やはり俺がウルトラセブンなのはまちがっている。   作:断空我

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台風が猛威を振るっていますが、みなさん、大丈夫でしょうか?

こちらは雨の中車を運転して、周りが暴走気味でヒヤヒヤしておりました。


さて、この話も三話目、一応、これの反響次第で、続けるかどうかを決めます。

予想出来ているかもしれませんが、今回の話は彼女メインでもあります。

ちなみに、少しばかりアンチヘイトがありますが、別に嫌いというわけではありません。


第三話:緑の再来

 

 

――夢をみていた。

 

 

 

 銀河系に数多ある惑星の一つ。

 

 生命が存在しないその惑星で私は一人の宇宙人と対峙していた。

 

「貴様を潰す!いけ!レイキュバス!」

 

 これから私は目の前の相手を殺す。

 

 殺すと言っても直接、殺すわけではない。

 

 自らが使役する“怪獣”を使って倒すのだ。

 

「ヒッ――」

 

 相手が悲鳴を上げながら地面へ崩れ落ちる。

 

 私はゆっくりとこと切れた相手の手の中にあったアイテムを拾い上げた。

 

「勝ったようだね」

 

「おねえちゃん」

 

 私は笑顔を浮かべてやってきた相手に駆け寄る。

 

 右目に黄色い傷のようなものがあるけれど、おねえちゃんは笑顔で私の頭を撫でてくれた。

 

「キミとコイツに勝てる相手はいないだろう。そう、キミがこのまま勝ち続けてくれるととても嬉しいよ」

 

「任せて、頑張るから」

 

 この時の私はきっと無邪気な笑顔を浮かべていただろう。

 

 姉と呼んでいた相手がどういう目的で私を利用していたのか知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの日の夢……」

 

 夜中に目が覚めた私はベッドから体を起こす。

 

 全身から流れた汗でパジャマがベトベトだ。

 

「シャワーでも浴びようかしら」

 

 はぁ、とため息を零しながら私はパジャマを脱いでシャワーを浴びる。

 

 体を少し冷やしてから新しいパジャマに着替えた。

 

 そのまま寝ようとするけれど、シャワーで汗を流した為か……少しばかり目が冴えてしまう。

 

 どうせなので勉強をすることにした。

 

 頭を使えば少しは休めるだろう。

 

 そう考えて、購入しておいた宇宙関係の本を手に取る。

 

「誰が信じるかしらね……一年前に多次元宇宙を旅したなんて」

 

 自嘲な笑みを浮かべながら私は本を開く。

 

 将来は宇宙関係の仕事に就きたい。

 

 それが今の私の将来。

 

 もう一度、広大な宇宙へ行きたい。

 

「けれど、あの夢をみてしまうと……」

 

 今まであの夢を見なかった。

 

 思い出したのはここ数日、怪事件に遭遇したことだろう。

 

 三面怪人ダダによる人の誘拐、

 

 渡り鳥怪獣ピィちゃんとスペース・ジョーズザキラの襲来、

 

 短い期間にこれだけの事件に遭遇したことであの時の出来事を思い出してしまったのだろう。

 

「ふぁわぁ」

 

 小さな欠伸が口から漏れる。

 

 本を閉じた。

 

 そのままベッドへ横になる。

 

 私はそのまま夢の世界へ向かう。

 

 できれば、幸せな夢を見たいと思うのは、我儘だろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつもの奉仕部の日常。

 

 その日は珍しいことに来客があった。

 

「失礼します!」

 

「あ、彩ちゃん」

 

 部室内に入ってきたのは小柄で童顔の少年。

 

 八幡は女の子が来たと勘違いしそうになったがすぐに体の骨格などで理解することができた。

 

「あれ、比企谷君?」

 

「うん?誰だ」

 

「ヒッキー!?何言っているの!?同じクラスだよ!」

 

 由比ヶ浜が目を丸くしながら八幡へ言う。

 

「あー、悪い。クラスメイトの顔、覚えていないわ」

 

「貴方らしいわね」

 

 ため息を吐きながら雪ノ下は文庫本を閉じる。

 

「えっと、僕は戸塚彩加っていいます。実はここのことを聞いて依頼をしたくてきました!」

 

「依頼?」

 

「はい!」

 

 頷いた戸塚の話によれば、テニス部に刺激を与えるために自分を強くしてほしいというものだった。

 

 三年生がまもなく受験で抜けてしまうことと、不慣れな一年生もいることから、モチベーションが低くテニス部の実力低下が深刻であるということから刺激を与えたいということらしい。

 

「そうね、いいわ」

 

「大丈夫なのか?」

 

「私がメニューを考案するから比企谷君はチェックをしてくれるかしら」

 

「あ、俺が?」

 

「えぇ、だって」

 

――人の構造などは詳しいでしょう?

