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「お、スケベ柱の弟じゃん」
「…………は?」
無事、選別を突破して鬼殺隊に入隊した不死川玄弥。鬼殺隊の隊服を作成するというから部屋に入室して最初に言われたのがソレである
訳もわからず目の前の眼鏡を反射的に殴り飛ばして、一呼吸置いてから口を開いた
「んだテメェ殴るぞ」
「人を殴ってから言うことじゃねーだろ!?」
固く拳を握りしめながら玄弥は落ち着いた声で問いただす
次は腹だ
「いやいやいや待て待て待て!違うんだって!事情を聞いてくれよ!」
「……言ってみろ」
慌てて手を振る目の前の眼鏡に少しぐらいは話を聞いてやろうと思い直した玄弥。勿論、拳は握ったままだ
「お前あれだろ?風柱の不死川実弥の弟なんだろ?」
「……そうだ」
いつか聞かれると思っていた兄との事に少しだけ安堵を覚える玄弥。あんな酷い事を言ってしまっても兄弟と認識してくれる人がいる事が少しだけ嬉しい
………………?
いや待て、この眼鏡最初になんて言った?
確か、人のことを見て『スケベ柱の弟』と
ボカボカバキッ!!
「テメェ!人のアニキになんてこと言いやがる!!」
「反応が怖えよ!殴ってからキレるなよ!!」
「るせぇ!!」
腹腹胸と3発叩き込んだ玄弥。一般人と比べて段違いに高い筋力の連撃は応えたようで立つ気力すらないようで眼鏡は既に倒れ込んでいる
……それでも口を開いてマトモな返答が出来ている時点で並みの人間とは比べものにならない耐久力である
「よし、トドメ刺すか」
「待ってくれ待ってくれ!違うんだよお前の兄ちゃんをバカにしようとして言ってるわけじゃねぇんだよ!!」
倒れながら必死に訴える眼鏡にどうしてやろうかと玄弥の手が止まる
それに、これ以上の攻撃は息の根を止めてもおかしくない
隠も一般隊員とは言えないながらに鬼殺隊の一員。さすがにこんなことで殴り殺すのも駄目だろう
そう思って玄弥は菩薩の心で握りこぶしを開いた
「俺な!鬼殺隊のメンバーの写真よく撮ってる(無許可)んだけどお前の兄ちゃん露出がヤベェんだって!!」
「……は?」
握った。思ってもみない言葉に玄弥の拳が固く握られた
露出。すなわち服をはだけているということ
誰が?
兄が
コイツの言うことが本当なら兄がその体を晒しているということになる。そしてコイツの趣味は写真を撮ること……!
「死にてェみたいだなァ……?」
「真剣なんだって!下手な女性隊員よりエロいんだって格好が!!この写真より露出高いんだぞ!?」
「お、オマッ!?テメェぶっ殺すぞ!!?」
突然見せられたあられもない姿をした女性の写真に動揺して手が出る玄弥。だが、さっきまでと比べて威力が天と地ほどの差があった
不死川玄弥。思春期を迎える前に鬼への殺意を覚えた彼は卑猥な話にすこぶる耐性が無かった
そしてエロいことなら罠でも飛びつく眼鏡がその事に気付かない筈がなかった
「おっ、その反応って事はお前イケる口だな?いいぜ。さっき殴ったのは水に流してやるからよ、ちょっと話そうぜ。この間良いモンが入ってよ……」スッ
「………………」プシュ-
さっきまでの痛がる素振りもどこへ行ったのか、ニヤニヤしながら楽しそうに玄弥と肩を組むエロ眼鏡
袖口から取り出した胸の大きな可愛らしい女性の写真に真っ赤になって固まる玄弥。その反応を見た眼鏡は思った
コイツはいいカモになる、と
「なぁコッチはどうだ?さっきとは違って綺麗系なんだけどよ」
「ばっ……!おま……!俺は別に……!!」
「うーん、さっきの方が良さそうだな。やっぱ女は胸だよな胸」
下世話なことを遠慮なく口走るこの眼鏡。これで仕事が出来なければ彼は既に3回は死んでいるだろう
有能なゲスだから生きているだけである
だが、どんなに有能でも彼の根っこはゲスであり、地雷を踏み抜くのがうまかった
「いやぁ〜、流石スケベ柱の弟。話がわかるぜ」
「あ゛?」
玄弥は思い出した。流されていたが目の前の眼鏡は人の兄貴を『スケベ』と呼称するクソ野郎だということを
玄弥は思い出した。固く結んだこの拳を誰にぶつければいいのかを
「フンッッッ!!!」
「ギャアアアァァァ!!!??」
鳩尾への鋭い一撃!哀れな眼鏡は倒れ込んだ
肩を怒らせながらズシッズシッと進む玄弥。眼鏡を踏み越えた彼はそのまま部屋を出て行った
玄弥の膂力で踏まれた眼鏡もコレに懲りて2度とこんな事はしないだろう
「クッソあの野郎!人が下手に出ればいい気になりやがって!!」
訂正、ゲスはゲスだった
「やっぱ男に頼らないで本人に直接行った方が早いか。う〜ん、でもカナヲちゃんのいる所って蝶屋敷なんだよなぁ……」
ゲスは蝶屋敷への出入りを禁じられている。そんな彼が新入隊員唯一の女性はかなり綺麗だと聞いた結果がコレだ
度し難いクズである
「ったく!使えない奴だぜ!!」
そうやってグチグチと文句を言う眼鏡。ちゃんと玄弥に聞こえないように大声を出さないのがポイントだ
だが、それも時間が経てば話は変わる。確実に玄弥が遠くまで行っただろうタイミングで眼鏡は内心の不満を爆発させた
「バーカバーカ!! 傷だらけ!トサカ頭!!お前の兄ちゃんスケベ柱〜〜〜!!!」
「おい」
そう、玄弥は遠くに行った。玄弥“は”
「テメェ、面白そうな話してるナァ。俺にも聞かせてくれよ」
「」
ガラリと扉を開けて入ってきたのは風柱、不死川実弥。不死川玄弥の兄であり、眼鏡が言うところの“スケベ柱”である
「チョット聞かせてもらおうカァ……?」
ギリギリギリギリ
頭蓋が軋む音がする。右手一本で支えられた体がバタバタと動くが鬼より非力な眼鏡にはどうすることも出来なかった
バキッ
「あ」
その後、眼鏡が玄弥に絡むことはなかった