▲某アニメをオマージュしております。

現代に鬼殺隊があったら、なパロディです。
誰も死んでない優しすぎる世界。
主人公はモブという名の女オリ主ですのでご注意下さい。
pixivにもマルチ投稿してます。


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現代鬼狩りのとある一日

 夜の闇に紛れて蠢くそれを古来より人は鬼と称してきた。それは昔話の登場人物で幾度となくお話の中で倒されてきたもの。

 だがそれが現代の高層ビルの合間を縫って逃げている事を多くの人は知らない。

 

『抜刀許可を』

 

 インカムの向こうから落ち着いた声で要請された。

 皆に装着されている小型カメラから送られてくる周囲の様子をモニターに映した。郊外の第三セクターの跡地にある廃墟を今晩の場所に選んだらしい。お手本のような箱物行政の失敗で巨大な施設は今や肝試しスポットにすらなれない程に老朽化し人目も人気も無い。

 私の後ろのソファにゆったりと座るお館様が静かに笑いそして首を縦に振った。それを合図に専用の暗号通達を該当省庁に一方的に送りつけ、そしてインカムのマイクをオンにした。

 

「皆様、お館様より許可がおりました。以降皆様を中心として半径1キロメートルは法の範囲の外となります。抜刀、発砲、毒、爆薬、戦いの術の全てが許されますが――死をも許されます。努々お忘れなきよう」

 

 私のいつもの言葉を待っていたとばかりに、柱の皆がすいっと空を撫でた。するとピリピリと空気が歪み、そこから柄が生えた。その柄を掴み引き抜くとそれぞれの特性に合わせた刀が現れる。

 鬼を倒すためだけに特化した刀を私達は日輪刀と呼んでいる。日の光を浴びれば灰となる鬼を倒すに相応しい刀の名だろう。

 皆その鞘と柄を手にして構えた。

 

「皆様、ご武運を」

『承知』

 

 そして次々にその刀身が月夜に照らされる。

 

『煉獄、抜刀!』

『胡蝶、抜刀』

『時透抜刀』

『か、竈門抜刀!』

『吾妻ばばば抜刀!』

『抜刀だぁー!』

『伊之助ちゃんと言えよ!』

『言っただろう!』

 

 そういえば今日は柱候補となる将来有望の子の引率もあるんですよとしのぶちゃんが言っていた。今まではつゆ払いもしくは後始末ばかりだったが、今日から本格的に戦闘に参加するという。自分よりも少し年若い彼等の様子に少しだけ笑ったのだが、固い声がかかった。

 

『煩いぞ』

 

 感情の色を全く乗せない声音に周囲の音が凪いだ。刀が鞘から引き抜かれる音すらマイクが拾った。

 

 

 

『冨岡、抜刀。今より戦闘を開始する』

 

 

 

 そして皆が暗闇に散った。

 

 戦闘用の漆黒の隊服は暗闇を邪魔しない。互いの存在すら希薄にしてしまうのに皆よく見えているなぁといつも感心しながら映像を眺める。戦闘が開始されてしまえば私はインカムの音声を切り傍観者へ。無駄に口を挟むよりもその場に居る彼等自身で判断を下した方が良いだろう。

 何より。

 

「今日の皆の状況はどうかな?」

「皆さん圧倒的です。柱は鬼からひと太刀も浴びておりません。候補の方々もそれぞれ1体ずつ撃破。怪我はされておられません」

「流石だね」

 

 目が見えておられないお館様にこうして戦況を伝えるのも私の仕事だ。普段ならもう少し砕けた口調なのだが、今日はお館様の隣にもう一人座っておられる方が。お館様の継嗣の輝利哉様がおられるためよそゆきの顔をさせて貰っている。普通で良いんだよ、とお館様は仰ったが若者に良い所を見せたいのだ。

 

「候補の彼等は輝利哉から見てどうだい?」

「柱の方々に比べればまだ技術は未熟。胆力もまだ育ちきっていないと思われます。けれど柱の方々が候補として認められたのであれば、柱となれる資質があるのです。僕は戦場には出ません。ですので戦いにおいては戦場に出ている彼等の言葉を最優先します」

 

 まだ義務教育の年齢でしかないはずの輝利哉様の言葉にお館様は満足気に笑って頷かれた。

 

 ――お館様はもう長くない。

 

 それを知らされているのは柱と一部の隊員。そして輝利哉様。幼くして鬼殺の頭目となることを運命づけられている事は哀れだろう。表の世界でも裏の世界でも只人として生きる事は難しい。だがこれは産屋敷の家に生まれた者として諦めるしかないのだよとお館様は仰り、また輝利哉様も頷かれた。