 

 そこから先の言葉は小さくて戸塚は聞き取れなかったが八幡はため息を吐きながら了承した。

 

 翌日から雪ノ下雪乃考案のメニューがはじまった。

 

 基本的な体力づくりに始まり、テニスボールを使っての本格的な技術向上メニューが組み込まれていき、体を虐めるため、一見するとスパルタのようなイメージもあったけれど、戸塚が精いっぱいにこなしていることから一週間で効果が出てきた。

 

「彩ちゃん、凄い!」

 

「体力面もそうだけれど、彼自身が強くなりたいと思っているからでしょうね。精神面もかなり強くなっているわ」

 

 少し前まで本人は自信がもてないということや、気弱な印象もあった。

 

 しかし、テニスにおいては本気でやっている。

 

 疲労でふらふらになりながらも次のボールを取ろうと構える姿は雪ノ下や八幡も好感をもてた。見ているだけしかできない由比ヶ浜も凄いと叫んでいた。

 

「あー、テニスやってんじゃん!テニス!」

 

 その時、水を差すような声がテニスコートの外から聞こえてきた。

 

 視線を向けると八幡と由比ヶ浜と同じクラスで強い影響力を持っている三浦優美子と葉山隼人のグループがやって着た。

 

「ね、戸塚~、あーしらもここで遊んでいい?」

 

「悪いけど、遊んでいるわけじゃないから、今、練習中だし」

 

 片手に持っていた缶ジュースを飲み干し、軽い調子で尋ねた三浦へ戸塚ははっきりと拒絶する。

 

 戸塚の性格を知っていた三浦は自分が押せば許可するだろうと思っていた。しかし、雪ノ下や八幡たちによって鍛えられた彼は肉体や精神面も強くなり、以前と異なってはっきり否定できるようになっていた。

 

 それでもプライドの高い三浦は諦める様子を見せず、彼女の状況を察した葉山が笑顔で戸塚に話しかける。

 

「まぁまぁ、あまり喧嘩腰にならないでよ、戸塚君。みんなでやった方が楽しいし、ほら、俺達も手伝うから」

 

「悪いけれど、楽しく練習をするためじゃない。僕は真剣にやっているんだよ。だから、断るよ」

 

「それは……」

 

「言っておくけれど、このテニスコートは部の施設扱いなんだ。だから使うためには許可を取る必要があるんだ。申請も前日中に出す必要があるから、悪いけれど、無理なんだ」

 

「正論ね」

 

 ぽつりと雪ノ下が漏らした言葉に三浦が反応して睨む。

 

「アンタ、何様のつもり?」

 

「あー、これは失礼。俺達は戸塚の手伝いでここにいるんでね、ちゃんと戸塚が許可を取ってくれてここにいる。突然の乱入者じゃないんだよ」

 

 雪ノ下と三浦が争いにならないように間へ入ったつもりの八幡だったが、火に油を注いでしまう。

 

「戸塚にアンタら生意気なんじゃ……」

 

 突如、三浦が喉元を抑える。

 

「優美子?」

 

 彼女の様子がおかしくなったことに気付いて葉山が彼女へ声をかける。

 

「う、ぐ、ぐぁあああ!」

 

 葉山の声に振り返った三浦優美子。

 

 その顔は緑色の怪物へ変貌していた。

 

「うわぁあああ!」

 

 緑色の怪物へ変貌していく姿は一種のホラーだ。

 

 突然のことにグループの誰かが悲鳴を上げて逃げ出す。

 

「は、はや、と」

 

「皆下がって!」

 

 緑色の植物みたいな手を伸ばして三浦は葉山に助けを求める。

 

 しかし、葉山も顔は恐怖に染まって他のグループを守るように遠ざけていた。

 

 その姿は自分を異物としてみている。

 

 はっきりとそう三浦は感じてしまった。

 

 恐怖で震える彼女をみて、冷静に動いた者達がいる。

 

「戸塚君、テニスコート周辺に誰も近づけないようにして」

 

「え、あ、うん!」

 

 雪ノ下が戸塚へ誰も近づけないように指示を出すと手元の端末からウルトラ警備隊へ通報する。

 

 ここで警察を呼んだとしても彼らの範疇に収まらない。怪事件のエキスパートと言えるウルトラ警備隊を呼ぶべきだと彼女は考えたのだ。

 

 そして、二人が緑色の怪物へ変貌していく三浦へ近づく。

 

「優美子!大丈夫!?」

 

「ゆ、い……」

 

「意識はあるようだな、深呼吸して、落ち着くんだ」

 

 異形になっていく彼女の手を握り締めて必死に呼びかける由比ヶ浜。

 

 八幡は脈を図りながら誰にも気づかれないように三浦の体を透視する。

 

「(体内の細胞が急速に変化している。何かウィルスのようなものが侵入しているのか?)」

 

 冷静に調べながら八幡は念力を使いながら三浦の精神を落ち着かせようとする。

 

 理性を失って暴走すれば、より大きな被害に繋がる恐れがあると踏んだからだ。

やがて、ある程度、落ち着いたのか三浦の意識はゆっくりと落ちて、地面へ横になった。

 

「ゆ、優美子は大丈夫なのかい?」

 

 苦悶の声をあげることなく横たわった三浦の様態を葉山が問いかける。

 

「今は気絶している、安静にしておいた方がいいだろう」

 

「そうか、ありがとう」

 

 ちらりと葉山を一瞥してから八幡は考える。

 

 何かが起こっている。

 

 それは嫌でも感じさせられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウルトラ警備隊です」

 

