん……」

 

「何かあれば私達も協力するわ」

 

 にこりとほほ笑む雪ノ下の言葉に由比ヶ浜は不安そうな表情から破顔して抱き着いた。

 

 驚きながらも雪ノ下は嬉しそうに由比ヶ浜を抱きしめ返す。

 

 そんな彼女達のやり取りを見ながら八幡はMAXコーヒーを一口、含んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピィちゃん!」

 

 渡り鳥怪獣の保護エリア。

 

 総武高校のジャージ姿で由比ヶ浜は元気に手を振る。

 

 由比ヶ浜の姿を見つけた渡り鳥怪獣は嬉しそうに両手で振り返した。

 

「うわぁ、本当に由比ヶ浜ちゃんのこと親と認識しているんだな」

 

 ポインターから降りた渋川隊員は驚きながら由比ヶ浜と渡り鳥怪獣のやりとりをみて感想を漏らす。

 

「しかし、怪獣と人間が親子関係というのは変わっているな」

 

「いやいや、親子に怪獣も人間も関係ないって、東郷君~」

 

「渋川さん、俺より年上なのはわかるんですけど、君付けはちょっと」

 

「まぁまぁ、ここは年長者として可愛い女の子と怪獣の子供のやりとりを眺めるとしましょう」

 

 渋川の言葉に東郷隊員は苦笑するしかなかった。

 

 由比ヶ浜は餌を渡り鳥怪獣へ与える。

 

 渡り鳥怪獣ことピィちゃんは嬉しそうに餌を食べていた。

 

 ピィちゃんがおいしそうに餌を食べている姿を由比ヶ浜は優しく眺めている。

 

 餌を食べ終えたピィちゃんはぴょんぴょんと跳ねた。

 

 怪獣が跳ねることで小さな地震のような揺れが起こって由比ヶ浜は倒れそうになりながら笑顔を浮かべる。

 

 尚、渋川と東郷の二人はピィちゃんの起こした揺れに倒れないよう必死の姿でポインターにしがみつく。

 

 数時間ほどして、ピィちゃんはすやすやと気持ちよさそうに眠りについた。

 

 由比ヶ浜はピィちゃんの嘴をやさしく撫でてから渋川と東郷の方へ向かう。

 

「いつも悪いね!由比ヶ浜ちゃん!」

 

「いえ!こんな私でもできることがありますから」

 

 渋川の感謝の言葉に由比ヶ浜は苦笑する。

 

「でも、毎日、毎日、こんな山奥まですまないな」

 

 東郷は毎日、由比ヶ浜に山の保護エリアまで来てもらっていることに申し訳ない気持ちを抱いていた。

 

「まぁ、それも来週までの期限だな」

 

「え?」

 

 由比ヶ浜は東郷へ尋ねる。

 

「どういう意味です?」

 

「あぁ、今の成長速度で行くと来週に成鳥となって宇宙へ飛び立てるだろうということらしい」

 

「そう、なんですか」

 

 ポインターに乗り込む間際、由比ヶ浜は気持ちよさそうに寝ているピィちゃんをみた。

 

 別れの時は近い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、古橋隊長と梶隊員は宇宙空間で大量の渡り鳥怪獣を捕食したスペース・ジョーズ ザキラの行方を追っていた。

 

 多くの渡り鳥怪獣を捕食した存在が地球へ訪れるかもしれないという可能性を考慮したウルトラ警備隊は宇宙パトロールを強化、スペース・ジョーズ ザキラが地球へ来ないか警戒を強め、宇宙の巡回パトロールを行っていた。

 

「かなりの数の肉片らしきものが散らばっていますね」

 

「奴さん、かなりの数をくらったとみえる。こりゃ、餌を求めて地球へやってくる可能性も捨てきれないな」

 

 ウルトラホーク2号から外を見る梶。

 

 古橋はスペース・ジョーズザキラが強大な存在になっていることを予想する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと結衣!あーしの話を聞いているの!?」

 

 二年F組の教室内が一瞬だけ静かになった。

 

 突然のことに多くの生徒の視線を集めた。

 

 しかし、トップカーストの三浦優美子が周囲へ睨みを利かせるとすぐに視線を逸らす。

 

 三浦はぼーっとしていた由比ヶ浜に尋ねる。

 

「アンタ、最近、ぼーっとしていることが多すぎるわよ!どうしたのよ!」

 

