この世界の中で生きていく   作:日本のダメ男

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主人公にはぜひハードモードを歩んでもらおうと思います。

ここから本編に入ります


静かなる狂気

沈んでいた意識がだんだんと目覚めていく感覚がする。

 

それと同時に背中に柔らかい感触を感じる。

 

おそらく病院のベッドに寝かされているのだろう。

 

 

(あの状況で生き残れたのか…)

 

 

不思議なことに四肢の感覚がある。

 

電車に轢かれたのに、だ。

 

生きていても手足の一本や二本は吹き飛ぶものと思っていたからとても驚いた。

 

 

(このまま寝ててもアレだし起きるか)

 

 

若干の気怠さを感じながらゆっくりと目を開ける。

 

目線の先に真っ白な天井が広がっていた。

 

 

(やっぱ病院だったか)

 

 

目を指で擦りながらベッドから少し体を起こして自分の体を見てみる。

 

寝てる間に着替えさせてもらったのだろうか、学生服から薄い紺色の病院服になっている。

 

腕や足を見てみるが、傷跡もなく轢かれる前の綺麗なままだった。

 

よく見ると腕の毛や脚の毛がなくなっていたが、事故のストレスによって抜けたんだろうと思考の片隅に追いやることにした。

 

 

(このあとどうすんだ?)

 

 

自慢ではないが、これまでで一度も大きな怪我や病気をしたことがなかった。

 

病室に運ばれるのも目覚めるのもこれが初めてである。

 

そのため、目が覚めたあとどうしたらいいかが見当もつかない。

 

 

(とりあえず病院の人を呼んでみるか)

 

 

枕元を少し探してみるが、何も見つからない

 

ドラマとかでよく見る心拍などを測っている機械もなかった。

 

 

(実際はこんなもんなのな)

 

 

退院した後友人に教えてやろう。

あいつはドラマとかで出てるものが現実でもあると思っている。

病室に機械なんて無かったと知ったら絶対に驚くだろう。

その時に、世の中は全部疑わないとダメなんだぞって全力で煽ってやることにして、意識を周囲に向ける。

 

 

(部屋にはなんかないかな?)

 

 

何か落ちていないかベッドの周りを見てみるが、真っ白い床が見えただけだった。

 

少し目線を上げて周りを見てみる。

 

壁に真っ暗なモニターがあった。

 

 

 

 

壁に真っ暗なモニターがあった。

 

 

(俺疲れてんのかなぁ)

 

 

一度目を瞑ってからもう一回壁を見てみる。

 

願わくば、幻覚であることを祈って。

 

 

壁に真っ暗なモニターがあった。

 

 

(なんで病室にモニターがあんだよ)

 

 

あるはずのないものがある異物感と、今は何も映されていないことで何に使われていたのか分からない不気味さに、少し恐怖を感じる。

 

 

(これが普通の病室のデザインなのか?)

 

 

訳の分からない空間に独りでいることに焦燥感を感じ始める。

 

 

(早く医者を呼ぼう)

 

 

周りを調べるために、ベッドを降りる。

 

違和感を感じた。

 

 

(なんかベッドの高さおかしくね?)

 

 

いつも使っているものと違うからではない。

 

妙に寝転ぶ面の位置が高いのだ。

 

確認してみると腰の少し上あたりに面があった。

 

 

何も映らないモニター、高さのおかしいベッド、誰もおらず独りの空間。

 

 

確証もないのに、何かされたのではという思いが頭を駆け巡る。

 

一人でいるから気になるんだと不安を振り払い、周りを見渡す。

 

 

(部屋少し薄暗いな…)

 

 

不安が増すからもっと明るくしてほしいと心から思う。

 

そしてもっと不安になるものを見つける。

 

扉の無い出入り口らしきものを見つけた。

 

 

 

「扉の無い」出入り口らしきものを見つけた。

 

 

「なんなんだよここは!」

 

心の叫びが口から漏れる。

 

ただ壁に穴が空いていた。

 

外は暗いのかベッドの付近からはあまり外は見えなかった。

 

 

「よく見えない」。

 

これだけで、この状態で普通ならその穴に近づかない理由は十分だった。

 

 

(それでも行くしかねぇな)

 

 

しかし、病院とは思えないこの異常な空間に、俺は精神を潰されそうになっていた。

 

