やはり俺がウルトラセブンなのはまちがっている。   作:断空我

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ウルトラマンタイガ、今回、闇堕ち脱出からのようやく相棒としての再スタート?

これからどうなるのか楽しみ。

ボイスドラマ、タイタスさん、春ごろにどんな反応をするのか楽しみだ。




第五話:天国と地獄

 

「遅れましたぁ」

 

 教室のドアを開けて中に入る八幡。

 

「遅刻か?比企谷」

 

「すいません、寝坊しました。反省しています」

 

 ぺこりと会釈する八幡。

 

 ここで不用意に言い訳しても良いことがあるわけがない。

 

 沈黙が一番。

 

 何より相手は平塚先生、不用意な発言をしてゲンコツを受ければたまったものではない。

 

 そう思っていると背後からドアが開く音。

 

 振り返ると長い髪をポニーテールにして、総武高校の制服を少しばかり着崩した女子。

 

 鋭い目つきに八幡は後ろへ下がってしまいそうになった。

 

「川崎、お前も遅刻か」

 

「すんません」

 

 短く会釈して川崎と呼ばれた少女は席へついた。

 

「全く、おい、比企谷、いつまで立っているつもりだ?」

 

「あ、すんません」

 

 謝罪して八幡は自身の席へ向かう。

 

 ちらりと過ぎる際に川崎の姿を見るも、彼女は肘をついて、窓からみえる景色をみていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。

 

 

 

 

 八幡は妹の小町と共に近くのファミレスへ来ていた。

 

「偶にはお兄ちゃんのオゴリ夕飯も良いよねぇ~」

 

「ペガも、ペガも!」

 

 足もとのダークゾーンからペガが嬉しそうに顔を出す。

 

 こういう場でもし見つかったらという不安もあるけれど、ファミレスの周りはほとんどが楽しく談笑しているか、勉強している人のみだ。

 

 こんなところに宇宙人がいるなど、夢にも思わないだろう。

 

 八幡はそう思いながら店員さんが運んできたフライドポテトを手に取る。

 

「ファミレスの料理もバカにできないねぇ」

 

「ここは店長がこだわりを持っているらしいぞ?」

 

「ペガも調べたオススメだよ!」

 

 ネットサーフィンが趣味でもあるペガによってオススメのファミレスとしてここがピックアップされたのであった。

 

 フライドポテトをつまみながら一部をダークゾーンへ落とす。

 

「お兄ちゃん、学校はどう?」

 

「まぁ、ボチボチだな。最近は日常生活から離れているし」

 

「怪事件の連続だものねぇ~」

 

 小町の言うことに八幡は苦笑する。

 

「八幡、ペガ、おかわり!」

 

「はいはい」

 

 ペガは嬉しそうにポテトを食べる。

 

「あ、比企谷さん!」

 

 食べていた時、学生服を着た男子が小町へ声をかける。

 

「あ?小町の知り合いか?」

 

「うん、友達科の子だよ」

 

「友達っていうことだよな?なんでそんな遠回しな言い方」

 

「えへへへ、お兄ちゃんを心配させないためだよ」

 

「(それはそれでどうかと思うけど?)」

 

「(まぁ、黙っていよう)」

 

 やってきた男子は川崎大志で小町のクラスメイトらしい。

 

 礼儀正しいが少しばかり固い印象があった。

 

「はじめまして、お兄さん!」

 

「お兄さんというんじゃねぇ、小町と恋人というわけじゃねぇのに」

 

「す、すいませんっす!」

 

「もう、お兄ちゃんはぁ」

 

 ため息を零すが満更でもない表情を浮かべる小町。

 

 この二人はもう、とペガはため息を吐いた。

 

 対面へ着席した川崎大志は相談があるらしい。

 

「実は、相談っていうのは姉ちゃんのことで、家の姉ちゃん、その川崎沙希っていうんですけど」

 

「……(なーんか、聞き覚えのある様な名前)」

 

 横でそんなことを思いながら話を聞く。

 

 高校二年になったところで姉は急に帰宅時間が遅くなったという。

 

 日付が変わった時、さらには朝の五時に帰宅してきた時もあったという。

 

「それで、俺、姉ちゃんが不良になったんじゃないかって、心配で、危ないこととかしているんじゃないかとか……そうじゃなくても、俺、姉ちゃんには傍にいてほしいっていうか、出来れば、妹や俺と遊んでほしいと思うんです」

 

 ゆっくりと、けれど、己の不安を吐き出すようにしながら悩みを伝える。

 

「……それで、小町、いや、俺にどうしてほしいんだよ?」

 

 八幡は途中から相談をしたい相手というのが小町ではなく自身にあることを気付いていた。

 

「その、姉ちゃんのこと、見てほしいんです。できれば、前みたいな家族仲良くみたいな、その……」

 

 少し考えながら八幡は尋ねる。

 

「おい、大志といったな。お前、父ちゃんと母ちゃんはどんな人だ?」

 

「えっと、優しいっす!休みになれば、俺達をどこかに連れて行ってくれたりしますし、うちの両親、共働きなんです。姉ちゃんに口うるさいこといわないし、俺や妹の面倒見たり、暮らしも一杯一杯なんですよね」

 

「何か、うちと少し似ているところがあるね」

 

