新キャラが二人ほどでます。
鶴見留美はボッチになっていた。
別段、彼女が何かをしたというわけではない。どこかのボッチだといっている少年と違って何かをしでかしたというわけでもない。
ただ、周りの連中が勝手に鶴見留美をハブった。
留美自身はそれを受け入れただけである。
それから彼女はボッチ生活が始まった。
ボッチ生活に変化が起こったのは林間学校の時。
鶴見留美は一人の少年と宇宙人に出会った。
それから色々あって命の危機も潜り抜けて、少しばかり成長したと思う。
成長したといっても心の話であって、身長や体は変わっていない。
付け加えると留美の周りも変化が起こっていた。
「(またか)」
周りから向けられる視線。
毎日のように突き刺さってくる視線に留美はため息を吐く。
ギャビッシュの事件以降、鶴見留美は宇宙人だという変な噂が広がっていた。
それは根も葉もない噂。
少し前なら皆がバカにして終わっていただろう。
しかし、現在、多発する宇宙人による怪事件や怪獣騒動。それらによって鶴見留美が宇宙人だという根も葉もない噂は様々な尾ひれがつきまくり、教室内で腫物を扱うような状況になっている。
留美自身は正直いって気にしておらず、ポケットの中のものを握りしめる。
自分が宇宙人でないことはわかっていることだし、何より本物の宇宙人の目でみたことで噂など全く信じていなかった。
嫌なことがあるといえば、奇異の視線を向けられることくらい。
それも数ヵ月数か月続いてしまえば、慣れてしまうけれど。
「あ、留美ちゃーん!」
教室ではボッチの鶴見留美だが、そんな彼女と一緒にいてくれる変わり者達がいた。
「留美ちゃーん」
やってきた男の帽子から覗いている額を小突く。
「名前で呼ばないで、私は年上、鶴見さんって呼びなさい」
「ごめんね、留美ちゃん」
「……はぁ」
留美はため息をこぼす。
「悟、早すぎるんだよう。あ、鶴見さん!」
もう一人、活発な笑顔を浮かべる男子。
帽子の少年が梅宮悟、もう一人が新星勉。
二人は留美の年下の小学四年生。
最初は留美の噂を知らなかったが、知っても離れることのなかった年下の男子達。
彼らと一緒にいると林間学校で出会った目が独特の男子高校生と彼女達のことを思い出す。
毎日、留美は彼らと一緒に行動していた。
公園で遊ぶこともあれば、市立図書館で宇宙の本を読むこともあれば、勉強を留美が教えるなど。
「ねぇ、鶴見さん。入ったら誰も出てこないレストランって知っている?」
「何それ?」
「最近、学校で噂になっているんだ。商店街の片隅にできた小さなレストラン。そこはとてもおいしいらしいんだけど、一度入った客は外に出てこないって話、その場所を見つけたんだ!」
「なにそれ?おいしい料理が毎日たくさん食べられること?」
首を傾げる悟に勉や留美は沈黙する。
「そのレストランっていつからあるの?」
「さぁ?」
留美の問いに勉は首を傾げる。
「いってみようか」
「うん!」
「おいしいもの食べられるかな?」
ズレた発言をする悟の言葉に留美は苦笑して、勉は呆れながら噂のレストランへ向かうことにした。
彼女達はもう一つ、都市伝説や噂の類があればそれを見に行く、三人は探検と称した行動をしている。
危ないことはしないように注意はしているも、ドキドキワクワクを求めるように留美達は噂のあるところへ向かっていた。
――一度、入ったら二度と出てこないレストラン。
噂の真相は定かではないが、小さな商店街の片隅にあるレストラン。
洋食をメインとしているらしいが値段や味についての評価は不明。
噂なのはとてもおいしくて入ったら二度と店の外へ出なくなってしまうということ。
店の名前や詳細が定かではない為、もし、そんな店があるのならば、一度は訪問してみたいところ。
ネットの雑誌記者が書いたと思われる小さな記事。
留美がみつけた内容を繰り返して読むもわかる情報は少なすぎた。
「ねぇ、新星君、本当に向うところが噂のレストランなの?」
「間違いないよ!僕、レストランの近くで待機して時間を数えたんだけど、一時間過ぎても出てこなかったんだ」
「(一時間もそのレストランを見張っていたって、色々と問題があるような?)」
願うならその努力を勉強へ向けるべきではないだろうか?