人に早く会いたい、独りで居たくない、その思いが俺の足を探索の済んでいない部屋から出口へと動かした。

 

 

 

 

 

それが一番取ってはいけなかった選択肢だとは気づかずに、薄暗い外に出てしまった。

 

 

 

 

 

「誰か〜、居ませんか〜、誰か〜、返事をください…」

 

 

半泣きになりながら、出入り口から一歩出てみた。

 

グニッ

 

「うおっ」

 

突然変わった床の感触に驚き後ろに下がる。

 

 

 

ブンッ

 

 

その直後に、自分の顔の目の前を、殺意の込められたなにかが横切った。

 

 

「は?」

 

 

(今なにが起きた?)

 

 

 

恐る恐る目線を上げると、怖いぐらいニコニコしている顔と振り下ろされた手がすぐそばにあった。

 

そいつはとても大きく、自分の3〜4倍は身長があった。

 

そいつは生物味を感じないほど真っ白で、あり得ないぐらい体が細かった。

 

そいつの手に指はなく、金魚すくいの穴の開いたポイのような形をしていた。

 

そいつは何も喋らず、怖いぐらいニコニコしていた。

 

 

(なんだコイツ?!)

 

 

自分の知識の中にかけらも無かった存在を目にして、恐怖から俺の足はガタガタ震えはじめた。

 

 

(動けっ、動けって俺の足っ!!止まったら絶対にヤバイ!)

 

 

俺が恐怖と格闘している間に、バケモノはニコニコしながらまた俺に手を振り下ろそうとしてきた。

 

 

(ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイ!!)

 

 

床にビビって後ろに下がったため、今俺は部屋の出口まで戻ってしまっている。

 

 

(後ろは部屋、戻ったら追い詰められて殺される!)

 

 

部屋の中に行ってもリーチの差がエグいぐらいあるため、すぐに捕まって殺されるだろう。

 

未知の外に出て、あいつから逃げることのできる何かを探そうという考えになるのも当然だろう。

 

 

(行くしかねぇ!!)

 

 

死を覚悟してバケモノの後ろにすり抜けるように頭からダイブする。

 

目で追うことができないほど振り下ろしは早かったが、奇跡的にダイブは成功し、自分がまだ死んでないことに安堵した。

 

 

(あいつチョロいぞ!これなら逃げれる!!)

 

 

すぐに起き上がりその場から逃げようとした。

 

 

 

 

 

が、体がついてこない。

 

 

起き上がることができない。

 

 

(舐めプしてる場合じゃないだろ。なんで動かねぇんだよっ…!)

 

 

そう思いながら自分の身体を見てみると、

 

 

 

 

 

両足がついていなかった。

 

 

 

引きちぎられたかのような断面から絶え間なく夥しい量の血が流れ出ている。

 

 

(?????)

 

 

脳が理解を拒んでいた。

 

 

記憶を辿るために仰向けになり、後ろに振り返る。

 

 

バケモノを見てみる。

 

ニコニコしてやがる。

 

 

 

視線を落としてバケモノの手を見てみる。

 

手に赤いものが付いていた。

 

 

 

 

バケモノの足元に何かが落ちている。

 

引きちぎられた足のようなものが、2つ転がっていた。

 

 

 

血の出てる足、手に血、転がってる足…

 

 

 

脳が現実に屈してしまった。

 

認識してしまった。

 

 

 

あそこに転がっているのは「俺」の両足だということを。

 

 

 

その瞬間、身体は正常な反応を示しはじめた。

 

 

「あ"ああ"ぁぁあ"っ?!ゔあ"あぁぁあ"ぁぁっ…!!!」

 

 

(痛い…!!痛い痛い痛い痛い…!!!)

 

 

痛みでどうにかなりそうだった。

 

でも、痛すぎて正気に叩き戻される。

 

狂えた方が楽なんじゃないかとすら思う。

 

寒い。

 

傷口だけが熱い。

 

血を流しすぎたのか?

 

 

(逃げなきゃ、逃げなきゃ、でもどうやって?足ないのに?這ってでも逃げるか?無理だな?あれ、もしかして詰んだ?)

 

 

ダメだ、思考が纏まらない…

 

 

(俺はここで死ぬのかな?)

