やはり俺がウルトラセブンなのはまちがっている。   作:断空我

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精神的なダメージとか、色々ありまして、遅くなりました。

タイトルだけでネタバレしている感がありますけれど、彼が出てきます。

ちなみに、今回のメインはウルトラ警備隊の為、八幡達の出番はありません。




第二十四話:小さな英雄、再び

 その日、千葉のショッピングモールで騒動が起こった。

 

 買い物に来ていた人達は逃げ惑い、店員たちは店の隅っこで震えて縮こまる。

 

 通報を受けた警備員が人の波に逆らいながらおもちゃエリアへやってきた。

 

「あぁっ!?」

 

 やってきた警備員の一人が慌てて止まったので後続の人がぶつかりそうになる。

 

 おもちゃエリア、そこのボールをポンポンと興味深そうに蹴っている怪獣がいた。

 

 そう、怪獣である。

 

 休日の昼間、何の前触れもなく現れた怪獣は細い二本脚、赤い岩のような体皮膚、紫色の唇、細いつぶらな瞳。

 

 小さいけれど怪獣という存在に人々は恐怖する。

 

 大きなものならより恐怖の象徴としてわかりやすいだろう。だが、小さいものであれば自分達ならばなんとかできるのではないかと考えてしまう。

 

 もしかしたら、自分達で怪獣を倒せるのではという愚かな思考を持つ者もでてきてくるだろう。

 

 そうならなかったのは警備員が優秀だったおかげといえる。

 

「すぐに、ウルトラ警備隊へ通報だ!」

 

 この事態は自分達の手に余ると判断した警備員は野次馬を近づかせないようにしてすぐにウルトラ警備隊に怪獣が現れたという通報をした。

 

 通報を受けたウルトラ警備隊の梶隊員とユキ隊員、東郷隊員とリサ隊員の四人はポインターで現場へ急行する。

 

「怪獣は!」

 

 先陣を切った梶。

 

 警備員の誘導で人ごみをかき分けてやってきたウルトラ警備隊がみたものははしゃぎ疲れて寝ている怪獣の姿である。

 

「呑気に寝やがって」

 

 怪獣の姿にホルダーからウルトラガンを抜いて、その銃口を怪獣へ向ける。

 

「待て」

 

 ウルトラガンを上から抑える形でユキ隊員が止めた。

 

「何で止めるんだよ。相手は怪獣だぞ!?」

 

「怪獣だからといって無暗に撃っていいとは限らない。爆発してその細胞から複数の怪獣が生まれたという例もある」

 

「まずは分析と照合ってことです!」

 

「そういうことだ」

 

 リサと東郷にまで言われて渋々という形でウルトラガンをホルダーへ戻す梶。

 

 ユキは持ってきた端末で目の前の怪獣とのデータを照合した。

 

 しばらくして、ヒットしたデートを他のメンバーへみせる。

 

「どうやら敵意ある怪獣じゃない用だ」

 

「データ、成程、ピグモンかぁ」

 

「ピグモンなら大丈夫ね!」

 

「そうかぁ?怪獣だぞ」

 

 渋る梶。

 

 話し合っている間、人の気配に気づいてむくりと体を起こすピグモン。

 

 ピグモンはウルトラ警備隊の姿を見ると両手を動かして慌てた様子をアピールする。

 

「どうしたのかな?」

 

「慌てているな」

 

「そういえば、御殿山の科学センターに怪獣翻訳機があったはずだ」

 

 思い出した東郷の言葉の傍でリサはユキと梶は現れた怪獣について古橋へ報告をしていた。

 

『よし、科学センターの方は俺が連絡をしよう。その怪獣を連れて向かってくれ』

 

「了解」

 

 VCの通信を終えて、周りの人達へ叫ぶ。

 

「皆さん!この怪獣は危険な存在ではありません!我々に危害を与えませんので安心してください!」

 

 ウルトラ警備隊からの言葉で緊張した様子の野次馬達は安心した様子を見せる。

 