「だな……まぁ、どこまでできるかわからんが、調べてやるよ」

 

「ありがとうございます!」

 

 ぺこぺこと頭を下げる大志に八幡や小町は笑みを浮かべる。

 

 尚、ペガは感動して涙をこぼしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、大志から姉が働いているであろうお店の名前を聞いた。

 

 ペガに頼んで調べさせたところ、エンジェルラダーというBarではないかという話になる。

 

「Barかぁ」

 

「お兄ちゃん、いけないね。未成年だもん~」

 

「そうだな、まぁ、学校で話をして駄目だったら考えるかぁ」

 

「頑張ってねぇ~」

 

「ペガも応援はするよ~!」

 

「こいつら……まぁ、最悪、雪ノ下達にも協力してもらうとしよう」

 

 明日、川崎へ接触してみることにするか。

 

 八幡はそう考えていた。

 

 そんな彼らを見ている者がいるなど、誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み。

 

「あ、比企谷、どこへいくのさ?」

 

「……人探し?」

 

「何で疑問形なんだし」

 

 話しかけてきた三浦へ八幡は少し考えて無難な答えを選んだつもりだったのだが、失敗だったようだ。

 

 気になるという様子で三浦が尋ねてくる。

 

「そうだ、三浦、お前、か、川崎がどこにいるかって…………知っていませんかねぇ?」

 

「あぁ?」

 

 きょとんとした表情から徐々に鬼のように険しい表情に変貌する三浦さん。

 

 突然のことに会話の後半が尻すぼみしてしまう。

 

「川崎?川崎つった?アンタ、何でそいつを探しているの?」

 

「いや、その、なんていうか、その川崎と話をしないといけないことがありまして」

 

「フーン、屋上でもいるんじゃない。一匹狼気取って」

 

 鼻音を鳴らしながら三浦は離れていく。

 

 今の様子からして二人は面識でもあるのだろうか?

 

 しかし、今の三浦に問いかける勇気はなかった。

 

 八幡は教室を後にする。

 

 総武高校の屋上へ向かうとこちらを睨んでくる川崎沙希の姿があった。

 

「川崎沙希さんだっけ?少しお話よろしいですか?」

 

 川崎大志から聞いていた彼女の好物と献上品として差し出す。

 

 献上品をむすっとした表情を崩さないまま、受け取る。

 

「何か用事?」

 

「まぁ、川崎大志から相談を持ち掛けられた」

 

「大志から?」

 

「あぁ、単刀直入に言う。夜のバイトはやめておけ、弟が心配している」

 

「他人のアンタは関係ないよね?」

 

「確かに俺は赤の他人で関係ないとはっきりいえるだろう。だが、今回はお前の弟から頼まれたんだよ。一応、話してくれるなら教えてくれないか?なんで夜のバイトをしている?」

 

「教える理由はないよね」

 

「あぁ、だがまぁ、予想は出来る」

 

 ギロリと川崎が睨む。

 

「言い方は悪いけれど、金が必要なんだろ?」

 

「……続けなよ」

 

「大志から聞いた話によると、両親は共働きで生活費とか色々と苦労が絶えないと聞く。だから、自分の分くらいなんとかしようと考えたんじゃないのか?」

 

「……アンタ、超能力者かなんか?」

 

 驚きを隠さずに川崎は驚きの表情を浮かべる。

 

「俺も妹を持つ兄だからな。そういうことくらいの予想は出来る。後は知り合いにすこーし、調べてもらった」

 

 ペガの力もバカにできない。

 

 八幡はもう一つ、用意しておいた書類を取りだした。

 

「答え合わせといこうか?」

 

「……恐ろしいくらいに正解だよ、本当に。アンタ、シスコンでしょ」

 

「かもなぁ」

 

 苦笑しながら自分の分のMAXコーヒーを飲む。

 

「そこで、一つ提案だ」

 

 事態解決の為に八幡はある提案をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日後。

 

 

 

 地球防衛軍(Terrestrial Defense Force)はパリに本部を持ち、各地に支部を持っている。

 

 1966年に出現した古代怪獣ゴメスをはじめとする様々な怪獣災害、宇宙人による侵略活動を阻止するべく結成された。

 

 地球防衛軍極東本部に富士山麓の地下に秘密基地を設営しており、300人以上の職員が昼夜問わず、侵略者の活動に目を光らせている。

 

 極東本部の中にはエリート部隊であるウルトラ警備隊があった。

 

 1967年に発生したクール星人による人間消失事件を解決してからというものの、様々な侵略者や怪獣との戦いを潜り抜けてきた最強の六人。

 

 現在は第二期編成だが、ウルトラ警備隊は伝説の存在であり、栄光の隊員達として常に防衛軍内で語り継がれている。

 

 ウルトラ警備隊の司令室は常に最新鋭の設備を導入しており、今、古橋を隊長とする五人の隊員達はある映像を見ていた。

 

 

 KCBというメディアの放送をみている。

 

 

 放送の内容は「多発する怪事件について」という内容。

 

 近年、多発する侵略者による怪事件を皮切りに怪獣騒動、そして、現れた赤い巨人「ウルトラセブン」について。

 

 ウルトラ警備隊が苦戦するような怪獣を次々と倒していく赤い巨人。

 

