合間、合間に別のエピソードを挟んでいく予定です。
「先輩~、先輩は文化祭、何をするんですかぁ?」
いつもの奉仕部……ではなかった。
マッカンを飲もうとしていたタイミングで部室へやってきたのは一色いろは。
笑顔を浮かべながら空いている椅子を八幡の近くへ置いた。
「あれ、由比ヶ浜先輩達は?」
「あいつらなら用事だ……」
「ふーん、ところでところで!文化祭は」
「あー、うちのクラスは演劇らしいな」
「演劇ぃ?先輩も何かの役をやるんですか?」
「まさか」
八幡は笑みを浮かべる。
「俺は裏方作業だ。演劇なんて柄じゃない」
「えぇ~、先輩が演劇する姿を見てみたかったなぁ」
「はいはい、あざといあざとい」
呆れながらマッカンを飲んでいた時、部室のドアが開かれた。
ノックもせずに入ってくるのは数人の女子生徒。
当然のことながら八幡は誰かわからない。
「ねぇ、ここって奉仕部よね?」
「あぁ、悪いが部長今日こない。何か依頼か?」
「ふーん、じゃあ、明日はいるの?」
「その予定だな」
「そ」
短く答えると仲間を連れて出ていく。
「あれ、相模先輩ですねぇ」
「有名か?」
「うわぁ、同じ学年なのに知らないんですかぁ?ごめんなさい、無知って罪ですよねぇ」
「なんで俺謝られているの?まぁいい、有名なんだな?」
「メチャクチャってわけじゃないですよ?」
一色の話によると相模を含めたグループは上位カーストにあるらしい。
尤もトップは葉山グループで相模グループは二番手ということ。
「そんな人達が奉仕部へ何の用事だったんでしょう?」
「さぁな、ただまぁ」
「ただ?」
「面倒ごとが舞い込んでくる。そんな予感はあるな」
ぽつりと八幡は呟いた。
「文化祭って、何なの?」
ひょこっとダークゾーンからペガが現れる。
「お前、学校では顔を出すなよ」
「えぇ~、でも、今はいろはちゃんしかいないじゃん」
「ほかに人がくるかもしれないだろ」
「まーまー。文化祭をペガは知らないの?」
八幡を宥めながら一色はペガに尋ねる。
「うん」
「文化祭っていうのはねぇ、学生がやる祭りだよ」
「お祭りかぁ、楽しそうだね!」
「んなわけないだろう、事前準備とか、夜まで集まって作業とか面倒でしかない」
ぽつりと漏らしながら八幡はマッカンを飲み干す。
一年生の時はいろいろあって、文化祭は参加していなかったものの、中学の時にトップカーストが決めたことに巻き込まれて、いろいろと手伝ったことは苦い思い出、もとい黒歴史のようなものだ。
八幡として文化祭は面倒なものだと考えている。
「あ、じゃあ、先輩、文化祭、一緒にみてまわりませんか?」
「なんで?」
「いいじゃないですかぁ…………貴重な財布になりそうだし」
「聞こえているんだけど?まぁ、いいか」
「やった~!」
嬉しそうな一色の表情を見ていると自然と八幡も笑顔になった。
そんな彼らの様子をペガも眺める。
下校時間まで一色は騒がしかった。
「ここは……」
どこまでも広がる闇。
宇宙の空は不気味な闇に覆われて、地面の生命は次々と枯れ果てる。
命の存在しない場所。
そんなところに俺はいた。
周りのものが色を失い、すべてが闇へ飲まれてしまう。
「キャアアアアアアアア!」
悲鳴に八幡が振り返ると生き残りの星人達が闇に飲み込まれる。
靄のような闇は生き物のようにうねりながらゆっくりと逃げようとしていた星人達を捉える。
「やめろ!」
八幡が手を伸ばすも彼らは闇の中に消えた。
閉ざされた闇の世界に取り残された者達が次々と消えていく。
