夏休み、裏山にドラえもんたちと一緒にキャンプしに来たのび太が、夜に寝れずに出歩いていてレミリアたちに出会った時の話。

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思い付いた話を投稿しました。


紅い月夜の不思議な出会い

 ある夏休みの日、裏山でのび太たち5人は思い出作りをしようとキャンプの準備をしていた。

 

「おーい、のび太。昼寝したんだからちゃんとやれよ! それとしずかちゃん、そっちはどうだ?」

「ご飯は良い感じに炊けそうよ、武さん」

「分かってるよ! ちなみにこっちもいい感じだよ」

 

 のび太としずかの2人は食事の用意を、ジャイアン・ドラえもん・スネ夫の3人はテントを張ったり、周囲を快適なキャンプ場にする為の用意と言う感じで役割分担をしている。当然裏山でやる以上、色々な理由から勝手に木を切り倒す訳にもいかないので上手いことやる必要があるが、そこはドラえもんが居るので問題ない。料理の方もしずかのサポートもあって順調に進んでいた。

 

 そうして日が暮れ始めた頃……

 

「こっちは出来たぞ。のび太たちは……良さそうだな。よし、早速やるぞ!」

 

 こうして全ての準備を順調に終え、まずはのび太たちの作った料理を皆で食べる。時間をかけてキャンプの準備を行い、疲れた身体に美味しい料理と飲み物が染み渡る。

 

「美味い! やっぱりしずかちゃん居ると違うな」

「スネ夫、僕だって頑張ったんだからね!」

「まあそれは認めるけど、のび太1人でやってたら食材焦がしたり、調味料の分量間違えたりするし……」

「違いねぇや……あ、そうだ。明日の朝メシは俺が気合いをいれたシチューを作ってやるから楽しみにしてろよ!」

「「「「……え!?」」」」

 

 それを聞いたジャイアン以外の4人は、まるでこの世が終わるかのような顔をして項垂れた。いつだか彼の家に行った時に食べた『ジャイアンシチュー』の、もはや調味料を間違えたとか食材を焦がしたと言うレベルではない、味と臭いに悶絶した事が未だに記憶に残っているからだ。

 皆はこう思った。のび太の失敗した料理を食べる方が遥かにマシだと。

 

「じ、ジャイアンは明日料理作らなくていい!」

「何でだよスネ夫? まさかお前……」

「違う違う! 実は……」

 

 そこでスネ夫が何とかジャイアンシチューでぶっ倒れると言う悲惨な出来事を回避する為に動き出した。

 

「ね? ドラえもん除いてこの中で1番力持ちのジャイアン、君にしか出来ない事なんだ。それに……」

「そんなにもおれを……分かった! そこまで言うならやってやるぜ!」

 

 スネ夫お得意のおべっかが上手くいき、明日の朝食がジャイアンシチューと言う地獄を回避することには成功した。だが、そこで終えておけば良いものの、余計なことを言ってしまい後日、ジャイアンリサイタル付きのシチュー食事会の開催が決まってしまった。

 思わずスネ夫は皆を連れ出し……

 

「皆ごめん!」

「スネ夫君……」

「スネ夫さん……」

「まあ、過ぎたことは仕方ないよ。ドラえもんの道具で何とかすればいいし。それよりも、キャンプを楽しもうよ」

 

 いずれ来る地獄の食事会は、ドラえもんのひみつ道具で乗り切れば良いやと言う事で裏で話がまとまった。

 

「お前ら何そっちでこそこそやってんだ?」

「「「「何でもないよ!!」」」」

 

 こうして食事も終わり、山で遊んだり色々した。そうして時間が経ち、日も完全に沈んだ事もあり、張ったテントの中で寝ることにした。そして皆が寝静まる中……

 

「眠れない。昼寝……いや、あの場合は夕寝? まあ、とにかくあの時寝なければ良かったなぁ」

 

 のび太だけは食事会の後の片付けで眠気に負け、皆が遊んでいる間からずっと寝ていた。その為よりによって皆が寝静まった夜中、時間で言えば午前1時に目覚めてしまったのだ。

 こんな時間に目覚めてもやることなどないので、再び寝ようと目を閉じるも寝れず、かといって皆を起こす訳にもいかず、暇をもて余していた。

 

「ちょっと裏山でも散歩するかな」

 

 普段の彼が考えないような事を今考えていた。何度も来た事がある裏山であるが故か、他の理由かは分からない。

 だが何故か、暗い中外に出ると言う選択肢を選んでしまった彼は、ドラえもんのスペアポケットを持っていき、裏山を上っていった。そしてその道中にて……

 

「アハハハハ!!」

「ん!?」

 

 突然、女の子の笑い声が()()()()聞こえたのをのび太は聞いた。ビックリして上を見てみたが、ここからでは木が邪魔をして見えにくいので、巨大な杉木が生えている頂上付近に向けて歩みを進める。そうして上を見上げた時見たのは、羽の付いた子供らしき誰かが空を飛んでいた所だった。それに月も心なしか紅い。