 通報を受けたウルトラ警備隊が駆け付けると警察が既に立ち入り禁止のテープを貼っていた。

 

 立ち入り禁止のテープ前で立っている警官へ渋川が身分証明をみせる。

 

 隊員服とヘルメットでわかるかもしれないが身分証明を見せることは規則として決まっていた。

 

 一緒にきたリサと共に立ち入り禁止のテープを潜り抜ける。

 

 テープの向こうでは一足先にやってきていた古橋と梶の姿があった。

 

「お待たせ!」

 

「渋川隊員、遅いですよ」

 

「無茶言うなって、ホーク1号でのパトロールから帰ってきて大急ぎでポインター乗ってきたんだぜ?」

 

「ところで、状況は?」

 

 渋川を横へ押しのけながらリサが尋ねる。

 

「目撃者の話によると少女が突然苦しみだして植物の怪物へ姿を変えたという事だ」

 

「そんなこと、ありえるの?エイリアンの擬態が解けたとかそういう話じゃ?」

 

 驚きを隠せない表情でリサは問いかける。

 

 人が怪物へ変身する。

 

 それでウルトラ警備隊が真っ先に考えるのは人間へ擬態していたエイリアンが本性を現すという瞬間。

 

 何度も目撃してきたからこその考えをリサは言うが、梶は無言で首を振る。

 

「問題の少女は防衛軍のメディカルセンターで検査を受けている。その結果待ちだな」

 

「メディカルセンターの方は?」

 

「そっちはユキに行ってもらっている。俺達は目撃者の事情聴取と周辺の調査だ。念のため、ウルトラガンはパラライザーモードにしておけ」

 

「わかりました」

 

 四人はウルトラガンを取り出してモードを切り替える。

 

「そういや、東郷隊員は?」

 

「目撃者の事情聴取だ」

 

 そう言いながら古橋は学校の方をみる。

 

「なんともまぁ、数奇な運命なこった」

 

 呟いた彼の言葉が暗闇の中に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いね、詳しい話を聞かないといけないんだ」

 

 にこりとほほ笑みながら東郷は目撃者である八幡、雪ノ下、由比ヶ浜、戸塚、葉山へ尋ねる。

 

 目撃者は他にもいたのだが、一番近くにいたということで選ばれた。

 

 葉山のグループについては他言無用を約束して、警察に送ってもらったのである。

 

 友人である三浦が異形へ姿を変えたことにショックを受けている由比ヶ浜はスカートを両手で握り締めて俯いていた。

 

 雪ノ下は彼女を見て心配そうにみている。

 

 戸塚は不安そうにちらちらと周囲を見渡していた。

 

「勿論です。俺達にできることなら」

 

 その中で力強く答えるのは葉山だ。

 

 八幡は思案するように窓からみえる景色を見ていた。

 

 葉山は東郷隊員へ自身が目撃したことを話す。

 

 少し戸惑っているところもあるのか、彼自身の主観の話も混じっていたが、東郷もそこはわかっているのだろう。

 

「そうか、ありがとう」

 

 話し終えた葉山に東郷は柔和な笑みを浮かべて頷いた。

 

「キミ達にも確認だが、彼の話した内容であっているかな?」

 

「概ねといったところかしら、私達も三浦さんに何が起こったのかはっきりとわかっていないですから」

 

 代表する形で雪ノ下は答える。

 

「そうか、すまない」

 

「あの、東郷さん、優美子はどうなるんですか?」

 

 由比ヶ浜がおずおずと尋ねる。

 

「防衛軍管轄のメディカルセンターで検査を行っている。人間へ戻れる方法も探すことになるからしばらくは入院ということになると思う」

 

「あの、会うことは」

 

「すまない、しばらくは面会謝絶になる。空気感染も考えられるから」

 

「そんな、優美子……」

 

「結衣、彼らだって仕事なんだ。迷惑をかけちゃ駄目だ」

 

「何で!?優美子は友達なんだよ!心配して会いたいと思っちゃいけないの!?」

 

 葉山としては優しく説得するつもりだったのだろう。

 

 だが、今の由比ヶ浜にとっては怒りの起爆剤でしかない。

 

「落ち着け、由比ヶ浜」

 

「ヒッキー……」

 

 立ち上がった由比ヶ浜をやんわりと抑えたのは八幡だった。

 

「東郷隊員、み、三浦は命に別状はないんですね?」

 

「あぁ」

 

「ヒッキー、優美子が」

 

「今はウルトラ警備隊と防衛軍を信じるしかない……三浦も変異したからって元は人間なんだ。今はアイツが戻ってくることを信じろ」

 

「そう、だね……うん!」

 

 頷いた由比ヶ浜は目元の涙をぬぐって笑顔を浮かべた。

 

 無理した笑顔だったが、ふさぎ込んでいるよりかは幾分もマシだ。

 

 そんな二人のやり取りを雪ノ下は横でみていた。

 

「周辺の調査が終わり次第、キミ達も家へ送り届けよう!ウルトラ警備隊のポインターに乗れる滅多にないチャンスだぞ!」

 

 皆を明るくさせるつもりで東郷隊員が笑顔で言う。

 

「本当ですか!?」

 