そんな光景を笑うような声が響いた。
「あれは…………」
闇の中心地。
そこで笑うように鳴き声を出すもの。
「大いなる黒き者、そうだ、あれは」
『暗黒の支配者』
眩い輝きとともに八幡の前に一人の光の戦士が現れる。
「セブン……これはアンタが俺にみせているのか?」
八幡の前に現れるウルトラセブン。
「セブン?」
しかし、ウルトラセブンは何も答えない。
セブンの額にあるビームランプから緑色の粒子が八幡に向かって降り注いでいく。
「セブン!なぁ、セブン!」
遠ざかっていくウルトラセブンを追いかけようとする八幡。
段々とセブンの姿が遠ざかる中で八幡は必死に手を伸ばして。
「変な夢を見た」
自分の部屋であることを確認して、八幡は上半身を起こす。
変な夢をみた影響なのか着ているパジャマは汗でぐしゃぐしゃになっていた。
「不吉なことの起こる前兆じゃないだろうな」
ぽつりと呟きながら八幡は机の引き出しをあける。
カプセル怪獣達の入っているピルケース、そして、ウルトラアイ
八幡は引き出しの中からウルトラアイを取り出す。
「アンタは俺に何を伝えようとしたんだ?セブン」
ウルトラアイを見つめていた八幡は少ししてベッドの中へ戻る。
すぐに答えの出ないことは後回しにしよう。
妹がフライパンとお玉を手にしてやってくるまで八幡は睡眠をすることにした。
「八幡、文化祭はどうするの?」
昼休み、戸塚が八幡へ尋ねてくる。
文化祭の実行委員を午前中に決めたかったのだが、葉山隼人が遅刻するということで、昼から話し合おうということに決定していた。
「どうするもなにも、俺は何もせずにのんびりしていたい」
「アンタ、そればっかりだね」
呆れた表情を浮かべて、川崎沙希が話に入ってくる。
「でも、実行委員だけは勘弁してほしいかな。帰りが遅くなるし」
「あぁ、そうだなぁ……帰りが遅くなると小町が心配する」
「八幡は妹さんのことが大好きなんだね」
微笑む戸塚に八幡が話そうとした時だ。
「ヒキオ」
呼ばれて振り返ると、三浦が立っていた。
「その、少し話があるんだけど、いい?」
普段なら川崎といがみ合うのだが、今日は何やら様子がおかしい。
異変に川崎も気づいているらしく、沈黙していた。
「悪い、席を外すわ」
二人へ謝罪を入れながら八幡と三浦の二人は廊下に出て、歩いていく。
「その、ごめん、呼び出して」
「別に、気にしていないぞ」
「ありがと、その、こういう相談をアンタにすべきかどうかってところもあるんだけど」
「いいぞ、一人で溜め込むよりも誰かに話したほうがいいらしい」
「ありがと、その話したい内容は隼人のことなの」
「葉山?」
三浦の相談内容は葉山隼人の様子がおかしいということ。
メフィラス星人が起こした人間生物X事件からぎくしゃくした関係のままだったが、八幡達と接していく中で歩み寄ることを決めたのだが、葉山隼人の異変に気付いたという。
「その、どこがおかしいとか、言えないんだけどさ……いつも浮かべている表情に影というか、なんか肌寒いものを感じる」
「肌寒いもの?」
その時のことを思い出したのか三浦は自分の体を抱きしめる。
「あーしの勘違いかもしれないけど。今の隼人はなんか、怖い」
「それ、由比ヶ浜に相談とかは?」
「ユイに相談しようと思ったんだけど、その時に限って隼人にみられている気がして」
八幡は思考する。
三浦優美子の話にうその類は感じられない。
自分は気づいていないがもしかしたら、葉山隼人が何か悩みを抱えているとかそういうものだろうか?