 暗くて顔はよく見えないがどう考えても人ではない化け物の類いと判断したのび太はすぐさま引き返そうとした。しかし、その時後ろからいきなり誰かの話す声が聞こえた。

 

「あら、こんな時間に人間? 何しに来たのかしら?」

「ひぃぃ! だ、誰!?」

 

 余りにも予想外の出来事に驚き、後ろを向いたのび太。するとそこに居たのは、見た目が自分と同じかそれ以下の子供だった。ただ、背中から見える黒い翼が人ではない事を物語っている。

 

「私? レミリア・スカーレット、吸血鬼よ。ちなみに空を飛んでいるのが妹のフランドール・スカーレットね」

「吸血鬼って……えぇ!?」

 

 吸血鬼と言う言葉を聞いたのび太は、今から自分が血を吸われてしまって大変なことになるシーンを想像していまい、怯える。

 

「心配しなくても、今から貴方をどうこうしようとは思ってないわよ。せっかく上手いこと馴染めていると言うのに、事件起こしてフランの楽しみを潰したくはないもの」

「楽しみ?」

「ええ。この際だから色々説明しちゃうわ」

 

 自分たちの事や住んでいる幻想郷について、この世界に来た理由等をレミリアから説明されたのび太。

 

「人間の貴方に言った所で信じてもらえないでしょうけどね」

「いや、信じるよ。現にこんな光景を見せられてるし、それに僕だって仲間と一緒に宇宙に海底、過去や未来・平行世界とか色々な場所を冒険して、いろんな人や物を見てきたからね」

「凄いわね、貴方とそのお仲間って。道理で幻想郷程度の話じゃ驚かない訳だわ」

 

 2人がそう会話をしていると、空を飛んでいたフランが2人の方に向かって降りてきた。

 

「お姉様……そこに居る人間は誰?」

「あ、どうも。僕は野比のび太と言います」

「のび太ね……こんな夜中に何してたの?」

「ちょっと散歩に。寝れなかったから……」

「へぇ~。ここには1人で来たの?」

「いや、仲間4人と一緒にここにキャンプしに」

 

 ひしひしと感じる威圧感のようなものはあったが、会話をしている内に自分をどうこうしようと言う気は無い事が分かり、安心したのび太は、レミリアに話したのと同じ話をフランにも話す。

 

「……お姉様、のび太って本当に人間なの? 宇宙とか海の底とか、過去や未来に行って冒険したことがあるとかさ。海の底ならまだしも、それ以外の場所に行くなんて幻想郷で出来る奴なんて居ないでしょ?」

「居ないんじゃないかしら? 本当、のび太って幻想郷の面々よりも幻想方面に振り切れてるわね。あ、彼はれっきとした人間よフラン」

 

 そんな会話をしていると、フランが何かを思い出したような顔をした。

 

「あ……お姉様、咲夜が紅茶の用意が出来たから呼んできてくれって言ってた!」

「そうなの? じゃあ私は先に行ってるわね」

「うん! そうだ、のび太も来て!」

「え? ちょっ……」

 

 物凄い力で腕を掴まれて、のび太はフランに連れていかれた。途中から引き摺られていたのに彼女は気づくことはなかった。

 

「咲夜~。人間用の紅茶もお願い!」

「人間用ですか? 分かりまし……妹様、その人間怪我してますけどまさか……」

「え!? いや私襲いかかって獲物を連れてきた訳じゃ……」

「フランさ~ん。引き摺らないでって言ってるのに……」

「……ごめんのび太。あと私の事はフランって呼び捨てで良いよ」

 

 咲夜の待つ場所に着く頃には、引き摺られたせいで怪我をしまくっていたのび太。お医者さんカバンをポケットから出してそれを治療し、用意された椅子に座った。

 

「どうも。僕は野比のび太と言います」

「私は十六夜咲夜と言います。今回は迷惑をかけてすみませんでした」

「いえいえ、幸い大したことはなかったので」

 

 軽く自己紹介を済ませた後、紅茶を飲みながら4人で会話をする。

 

「お嬢様、のび太とその仲間たちって神か何かなのでは?」

「私も聞いた時はそう思ったわ。でもれっきとした人間よ」

「それって全部ドラえもんが居てこそ成り立つ冒険ばかりでしたし、僕自身はただの人間です。自分から見たら咲夜さんたちの方が凄いなぁと思います」

「それでも十分凄いかと思いますよ」

 

 のび太の口から語られる、今までの冒険の様子を真剣に聞いている3人。すると……

 

「おーーい! のび太君ーー!」

「どこ行ったーー!」

「ジャイアン、山頂から話し声がしない!?」

 

 道具を使ったのだろう。ドラえもんたちがのび太を呼ぶ大きな声が聞こえた。

 

「あ、すみません! 仲間が呼んでいるのでもう行きます」

「ええ。こちらこそ引き留めて悪かったわね」

「また会えると良いね!」

「では、また次の機会があれば」

 

 それを聞いたのび太は3人に断りを入れて、ドラえもんたちの声が聞こえる方に走って行った。

 

 




ここまで読んで頂き感謝です!


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