彼女達の保護者のような気分に留美はなった。
目的のレストランはすぐにみつかる。
確かに商店街の片隅に佇むように存在していた。
「えっと、なんてよむんだろう?」
悟がレストランの名前を読もうとして首を傾げた。
「うえぇ、読めないや」
「レストラン……ホープレス?だと思う」
「「すっげぇ」」
店の名前を読んだ留美に二人は目をキラキラさせる。
二人からすれば年上で英語を読める人はすごいという認識がある様子。
話をしているといちゃつきいながらカップルが店の中へ入る。
数分ほどしてサラリーマンの男性。
続けてわいわい楽しそうに買い物帰りの主婦達が店へ入った。
「どうするの?」
「中へ……入ってみよう」
「でも、お金がないと入れないんじゃないかな?」
悟の言葉に留美と勉は財布の中を開ける。
「二人合わせて二千円」
「この前、ゲーム買ったからなぁ」
「でも、これなら何か一品は食べられるんじゃないかな」
悟の言葉で調査という名目で留美達は店内へ入る。
尚、悟の所持金は五円だった。
おそるおそるといった様子で三人は店の中へ足を踏み入れる。
「いらっしゃいませ」
店内へ入ると長身の男性店員が出迎えた。
留美達よりも一回り、二回り大きい男性の姿に気圧されながら「子供三人です」と告げる。
「かしこまりました」
ニィィィと笑みを浮かべながら男は留美達を円卓のテーブルへ案内する。
用意された椅子へ三人が腰かけると男がメニュー表を渡してきた。
受け取ってメニューを見ているふりをしながら留美は周りを見る。
店内は外観と比べて思った以上に広く、留美達の他に八組の客の姿が確認できた。
「何にする?僕、お腹ペコペコだよ」
「いや、何しに来たのか忘れたの悟?」
呆れる勉だが、少し空腹だったようで仲良くメニューを見る。
夕飯が近いということで留美達は三百円のフライドポテトを注文することにした。
男はオーダーを承ると笑みを浮かべて離れていく。
留美は先ほどから男の浮かべる笑みに嫌なものを感じていた。
理科の実験でボーフラをズタズタにしている男子生徒のような嫌な笑み。
それと同じものを留美は感じて寒気を覚えた。
「やっぱり、外に出る?」
「え、どうして?」
「だって、なんか嫌な感じがして」
留美の言葉に勉や悟も周りを見たが、皆、楽しそうに談笑している。
嫌な感じはまったくしないという。
やがて、料理が運ばれてくるも留美は絶句した。
やってきた料理はゴミだった。
頼んだフライドポテトではない、紙くずや食べかすや千切れた枝などたくさんのゴミが皿の上に載っている。
周りは何も思わないのか?留美は周りを見るも同じように皿の上へのっている沢山のゴミが他のお客のところに出されていた。
誰も、目の前の料理をゴミだと思っていない。
皆がおいしそうにゴミを口にしていた。
「おいしそう!」
「お腹ペコペコ!」
絶句している留美の前で二人がゴミへ手を伸ばそうとした。
「ダメ!」
二人の手をたたく留美。
このゴミは食べていけない。
留美は二人の手を掴んで机の下に隠れる。
「え、なになに?」
「鶴見さん?どうしたのさ」
「しっ!」
静かにするように促してゆっくりとテーブルの下から顔を出す。
ゴミを食べていた人達の顔がドロドロと崩れていく。
ドロドロ崩れていき、やがて肉塊となる。
その光景に息を飲む。
――ここは本当に危険な場所だ。