「とりあえず、俺のほうでそれとなく確認してみる……もし、三浦の方で何か気づいたこと、感じたことがあったら教えてくれるか?」
「まかせろし!」
いつもの調子の三浦の言葉に八幡は頷いた。
昼過ぎ、文化祭実行委員も決まって八幡はいつものように奉仕部の部室へ足を運ぶ。
「遅かったわね。遅刻谷君」
「挨拶代わりに軽いパンチってどうなの?」
いつものやりとりを行いながら距離を開けて八幡は椅子へ腰かける。
「ゆきのん!ひっきー!」
最後にやってきたのは由比ヶ浜だった。これで奉仕部のメンツがそろったわけだが。
「そういえば」
八幡が思い出したように話そうとしたところで、教室のドアが開いた。
「今日はいるみたいだね」
入ってきたのは先日、部室へやってきた女子生徒達だった。
「貴方、相模さんね」
「へぇ、知っているんだ?」
「名前と顔だけよ。他は全く知らないわ」
淡々とけれど、ばっさりと雪ノ下は告げる。
一瞬、相模という女子生徒の顔が歪んだことを八幡は見逃さなかった。
「ここへ来たということは奉仕部へ依頼に来たということでよろしいのかしら?」
「うん、私さぁ、文化祭の実行委員に立候補したの、それで、実行委員長もやるつもりでさぁ、雪ノ下さんに手助けしてほしくて」
「手助けといっても、どこまでのレベルを求めるのかしら?」
「手助けは手助けだよ、困っているときに助けてほしくてさぁ」
「……一応、私も文化祭の実行委員に選ばれているから協力はできる」
「本当!」
「でも」
喜ぶ相模へくぎを刺すように雪ノ下は嬉しそうにしている相模とその取り巻きへくぎを刺す。
「あくまで手助けは手助け……最後は相模さん。貴方がきちんと終わらせること、それが条件よ」
「えぇ、まぁ、手助けしてくれるんだし楽勝だよね!、じゃあ、会議の時によろしくぅ」
ひらひらと手を振って嬉しそうに去っていく。
「さがみん、相変わらずだなぁ」
「知り合いか?」
「前に同じグループだったんだ」
「ふーん」
由比ヶ浜に八幡は短く答えた。
「ねぇ、ゆきのん、さっきの依頼。引き受けるの?」
「えぇ」
「大丈夫か?さっきの相模とかいう奴、明らかにお前を利用するつもりでいたみたいだが」
彼女達は明らかに雪ノ下を利用するつもりで奉仕部へやってきている。
魂胆がわかりきっていることに協力するべきではないだろう。
「そうね、でも、私としても少し挑戦したいことでもあったの」
「挑戦?」
「……気持ちに整理がついたら話すわ、ごめんなさい」
「謝ることないよ!あたし、ゆきのんのこと応援するから!」
「由比ヶ浜さん、ありがとう」
由比ヶ浜は嬉しそうに雪ノ下へ抱き着いた。
驚きながらも雪ノ下は彼女を受け入れている。
「あ、でも、あたし達、手伝えないねぇ」
「そうだな、俺たちは文化祭の実行委員じゃねぇからな」
八幡達のクラスの実行委員、女子は先ほどの相模、男子はなんと葉山隼人である。
葉山隼人が文化祭実行委員になった為、やる予定だった演劇の内容も変わるらしい。
海老名が血の涙を流していたことを八幡は今になって思い出す。
「そう、残念だわ。比企谷君をこき使えると思っていたのに」
「おいおい、こき使う前提かよ」
呆れながらも話をしている彼らの表情は笑顔だった。
「はい、これ」
薄暗いところで、顔を隠している人物へ一人の女性があるものを差し出す。
室内が薄暗いため、全貌はわからないが片手でもてる何かであることはわかった。
「これは?」
「闇のアイテム、といえば信じるかな?」
手の中でもてあそびながら静かに尋ねる。
「なぜ、こんなものを?」
「それは時が教えてくれる。まぁ、慌てなくていいよ。それよりぃ、キミのところで文化祭があるんだよね」
「はい」
「それさぁ」
女性は笑みを広げる。
「ぶっ壊してやりたいと思わない?」
微笑んだ女性の言葉に彼は笑みを浮かべた。