ただの導入なので飛ばしても大丈夫です。
とある高校の教室で、昼飯を食べながら俺は友人と愚痴っていた。
「あー、次の授業マジでしんどいよなー」
「いやほんとそれなんだよな〜。内容むずいし課題の量もエグいしな〜」
「なー。ほんとに学生いじめるためにやってるとしか思えんわー」
「この授業がいつ役に立つのかわからんよな〜」
話題を出した友人に合うように俺も発言を重ねる。
今年高校に入り約半年、気の合う友人もできて、俺はそれなりに楽しい学校生活を送れていた。
こうやって毎日同じように授業を受けて、友人とくだらない話で笑い合って、この先ものんびり生きていけたらいいなと思っていた。
こんな普段考えもしないことを考えた時点で、疑問に思うべきだったのかもしれない。
「うっわ、ちょっとこれ見てみ」
友人が急にスマホの画面を見せてきた。
「なんだよー、また怖い画像か?」
この友人は俺が怖いものが苦手なことを知って以来、事あるごとに恐怖映像や狂気画像を見せてくるようになった。
そのせいで何回かびびって教室で大声を出し、恥をかいたことも今ではいい思い出となっている。
今回もそうだと思い警戒していたが、画面に出ていたものは全く違うものだった。
「なんだこれ、駅での転落事故か?これがどうしたんだよ?」
「場所見てみろよ」
「場所?え、これ高校の最寄りじゃん。いつのやつだよ」
「ついさっきだってよ」
「それマジ?こっわ、俺帰り電車なんだけど」
「だから見せたんだよ。この人、人に押されて落ちたっぽいからお前も気をつけろよ?w」
「なんのフラグだよ。怖いからやめーやw」
うちの高校の最寄りの駅は何日かに一回、乗り換えもないのに何故か混み合う時がある。
その時間も不定期なのでその人も運が悪かっただけだろう。
自分にはあまり関係ないと思いふと時計を見ると、いつのまにか授業開始の5分前になっていた。
「そろそろ次の準備すんべ、続きは放課後話そうや」
そう言って俺は机を片付け始めた。
「そうだなー、次終われば今日楽だもんなー」
友人も続いて片付け始める。
ああ、早く1時間過ぎろと思いながら俺は黒板へと視線を向けた。
そして放課後、ぐったりとしながら俺たちは話を始めた。
「終わったか…。今日は早く帰ろうか…」
「そうだな…。今日何曜だっけ…?」
「えっと…。金曜だな…」
「おー、そっか…。明日どっかいかね…?」
「外出るのだるいからうちこいよ…」
「その話乗ったわ…。時間は後で決めよう…」
「おけい…」
帰ったら部屋の掃除を軽くしておくことを決意して、手早く帰り支度を済ませる。
「帰るぞー」
「寝てから帰るから先行けー」
気の抜けた返事とともに友人は寝始めた。
自由なやつだと思いながら、俺は先に帰ることにした。
学校を出て、駅に着くと今日はとても混んでいた。
(一日に2回混むのは初めて遭遇したなぁ)
珍しいこともあるもんだと思いながら電車を待っていると、横の人と軽く肩がぶつかり、たまたま目があった。
その人は新しめのスーツを着ており、優しそうな顔をしていた。
新卒の先生だろうか、はたまたサラリーマンだろうか、何にせよ、なんの大志のない自分に比べて、とても輝いて見えた。
だから見えたのかもしれない。
その人を後ろから殺意を持って線路に落とそうとしている奴がいることに。
(昼の事故の犯人か!)
無意識のうちに体が動いていた。
その人の手を引き、位置を入れ替えた瞬間、強い衝撃が襲った。
一瞬の浮遊感の直後に痛みが走る。
周りを見て自分だけが落ちたことを知った。
人を守れたことの安堵と奴の計画を狂わせたことに
大きな達成感を感じた。
しかし、間の悪いことに電車が来てしまった。
俺を助けようと動いている人も見えたが、もう間に合わないだろう。
(なかなかしょうもない人生だったな。)
死ぬことはたいして怖くはなかった。
ただ、明日の友人のと約束が守れなかったことが気がかりだった。
その思考を最後に俺の意識は途切れた。
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