……きっかけなんてささいなものでさ。
彼女の笑顔にときめいちゃったんだ。本当にそれだけ。キャンプファイヤーの明かりでキラキラしてて。
ズッキューンと来たね。胸がずきんと痛んで、ドキドキが止まらなくなった。どうやら恋のキューピッドってのは本当にいたらしい。
欲を言うと、もう少しドラマチックな始まり方でもよかったと思うんだけど。好きになった理由が「笑顔が素敵だったから」なんて、ちょっと地味過ぎない?もっと特別な出会いとかだったら良かったな、って思っちゃうんだよ。俺にとってはこんなに特別なんだからさ。
まあでも、恋の始まりなんてそんなものなのかもしれないな。大勢の人に聞いてみればわかるけど、何年も付き合って結婚まで行くようなカップルでも、最初の最初、好きになったきっかけは意外と地味だったりする。片方が告白してもう片方が仕方なく受け入れた、という事例もあるほどだ。
意外と恋ってのは安っぽく始まるんだな。
でも、恋には人生をかける価値がある。疑いもなく、そう思えてしまうから不思議だ。
なぜだか、無性に美しいと感じる。ただの他人事の胸キュンストーリーじゃ終わらない。自分も彼女欲しい、とかじゃなくて。必ずしも手繋ぎだとかキスだとか、肉体的な関係を望んでいるのではなくて。誰かと寝たいだけだったら風俗とかソープでどうにでもなるしな。
恋ってのはもっとこう……オンリーワンなものだと思うんだよ。相思相愛の男女二人だけの、強いて言うなら個人個人の。秘密というか、不可侵といいますか。
だって、俺が彼女と手を繋いでいたら、彼女と手を繋いでいるのは俺だろう。その時彼女の手を柔らかいなと感じてるのも俺。彼女がちらりと見上げた相手も俺だ。
しかも、その時俺が思ってることや感じてることを、全く同じに感じられる奴なんていないだろうし。たとえ彼女がほかの男と手を繋いだことがあったとしても。
恋愛してるときは誰もがオンリーワンになれるんだよ。
そう考えると「笑顔」がきっかけで恋に落ちたっていう俺の始まり方も、特別なものに思えてくる。
……そう。あの日あの時あの位置から、彼女の笑顔を見つけられたのは、後にも先にも俺一人で。キャンプファイヤーに照らし出された彼女の満面の笑みに心ほだされたのも、もしかしたら俺一人で。実はその直前、恋愛要素のない自分の人生を退屈に思っていたのも、偶然かもしれないけど本当で。
不思議だな。あの日から毎日、意識していないのに自然と彼女のことばかり考えてしまう。そしてそのたびに好きになった日のあの笑顔を思い出し、好きだなあ、と自分の気持ちを再確認する。「好きだ」なんて一フレーズで表してしまうのがもったいないくらい。どこまでも特別で、特別で、特別な、恋人だ。
誰だってそうかもしれないけど、俺はこの恋は必ず叶うと信じてる。馬鹿正直だなあと自分でも思うよ。でも、追いかけたい。これからどうなるかなんて誰にもわかりゃしないんだから。
フラれるかもしれない?ああ確かに。そういう可能性もある。でもまだ分からん。
とにかく告白しなきゃ何も始まらない。フラれた後の事なんざ、玉砕してから考えるさ。
特別。トクベツ。