「あー、ごめん、色々と考え事をしていて」

 

 小さく首を振りながら大丈夫という由比ヶ浜だが、離れたところにいる八幡からみても明らかに悩んでいることは明白だった。

 

「もう!勝手にしろし!」

 

 怒った三浦が教室を出ていく。

 

「結衣、本当に大丈夫か?何かあったら俺に相談してくれ」

 

 様子を伺っていた葉山隼人が笑顔で由比ヶ浜に言うが「大丈夫」と答えて、教室を出ていく。

 

「……巣立ちすることを悲しむ母親みたいなことになってんじゃねぇか」

 

 誰に聞かれることなく八幡は呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奉仕部の部室。

 

 由比ヶ浜の姿はない。

 

 二人の本のページをめくる音だけが室内に響いた。

 

「由比ヶ浜さん、様子はどうかしら?」

 

「渡り鳥怪獣の巣立ちが来てほしいけれど、別れたくない、母親の気持ち丸出しだった。三浦が教室で怒鳴るほどだ」

 

「深刻ね」

 

「こればっかりは由比ヶ浜が決着をつけないとどうしょうもない問題だ」

 

「……私達にできることは何もない、のかしら?」

 

 雪ノ下の言葉に八幡は答えない。

 

「雪ノ下……」

 

「何かしら?」

 

「次の休み、暇か」

 

「デートのお誘いかしら?」

 

「そんなわけないだろ、ペガも連れてピクニックだ」

 

「貴方がそんなことを言うなんて驚きね」

 

「お前も心配だろ?由比ヶ浜のこと」

 

「当たり前よ。彼女は大事な存在なのだから」

 

 真剣に言う雪ノ下。

 

 その言葉にウソ偽りはない。

 

 本当に由比ヶ浜を大事に思っていることがわかる。

 

 こういう関係を八幡が望む本物だろうか?

 

 そんなことを思いながら八幡は机に置かれているMAXコーヒーを飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の休みの日、八幡はペガ、雪ノ下、由比ヶ浜と共に渡り鳥怪獣の保護エリアである場所までピクニックへ来ていた。

 

「ピィちゃん」

 

 少し離れたところで怪獣保護のための電磁バリアシステムが見える位置の近くでシートを広げて弁当を準備する。

 

「うわぁ、これ、おいしいね!」

 

「当然よ、私が作ったのだから」

 

 ペガは雪ノ下が作った弁当をおいしそうに食べていた。

 

 雪ノ下は小さく微笑みながら由比ヶ浜へおにぎりを差し出す。

 

「由比ヶ浜さんもどうぞ」

 

「……ありがとう、ゆきのん」

 

 小さく頷きながら由比ヶ浜はおにぎりを食べる。

 

「おいしい……おいしいよ、ゆきのん」

 

「ありがとう、そういってもらえると嬉しいわ」

 

 由比ヶ浜は食べかけのおにぎりをみて、渡り鳥怪獣のいる方向を見る。

 

「ピィちゃん、もうすぐ巣立ちなんだ」

 

「そう……」

 

「巣立ちっていうことはあれなんだよね、会えなくなる……ってことだよね」

 

 ぽつりと漏らす言葉に八幡は頷く。

 

「周りは巣立ちが大事だっていうけれど、別れたくないってあたしは思うんだ。これって、あたしの自分勝手な発言だよね」

 

「そうか?」

 

 八幡は疑問を漏らす。

 

「大事な人と別れたくないという思いは誰だってあるはずだ。由比ヶ浜の場合、その相手が渡り鳥怪獣だったっていうだけだろ?」

 

「そうかな……やっぱりさぁ、別れたくないや」

 

 自らの気持ちを吐き出す由比ヶ浜はやがてぽろぽろと涙をこぼす。

 

 雪ノ下は優しく、大事そうに由比ヶ浜の頭を撫でる。

 

 ペガも心配そうに由比ヶ浜を見つめた。

 

 八幡は彼女が落ち着くまで様子をみることにする。

 

 しかし、予期せぬ事態が宇宙で起こっていたことを彼らは知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙ステーションV3が地球へ向かっているスペース・ジョーズ ザキラの姿をレーダーで捉える。

 

 連絡を受けた地球防衛軍極東基地からウルトラホーク2号が緊急発進。

 