 東郷とリサに手を引かれる形で歩き出すピグモン。

 

 納得していない様子の梶の肩を叩きながらユキもその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピグモンをポインターに乗せる際に小さな騒動があったものの、彼らは御殿山の科学センターへやってきていた。

 

 科学センターは科学特捜隊と共に多くの怪獣や侵略者を撃退するために協力してきた日本の頭脳と言われる優秀な科学者たちが集まっている場所である。

 

 宇宙船や様々な物質などを開発、調査など、その分野は多岐にわたっている。過去に出現したピグモンと意思疎通を図ろうとした時に開発された翻訳機がセンターに保管されていたのだ。

 

 待っていたセンターのスタッフは古橋隊長から話が通っていたおかげですんなりとウルトラ警備隊とピグモンを施設内へ案内する。

 

 一室にピグモンを通すとセンターのスタッフが怪獣用のヘッドホンとマイクを用意した。

 

「さ、いくらでも喋ってくれ」

 

 センターのスタッフに言われてピグモンは「フガ!モガガ!アガー!」とマイクに向けて訴えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間にすれば、数分に満たないもので、喋り切ったと判断したスタッフによってヘッドホンが外される。

 

 外に出たピグモンをリサが出迎えた。

 

「ピグモン!お疲れ様!」

 

「解析に数十分を要しますので少しお待ちください」

 

「わかりました」

 

 スタッフからの報告を待つまでの間、四人とピグモンは待合室で時間を潰すことになる。

 

 用意された茶菓子を興味深そうにみるピグモン。

 

「袋、取ってあげるわ」

 

 リサが饅頭の包みをとってピグモンへ差し出す。

 

 嬉しそうに饅頭を手に取って口の中で咀嚼する。

 

 その姿が可愛いというリサとユキは興味なさそうに茶を飲んでいた。

 

 東郷は離れたところで様子を伺っている梶へ話しかける。

 

「まだ、疑っているのか?」

 

「皆さんが信じすぎなんですよ。相手は怪獣なんだ。小さいとはいえ、油断しちゃいけないはずです」

 

「梶の考えていることも間違ってはいないけれど、まずは歩み寄ることも大事なんじゃないか?」

 

「歩み寄る?」

 

 東郷の言葉に梶は不思議そうに尋ね返す。

 

「確かに怪獣は危険だ。過去に出現した怪獣のどれもが狂暴だとデータは残されている。だが、ピグモンは違う。敵意を持たず、友好的。本当に敵なのかどうかは歩み寄って、話をして決めてもいいはずだ。俺達はそれくらいの知能はあるんだからな」

 

「……」

 

 思案する梶。

 

 その時、ドアが開いてスタッフがレコーダーを片手にやってくる。

 

 ピグモンの翻訳が終わったという事だ。

 

 話すタイミングを逃した梶は立ち上がってスタッフの方へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピグモンの告げた内容はウルトラ警備隊にとって衝撃の事実だった。

 

 かつて、多くの怪獣を蘇らせて人類を滅ぼそうとした怪獣酋長ジェロニモンが復活するのだという。

 

 前回と異なり、まだジェロニモンは完全復活していないが、その力は前よりも比べ物にならないほどになっている。

 

 偶然、復活したピグモンは異変を再び伝えるために現れたのだ。

 

 ウルトラ警備隊は怪獣酋長復活という事態に気を引き締める。

 

 緊急の参謀会議が開かれる中、極東基地へ戻ってきていた梶隊員は食堂で夜食を食べていた。

 

 本物の煮干しだしが売りの味噌汁をすすっていたところで対面に腰かける者がいる。

 

「顔をしかめてどうしたの?」

 

「ミクか」

 

「どうしたの?」

 

「別に」

 

 梶はそっぽを向く。

 

 その姿が面白く感じたのか、彼女は小さく笑った。

 

「何で笑うんだよ」

 

 怒る梶だが、本気で怒っていないことを彼女は知っているからより笑う。

 