 

 

ほぼ死が確定している状況で、こんなアホなことを考え始める。

 

足だけでなく頭もオシャカになったのかと、笑いそうになる。

 

 

 

バケモノが近づいてくる。

 

ゆっくりゆっくりニコニコしながら近づいてくる。

 

死が足音を立てながら近づいてくるような気がした。

 

 

(早く動けるくせに、舐めプしやがって…)

 

 

せめて、せめてなにか一つくらい、死ぬ前にあいつにできる嫌がらせはないかと思考を始める。

 

 

そしてふと、この空間にいるのは本当に俺だけなのか?という考えが浮かぶ。

 

(このクソみたいな空間に、独りでいる奴が他にもいるかもしれない。

そいつらに希望を与える死に方がしたいなぁ)

 

 

人のためにって考えると力が湧いてくる気がする。

 

しかし、今の俺に役に立ちそうな遺されているものは、両腕と口ぐらいしかない。

 

 

(これでなにができんだよ…)

 

 

考えている間にもバケモノは迫ってくる。

 

 

(希望もクソも目に見えなきゃ意味ないよなぁ、あ。)

 

 

一つの策が浮かぶ。

 

絶対の敵に傷をつける。

 

噛みつけば治らない跡が残るだろうか。

 

希望が見えた。

 

 

(もうやるしかねぇな?)

 

 

己を鼓舞するために声を張り上げる。

 

 

「聞けっ!この声が聞こえている人よ!!俺は今から死ぬ者だ!絶対の敵に立ち向かい死ぬものだ!!敵に必ず傷を遺してやる!同じ空間にこんな勇敢なバカがいたことを覚えていてほしい!!!」

 

 

もう、やけになっていた。

 

聞いてる人もいないかもしれない。

 

希望もクソもない、自分勝手な理由で動こうとしていた。

 

それでも、俺の中には大義があると思っていた。

 

 

バケモノが俺のそばに立つ。

 

俺は脱力して、されるがままに身を任せた。

 

(チャンスは1回しかねぇ)

 

それから、バケモノは俺を捕まえて、見せつけるようにゆっくりと手の穴に俺の胴体を通し始める。

このままでは勢いよく手を引かれ、胴体が上下に分かれてしまう。

両足もこのように引きちぎられたのだろうか。

 

 

(舐めプしたことを後悔しろ!)

 

 

俺は限界以上の力を振り絞り拘束を逃れ、そのままバケモノの足に全力でかじりついた。

 

カチーンと金属にぶつかったような音が鳴る。

 

 

(硬ッ!やっぱ生物じゃなかったか!)

 

 

跡が残るように必死に噛み付いたが、

 

 

「ゔぁっ…!」

 

 

すぐにバケモノに殴り飛ばされてしまった。

 

痛覚が死んだのか、痛みはあまり感じなかった。

 

ベシャリと床に落ちて咳き込む。

 

歯も骨もバキバキに折れて、もう動く気力すら湧かない。

 

 

(傷は残ったか?)

 

 

霞んだ視界で噛んだ足を見てみると、歯形と引っ掻いたような痕が残っていた。

 

殴られたときに食い込んでいた歯がえぐってくれたのだろうか。

 

もう、満足だった。

 

 

(もうなんも思いつかんわ…。出来ることは全部やった…)

 

 

勝ち誇ったような顔をしながらバケモノを見ると、笑みが深くなっていたような気がした。

 

 

(慢心するからそうなるんだ)

 

 

バケモノは俊敏に動きだし、俺を素早く解体していく。

 

 

痛覚の鈍い体から両手が引きちぎられる。

 

 

「うっ…、あ"ぁっ…」

 

 

声にならない声が漏れ出る。

 

身体がなくなっていく感覚に恐怖を覚える。

 

視界から色が失われ白黒になっていく。

 

 

(もう限界か…)

 

 

最後にバケモノは俺の首に手をひっかけ、ゆっくりと引きちぎる。

 

 

「あ"あ"あぁあ"ぁあぁ…!」

 

 

痛みは薄くても、自分の大切なものがちぎられることに恐怖を強く感じ、最期の悲鳴を上げる。

 

 

ブチっと音を立てて首が千切れた時、俺の命は終わった。

 




なにも伝えられずここに転生したら発狂するよなぁとは思います。

この時点で転生はしていますが、姿の確認ができていないため気づいていません。

次回で原作キャラと絡ませられたらなぁと思います。
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