 鬼と産屋敷の因縁は彼等だけで無く周囲をも巻き込んでゆく。鬼は鬼を増やし、鬼を敵とし鬼殺となる人間も増える。泥沼の様相が千年以上つづているというのだから恐ろしい。

 それにまた私も巻き込まれている人間の一人だが、ここから抜け出す術はお館様と輝利哉様同様に――知らない。

 

『冨岡さん一体逃がしました!行きます!』

 

 データ上では最後の一匹となった鬼が竈門くんの剣戟から逃げ、冨岡さんの所へと向かった。叫びをあげながら変形した爪を振りかぶっている。冨岡さんは態と納刀したまま型を構え、そして。

 

『――煩い』

 

 見えない太刀筋で鬼を切り刻んだ。叫びはその途端ぷつんと途切れたので、私はインカムのマイクを入れた。

 

「皆様お疲れ様でした。今より迎えを寄越します」

『どこだ』

「屋上が駐車場となっておりますのでそこに。十五分――いえ、十分少々で向かいます」

 

 本日の迎えとなるヘリコプターの操縦士の欄に後藤さんの名前を見つけ時間を訂正した。夜のお迎えで後藤さんの操縦なら十分以内には到着できるのだが、柱相手にハードルを上げないでくれと怒られたので最近は十分と伝えている。

 

『分かった』

「十五分後にそちらは法の下に戻ります。くれぐれも刀を忘れたり、爆薬忘れたり、毒薬忘れたり、銃を忘れたり落とし物などもしないで下さいね」

『……分かった』

 

 前回インカムを落として隠の部隊に回収しに行ってもらったからか冨岡さんの返事が重かった。

 その間に部隊の皆が指定した駐車場に集まりタイミング良く大型のヘリコプターも到着した。要請から到着までわずか六分半。新記録達成だと後で後藤さんに教えてあげよう。

 無灯火の大型ヘリコプターが部隊全員を回収した。こちらに戻ってくるのは三十分後ぐらいだろう。その間に暗号通達を該当省庁に再び一方的に送りつけた。何やら反論や怒号も来ているがその全てに目を通しているものいらないものを分けておく。今回は夜中という事もありアクションは鈍い。明日の朝の担当者は大変だろうなぁと通知をオフにして後ろを振り返った。

 

「お館様、輝利哉様、お邸に戻られますか?」

「そうだね。……輝利哉、手を貸してくれるかい?」

「はい父上」

 

 輝利哉様の手を握ってお館様は部屋を出て行かれた。負うた子に負われるのは寂しくもあり嬉しくもあるよ、と以前複雑な表情でそう仰った。だがあと何度輝利哉の手を握れるのだろうかと悲しそうでもあった。

 

「あー切ないなー……お迎え行こう」

 

 鬼殺に巻き込まれてしまった以上、おそらく死ぬまで産屋敷の元で鬼と対峙し続けなければならないのだろう。人はそれを不幸だと言うだろう。しかし、産屋敷の人達はそれでも良いと思わせてくれるだけの方々なのだ。優しい人達なのだ。鬼に対しては苛烈だが、それに反比例するように鬼殺に属する人に対してはどこまでも優しい人達なのだ。

 

 それに、不幸なだけではないのだ。

 

「こっわー」

 

 漆黒の大型ヘリコプターが無灯火で空から降りてくるのは中々怖い。巨大な黒い塊が轟音を立てて近づいてくるのだが何度見ても慣れない。ヘリコプターが到着して大きなプロペラがまだひゅんひゅん回っているのにドアが開き中から部隊の人達が降りてきた。

 

「腹減ったー」

「俺も。何か食べようか」

「牛丼!肉!」

「伊之助は肉ばっかじゃねぇか。夜中にそんなに重いもん食えねぇよ」

「善逸まだ若いのにそんな年寄りみたいな事言って……」

「炭治郎酷くない!?いや普通だから!時間見ろよ!朝方だぞもう」

 

 柱候補の三人は仲が良いようだ。それをにこにこしながら見送ったら三者三様に頭を下げられた。

 次に降りてきたのはしのぶちゃんたち柱の方々。

 

「炭治郎待って。俺も一緒に行く」

 

 無一郎くんは柱の中ではひときわ若く柱の方々とは少し距離があったのだが、候補の子達と仲が良いのなら良かった。

 