 静かにしていた戸塚が笑顔を浮かべる。

 

 東郷隊員は腕のビデオシーバーからの着信に立ち上がった。

 

「ここで待っていてくれ」

 

 全員が頷いたことを確認して東郷は外へ出る。

 

「はい、東郷」

 

『古橋だ。目撃者の子供の様子はどうだ?』

 

「落ち着いてはいます。ただ、いきなり友達が目の前で変異したことで戸惑いは隠せていません」

 

『そうか、学校周辺の調査は完了した。東郷隊員はリサ隊員と一緒に目撃者の子供たちを送り届けてほしい』

 

「わかりました……隊長、メディカルセンターに運ばれた子は」

 

『今のところ、命に別状はない……検査の途中だが、彼女はエイリアンではないという結果がでている』

 

 古橋からの連絡で東郷は安堵の息を漏らす。

 

 もし、三浦優美子がエイリアンに擬態した姿だったのならば、排除の可能性もあり得た。

 

 彼女が人間だという結果が出た以上、隔離はありえるだろうけれど命が奪われる心配は消える。

 

 そのことに東郷は安心した。

 

 しかし、事件ははじまったばかりであるということを、ウルトラ警備隊はおろか、誰も知る由がなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事件から四日が経過した。

 

 三浦優美子が異形な姿へ変わった事件を皮切りに既に十人もの人間が緑色の怪物へその姿を変えている。

 

 地球防衛軍は警察を通して夜間外出禁止を徹底させる。

 

 夜間はウルトラ警備隊、準隊員や警察が交代を行いながらも徹底的にパトロールを行っているのだが、目撃者はおろか怪しい人物の情報がない。

 

 ウルトラ警備隊司令室は緊張した空気が漂っている。

 

 古橋隊長が司令室のスクリーンにモンスター&エイリアンのファイルを表示した。

 

 現れるのは緑色の植物のようなエイリアンの姿。

 

「ワイアール星人、こいつはステーションV3の職員に姿を変えて地球へ侵入後、地球人を次々と人間性物Xへその姿を変えた」

 

「隊長はこの事件がワイアール星人の仕業だと?」

 

「人間生物Xへ姿を変える液体が変異した人々の中から検出されたとメディカルセンターから報告があった……だが、俺はどうもワイアール星人の仕業と思えない。ワイアール星人の仕業にしては、宇宙人の影も形も見えないというところに納得がいかねぇ」

 

「では、何の仕業だと」

 

「わからん、だが、このままいけば、徐々に被害が増えることは事実だ。早急に液体の出所を調べなければならない」

 

 ウルトラ警備隊の司令室内に重苦しい空気が広がるのみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雪ノ下雪乃は夜道を歩いていた。

 

 夜間外出命令の時間が刻々と近づいている中で彼女は買い物を済ませて、家を目指している。

 

 ふと、彼女は暗闇の向こうに何かがいることに気付く。

 

 その人物は自販機を眺めている。

 

「貴方、何をしているの」

 

 気付けば雪ノ下は相手へ問いかけた。

 

 相手はちらりと雪ノ下をみると怪しい笑みを浮かべる。

 

「貴方、宇宙人ね」

 

 雪ノ下は笑みを浮かべる相手の姿が偽装したものだと見抜く。

 

 それは過去の経験からくるもの。

 

 笑みを浮かべていた相手が姿を変えた。

 

 人の姿から黒を基調とした体に青く輝く二つの瞳、銀や赤などの姿をした宇宙人。

 

「メフィラス星人ね」

 

「ほぉ、この姿を見ても驚かないとはなぁ」

 

「その手にある液体の詰まったケース、貴方ね、三浦さんや多くの人を植物人間へ姿を変えさせたのは……なぜなの?」

 

「地球が欲しい」

 

 両手を広げてメフィラス星人は伝える。

 

「宇宙のオアシスともいわれるこの星を手に入れたいと思うのは当然のことだろう?そのためには星に住まう生き物が邪魔だ。お前もわかっているはずだ、人間は醜いと」

 

「そんなこと」

 

「ないと言い切れるのか?ゼットン星人の右腕として戦っていたレイオニクスよ」

 

 雪ノ下の呼吸が止まる。

 

 それがわかっていたのかにやりとメフィラス星人が笑う。

 

「知っているぞ。ゼットン星人の右腕として多くの敵を叩き潰した最強のレイオニクスが地球にいるとなぁ」

 

「もし、私がそうだったら、何だというの?」

 

「俺と手を組まないか?」

 

 手を差し伸べるメフィラス星人。

 

 一瞬、過去の記憶がフラッシュバックする。

 

 ぶるぶると体が震えた。

 

 呼吸が荒くなっていく。

 

「お前の力と俺の頭脳!それがあれば、この星を支配することなど造作もない!地球防衛軍、ウルトラ警備隊も手も足も出ていないこの状況で、お前の持つ最強怪獣を使えば!」

 

 いつの間にか近づいてきたメフィラス星人が雪ノ下の腕を掴む。

 

 悲鳴を漏らして離れようとするがすさまじい力で逃れることができない。

 

 メフィラス星人の瞳が怪しく輝いた瞬間。

 

 衝撃波によってメフィラス星人が吹き飛ばされた。

 