 その巨人は敵か味方かということでKCBが呼んだゲストが司会者の進行によって議論が行われていく。

 

 普段はマスメディアの内容などみている暇などないウルトラ警備隊だが、彼らもウルトラセブンという存在に興味があり、どのような内容なのかみてみたいということで正面スクリーンに映されていた。

 

「地球は常に狙われています。地球防衛軍が呼称する赤い巨人、ウルトラセブンもいずれは地球を狙うはずです」

 

「ですが、ウルトラセブンは多くの侵略者や怪獣を倒しています。先日、発生したケムール人による人間誘拐事件においてもウルトラ警備隊を手助けしたという話があります」

 

「それも演技ですよ。栄光の部隊といわれるウルトラ警備隊、彼らの信用を得ることができれば、裏でどんなことをしていても、誰も疑うことをしない」

 

「つまり、侵略のための準備であると?」

 

 テレビで行われる内容はほとんどが「ウルトラセブンは侵略者」という話で進んでいる。

 

 内容を見ていたウルトラ警備隊の司令室ではリサが憤慨していた。

 

「信じられない!ウルトラセブンは私達の為に戦ってくれているのに!」

 

「自分達よりも強大な力を持つ存在を人は恐れる」

 

「ユキ隊員はウルトラセブンを侵略者だというんですか!?」

 

「そうじゃない、人は正体不明の存在、自身より強大な存在を恐れる。それ故にウルトラセブンという未知の存在を恐れるという事は仕方のないことだといいたいだけ」

 

「二人の言い分もわかるが……実際のところ、俺達もウルトラセブンについては何もわかっていないしな」

 

「侵略者なら叩き潰せばいいだけですよ!」

 

 東郷の漏らした言葉に梶が攻撃的な意見を告げる。

 

「隊長、隊長はウルトラセブンのこと、どう思います?」

 

 渋川の問いかけに古橋は全員を一瞥した後。

 

「そんなもの、自分達で考えろ」

 

 柔和な笑みを浮かべながら置かれている湯飲みの茶を飲んだ。

 

 納得いかないという表情をしている隊員達だったが定時パトロールの時間になったため、ヘルメットを手にして渋川とリサの二人が司令室を出ていく。

 

 極東本部の地下にはウルトラホークをはじめとするライドメカの格納庫、ポインター等の各種車両の為の駐車場がある。

 

 誘導員の許可が下りた特殊車両ポインターが各都市に繋がる地下の秘密通路(シークレット・ハイウェイ)を通って道路へ出ていく。

 

 運転席にいる渋川は助手席にいるリサが怒っていることに気付いた。

 

「おいおい、リサ隊員。まーだ、怒ってんのか?」

 

「だって、一緒に戦ってきたウルトラセブンをあんな否定されたら我慢できませんよ!」

 

「こらこら、キミはウルトラ警備隊なんだからね?冷静かつ的確に!が大事なんだからさぁ」

 

「冷静かつ的確に!私はウルトラセブンが味方だと思っています。渋川隊員はどうなんです!?」

 

「俺だって、ウルトラセブンは味方だと信じたいなぁ、だが、確固たる証拠がないもんだからなぁ」

 

「共に戦っているじゃダメだと?」

 

「報道で演技だという可能性もあるからなぁ……ま、俺達のやることは変わらねぇよ。侵略者を倒して、地球の平和を守るってもんだ!ウルトラセブンが敵味方かどうかについてはいずれ、答えがでるって」

 

 渋川の言葉にリサも一応の納得する様子を見せた。

 

 直後、ポインター内に緊急通信が入る。

 

「こちら、ポインター!」

 

『基地のレーダーが高エネルギー反応を検知しています。至急、急行してください』

 

「ポインター了解!」

 

「向かうぞぉォ」

 

 アクセルを踏みながらポインターを目的地へ急行しようとした。

 

 遠くから赤い閃光が空へ走る。

 

 直後、大きな爆発が起こった。

 

「渋川隊員!!」

 

「なんてこった!」

 

 驚きのあまり言葉を失いつつも渋川は目的地へポインターを走らせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 爆発が起こったのは無人の廃ビル。

 

 取り壊しが決まっていた建物だったことが幸いで被害者はゼロだった。

 

 ポインターで駆け付けた渋川とリサは警察の現場検証が終わるのを待っている。

 

 爆発が起こったといっても、今回の事件が人的被害によるものなのか、侵略者の仕業なのかわからない為であった。

 

「運が良かったですね、爆発があったにしても、人がいなくて」

 

「そうだなぁ、ま、ウルトラ警備隊や警察、その他は大変だけどなぁ」

 

 渋川が楽観的に呟く。

 

 リサは倒壊した建物を見ながらなんともいえない表情を浮かべていた。

 

「え、爆発物の反応がない?」

 

 やってきた警察から告げられた言葉に渋川が驚きの声を上げる。

 

「え、じゃあ、これ、どうやって倒壊したっていうんだ?」

 

 困った表情を浮かべる警官の話では周囲を捜索したけれども、爆発物はおろか、火薬の反応も見られなかったという。

 

 リサがポインターの車内に置かれていた機械を使っていたが反応がない。

 

「どういうことだよ」

 

 崩壊した建物の跡地をみながら渋川は額から流れる汗をぬぐった。

 

 何か嫌な予感がひしひしと感じ取る。

 

 事件はこれからはじまるのではないだろうか?