「あ、しのぶちゃんお疲れ様。はいコレ」

「お互いお疲れ様です。……イイヤツじゃないですかコレ」

「あまね様からの横流し品です。いいでしょう」

「最高ですね。一本いきますか」

「いきましょう」

 

 お館様の奥様であるあまね様からの横流し品という名の差し入れを一緒に見ていたら後ろから煉獄さんにうまい物かと聞かれた。

 

「残念ながら煉獄さんには無用なものですよ」

「高級美容ドリンクです。絶対にあげません」

 

 夜更かしは美容の大敵である。が鬼殺隊がそんな事を言ってはいられない。だがしかしそれはそれとして美容に気を遣いたいお年頃なのだ。それを慮りあまね様がこうして女性隊員にお高い美容ドリンクや化粧品を差し入れてくれるのだ。あまね様が下さるものは須く一級品。渡してなるものかと私としのぶちゃんで睨み付けたら煉獄さんは「すまん」とそそくさと竈門くん達のところへと向かった。

 しのぶちゃんと二人でこそこそ飲んでいたら後ろから声がかかった。

 

「何をしている」

「ナイショです。女性が楽しげにしている所に入ってくるなんて……無粋な男は嫌われるんですよ」

「俺は嫌われてない」

 

 本日もしのぶちゃんの言葉の刃も絶好調のようだが、それに対応する冨岡さんの鈍感ぶりも絶好調だ。この二人戦闘では良い連携をするのにどうも性格が合わないらしい。ハラハラしていたのは最初の頃だけ、最近はまーたやってると残った美容ドリンクをぐいぐい飲みながら傍観するぐらいには慣れた。

 

「嫌われる嫌われない以前のマナーですよ」

「胡蝶は煩い」

「煩くて悪かったですね」

 

 風は来るし朝方なので寒いので先に中に入ろうかなと思ったら冨岡さんに襟首を掴まれた。慎重差から首が絞まっているのに手を離してくれない。

 

「冨岡さん首!首!」

「なんだそれは」

「首!」

 

 冨岡さんの手をバシバシ叩いたらやっと離してくれた。本当に首が絞まるかと冷や汗が凄い。

 

「冨岡さん首はやめてください」

「なんだそれは」

「……いやまぁ公私混同はまずいかと」

 

 私の言い分に冨岡さんは機嫌が悪いし、胡蝶はいつになくにこにこしているし。いやこの顔はにこにこではなくニヤニヤだ。絶対に面白がっている。見世物じゃないんですけどと睨んでもニッコリとするだけだ。かといってここで訂正しないと絶対に後にひくよなぁと、ご不満そうな冨岡さんもとい義勇さんの手を握った。

 

「義勇さん」

「ん」

「お帰りなさいお疲れ様でした。家に帰りますか?」

 

 私の左の指には指輪が嵌められている。義勇さんの黒い手袋の下にも私と同じ指輪が嵌まっている事を知っている。

 

 死ぬまで産屋敷の元で鬼と対峙し続けなければならない私達は人から言わせれば不幸な身なのだろう。

 だがその不幸な身であったからこそ得られた幸せもあるのだ。

 

「――嫁と家に帰る」

 

 そう言って義勇さんも私の手を握った。ただそれだけで私は幸せなのだ。

 

「何を馬鹿な事を言ってるのです。部隊長は迅速な報告書の提出が求められているでしょう。ああ、安心なさってください。お嫁さんは私と今から一緒にスパに行って仮眠してきますので。――睨んでもだめです。貴方がお嫁さんに良いところ見せたいからって部隊長に立候補したんですよ?最後までやり遂げてくださいね」

「ごめんね義勇さん……実は約束してたの」

 

 しのぶちゃんだけでない。カナエちゃんや真菰さん、蜜璃さんといった女性陣での約束をしていたのだ。家に帰るかと聞いておきながら旦那さんは一人で帰る事になるので申し訳ないと思うが、実はもの凄く楽しみにしていたのだ。

 

「――遅くなるな」

「はい。気をつけるね」

「連絡欲しい」

 

 遅くなったら危ないから連絡くれたら迎えに行くとう事なのだろう。武術に卓越した方々に囲まれて何を心配する必要があるのかと思うが、旦那心を慮ってちゃんと頷いていたのだが。

 

「私達が一緒なのにそんな事を言うなんて冨岡さんは私達の力を侮っておられるんですか?」

「俺の嫁だ」

「だから守るのは自分だと言うのですか?束縛がきつい男は嫌われますし、たまには彼女にも羽を伸ばす時間が必要ですよ。安心くださいな、私達がちゃんと送り届けますから。冨岡さんは一人でご自宅にお戻りくださいな!」