 自販機に激突して大きな音を立てる。

 

「だ、ダメ!」

 

 宙に浮いた鞄が彼女を守るように怪しい光を放っていた。

 

 雪ノ下は鞄の中にあるものを必死に抑え込む。

 

 ぶるぶると彼女の手の中で暴れようとしている存在。

 

 それが外に出ることを雪ノ下は恐れている。

 

 必死に鞄を胸元で抱きしめた。

 

 やがて、光を放っていた何かがゆっくりと収まる。

 

「ぐぅぅ、なんて力だ。だがますます、欲しく」

 

「おい!そこで何をしている!」

 

 懐中電灯の光を向けられたことでメフィラス星人は振り返る。

 

「う、宇宙人」

 

 メフィラス星人を発見したのは巡回していた警察官だった。

 

 驚いている一人の横で年配の警官が無線で応援要請をする。

 

「ちぃ」

 

 メフィラス星人は手の中のカプセルを持ったまま走り出す。

 

 警察官が追いかける中で雪ノ下はぺたりと座り込む。

 

 髪が乱れて、過呼吸を起こす。

 

 ひどく、苦しい。

 

「たす、けて」

 

 ぽつりと漏らした言葉は誰に聞かれることなく地面に倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒッキー!こっち!」

 

 雪ノ下雪乃が倒れたという連絡を由比ヶ浜から受けた八幡

 

 病院の通路で手を振る由比ヶ浜。

 

「声がでかい、静かにしろよ」

 

「無理だよ!だって、ゆきのんが!」

 

「落ち着け」

 

 小さく諭すようにいいながら八幡は尋ねる。

 

「雪ノ下が宇宙人に襲われたっていうのは本当なのか?」

 

「うん、東郷さんが連絡してきてくれて、それでいてもたってもいられなくて」

 

「中には入れるのか?」

 

「……うん」

 

 ノックをして中に入る。

 

 綺麗な病室の中で上半身を起こした状態の雪ノ下、そしてウルトラ警備隊の渋川と梶の両名がいた。

 

 ウルトラ警備隊がいたことで八幡と由比ヶ浜は小さく挨拶をする。

 

「じゃあ、キミはエイリアンの姿を目撃しただけだというんだね?」

 

「はい……夜間外出禁止時間が急いでいたので足早に帰ろうとしていましたら、自販機に何かをしようとしている宇宙人の姿が」

 

「じゃあ、他になにか話をしたことは」

 

「梶、雪ノ下ちゃんは疲れているんだ。そんな尋問めいた問いかけはやめてやれよ」

 

「渋川隊員、俺達はエイリアンを追いかけているんですよ。被害者は今も出ている、悠長にしている時間はないんです」

 

「だからって、一般人である雪ノ下ちゃんにここまで尋問めいたことする必要はないだろ?」

 

「そう、ですね……すまない」

 

「いえ、貴方達の仕事は理解しているつもりですので」

 

 謝罪する梶に雪ノ下は首を振った。

 

「また、何か思い出したら教えてほしい」

 

「安静にするんだよ」

 

 渋川と梶は感謝の言葉を告げて病室を出ていく。

 

「えっと、ゆきのん、大丈夫?」

 

 由比ヶ浜は横になっている雪ノ下へ問いかける。

 

「大丈夫と言いたいところだけれど、かなり疲れているわ」

 

「何があったんだ」

 

 八幡が静かに尋ねる。

 

「エイリアン、いいえ、メフィラス星人に勧誘されたわ。私の力……狙っていたわ」

 

「……ウルトラ警備隊にそのことは」

 

「伝えられるわけないじゃない……話すという事は私が、私が侵略者の片棒を担いだことを伝えるのと一緒なのよ!」

 

 慟哭する雪ノ下の言葉に由比ヶ浜は言葉を失う。

 

「で、でも、あの時はゆきのん、操られていただけで」

 

「それで許されると思う?私は、姉と語ったあのゼットン星人の為に多くの星人を滅ぼした。相手を叩き潰すために……この力を使ったのよ!」

 

 叫ぶ雪ノ下の手に握られているアイテム。

 

――バトルナイザー。

 

 並行世界の宇宙でレイブラッド星人が自らの後継者を生み出すために作り出したアイテム、レイオニクスのみが操ることができるバトルナイザーをみせた。

 

「私は許されるべき存在じゃない」

 

「そんなことないよ!」

 

 由比ヶ浜が雪ノ下の両手を握り締める。

 

 バトルナイザーが布団の上へ落ちた。

 

「ゆきのんは操られていたんだよ!本心でやったわけじゃないって、あたしも、ヒッキーも知っている!何より、ゆきのんは後悔しているじゃん!だから、あの時、ヒッキーのお兄さん達を助けようとした。だから、ヒッキーのお兄さん達も、あの父さんも許してくれたんだよ!」

 

「私は……」

 

「雪ノ下」

 

 八幡がゆっくりと雪ノ下の前に立つ。

 

「お前が本当にどうしょうもない悪人で最低最悪のレイオニクスだというのなら俺が、いや、私がキミを倒そう」

 

 ウルトラアイを取り出して机に置く。

 