 しばらくして満足したのか、彼女は梶と向き合った。

 

「それで、何を悩んでいるの?」

 

「悩んでなんか……」

 

 渋る梶にミクは口を尖らせる。

 

「ウソ、梶君は何かに悩んでいる」

 

「何でもお見通しみたいに言うなよなぁ」

 

「お見通しだよ?だって、私、彼女だもん」

 

 自慢するように話すミクの姿に梶は両手を上げる。

 

「降参だ。お前にはかなわらないなぁ」

 

「当然です。それで、天下のウルトラ警備隊の隊員は何に悩んでいたの?」

 

 ミクに問われて梶は手元の茶碗へ視線を向けてから尋ねる。

 

「ミクは、怪獣ってどう思う?」

 

「どういう意味?」

 

「怪獣は危険な存在だ。いるだけで多くの人が苦しむ、絶対に倒さないといけない害獣だと俺は思っていた」

 

「今は違うの?」

 

 問われて梶は悩む。

 

「わからない、今まで怪獣は撃退してきた人類の為に……だが、あの怪獣、ピグモンは違う。暴れるだけの怪獣じゃないんだ」

 

 ウルトラ警備隊員として梶は何度も怪獣と戦ってきた。

 

 そのほとんどが人を食らい、建物を壊す、そういった危険な存在ばかり。

 

 ピグモンのような善意の塊ともいえる怪獣と出会ったことがなくて梶は戸惑っている。

 

 彼の心情に気付いたのか、ミクは笑みを浮かべながら梶の頬を突く。

 

「おい、何だよ!」

 

「可愛いなぁ、もう~」

 

「やめろって、おい、やめろ、やめなさいって!」

 

 傍からみればいちゃついているような光景に周りの職員たちはブラックコーヒーを飲み始める。

 

「いいんじゃない?一匹くらい善良な怪獣がいても」

 

「え?」

 

「だって、世の中の怪獣すべてが悪い奴なんて、悲しいじゃない。一匹、たった一匹だけでも良い怪獣がいれば、いつかは終わるかもしれないって信じられる」

 

「何を?」

 

 ミクはにこりとほほ笑む。

 

「平和って奴」

 

 梶よりも先に食べ終えたミクは立ち上がる。

 

「じゃあ、私は訓練があるから行くね!」

 

「あぁ、頑張れよ」

 

「勿論!将来の目標はウルトラ警備隊だからね!」

 

 ピースサインをしてミクは食堂を後にする。

 

 この後、梶はブラックコーヒーを飲んでいたTDF職員に絡まれたことは言うまでもない。

 

 

 

 参謀会議の結果、ウルトラ警備隊の総力を挙げて怪獣酋長ジェロニモン及び復活する怪獣の撃滅が決定した。

 

 地球防衛軍極東基地からウルトラホーク1号、及びウルトラホーク3号が緊急発進する。

 

 ウルトラホーク1号にはジェロニモンの居場所を特定するという役割の為に搭乗していた。

 

 ウルトラホーク3号の操縦席で梶はピグモンが乗っているホーク1号をみている。

 

「ピグモンのことが気になるのか?」

 

「別に……」

 

 隣のユキからの言葉に梶は首を振る。

 

「お前は怪獣に対して攻撃的なことが多かった。ピグモンも我々に敵意を剥くと感じているのではないか?」

 

「そうだったよ」

 

「今は違うのか?」

 

「わからない」

 

 短く答える梶にユキは沈黙する。

 

「何も言わないのか?」

 

「それはお前が解決しなければならない問題だ。私が言えば、納得するのか?」

 

「優しくない奴」

 

 そういう梶の横でユキがレーダーを指す。

 

「みろ、モンスターレーダーに反応だ!」

 

「あそこだ!」

 

 ホーク3号の操縦席から梶は指さす。

 

 山岳地帯、地面が盛り上がり、そこからムルチが姿を見せる。

 

「ムルチだ!」

 