 

 そんな予感がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜に事件が起きた。

 

『聖なる炎が穢れを焼き払うであろう!キリエル人に従うのだ!キリエル人こそが人類を救うことができる。従う証をみせなければ、さらなる炎が穢れを焼き払おうとすることになろう!』

 

 ニュース放送中に美人キャスターの一人の髪が逆立ち、瞳の周りが真っ黒に染まると天井へ浮かび上がった。

 

 突然の事態に放送を止める暇もないまま、映像は全国に流されてパニックを巻き起こしその日に発生したビル倒壊事件が大々的に報道されることとなる。

 

 翌日、総武高校において、話題となっていた。

 

「何か、みんな、騒いでいるね……」

 

「知らない」

 

 机に突っ伏している八幡に戸塚が声をかける。

 

 周りを見れば、誰もが携帯を片手に昨日のニュース、キリエル人の予言について喋っている。

 

 由比ヶ浜は三浦と海老名の三人と騒いでいる彼らの様子を眺めていた。

 

「八幡はどう思う?キリエル人について」

 

「内容はテロリストが国家へ犯罪声明を流すものと似たようなものじゃないか?まぁ、大抵、あぁいうものは無視されるか却下されるか相場は決まっているけどな」

 

「でも、ビルを原因不明の力で倒壊させたってきくよ?」

 

「それが本当にキリエルなんちゃらがやっていればな」

 

「え?」

 

 ぽかんとする戸塚に八幡は面倒そうに話す。

 

「爆発が起こってすぐにあぁいう放送がされたから誰もが爆発=キリエル人の仕業って繋げてしまう。もしかしたらそこを狙ってあぁいうインパクトある放送をしたって考えられるだろ?」

 

「そっか、凄いね!八幡」

 

「まぁな(おそらくは違うけどな)」

 

 表面上は別の考えを伝える八幡だが、本当は違う。

 

「(あの映像に合成や細工の類は感じられなかった。直接、みたわけじゃないがキャスターに何者かの意識が入り込んだと考えられる……これは明らかな侵略行為だ。ウルトラ警備隊が活動を起こすだろうなぁ)」

 

 八幡は周りを見る。

 

 昨日の映像が原因で誰もがキリエル人について話し合っている。

 

 まるで新たな新興宗教の誕生だな、と心の中で彼は思った。

 

「ねぇ」

 

 考え事をしていたところで声をかけられる。

 

 視線を向けると眉間へ皺を寄せた川崎沙希がいた。

 

「少し、良い?」

 

 複数の視線が集まるのを感じながら八幡は頷いた。

 

「この前はありがと、アンタのおかげで夜間にバイトとかしなくて済むようになった……あと、大志や親と話し、した」

 

「それはよかったな。ただ、俺に感謝されてもなぁ、俺はただ大志の奴に頼まれた。感謝なら家族を大事に思っていた大志に言ってやれ……それか、何か飯でも奢ってやるんだな」

 

「そうする……」

 

 家族の話題は恥ずかしいのか、視線を逸らす川崎。

 

 少しして、視線をさ迷わせながら話を切り出す。

 

「それで、さ、アンタ、おかしな出来事とか、そういうことに詳しいって話を聞いてさ、相談したいことがあるの」

 

「おかしなって、何だよ」

 

 話を聞いたというが誰が言ったのだろうか?

 

「一年生で噂になっていたよ?怪しい出来事はアンタに相談すればいいって」

 

「(一色だな)」

 

 すぐに噂の出先がわかった。

 

 呆れながら八幡は頷いた。

 

「まぁ、出来ることと出来ないことはあるが……話を聞かせてくれ」

 

「昨日、私の前に予言者っていうのが現れたんだ」

 

 川崎の話は驚くことに昨夜、あのニュース放送が終わった直後のことらしい。

 

 予言者と名乗る男が川崎の前に現れて、キリエル人へ忠誠を誓う様にと言ってきたのだ。

 

 もし、誓わないのなら大勢の者が炎で焼かれることになるという脅しまで。

 

 突然のことに戸惑って動けない川崎の前から予言者は姿を消したという。

 

 時間にして五分程度。

 

 夢のような話に川崎自身も現実だったのか、自身の妄想だったのかわからないという。

 

「それ、お前一人だけの時に?」

 

「うん……ただ、その、本当にわかんないだけど、ベランダの宙にソイツ、浮いていたんだ」

 

 八幡の表情が一瞬だけ変わる。

 

 宙に浮いていた。

 

 川崎の前に現れた予言者が実際にいたというのならそれは人間ではない。

 

 人の姿をした何かであろう。

 

「夢だったのかな、私、怖いんだ」

 

 険しい表情は不安を必死に隠しているのだろう。

 

 他からみれば機嫌が悪そうにみえる。

 

 だが、大志から聞いた彼女の印象から弱いところをみせたくないのだろう。

 

「わかった、川崎、もし、変な事があれば、俺に相談してくれ。解決できるかはわからないにしても、一人で抱え込むよりマシだ」

 

「……ありがと」

 

 険しい表情を緩ませて川崎が感謝の言葉を告げる。

 

 その時、川崎の携帯端末がブルブルと震えた。

 

「あ、ごめん」

 

