「……はぁ。」
ダイダロス通りのとある場所で一人の少年がため息をついた。
少年は黒い髪に黒い瞳をしており、整った顔立ちをしているがどこか人を信じていない目付きをしている。
「日長一日……やることがない。お腹も空いた……。」
少年は立ち上がり、ダイダロス通りから出る。
やることもない少年はダイダロス通り全ての通路を理解しているため最短ルートで出る方法も理解しているのだ。
「……うわ、眩しい。」
少年は久々に見た街の賑わいを見て顔をしかめる。
あのダイダロス通りでは暴力は日常茶飯事だったため暴力も命の軽さも知らない奴等が多いからかもしれない。
「……どうしようか。」
少年は出てきたもののやることもなく、ボロ布を纏っただけの服で裸足で歩く。
すると
「なにやってんだクソガキ!」
バチンッ!!
軽快な音と共に大柄な男の平手が少年の顔に当たる。
(冒険者か。)
顔の痛みを隠しながら自然と相手を認識する。
冒険者とは神の力を与えられた人間。それだけわかっていれば十分だ。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「まて、クソガキ!」
少年は大声を上げて全速力で走り、その後を冒険者の男が走る。
それは、少年の計算通りの結果である。
ああ言った社会的な弱者を痛め付ける奴はそんな雑魚が自分の目の前からどこかに行けばどうなるかは予想しやすいからだ。
「はぁ……はぁ……。」
「追い付いたぞ……クソガキ……!」
ダイダロス通りのとある場所の近くの行き止まりの隅に少年は隠れ、そこに男がやってくる。
(ここまでこれば……)
「こふ……。」
少年の予想通り、男は闇派閥の一員に殺される。
少年が逃げ込んできた場所は闇派閥のテリトリーの中。そこに冒険者が入ってこれば闇派閥の奴等が勝手に殺す。少年はそれを理解していた。理解した上でそれを行ったのだ。
「……出るか。」
少年は身を潜めるのを止め、男の隣を歩いて再びダイダロス通りから出る。
「さて、何をしようか……物取りで金を稼ごうか……。」
少年はぶつくさ言葉を言いながら辺りを歩く。
実際問題、少年は食事を取らなくても『問題ない体』ではあるのだが、それになったのは一年ほど前の事だ。
まだ、少年の感覚神経が麻痺していないため食事を必要だと錯覚してしまっているのである。
「おっと。これは失礼。」
「………………」
少年は金髪の少年とぶつかり、吹き飛ばされる。
その瞬間、少年の中で僅かに警戒心を高める。
「……誰?」
「あぁ、僕の名前はフィン・ディムナ。君は?」
「……コオウ・クロツキ。」
フィンに呼ばれたコオウは自分の名前を言い、その場から立ち去ろうとする。
フィン・ディムナ。それはよく闇派閥の人たちがよく言葉にする勇者
ただ――――
「ちょっと来てくれるかい、コオウ。」
相手がフィン・ディムナでなければの話しである。
フィンもまたコオウの存在を僅かながら知っていのだ。
『ダイダロス通りの案内人』。ダイダロス通り全ての通路、扉、地下用水路を網羅している黒髪黒目の少年がいることを。
「嫌ですよ。」
「ついてきてもらうよ。コオウ。」
強引にフィンに連れられてコオウは引きずられていく。
―――ここから、コオウの冒険が始まる
(………………
―――だろう