 別の場所ではサドラが現れて、ムルチへ襲い掛かっていた。

 

『ホーク3号、怪獣酋長ジェロニモンは確認できず、他の怪獣が集まって来ると厄介だ。確認できる怪獣を優先的に撃滅する』

 

「了解!」

 

 ユキが了承し、ホーク3号を急降下させる。

 

 ムルチを捕食したサドラが気付いた時には眼前に無数のミサイルが放たれた時だった。

 

 攻撃を受けて派手に転倒するサドラ。

 

 起き上がろうとしているサドラへ大量のナパームが投下される。

 

 威力あるナパームが次々と投下されていき、サドラの強硬な皮膚を次々と焼き尽くしていく。

 

「おい!ナパームが尽きるぞ!」

 

「問題ない。奴が先に耐えられない」

 

 ユキの言葉通り投下されていくナパームに耐え切れずサドラの体は痙攣をおこすとやがて動かなくなる。

 

「怪獣の撃退、確認!」

 

『こちらも確認した、ホーク3号は上空から新たな怪獣が現れないか偵察を続行、こちらは地上からジェロニモンの行方を追う』

 

「了解」

 

 ユキと古橋の会話を聞きながら梶は操縦席から外を見る。

 

 ウルトラホーク1号が着陸していくところだった。

 

「よし、行くぞ」

 

 武器を担いでいる古橋を先頭に東郷、渋川、そして、リサが下りる。

 

 続こうとしたピグモンをリサが止めた。

 

「駄目よ、ピグモンはここで待機。どんな怪獣が現れるかわからないから」

 

「!!」

 

 ショックを受けたような驚いた様子のピグモンをホーク1号に残して四人はジェロニモン探索へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あそこをみろ」

 

 梶の視線は近くの山が崩れて、そこから白い雪男のような姿をした怪獣が現れる。

 

「ギガスか!」

 

 かつて日本アルプスに姿をみせた雪男のような怪獣。

 

 体の土を払い落としながらのそのそと周囲を探るギガスはジェロニモンを探っている古橋達の姿を見つけた。

 

 唸り声を上げながらギガスは古橋達へ近づこうとしている。

 

「いかせるか!」

 

 ウルトラホーク3号を操る梶はギガスへミサイルを発射する。

 

 ミサイルを受けたギガスは驚きつつも、近くの岩を掴むと投擲してきた。

 

 ひらりと躱しながらギガスの上空へ飛翔するホーク3号。

 

「強力乾燥ミサイル改準備!」

 

「了解」

 

 ユキが機械を操作してミサイルの発射準備をはじめる。

 

 準備が入る前に下降していくホーク3号からレーザー光線が撃たれた。

 

 機首から発射されたレーザー光線をまともに受けたギガスは爆発と共に大の字で地面に倒れこむ。

 

「今だ!」

 

「投下!」

 

 ギガスの上を通過するタイミングでホーク3号からかつてギガスを倒した時に使用された武器の強化型 強力乾燥ミサイル改が落とされる。

 

 ミサイルを受けたギガスの体は瞬時に固まるとともに大爆発を起こす。

 

「よし!」

 

 ギガスを倒して笑みを浮かべる梶。

 

 その時、ホーク3号の中でアラートが鳴り出して、不気味な振動が起こる。

 

「どうした!?」

 

「システムトラブルだな、このままでは飛行不能になる危険がある」

 

「緊急着陸だ!」

 

 梶はホーク3号を地上へ緊急着陸させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、ジェロニモンを探索していた古橋達の前で地面が揺れ始めた。

 

 地割れと共に現れるのは赤いトサカのような羽。

 

 続いて現れるのは無数の羽根。

 

 顎の下に生えている白い髭。

 

 そして、鋭い爪などをもつ凶悪な怪獣。

 

「くしょう!こんなところに隠れていやがったな!」

 

「隊長、どうします?」

 

「ここで奴を撃退する!攻撃開始!」

 