 携帯の画面を見た川崎が戸惑った声を漏らした。

 

「どうした?」

 

 彼女の異変に気付いた八幡が尋ねる。

 

 震える手で八幡へ携帯の画面を見せた。

 

【穢れを焼き払う炎は止まらない。貴方がキリエル人へ従うという証を見せない限り、炎は次々と噴き出すだろう。さぁ、今回はH-1地区です。予言者】

 

 メールの内容は明らかな脅しのようなもの。

 

 驚くべきところは送り主のアドレスが表示されていないという事だ。

 

 これだけで、相手が普通でないことが窺い知れる。

 

 総武高校の屋上から離れたところからもくもくとあがる黒煙がみえた。

 

「ウソ、でしょ」

 

 信じられないものをみる表情で川崎は目を見開いていた。

 

 

――決まりだ。

 

 

 予言者は実在する。

 

 どういうわけか川崎が狙われている。そして、予言者は普通の人間ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 H-1地区の上をウルトラホーク3号が飛行する。

 

 三十分前は多くの人達が当たり前のように生活していた。

 

 仕事の為に道を歩くサラリーマン、楽しく話す主婦、せっせと働く従業員たち。そんな人達が原因不明の爆発によってその命を失う。

 

 ビルは爆発を起こし、炎によって人は一瞬にして炭になる。

 

 紙は燃え付き、パソコンは壊れ、ガラスは割れて地面へ散らばった。

 

 そんな地獄の光景をウルトラホーク3号から梶隊員とユキ隊員がみている。

 

「こちらホーク3号、H-1地区の被害は甚大です!犠牲者多数!繰り返します。被害は甚大です!」

 

「これは人類の仕業じゃない」

 

 無線機に叫ぶ梶隊員の横で燃え上がる街を見下ろしながらユキ隊員はぽつりと呟いた。

 

 

 H-1地区の被害のことで地球防衛軍はキリエル人に対しての緊急会議が開かれることとなった。

 

 極東基地の参謀会議室は重たい空気が広がっている。

 

「では、キリエル人と名乗る謎の存在についての緊急会議をはじめる」

 

 老齢の山岡長官の言葉に参謀たちは様々な意見を告げた。

 

「相手は侵略者です。迎撃すべきです!」

 

「どういう目的であんなテロ行為に等しいことをするのかまず、その原因を探るべきだ」

 

「予言をしたニュースキャスターは今も昏睡状態にあります。彼女から情報を探ることは難しいでしょう」

 

 会議は難航していた。

 

 正体不明の相手からの攻撃に対抗すべきと告げる参謀がほとんどだが、敵の居場所もわからず、有効策も見つかっていない今において、最適解は見つかっていない。

 

「一つ、情報部からの報告でキリエル人の予言者と名乗る人物が一人の少女へ接触したという報告があります」

 

「接触?」

 

 稲垣参謀の言葉に山岡長官が尋ねた。

 

「はい、報告によれば、H-1地区爆破予告もその少女へ行ったと」

 

「キリエル人とやらの仲間ではないのか?」

 

「あるいはキリエル人そのものかもしれんぞ」

 

「少女については?」

 

「ウルトラ警備隊が事情聴取を行っています。H-1地区の爆破については、目撃者が傍にいたということで直接的な犯人とは考えられないでしょう」

 

 山岡長官の問いかけに竹中参謀が答える。

 

 参謀会議は続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「送り主のアドレスがない」

 

 ウルトラ警備隊に事情を説明しようという八幡の意見で川崎は防衛軍へ連絡。

 

 やってきたウルトラ警備隊の渋川とリサ隊員へ川崎沙希はメールの内容をみせる。

 

「悪戯でもなさそう……でも、なぜ、貴方にキリエル人の予言者っていうのは接触してきたのかな?」

 

「そんなの!……わかるわけ、ないじゃないですか」

 

 リサの言葉に川崎が叫ぶ。

 

 彼女自身、色々と混乱している。

 

「落ち着け、落ち着け~、川崎ちゃんだったよね。もし、また予言者から連絡があれば、すぐに俺達へ教えてくれないかな?」

 

「ウルトラ警備隊に?」

 

「そう!大丈夫!何があっても俺達、ウルトラ警備隊が解決するから泥船にのったつもりで信じてほしい!」

 

「大船ですよ、渋川隊員!」

 

「え、あ、いけね!」

 

 リサ隊員の指摘で慌てる渋川。

 

 そのやりとりに川崎が小さな笑みを浮かべた。

 

 わかっている限りの情報を伝えて、川崎は家へ帰らせる。

 

「酷い話だよな、あんな将来これからって子に多くの人の命をゆだねさせるようなことを強いるなんてよ」

 

 去っていく川崎の背中を見ながら渋川は呟く。

 

 それだけキリエル人の予言者という人物がやったことに対して渋川は腹立たしかった。

 

 必ず予言者を見つけ出して、事件を解決する。

 

 決意を新たにして渋川とリサは隊長からの連絡で極東基地へ戻ることになった。

 

 ぶらぶらと道を歩いていた川崎沙希。

 

 不在を知らせる着信があって、内容を確認すると弟の大志からだった。

 

「あ、もしもし、大志……うん、これから家へ――」

 

 帰ると言おうとした川崎は人ごみの中を流れる様に進む男の姿を見つける。

 