「だが、キミが自分の罪を悔いて、償うために生き続けるという限りは守ろう。この星に住まう者の一人として」

 

 彼とは思えない温かく、優しい言葉に雪ノ下雪乃は俯いた。

 

 由比ヶ浜は呆然とそのやり取りをみているしかない。

 

「貴方は、本当に…………」

 

 そこから先の言葉を彼女は飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆきのん、まだ、悩んでいるんだね」

 

「あぁ」

 

 雪ノ下雪乃はワームホールに飲み込まれた時、ゼットン星人に助けられた。

 

 偶然なのか、故意なのかはわからない。

 

 その際に雪ノ下雪乃は洗脳を施されてアイテム、バトルナイザーを渡される。

 

 彼女にレイオニクスとしての適性があったことを知っていたのかわからない、偶然にも手に入れたバトルナイザーを与えて自身の右腕、ゼットン星人の妹として扱った。

 

 八幡達と再会した時は敵として対峙する。

 

 冷酷な侵略者の片腕として、次々と破壊の限りを尽くした。

 

 そんな彼女が普通の生活を送っていること、その事に悩んでいるのだ。

 

「ヒッキー、さっきの演技?それとも」

 

「演技に決まっているだろ?あの人は俺の意識の奥深くだ。不用意に表へ出てくることはしない」

 

――キミと一心同体になろう、だが、私は不用意にキミの精神、思考へ踏み込むことはしないということを約束する。

 

 ウルトラセブンは比企谷八幡と一心同体になる際に交わした誓いのようなもの。

 

 不用意に彼は八幡の中へ踏み込んでこない。

 

 ここぞという時、大事な時があれば接触してくるが、八幡の方からウルトラセブンとコンタクトをとることはなかった。

 

「ゆきのんにドリンクでも持って行こう!」

 

「紅茶か?」

 

「うん!それで時間いっぱいまで話し合うんだ!あ!ヒッキーもちゃんと付き合うんだよ!」

 

「げぇ、マジかよ」

 

 彼女の言葉に八幡はため息を漏らすしかなかった。

 

 この場にペガがいないことが悔やまれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウルトラ警備隊は雪ノ下雪乃からもたらされた情報を元に街中のすべての自販機を徹底調査。

 

 その結果、自動販売機の中に特殊な液体が含まれたドリンクが複数個発見される。

 

 地元警察などの協力を得ながら自販機をすべて調査、回収した。

 

「古橋隊長!地元警察から緊急通報!逃走する宇宙人を発見したとのとこです!」

 

 ウルトラ警備隊司令室の通信隊員からの報告を受けて、二台のポインターが通報先へ急行する。

 

 ポインターが到着すると疾走するメフィラス星人の姿を発見した。

 

「エイリアンだ!」

 

 助手席の東郷隊員が叫ぶ中、運転席にいる梶がアクセルを踏む。

 

 ポインターはうなりを上げながらメフィラス星人を追跡する。

 

 常人とかけ離れた脚力を持つメフィラス星人は振り返りながら光弾を放つ。

 

「バリア!」

 

「了解!」

 

 東郷隊員がポインターのスイッチを起動。

 

 ポインター全体をバリアが覆い隠し、光弾を防ぐ。

 

 逃げていくメフィラス星人の道をふさぐようにもう一台のポインターが現れる。

 

 ポインターから降りた古橋、リサの両隊員がウルトラガンを構えた。

 

「ちぃ!」

 

 メフィラス星人は二台のポインターに挟まれるがテレポートした。

 

「くしょう!逃げやがったなぁ!」

 

 悔しそうに古橋が声を漏らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おのれぇ」

 

 テレポートしたメフィラス星人は膝をついた。

 

 力を消耗したことで疲労に襲われる。

 

 ウルトラ警備隊によってすべての自販機が回収されたことによって計画は失敗したとみていい。

 

 人間生物Xもいずれは元の人間へ戻されるだろう。

 

 メフィラス星人は自らの計画のとん挫に苛立ちを隠せない。

 

「ならば!」

 

 せめて、手駒としてあの女を手に入れよう。

 

 メフィラス星人は運よく、転移した先が雪ノ下雪乃のいる病院であることに気付いた。

 

 にやりと笑みを浮かべながら雪ノ下雪乃がいる病室を目指す。

 

 道中に悲鳴を上げた人間がいたが光線で無力化させた。

 

 ドアを乱暴に開けてメフィラス星人が病室に踏み込む。

 

「っ!」

 

 突然の侵入者に雪ノ下は目を見開いて、後ろへ下がろうとする。

 

 一足早く、メフィラス星人が彼女の体の動きを封じ込めた。

 

 光線を受けて硬直してしまう雪ノ下をそのまま抱えようとした時。

 

「ゆきのん~、ドリンクを買ってきたよ……って、宇宙人!?」

 

「ちぃ!」

 

 メフィラス星人は窓を開けて雪ノ下を抱えて飛び降りる。

 

「ヒッキー!ゆきのんが宇宙人に!?」

 

「由比ヶ浜、ここは任せるぞ!」

 

「え、ちょっと!?」

 

 驚く由比ヶ浜を置いて、八幡は階段を駆け下りる。

 