顔をひっこめた留美はポケットの中から携帯端末を取り出す。
震える手であるアドレスを選び、メールを送る。
「つ、鶴見さん?」
戸惑う勉へ静かにと口を動かしいながらメールを送信した。
後は助けが来るまで大人しく。
「みぃつけた」
その時だ。
頭上から留美達を覗き込む男の姿があった。
「逃げろ!」
勉が叫んで留美達は走り出す。
目指すは出口。
それだけを考えていた留美達だが壁にぶつかる。
「え、あれ!?」
「出口、出口がない!」
「嘘、本当に出られないの!?」
壁をぺちぺちと叩く。
さっきまであったドアが綺麗になくなっていた。
噂の通り入ったら出られないレストラン。
「勉!」
留美は背後から近づいてくる男に気付いて勉の腕を引っ張る。
つられて悟の腕も引っ張られて背後から男の襲撃を逃れた。
男は勢いのまま壁に激突してしまう。
バランスを崩した男から視線を外して留美は厨房への入口を見つける。
扉がないのなら探すしかない。
「あっちに行く!」
留美の言葉に二人は頷いて厨房へ逃げ込んだ。
「なに、ここ……」
「僕達、厨房に飛び込んだよね」
「ここ、どこ?」
男から逃げるために厨房へ飛び込んだ留美達だったが、目の前に広がるのは無機質な倉庫ともいうべき場所。
その部屋は無造作に並んだ箱の山がある。
箱は留美達の読めない数字か言語のようなものが刻印されていた。
「おやおや、困りましたねぇ」
「ひっ!」
現れた存在に留美は息を飲む。
倉庫の奥から現れたのは宇宙人だった。
昆虫型宇宙人はランランと瞳の部分を発光しながらゆっくりと三人へ近づいてくる。
「あぁ、そう怯えずに別にとって食おうというわけではありませんよ。こうみえて、私、この星でいうところのベジタリアンなので」
ふざけたような態度をとる宇宙人に三人は後ろへ下がろうとした。
しかし、入ったはずの扉はいつの間にか消えている。
「私はビジネスマンなので、金にならないような殺人は致しませんよ。まぁ、今回は致し方ないかもしれませんが」
怪しく笑いながら光線銃を突きつける宇宙人。
留美は後ろの二人を守るように前へ出る。
「おやおや、勇敢なお嬢様だ。そういえば、一つ気になっていたことがありましてね?」
銃を突きつけたまま宇宙人は留美へ尋ねた。
「この施設には人の視覚や味覚を狂わせるシステムがあったのですが、なぜ、貴方はその影響を受けなかったんですかね?」
宇宙人は気になっていた。
なぜ、目の前の少女はシステムの影響を受けなかったのか。
その原因を探っておかねば後々、厄介なことになるかもしれない。
銃を突き付けられながら留美は首を振る。
「そんなことを知って、どうするの?」
「今後の為ですよ。今はこういう小さなところですが、他の惑星でも似たようなビジネスを行おうと考えているので」
「ビジネス?」
「お前、さっきから何を言っているんだよ!」
「おや、わかりませんか?私、ビジネスマンなんですよ。ここにあるのは顧客が求める食材。私はそれを用意して届けるというビジネスです」
「ビジネスって、人間じゃないか!」
「そうですね。ですが、他の惑星では食材としての価値もありまして」
勉や悟の言葉にも宇宙人は意を貸さない。
「さて、原因はわかりませんがこれ以上の会話は時間の無駄です。あぁ、安心してください。始末して使える部位は顧客へ特別サービスとして提供しますので」
どこに安心する要素があるのか!