 宇宙空間でスペース・ジョーズ ザキラを迎えうつ。

 

 ウルトラホーク2号のコクピット内で古橋隊長と梶隊員の二人は膨大なオーラを放つ怪獣の姿をみつける。

 

「奴め、かなりの力を蓄えているようだな」

 

 ウルトラホークの機内越しからでもわかるほど、ザキラは力を持っている。

 

「梶、迎撃準備!奴を決して地球へ向かわせるな!」

 

「了解!」

 

 ウルトラホーク2号からレーザー砲がザキラに向かって放たれた。

 

 ザキラは攻撃を受けても進行速度を緩めない、それどころかよりスピードを増して地球へ向かおうとする。

 

 進路を変えようと阻止するウルトラホーク2号のレーザー砲による攻撃。

 

 ザキラは体にレーザー砲を受けながらも突き進む。

 

 レーザー砲を放つウルトラホーク2号へザキラの目が怪しく輝いた。

 

 パノスレーザーがザキラの目から撃たれた。

 

 ザキラの攻撃はウルトラホーク2号へ直撃。

 

「くそっ、エンジンをやられました!怪獣を追跡できません!」

 

「くしょう!なんて奴だ!」

 

 警報を鳴らすウルトラホーク2号の中で古橋は悪態をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピィちゃんとちゃんと向き合うよ」

 

 由比ヶ浜の言葉に八幡と雪ノ下は頷いて怪獣保護エリアへ足を向ける。

 

 事前に由比ヶ浜がウルトラ警備隊へ連絡をしていたことでポインターに乗って東郷と渋川が待っていた。

 

「やぁ、由比ヶ浜ちゃん!」

 

「渋川さん、東郷さん!すいません、無理なお願いを聞いてくれて」

 

「いやいや、こちらこそ、渡り鳥怪獣の面倒を見てもらっているんだ。これくらいは大丈夫さ!」

 

 サムズアップする渋川、東郷も同じく微笑んでいる。

 

「あ、二人に紹介しますね?私の友達!ゆきのんとヒッキーです!」

 

「お前、ちゃんと自己紹介しろよな……比企谷八幡です」

 

「雪ノ下雪乃です。私達もピィちゃんと会って構いませんか?」

 

「勿論!ただし、口外は駄目だぜ?」

 

 にやりと笑みを浮かべて渋川が許可を出したことで三人は渡り鳥怪獣のところへ向かう。

 

 渡り鳥怪獣、ピィちゃんは由比ヶ浜をみつけると嬉しそうな声で鳴いて喜びの感情を表す。そして、八幡や雪ノ下をみると興味深そうにのぞき込んでくる。

 

「やっぱり、近くで見ると大きいわね」

 

「でも、可愛いでしょ?」

 

 嘴を伸ばしてくるピィちゃんを由比ヶ浜は優しく撫でる。

 

「もうすぐ巣立ちというのは本当みたいだな」

 

 ピィちゃんの成長具合を間近でみた八幡はもうまもなく宇宙へ飛び出せるだろうという事を理解した。

 

「ピィちゃん、もうすぐ巣立ちだね……別れるのは正直、嫌なんだ」

 

 ピィちゃんも同じことを思っているのか悲しそうな声をだしながらちろりと由比ヶ浜の頬を舐める。

 

「でも、私の我儘でピィちゃんをこの場所に閉じ込めておくのはよくないよね……だから、飛び立つときは泣かずに見送るからね!だから、今は……許して」

 

 涙を零しながら由比ヶ浜はピィちゃんへ抱き着く。

 

 彼女が悲しんでいることを理解しているのだろう、ピィちゃんも涙を零す。

 

 そんな姿を八幡と雪ノ下達は見守っていた。

 

 直後、八幡は真剣な表情で空を見る。

 

 ぞっとするような悪意のようなエネルギーを八幡は感じ取ったのだ。

 

 上空を八幡が睨んでいた直後、空から一体の怪獣が降り立つ。

 

「キミ達、こっちに避難するんだ!」

 

 怪獣が現れたことで東郷がウルトラガンを構えながら三人のところへ駆け寄って来る。

 

 八幡達もポインターの方へ向かう。

 

 降り立った怪獣はスペース・ジョーズ ザキラだ。

 

「こちら東郷!保護エリアに怪獣が出現!」

 