 必死に階段を駆け下りて、メフィラス星人を追いかけた。

 

 メフィラス星人は雪ノ下を抱えているおかげかいつもより速度が遅い。

 

 ウルトラセブンと融合したことと様々な銀河系を旅してきたことで体が鍛えられていたおかげで宇宙人を見失うことはなかった。

 

「はぁ、はぁ……はぁ!」

 

 荒い息を吐きながらメフィラス星人が雪ノ下を拘束した状態で立っている。

 

「お前、雪ノ下を返せ」

 

「ふん、貴様らには理解できまい。この小娘が持つ強大な力を」

 

「雪ノ下のレイオニクスとしての力の事か」

 

「ほぉ、知っているのか……ならば、理解できるはずだ。レイオニクスの力は強大だ。その気になれば、光の国の戦士すら凌駕することができるだろう。最強の怪獣を宛がえば、よりその力は真価を発揮するというものだ」

 

「お前、雪ノ下を兵器として利用するつもりか!?」

 

「それ以外に何がある?」

 

 平然と答えるメフィラス星人の言葉に雪ノ下は俯いた。

 

 八幡は拳を握り締めた。

 

「ふざけるな、雪ノ下は兵器じゃない。俺の、俺達の仲間だ」

 

「仲間?地球人とやらは二言目には愛だの、平和だの、仲間と囁く。コイツの強大な力を理解していないのではないか?」

 

「雪ノ下が強大な力を持っていることはわかっている。だが、力というのは持っている者によって左右される。正しく使えば、正しい力に、悪いことに使えば、悪しき力に」

 

「何がいいたい!」

 

 メフィラス星人の言葉に八幡は答えない。

 

 彼の目は俯いている雪ノ下へ向けられていた。

 

「雪ノ下、全てはお前が決められるんだ。どうすればいいか、いや、お前はどうありたい?」

 

 八幡からの問いかけに雪ノ下はゆっくりと俯いていた顔を上げる。

 

「私は、普通でいたい……レイオニクスの力なんて、本当は要らないわ!」

 

 泣きながら雪ノ下雪乃は叫ぶ。

 

「お願い、助けて」

 

「貴様ぁああああああ!」

 

 その姿にメフィラス星人が髪の毛を掴んだ。

 

 直後、放った念動力によってメフィラス星人が吹き飛ぶ。

 

 倒れそうになった雪ノ下を八幡は慌てて抱える。

 

「大丈夫か?雪ノ下」

 

「……えぇ」

 

「くそう!邪魔をするというのなら……お前達ごと、叩き潰してやる!」

 

 メフィラス星人が指を鳴らす。

 

 空から眩い輝きと共に背中に翼を生やした宇宙怪獣ドラコが降り立つ。

 

「雪ノ下、ここにいるんだ」

 

「比企谷君!」

 

「デュア!」

 

 八幡は懐からウルトラアイを取り出して装着する。

 

 眩いスパークと共にウルトラセブンが現れた。

 

 ウルトラセブンはドラコの振るう鎌を回避しながらパンチやキックを放つ。

 

 タイルのような皮膚にセブンの連続パンチやキックが直撃して苦悶の声を上げるドラコ。

 

「ちぃ、ウルトラセブンだったのか、貴様を倒せばいいだけのこと!」

 

 メフィラス星人は巨大化して背後からセブンに襲い掛かる。

 

 後ろから拘束されそうになったセブンだが、メフィラス星人を投げ飛ばす。

 

 その間に飛翔していたドラコの攻撃がセブンを襲った。

 

 攻撃を受けて地面に倒れたセブンだが、起き上がろうとする度にドラコの高速飛行を用いた鎌の一撃に翻弄されてしまう。

 

「今だ!」

 

 メフィラス星人の光弾が雨のようにセブンへ降り注いだ。

 

 光弾を受けたセブンは地面に倒れる。

 

 不敵に笑うメフィラス星人。

 

「比企谷君……いえ、ウルトラセブン!」

 

 雪ノ下は叫ぶ。

 

 何を訴えればいいのかわからない。

 

 だが、一つだけ自然と彼女の口から言葉が出た。

 

「負けないで!」

 

 彼女の訴えが聞こえたのかわからない。

 

 起き上がったウルトラセブンは頭頂のアイスラッガーを投げる。

 

 回転しながら飛行するアイスラッガーがドラコの両翼を切り落とす。

 

 飛行能力を奪われたドラコは悲鳴を上げる。

 

 ウルトラセブンはエメリウム光線でドラコを倒す。

 

 ドラコが倒されたことでメフィラス星人は動揺しながらも光弾を放つ。

 

 ウルトラセブンは地面を蹴り、光弾を躱しながらメフィラス星人の顔を殴る。

 

 続けて繰り出したパンチで仰け反ったメフィラス星人。

 

 腰のあたりで両手を構えてエネルギーをチャージしながら両手を前にさせながら放つ、リュウ弾ショットがメフィラス星人の体を貫いた。

 

 攻撃を受けたメフィラス星人が大爆発を起こす。

 

 ウルトラセブンは大空の中へ消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日常が戻ってきた。

 

 人間生物Xにされた人間はウルトラ警備隊の手によって普通の人間へ戻される。

 