 男の姿を見た川崎は目を細めた。

 

「ごめん、大志、少し寄り道してから帰るから、うん、じゃ」

 

 短く会話を終わらわせて川崎は男、予言者の後を追いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 川崎は予言者を追いかけて高層ビルへたどり着く。

 

 男が部屋に入ったところを確認して階段をあがる。

 

 目的の部屋の表札を確認した。

 

 どこにでもある名前をみて眉間へ皺を寄せる。

 

「何が予言者だよ、アンタはどこにでもいる人間だってこと証明してやる!」

 

 ゆっくりとドアを開けて中に入る。

 

 夕方から夜空に変わっているというのに室内は灯りの一つもついていない。

 

 疑問を抱きながらも奥に向かう。

 

 ゆっくりとドアを開けた。

 

 リビングは驚くほどに質素だった。

 

 机と椅子、観葉植物がいくつか。

 

 生き物の類はない。

 

 川崎は机にパソコンが置かれていることに気付いた。

 

 予言者の姿がないことに疑問を抱きつつもゆっくりとパソコンへ触れる。

 

 ブゥゥゥンと音を立てて起動されたパソコンの画面。

 

「どういう、こと?」

 

 パソコンを操作した川崎は疑問の声を漏らした。

 

 開くすべてのファイルが二年前で更新のすべてが止まっている。

 

 全てのファイルが、である。

 

「なんで」

 

「簡単なことだよ」

 

 背後から聞こえた声に川崎が振り返る。

 

 何かがいた。

 

 暗闇でわからないが複数の何かがいることを川崎はなぜか理解できる。

 

 闇の中から何かが放たれた。

 

 衝撃が腕、足、腹、胸、肩と襲う。

 

 突然のことにされるがまま、の川崎の体は宙を浮いて、何も貼られていない白い壁に叩きつけられる。

 

「ぐふっ!」

 

「話の続きだが」

 

 暗闇の中から予言者が現れる。

 

 靴音を鳴らしながら川崎の傍へ近づく。

 

「私は二年前に死んでいるのだよ。死んだ私はキリエル人に選ばれて予言者となった」

 

「つまり、アンタは死人!?」

 

 驚きの声を上げる川崎。

 

「なんで、なんで、私なんだよ!」

 

 自らの疑問を吐きす川崎。

 

 苦しかった。

 

 なぜ、自分、なのかと。

 

 突然、崇めよと選ばれて、多くの人が死ぬ瞬間をみせられて。

 

 傍に彼がいなければ、おかしくなっていたことだろう。

 

「貴方が、いえ、貴方も奴を受け入れようとするからですよ」

 

「奴?」

 

「奴が現れるよりも前からキリエル人は地球にいたのです。人を導くために……ですが、奴を受け入れようとする者達がいる。それは許される事ではない」

 

「その、奴が誰のこといってんのか、知らないけれど、私は」

 

「受け入れないというのなら多くの人が聖なる炎に」

 

 拒絶しようとしたタイミングで告げた予言者の言葉に川崎の顔が歪む。

 

 暗に拒絶すれば多くの人が死ぬぞ、と告げているのだ。

 

 脳裏に大事な弟や妹、家族の姿が過ぎる。

 

 最低だ。

 

 心の中で悪態をつくも壁に縫い付けられたように手足は動かない。

 

 予言者の試すような笑顔が悔しくて視界が滲む。

 

「それは脅迫っていうんじゃないのか?」

 

 響いた第三者の声。

 

 その声に川崎は目を見開き、予言者は忌々しそうに顔を歪める。

 

「比企谷……アンタ!?」

 

 驚く川崎に対して予言者はため息を吐く。

 

「脅迫というのは失礼な言い方ですね」

 

「違うのか?動けない相手に従わないというのなら大勢の命を奪うぞという言葉をちらつかせているのは脅迫でないというのか?」

 

 八幡の言葉に予言者は笑みを浮かべる。

 

「人類はキリエル人に従うべきなのだよ!これからはじまる大いなる恐怖から救われるためにはねぇ!だからこそ、お前は邪魔だ。いや、要らない。貴様のような存在は消えてしまえ!」

 

 予言者の口から炎が吐かれた。

 

 仰け反りながら躱した八幡は右手に力を込めて、念動力を放つ。

 

 放たれる念動力は予言者を捉えたはずだった。

 

 目の前にいた筈の相手がいない。

 

 同時に拘束されていた川崎の体が床に落ちる。

 

「川崎、大丈夫か?」

 

「……アンタ、なんでここに?」

 

「大志に感謝しておけよ。アイツが気になって俺に連絡してこなければ気付かなかったからな」

 

 八幡に肩を借りながら川崎はゆっくりと体を起こす。

 

『最後の予言を伝えよう』

 

 暗闇の中で響く予言者の声。

 

「最後だと?」

 

『キミ達が生きている間に聞くこととなる最後の予言、という意味だよ。聖なる炎が焼き払う場所、それは、ここだぁ!』

 

「ふざ、けんな!アンタは何だと思ってんだ!」

 

 苛立ちをぶつけるように川崎は天井へ叫ぶ。

 

 八幡はゆっくりと川崎と共に立ち上がる。

 

「すぐに、ウルトラ警備隊へ通報しよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「市民からの通報で次のキリエル人の攻撃先が判明した」