 古橋の合図でスパイダーを構える東郷、スパイナーガンを構える渋川。

 

 ウルトラガンを構えるリサ。

 

「撃て!」

 

 古橋の合図で一斉に光線や砲弾が発射される。

 

 起き上がったばかりのジェロニモンは突然の攻撃に驚くが、手で攻撃を防ぐ。

 

 攻撃の雨が一時的に弱まったところでジェロニモンがウルトラ警備隊のメンバーを睨む。

 

「いかん!退避!」

 

 古橋が避難の指示をだすも一足遅く。

 

 ジェロニモンの口から反重力ガスが放たれた。

 

「うわぁ!」

 

「きゃああ!」

 

 悲鳴を上げて一気に高高度へ舞い上がる四人。

 

 何もすることができず後は地面へ落ちるのみ、というところで空から飛来したウルトラセブンが四人を両手でキャッチする。

 

 スライドするように地面へ降り立ちながらセブンは両手で守った四人を地面へおろす。

 

 ウルトラセブンは構えを取るとジェロニモンと対峙した。

 

 ジェロニモンは唸り声を上げながら突撃してくる。

 

 正面から受け止めようとしたセブンだが、向こうの威力が強すぎて後方へ吹き飛ばされてしまう。

 

 倒れたウルトラセブンへ近くの岩を投げるジェロニモン。

 

 岩を回避してジェロニモンへ近づこうとするが、既に体を揺らして生やしている毒針羽根を宙へ放っていた。

 

 異変に気付いた時には無数の毒針羽根がセブンへ迫る。

 

 横へ躱すも意思を持っているかのように毒針羽根は反転してセブンを狙う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隊長!大丈夫ですか!」

 

 梶はセブンに助けられた古橋達のところへ向かう。

 

 古橋が応えようとしたところで、地面が揺れてゴメスが現れる。

 

 ゴメスは起き上がるとジェロニモンと戦っているウルトラセブンへ近づいていく。

 

 セブンへ攻撃しようとしていたが、急に向きを変える。

 

「なんだ?」

 

 梶はジェロニモンの向かう先をみる。

 

 そこには大きな声を上げながら騒いでいるピグモンの姿があった。

 

「いかん!梶!すぐにピグモンを避難させるんだ!」

 

「え、ですが……」

 

 突然の指示に戸惑う梶。

 

 その間にゴメスがピグモンへ接近している。

 

「何をやっている!いけ!いくんだ梶!」

 

「で、でも」

 

 梶の中で怪獣を助けるのか?という疑問が浮かび上がっていた。

 

 梶と目が合うピグモン。

 

 その際にバランスを崩してしまう。

 

「フガァアアアアア!」

 

 倒れたピグモンへ片手を振りあげるゴメス。

 

「やめろぉ!」

 

 気付けば梶はエレクトロHガンを構えて発射していた。

 

 攻撃を受けたゴメスの手元が狂い、ピグモンのすぐ傍に叩きつけられる。

 

「おらぁ!こっちだ!こっち来い!」

 

 ホルダーからウルトラガンを抜いて撃つ。

 

 攻撃を受けたゴメスはピグモンから梶へ標的をかえた。

 

 雄叫びを上げながら梶を狙うゴメス。

 

 エレクトロHガンを連射するもゴメスは止まる様子を見せない。

 

 ゴメスが段々と距離を詰めてくる中、上空から聞こえるエンジン音。

 

 梶が見上げるとウルトラホーク1号がゴメスへブレイカーナックルミサイルを発射する。

 

 

 通過するウルトラホーク1号の中の如月ユキ隊員と目が合う。

 

 かなり遠目だったが、ウルトラ警備隊として体を鍛えていた梶にとってハンドサインを見間違えることはない。

 

 エレクトロHガンを構える梶。

 

 狙いはゴメスの頭部。

 

 そこで全弾発射する。

 

 戻ってきたホーク1号から発射されるミサイル。

 

 全ての攻撃を受けたゴメスは断末魔をあげることなく地面に崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デュワ!」