 

 口でしのぶちゃんに勝てるはずもなく。私はしのぶちゃんに引きずられながらその場を後にした。

 

「――私だってたまには貴方と一緒に遊びたいんですからね」

 

 カナエちゃんの妹であるしのぶちゃんとは幼い頃から仲良くさせてもらっている。私を「二人目の姉として慕っているみたいよ~」とカナエちゃんが「ナイショ話~」と言いながらしのぶちゃんの前でそれを暴露したので恥ずかしさに顔を真っ赤にしていたのは良い思い出だ。

 

「はい。一緒に遊びましょう」

 

 スパでひとしきり女性陣とおしゃべり会をし、仮眠をとって自宅に帰ったのは朝の九時半。帰ってみたが義勇さんはまだ帰ってきていないようだ。あの様子だと先に帰ってきても可笑しくないのにどうしたのだろうか、と連絡が入っていないスマホをテーブルの上に置いて片付けや洗濯機を回した。

 作り置きの食事を温めて昼食を食べていると玄関のチャイムが鳴った。自動的に点ついたインターフォンの画面を見て玄関に向かい、鍵をあけた。

 

「お帰りなさい」

「……疲れた」

 

 玄関をあけたららすぐにスーツを着た義勇さんがよろよろと抱きついてきた。

 あの後報告書を仕上げて帰るぞ、という時に昼間の任務に就く予定だった悲鳴嶼さんが鬼と遭遇して時間内に到着できないとなり義勇さんが代わり勤めていたらしい。昼間の仕事はお館様の護衛として産屋敷の会社に一緒に向かったり、ご子息ご息女の護衛をしたりするのだが今日は前者だったらしい。途中で錆兎さんが変わってくれたとの事だが、それでも疲れたと何度も零す。

 

「鬼と戦いたい」

「何ですかソレは」

「お館様の後ろに控えるのは光栄だが疲れる」

「でもスーツの義勇さんも格好いいですよ」

 

 そういうとがばっと顔をあげた。

 

「もう一度」

「隊服もスーツ姿もお似合いですよ。思わず惚れ直しちゃう」

 

 重ねて言うとご機嫌になってくれたようだ。いつもならすぐにスーツを脱いで部屋着のジャージになるのに、そのまま部屋の中をうろうろしている。

 

「ご飯を食べますか?」

「食べる。じゃあ準備しますからちょっと座っててくださいな」

 

 まだスーツを脱ぐつもりはないらしい。まぁ汚す事はないだろうからと温め直しているシチューを前にぼんやりしていたらすっと義勇さんが後ろに立った。

 

「もうすぐですよー」

 

 後ろから抱きつかれ義勇さんの頭が肩口に乗った。ちょっと重たいなーと言っても動かない。服の裾から手を差し入れられて肌を撫でられる。

 

「すべすべでしょう?」

「……ああ」

「天然温泉引いてるらしくて。今度は義勇さんも一緒に行きましょう」

「いやだ」

 

 と言いつつ私の肌を何度も何度も掌がなぞる。腹の辺りをずっとさすられていたのだが、そのうちその手が段々と上にのぼってこようとするので服の上からぱちんと叩いた。

 

「おいたはダメです」

「……」

「ちょっと!や、義勇さんダメですって」

 

 下着の中まで潜り込もうとしてきたので服の上から思い切り抓り、足を思い切り踏んだ。そうしてやっと義勇さんの手が私の服から出ていってくれた。

 

「痛いぞ」

「痛くしましたから」

「すべすべを堪能したい」

「すけべオヤジですか」

「オヤジでもなんでもいい」

「お疲れですね。じゃあ先にご飯食べてください……後でイイ事しましょ」

 

 囁くようにそう言ったらきびきびと動きテーブルについて、猛然とご飯を食べ出した。その後のイイ事というのを期待しての事なのだろうが――徹夜空けからの仕事の後満腹にして、薄暗い寝室で背中をとんとんしてあげればおやすみ三秒。眠気に抗う事はできず義勇さんはすやぁと眠ってしまった。

 

「お昼寝はイイですよねぇ」

 

 と私も義勇さんの隣に転がったのだ。

 

 

 

 (目を覚ましたら全身剥かれて義勇さんにスベスベを堪能されてるとは夢にも思いませんでしたけどね)

 

 


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