 

 ウルトラ警備隊司令室で古橋が隊員達へ告げる。

 

「ですが、敵の攻撃の対抗策が……」

 

「その件ですが、敵の攻撃は地下からくることがわかりました」

 

 ユキ隊員が前に出る。

 

「科学班からの報告で地下からの対抗策として電磁波を放つマイクロウェーブに効果があると言われています」

 

「よし、ホーク3号にマイクロウェーブを搭載して梶、現場へ急行せよ!ユキは梶と同行してサポート!残りは俺と共にホーク1号で民間人の避難を行う!」

 

「了解!」

 

 全員が敬礼をする。

 

「時間が限られている!ウルトラ警備隊、緊急出動だ!」

 

 極東基地からウルトラホーク1号とウルトラホーク3号が緊急発進した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現地では多くの住民が警察や防衛軍隊員の誘導の元、避難をしていた。

 

 この街に人を殺す炎が吹き荒れる。

 

 誰もが恐怖に包まれながら、避難誘導に従う。

 

 その中に当然のことながら八幡と川崎の姿もあった。

 

「ごめん、比企谷。色々と迷惑をかけて」

 

「困った時はお互い様っていうだろう……俺には無縁な言葉だが」

 

「アンタねぇ」

 

 予言者から受けた攻撃が体に響いているのだろう。

 

 川崎から汗が流れる。

 

「無理はするな、避難所で休めばいい」

 

「アンタは、どうするの?」

 

「逃げるさ、こんな危ない事態は大人……ウルトラ警備隊に任せればいい」

 

 ちらりと周囲をみる。

 

 老人、大人、子供、多くの人が誘導に従っている。まるで、これから起こることが世界の終りのようなものに川崎は感じられた。

 

「私達、滅びるなんてことに、なるかな?」

 

「ならないだろ」

 

 不安の声を八幡は一蹴する。

 

 避難所に到着したところで川崎を八幡は座らせた。

 

「さっきの話だけど」

 

 小さな笑みを浮かべる。

 

「そう簡単に人類は滅びねぇよ、地球人よりも地球人を愛している宇宙人だっている」

 

 川崎は戸惑いの表情を浮かべている中、八幡は立ち上がる。

 

「水でもとってくる。川崎はそこで休んでいてくれ」

 

 離れていく八幡。

 

 その姿を目で追いかけていた川崎だが、視線を感じて振り返る。

 

 怪しげな笑みを浮かべている男がいた。

 

 みられていることに気付いたのか男は歩き出す。

 

「っ!」

 

 予言者かもしれない。

 

 ふらふらと鉛のように重たい体を引きずりながら川崎は後を追いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウルトラホーク3号は市街地上空に到着する。

 

「マイクロウェーブ起動!」

 

「起動します」

 

 梶の言葉にユキがシステムを起動する。

 

 ホーク3号の下部からマイクロウェーブが姿を現す。

 

「五秒前!」

 

 ユキがカウントする。

 

 マイクロウェーブは少しでも位置がずれればその効力を失う。

 

 故に科学班が予想した位置へ正確に放たなければならない。

 

 市街地は無人。

 

 そのはずの場所にふらふらと川崎が現れる。

 

 男の姿を探していたが見失ってしまう。

 

「どこに……」

 

 額から汗を流しながら川崎は市街地を歩く。

 

 マイクロウェーブの範囲内に自身がいることに気付いていない。

 

「川崎!」

 

『四秒前!』

 

 バランスを崩して地面に倒れる川崎。

 

「川崎!どこだ!」

 

 彼女がいないことに気付いて探しに来た八幡。

 

『三秒前!』

 

 八幡は地面に倒れている川崎の姿を見つける。

 

 声をかけるも彼女が起き上がる様子はない。

 

『二秒前!』

 

 彼はウルトラホーク3号がマイクロウェーブを発射する状態であることに気付いた。

 

『一秒前!』

 

 八幡はポケットからウルトラアイを取り出して装着する。

 

『発射!』

 

 ウルトラホーク3号から放たれるマイクロウェーブ。

 

 眩い閃光を放ちながら瞬時に巨大化したウルトラセブンが市街地に姿を現す。

 

 彼の手の中には意識を失っている川崎沙希の姿があった。

 

 ゆっくりとウルトラセブンが川崎を地面へそっと寝かす。

 

 ウルトラ警備隊のおかげでキリエル人の攻撃は失敗に終わる。

 

「ようやく姿を現したな!ウルトラセブン!」

 

 呼ばれた声にセブンは視線を向ける。

 

 予言者が道路の真ん中に姿を見せていた。

 

 彼は怒りに染まっていた。

 

『お前はなぜ、こんなことをする』

 

 テレパシーでセブンは問いかける。

 

「キミは地球の守護神になるつもりかい!」

 

 しかし、セブンの問いかけに予言者は答えない。

 

「烏滸がましいと思わないかい!?地球人は我々キリエル人の導きを待っていたのだよ!」

 

『仮にキリエル人の導きとやらを地球人が望んでいたというのなら、なぜ、なぜ……多くの命を奪う!貴様がやっていることは侵略者と大差ない!』

 

「みるがいい!キリエル人の怒りを!怒りの炎を!!」

 