叫びたくなる留美だったが、後ろの二人を守るように両手を広げた。
その時。
天井を破壊して眩い閃光が降り注ぐ。
あまりの光に留美は一瞬、目を閉じてしまう。
瞬きを繰り返して、前を見る。
「あ……」
留美の目の前に立つのは赤い戦士。
視線に気づいたのか彼はゆっくりと振り返る。
「もう、大丈夫だ」
温かい手が留美の頭を優しくなでる。
彼女達を守るためにやってきた戦士(ヒーロー)がいた。
「なっ!」
天井を壊して現れた赤い戦士にマーキンド星人は息を飲む。
光線銃を構えているもその手はぶるぶると震えていた。
地球人の少女たちをみていた戦士が振り返った。
ウルトラセブンの瞳がマーキンド星人を捉える。
「く、この!」
マーキンド星人が指を鳴らすと周囲からロボット兵士が現れた。
「奴を殺せ!」
指示を受けたロボット兵士がウルトラセブンへ襲い掛かる。
セブンは一体目の攻撃をかわして懐へパンチを放つ。
一撃でロボット兵士のボディはバラバラに飛び散る。
「デュワ!」
額のビームランプからエメリウム光線が発射される。
光線は次々とロボット兵士のボディを貫く。
瞬く間にマーキンド星人の用意したロボット兵士が破壊されてしまう。
「このぉ!」
マーキンド星人が光線銃を撃つ。
放たれた光線をウルトラセブンは片手で受け止めた。
マーキンド星人はセブンが侵入するために開けた穴から飛翔して逃走する。
ウルトラセブンも同じように後を追いかけた。
建物の上で対峙するウルトラセブンとマーキンド星人。
「くそっ、よくも私のビジネスを!」
「ビジネスだと?」
「そうだ!地球人を美味とする他の星系へ売買するための事業もお前のためにオジャンだ!この損失をどうしてくれる!」
「お前のやっていることは星の生態系を乱すことだ!」
「何を言う、増えすぎというくらいにうじゃうじゃいるじゃないか!ほんの少しいなくなったとしても誰が気にする?気にする奴らなどいない!そんな奴らを有効活用してなんの問題がある?」
マーキンド星人の言葉にセブンは怒りで拳を握りしめた。
「お前のやっていることは命を踏みにじる行為だ!」
叫びと共にウルトラセブンは頭頂のアイスラッガーを投げる。
「ハハッ!命だと?周りに興味を示さないような奴らに――」
最後までマーキンド星人が言葉を紡ぐことなくアイスラッガーがその体を両断した。
「まったく、なんていう無茶をしているんだ?ルミルミ」
「ルミルミっていうな、留美って呼んで!」
比企谷八幡は公園のベンチへ腰かける。
隣のベンチでココアを飲んでいる留美と気絶している勉と悟の姿がそこにあった。
鶴見留美がメールを送った相手は比企谷八幡だった。
八幡はメールの内容を見るとすぐに情報を調べてレストランへ向かう。
レストランが特殊なバリアで守られていることに気付き、彼はウルトラセブンに変身して強引に突入。
間一髪のタイミングで留美達を助けることができたのである。
「あのお店、どうなるの?」
「防衛軍に通報したから調査が入るだろう……残っている情報から星人の侵略拠点って判断されるだろうな」
「……あの店の人達は?」
留美の質問に八幡は静かに首を振る。
「俺がメールをみるのが少しでも遅かったら危ないところだったんだからな」
「……それは、ごめんなさい。でも」
「あん?」
「助けてくれてありがとう」
ココアを飲む手を止めて留美は笑顔を浮かべる。
その笑顔を直視するのが恥ずかしい気持ちになって八幡は視線を逸らした。
しかし、危ないことをしていたのは事実なので三人にお説教をする八幡であった。
「あ」
家の中で鶴見留美は思い出したようにポケットの中を探る。
「八幡にこれのことを聞くの、忘れていたなぁ」
ポケットの中から出てきたのは赤い石。
光で反射する石は宝石のように赤い輝きを放っている。
掌にのせている石は太陽の様にぽかぽかして温かい。
「ま、今度、聞けばいいかな?」
留美は石を大事な宝箱の中へしまった。
今回の話ですが、昔読んだ絵本をベースにしています。
タイトルは忘れてしまいましたが、昆虫の経営するレストランで出される食事はゴミ、ゴミを食べた人たちは虫になり、経営者の虫たちに食べられるという話、だったと思います。
尚、ルミルミ達の話は今後も、展開される可能性があります。
次回は文化祭編へもどります。
急展開になるかもしれませんがお付き合いしていただけると嬉しいです。
それでは。