 ビデオシーバーを開いて東郷が極東基地へ応援要請をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「古橋隊長と連絡がとれない」

 

「じゃあ、私達が出撃するしかない」

 

「そうね!行きましょう!」

 

 極東基地で待機していたリサとユキの二人はウルトラホーク1号で出撃準備に入った。

 

 カタパルトに到着した二人はウルトラホーク1号に乗り込む。

 

『フォースゲートオープン、フォースゲートオープン』

 

 誘導アナウンスと共に管制塔の窓に特殊合金の金網が下りていくのと同調して、カタパルトの漆黒の天井が細く割れて青い空が見えてくる。

 

 巨大なレールに載って、二子山の斜面がスライドされてウルトラホーク1号が地下からその姿を現す。

 

『オーケー!レッツゴー!』

 

 管制塔からゴーサインが出たことを確認してウルトラホーク1号のエンジンが点火して大空へ飛び立つ。

 

 銀色の戦闘機が空を飛行する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キミ達はここにいるんだ!いいね!」

 

 念を押して渋川はホルダーからウルトラガンを抜いて走り出す。

 

 東郷はポインターのバリアシステムを起動して、八幡達を守るようにしながら同じようにウルトラガンを片手に追いかける。

 

 渋川は現れたザキラにウルトラガンを撃つ。

 

 殺傷レベルに設定されたウルトラガンのレーザー光線がザキラに直撃する。

 

 光線を受けたザキラだが、体皮を少し溶かす程度だった。

 

 ザキラはダメージを気にせずに渡り鳥怪獣へ近づいていく。

 

 ボタボタとザキラの口の端から涎が零れる。

 

 目の前の獲物を捕食しようということだろう。

 

「ピィちゃん!」

 

 ポインターの車内で由比ヶ浜が悲鳴を上げる。

 

 渋川や東郷がウルトラガンで攻撃しているが効果がない。

 

 ザキラはピィちゃんを守っている電磁バリアへ手を伸ばす。

 

 バチバチと電磁バリアがザキラの手にダメージを与えた。

 

 目の前に餌があるのに邪魔されたことでザキラは苛立ちを隠さずに電磁バリアを展開している塔を破壊する。

 

 渡り鳥怪獣を捕食して通常よりもパワーが増しているザキラの一撃によって電磁バリアがなくなり、目の前の餌を阻むものはなくなった。

 

 舌なめずりしながらピィちゃんへ近づこうとする。

 

 天敵が現れたことを本能的に理解したピィちゃんは悲鳴を上げて逃げようとした。

 

 しかし、恐怖によって体がすくんでしまい、地面へ倒れてしまう。

 

「ピィちゃんが!」

 

 涎を垂らしながら近付くザキラをみて、八幡はポインターのバリアをオフにした。

 

「二人はここにいろ、ペガ、後は頼む」

 

「ヒッキー!?」

 

「比企谷君!」

 

 外へ出た比企谷は胸ポケットからウルトラアイを取り出す。

 

 あの怪獣は渡り鳥怪獣を捕食してかなりの力を有している。

 

 そんな相手に自分が勝てるのだろうか?

 

 不安を抱きながらも八幡はウルトラアイを見つめる。

 

 八幡は泣きそうにピィちゃんをみている由比ヶ浜をみた。

 

 いや、必ず、勝つのだ。

 

「デュワ!」

 

 意識を集中させながらウルトラアイを装着する。

 

 眩い閃光とエネルギーが体内を駆け巡って、比企谷八幡の体はM78星雲の宇宙人、ウルトラセブンへその姿を変える。

 

一瞬で巨大な姿に変身したウルトラセブンはピィを捕食しようとしたスペース・ジョーズザキラの背にキックを入れた。

 

 ウルトラセブンのキックを受けたというのにザキラは振り返り、タックルしてくる。

 

 攻撃を防ごうとしたウルトラセブンだが、ザキラの力は想像以上に強く、吹き飛ばされてしまう。

 

 攻撃を受けたウルトラセブンが起き上がろうとした時、ザキラの瞳からパノスレーザーが撃たれた。

 

 レーザーがセブンの体に直撃、赤い体をバチバチと焼くような痛みに苦悶の声を上げながら耐える。

 

 ザキラは膝をついたセブンからピィへ視線を向けた。

 

 ウルトラセブンよりも渡り鳥怪獣の捕食を考えているのだろう。

 