 少しばかりの検査はあったものの、彼らは日常に戻って問題なしと判断された。

 

「おはよう」

 

 三浦が教室に入ってきた時、しーんと静かになった。

 

「優美子!おはよう!」

 

 誰もが近づこうとしない中で由比ヶ浜が笑顔を浮かべて彼女に近づいた。

 

「もう、大丈夫なの?」

 

「まーね、色々と検査で疲れたし」

 

「でも、無事でよかったぁ」

 

「ちょ、なんで結衣が泣くのよ!?」

 

 驚きながら三浦は抱き着いてきた由比ヶ浜を優しく撫でる。

 

 その光景を一瞥して八幡は机に寝そべった。

 

「おい、ヒキオ」

 

 傍で何かが聞こえたけれど、八幡はそのまま寝ようとした。

 

「おい、無視するなし」

 

「あ、俺のことか?」

 

 机を揺らされて八幡は顔を上げた。

 

「俺はヒキオじゃないんだが?」

 

「うるせーし、その、アンタにちゃんとお礼、言っておこうと思って」

 

「お礼?」

 

「あーしが怪物になった時、結衣と一緒に声をかけてくれたでしょ、その時、アンタの声がやけにあーしの中で残っていたからさ、アンタ達の声のおかげであーしを保てていたし、まぁ、ありがとう」

 

「別に、まぁ、何かあれば、連絡して来いよ」

 

「まー、何かあれば頼りにするし」

 

 そういって三浦は由比ヶ浜の方に戻っていく。

 

 八幡は再び眠りに就こうとした時。

 

「あの、比企谷君」

 

「戸塚か……そういえば、部活の件だが」

 

「そのことだけど、もう大丈夫!」

 

 戸塚は首を振る。

 

「これから僕自身で頑張ってみせる!僕自身の力で部活を盛り上げてみせるから!」

 

「そうか、依頼は完了ということだな」

 

 満足そうに頷いた八幡。

 

 ふと、戸塚がもじもじしていた。

 

「どうした?」

 

「その、また、機会があれば、壁打ちの練習とか付き合ってくれない?」

 

「暇なときであればいいぞ」

 

「ありがとう!あと、比企谷君のこと、八幡って呼んでいい?」

 

「お、おう」

 

 突然のことに驚きながらも八幡は頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。

 

「そう、彼の依頼は達成なのね」

 

「本人がそういってきたぞ」

 

 部室で雪ノ下と八幡は少しの距離を開けて腰かけている。

 

 由比ヶ浜は三浦の復帰祝いということで今日は休みらしい。

 

 二人だけの部室ということで奇妙な空気が漂ってはいるけれど、いつも通りにしていた。

 

「ねぇ、比企谷君」

 

「なんだ?」

 

「貴方は私がまたエイリアンに攫われそうになったら助けてくれるかしら?」

 

「唐突だな……」

 

 八幡はMAXコーヒーを飲みながら。

 

「当たり前だろ。宇宙であれだけの出来事があった……何があろうと守るさ。お前も由比ヶ浜も」

 

「……そう、その答えがきけて嬉しいわ」

 

 にこりとほほ笑みながら雪ノ下は紅茶を一口。

 

「貴方のそういうところ、好きよ」

 

「ブフゥ!」

 

 八幡はマッカンを吹き出した。

 

 慌てふためくその姿が面白くて、雪ノ下は小さく微笑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夢を見る。

 

 あの時の悪夢、けれど、今は夢を見ても怖いとは思わない。

 

 彼女には親友と不器用な男の子がいるのだ。

 

 二人のことを思い浮かべれば、夢のことは怖くない。

 

 雪ノ下雪乃は決意する。

 

 いつかは過去を乗り越えてみせると。

 




怪獣説明

メフィラス星人二代目
出典はウルトラマンタロウ。
マンダリン草という植物を用いて、次々と人間を襲った宇宙人。
紳士的だった初代と比べると卑怯な手段は当たり前のように使う、卑怯もラッキョウも大好きだとかいう名言はここから生まれたとか?

ワイアール星人
出典はウルトラセブン。
第二話、緑の恐怖に登場。宇宙ステーションV3の隊員に成りすまして地球へ侵入。
地球で多くの人間を植物人間Xへ変えてきた張本人。
今回は過去のデータとして。

ドラコ
出典はウルトラマン。
怪彗星ツイフォンに乗ってきたと思われる宇宙怪獣。
雪山で地球産の怪獣たちと戦うも羽をもぎとられて倒されてしまう。
メフィラス星人が怪獣兵器として地球へ持ってきたがウルトラセブンにより倒されてしまう。


今回の話は雪ノ下メインだったのですが、どういう怪獣をだすかで色々と悩みながらメフィラス星人を出すことに決めた後、偶然見た緑の恐怖の類似的な展開を考えました。
ソリチュランにするかと悩みました。



次の話、誰のメインがみたい?

  • 川崎沙希 キリエロイド登場予定
  • チェーンメール事件 メトロン星人登場予定
  • 戸塚彩加 ゴドレイ星人登場予定 
  • 小町 謎のダークマター編
  • ウルトラ警備隊 キリエロイド登場予定

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