 

 その頃、ジェロニモンとウルトラセブンの戦いは佳境を迎えていた。

 

 飛来する毒針羽根を前にウルトラセブンは手裏剣光線を放つ。

 

 セブンを狙っていた毒針羽根は手裏剣光線とぶつかって爆発していく。

 

 ジェロニモンが体を揺らして次々と毒針羽根を発射していくもウルトラセブンの光線によってすべてが落とされた。

 

 唸りながらセブンに無重力ガスを発射する。

 

 動きを読んでいたウルトラセブンはウルトラバリヤーを展開。

 

 無重力ガスを浴びたジェロニモンの体が宙に浮かんでいく。

 

 ウルトラセブンはワイドショットを放つ。

 

 空中で防ぐこともできないまま、ワイドショットを浴びたジェロニモンは大爆発を起こした。

 

 ジェロニモンの撃破を確認したウルトラセブンは青い空の向こうへ飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「乾杯~!」」」」」」

 

 地球防衛軍の食堂。

 

 入口には「本日貸し切り!ウルトラ警備隊」と書かれた札がぶら下がっていて、室内でオレンジジュースの入った瓶で乾杯を行う。

 

「ファッ!ファッ!」

 

「おい、そんな慌てて食うなよ!腹壊しちまうぞ」

 

 ウルトラ警備隊の六人と一緒に参加しているのは小さな英雄ことピグモン。

 

 今回の事件の貢献者として、ウルトラ警備隊名誉隊員の称号が与えられ、今後は御殿山の科学センターで厄介になることが決定する。

 

 今日の打ち上げに特例として極東基地の入室が許されたピグモンは並べられている料理をおいしそうに食べている。

 

 その傍で楽しそうに梶はピグモンと接していた。

 

「一番、ピグモンのことを警戒していたのに」

 

「ま、戦友になったってことじゃないか?」

 

 からかうリサと微笑みを浮かべる東郷。

 

 怪獣に対して強い警戒心を持っていた彼はどこへいったのやら、そんな姿が微塵も感じられない梶となついているピグモンの姿に誰もが笑みを浮かべている。

 

「ユキ隊員、こういう時くらい笑顔を浮かべたらどうだい?」

 

 少し離れたところにいるユキへドリンクを持った渋川が声をかける。

 

「すいません、あまり笑うことが得意ではなくて」

 

「無理にとはいわないけれど、こういう楽しい時は本当に楽しんでおかないと損するぜ?」

 

「勉強になります」

 

「それで?何を悩んでいたんだ」

 

 渋川にユキは自らの中で燻っている疑問を話した。

 

「ジェロニモンのことです」

 

「怪獣酋長かぁ?確かにアレは厄介だったな。ウルトラセブンが来てくれなけりゃ」

 

「いえ、それもそうなんですが……ジェロニモンはどうやって復活したのかと」

 

「え?」

 

 ジュースを飲みながらユキは考えていた。

 

 ジェロニモンはどうして復活したのか。

 

 以前、復活した個体が子供を残していたのか?

 

 それとも別の復活の要因があったのか。

 

 理由がはっきりとしていないところがユキは気になっていた。

 

 同じ考えに至ったのか、渋川は体をぶるりと震わせる。

 

「ま、あの地域は科学班とか、他の防衛軍隊員が調べているから、その結果待ちだな」

 

「そう、ですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼らは知らない。

 

 既に異変ははじまっているのだ。

 

 地球防衛軍、ウルトラ警備隊、そして、ウルトラセブンすら知らない遠く、そして、不気味な暗闇の中でそれは静かに胎動を始めている。

 

 新たな戦いの時は近い。

 

 

 

 




ミクさんに関しては情報が少ないので、ある女優さんをモデルにして書いています。
特に描写もしていないから、わかりにくいかもしれませんが。


ジェロニモンが蘇らせた怪獣ですが、好みでいきました。



次回についてはなるべく早く頑張ります。



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