 膝をつきながらもウルトラセブンが額のビームランプからエメリウム光線を放つ。

 

 光線を受けたザキラは怒りの声を上げながら振り返り、猛進してウルトラセブンへ突撃してきた。

 

 攻撃を防げなかったウルトラセブンは地面を転がる。

 

 ザキラの背にミサイルが直撃した。

 

 上空にウルトラホーク1号が飛行する。

 

「ブレイカーナックルミサイル発射!」

 

 ユキがウルトラホーク1号の操縦桿の横にあるボタンを押して攻撃を仕掛ける。

 

 しかし、ザキラはブレイカーナックルを受けて平然としていた。

 

 それどころか攻撃を受けて唸り声を上げながらウルトラホーク1号へ尻尾を振るう。

 

 回避しようとしたウルトラホーク1号だったが、後部に尾が直撃して黒煙をあげながら墜落していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「苦戦しているよぉ!」

 

 ポインターからウルトラセブンとザキラの戦いを見ていたペガが困惑した声を上げる。

 

 大量の渡り鳥怪獣を捕食したザキラは通常よりもパワーが上昇しており、ウルトラセブンといえど苦戦してしまう存在になっていた。

 

「ヒッキー……」

 

 ふらふらと起き上がりながらもウルトラセブンはピィちゃんを守るために立ち上がる。

 

 ザキラの攻撃を受けながらもピィちゃんを守ろうとするウルトラセブン。

 

 勝てない相手だろうと挑もうとする姿に由比ヶ浜は覚悟を決めたように鞄から一つのアイテムを取り出す。

 

「結衣ちゃん!?」

 

「由比ヶ浜さん、それは……」

 

 雪ノ下は驚いた表情で彼女が取り出したアイテムをみる。

 

 最初は驚いていた雪ノ下だが、由比ヶ浜の真剣な表情に気付いて、静かに尋ねた。

 

「行くの?」

 

「うん、ヒッキーが命がけでピィちゃんを守ろうとしてくれているんだ。それなのにあたしが何もしないなんておかしいし、だって、あたし、ピィちゃんのお母さんだもん!」

 

「そう、なら、止めないわ」

 

「ありがとう、ごめんね、ゆきのん」

 

 ポインターから出た由比ヶ浜は手の中にあるアイテム『ジャイロ』を握り締める。

 

 ワームホールで飛ばされた先で由比ヶ浜が手に入れたアイテム。

 

 これを使うのは久しぶりである。

 

「ピィちゃん、今、行くからね!」

 

 泣いて怯えている渡り鳥怪獣の姿をみながら由比ヶ浜はジャイロの中心に怪獣が描かれたクリスタルをはめ込む。

 

 ジャイロの左右のハンドルを引っ張りながら空へ掲げる。

 

【グルジオキング】

 

 光と共に由比ヶ浜の体が包まれてその体は瞬時に巨大な怪獣、爆撃骨獣 グルジオキングにその姿を変えた。

 

 出現したグルジオキングはザキラへ頭部の角で突進する。

 

『ヒッキー!』

 

 グルジオキングからテレパシーでウルトラセブンへ語り掛ける。

 

『お前……どうして』

 

『私だってピィちゃんを守りたいもん!』

 

『そうか……行くぞ!』

 

 ウルトラセブンとグルジオキングがザキラと戦闘を始める。

 

 ザキラの光線が放たれるもウルトラバリヤーで防ぐ。

 

『今だ!』

 

『うん!くらえぇ、えっとぉ、ギガキングキャノン!!』

 

 グルジオキングの背中の大砲、グルジオバレルから放たれた技がザキラの体を撃ちぬいた。

 

 ザキラは苦悶の声を上げながらパノスレーザーを放つ。

 

 狙いは怯えている渡り鳥怪獣、ピィちゃんだ。

 

『ピィちゃんはやらせない!』

 

 両手を広げてグルジオキングがレーザー攻撃をその身で受け止める。

 

 バチバチと背中が焼けるような痛みを感じながらもレーザーを受け続けた。

 

『ピィちゃんは、あたしが、守るから』

 

 必死にザキラのレーザー攻撃に耐えるグルジオキングこと由比ヶ浜の姿にピィは涙を零しながらも両腕の翼を広げる。

 

 地面を蹴りながら舞い上がったピィは急降下して光線を撃ち続けているザキラへ突進した。

 