 地面に亀裂が入り、そこから炎が噴き出していく。

 

 炎が形を変えていき、やがて、異形の巨人がその場に現れる。

 

 心臓の部分を胎動する発光部分、黒とグレーが混ざり合ったような体皮。

 

 それこそキリエル人が戦うために姿を変えたキリエロイドである。

 

「あれが、キリエル人の正体だっていうのか!?」

 

 避難民を誘導して上空のホーク1号で様子を伺っていた東郷隊員が驚きの声を上げる。

 

『多分、違います』

 

 ホーク3号のユキ隊員から否定の言葉が入る。

 

『奴の姿を見る限り、ウルトラセブンと戦うために、身長、体重、全てを模倣したと思われます』

 

「何て奴だよ。相手と戦うために同じ姿になるなんてよ」

 

「それだけ、ウルトラセブンを敵視しているということ」

 

「どちらにせよ、奴は侵略者であることは変わらん」

 

 動揺している隊員達に対して古橋隊長は鋭い目でウルトラセブンとキリエロイドの戦いをみていた。

 

 先手を切ったのはウルトラセブン。

 

 キリエロイドに接近してパンチを放つ。

 

 同じようにキリエロイドもパンチを繰り出してウルトラセブンとぶつかりあう。

 

「ジョキィ!」

 

 不気味な声を上げながらパンチやキックを繰り出してくるキリエロイドにセブンは真っ向から挑む。

 

 ウルトラセブンと同じ身体能力を宿しているという事で互角の戦いが続いていく。

 

 距離が開いたところでセブンが駆け出す。

 

 キリエル人は手に炎を纏い放つ。

 

 炎の塊がウルトラセブンの体を焼こうとする。

 

 銀のプロテクターを溶かそうとするほどの熱にセブンは苦悶の声を漏らす。

 

 ダメージに膝をついたウルトラセブン。

 

 不気味に笑いながら接近したキリエロイドがセブンの体を持ち上げて、顔を殴る。

 

 何度も殴り、そのまま投げ飛ばす。

 

 近くのビルの上に体をぶつけながら倒れこむウルトラセブン。

 

 キリエロイドは自らの勝利を予見しているのか両手を広げて笑う。

 

「しっかりしやがれ!」

 

 気付けば古橋はウルトラホーク1号のスピーカーをONにして叫んでいた。

 

「てめぇがどこの誰で!どういった理由で地球人の為に戦ってくれているのか知らねぇ、けれど、俺達の為に戦ってくれているというのなら、必ず勝て!ウルトラセブン!」

 

 古橋の操縦しているウルトラホーク1号からブレイカーナックルミサイルが放たれた。

 

 攻撃を受けたキリエロイドはのけ反りながら、炎の塊をウルトラホーク1号へ投げようとする。

 

 起き上がったウルトラセブンが頭頂のアイスラッガーを投げた。

 

 真っ直ぐに放たれたアイスラッガーがキリエロイドの胸部に激突。

 

 標的を失った炎は地面で爆発を起こす。

 

 戻ってきたアイスラッガーを頭頂に戻して、構えを取るウルトラセブン。

 

 苛立ちの声を上げながら駆け出すキリエロイド。

 

 先ほどよりもセブンのパンチの速度があがる。

 

 まるで拳が燃えているように次々と繰り出されるパンチ。

 

 連続ラッシュを受けて、ふらふらになるキリエロイド。

 

 ウルトラセブンは後ろへ下がりながら両手をL字に構えて、ワイドショットを放つ。

 

 反撃しようとしたキリエロイドはワイドショットの直撃を受けて大爆発を起こす。

 

 ウルトラセブンは夜空の中へ消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷、ちょっといい?」

 

 キリエル人の事件から数日後。

 

 念のため、入院をしていた川崎沙希が復学した。

 

 大志からの情報によると体に異常はみられなかったという。

 

 いつの間にか大志とメールのやり取りが異様に多いことが発覚してしまうが、ただ、そういうことであり、今後は減る。

 

 必ず減るはずだ。

 

 ペガの呆れた声を思い出しながら八幡は川崎と屋上へ出る。

 

「その、前はありがとね」

 

「礼なら大志にいえって」

 

「しっかり言ったよ……そうしたらアンタに言えっていわれちまったよ」

 

「そっか、良い弟だな」

 

「自慢の家族だよ」

 

 川崎はちらちらと視線をさ迷わせる。

 

「色々と迷惑かけたけど、ありがとう。無事に解決したから」

 

「まぁ、俺にできたことは少ないけどな」

 

「そんなことないよ、アンタがいたから、助かったところもあるし……いつかは、お礼するからさ」

 

「それだけ聞くと、少し不安になるんだが」

 

「ハァ?」

 

 鋭い瞳でみられて八幡は自然と後ろへ下がる。

 

 苦笑しながら川崎は近づく。

 

「ありがとうね、お節介な宇宙人さん」

 

「は?お前、今、なんて?」

 

「さぁね。あ、そうだ。今度から普通に話しかけるから声かけても無視とかしないでよ」

 

 手を振って屋上から出ていく川崎の姿を見ながら八幡は呟く。

 

「よくわからんが、またボッチから遠ざかった気がする」

 

職場見学、どこが良い?

  • 地球環境保全委員会
  • 愛染テック
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