 突進を受けたザキラはバランスを崩して光線が止まる。

 

 ザキラは怒りのあまりピィを殴り飛ばして、そのまま食い殺そうとした。

 

「デュワ!」

 

 ウルトラセブンが頭頂のアイスラッガーを投げる。

 

 光に包まれたアイスラッガーがザキラの体を真っ二つに切り裂く。

 

 左右に体が割れてザキラは地面に倒れた。

 

 こと切れたザキラ。

 

 ふらふらと起き上がったグルジオキングへピィちゃんが近づいていく。

 

 心配そうな声を上げるピィちゃんをグルジオキングが優しく撫でる。

 

『由比ヶ浜』

 

 ウルトラセブンがテレパシーでグルジオキングこと由比ヶ浜へ問いかけた。

 

『渡り鳥怪獣は成鳥になった……もう、宇宙空間へ飛び立てる』

 

『そっかぁ』

 

 グルジオキング内で由比ヶ浜は泣きそうになるのを堪えながら目の前で自分に甘えてくるピィちゃんの頭を撫でる。

 

『ヒッキー、お願いがあるんだけど』

 

『なんだ?』

 

『あたし、ピィちゃんを最後まで見守りたい』

 

『……わかった』

 

 頷いたウルトラセブン。

 

『ピィちゃん』

 

 グルジオキングはピィちゃんを優しく撫でる。

 

『これから大変なこともあるかもしれないけれど……頑張って生きて』

 

 巣立ち。

 

 その言葉が頭に浮かぶ。

 

 ピィちゃんは由比ヶ浜の気持ちが伝わったのか頷いて両手の翼を広げて青空に向かって飛んでいく。

 

 グルジオキングから由比ヶ浜の姿へ戻ると、差し出されたウルトラセブンの掌に乗る。

 

 ウルトラセブンは赤い球体にその姿を変えると渡り鳥怪獣ピィちゃんを追いかけて宇宙へ飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地球から何万光年も離れたある銀河系。

 

 そこには無数の渡り鳥怪獣が群れで飛んでいる。

 

 赤い球体の中で由比ヶ浜とウルトラセブンはその群れへ合流しようとするピィちゃんの姿を見つめていた。

 

 ピィちゃんは怯えることなくゆっくりと群れに合流する。

 

「ありがとう、ヒッキー」

 

「もう、いいのか?」

 

「うん……これ以上はあたしも心配してずっとついていっちゃいそうだもん」

 

「わかった」

 

 赤い球体は進路を地球へとる。

 

「元気でね、ピィちゃん」

 

 去り際に由比ヶ浜は微笑みながら群れと旅立つピィちゃんに告げた。

 

 

 

 

 

 




簡単な怪獣紹介

渡り鳥怪獣バル
出典はウルトラマン80
今回はピィちゃんという名前を由比ヶ浜からもらう。
大人しい怪獣で群れで温かい惑星を目指す怪獣。
今作では由比ヶ浜を親と認識したようにウルトラマン80においても、UGM隊員の矢的猛を親と認識してしまう。
ウルトラマン80においてはザキラから80を守ろうとして命を落としてしまうが、今作においてはウルトラセブンとグルジオキングの姿になった由比ヶ浜のおかげで無事に地球を巣立つ。


スペースジョーズ ザキラ
ウルトラマン80に登場する怪獣、上記の渡り鳥怪獣の天敵である。
基本的に渡り鳥怪獣を捕食する。今作においては餌を求めて地球へ飛来、保護されていた渡り鳥怪獣を狙い、ウルトラセブンと戦闘になる。
かなりの数の渡り鳥怪獣を捕食していたことで膨大な力を宿しており、セブンも苦戦を強いられるがグルジオキングに変身した由比ヶ浜の参戦によって状況は一転、さらに渡り鳥怪獣ピィちゃんからの攻撃を受けたところでウルトラセブンのアイスラッガーを受けて体が両断されるという最後を迎えた。


一応、次回も近いうちに投稿する予定です。

次の話、誰のメインがみたい?

  • 川崎沙希 キリエロイド登場予定
  • チェーンメール事件 メトロン星人登場予定
  • 戸塚彩加 ゴドレイ星人登場予定 
  • 小町 謎のダークマター編
  • ウルトラ警備隊 キリエロイド登場予定

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