【連載版】BARナザリックへようこそ in 異世界カルテット   作:taisa01

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最近 唎酒師 が気になる。
日本酒のソムリエのようなものといえば大まかに間違いはないのですが、気になる方は検索してみてください。
こんな世界もあるんだな~と。


第四話(アクア、ダクネス)

 日本酒 大吟醸 黒龍 しづく

 日本酒 純米吟醸 南部美人 ひやおろし

 日本酒 純米吟醸 清泉 亀の翁

 日本酒 純米吟醸 真澄 辛口生一本

 

 小さなおちょこを用意し、ミネラルウォーターを片手に、一口含んで味を覚え、一口含んで味を比較する。

 

 質や価格はピンキリ。

 

 飲む前の香り。

 

 口に含んだ時の舌のどの部分で味を知覚するかでの質の確認。

 

 一言甘口の日本酒といえども、その糖度も質もバラバラ。軽快で滑らかな味なのか、香りに重きが置かれているのか、飲み口や味質に重きを置くのか、それとも熟成させ重厚さに重きを置くのか。自分の好きな味の原点を確かめるように味わい、味の基準を覚え、味の変化を叩き込み、舌をリセットする。

 

ーー利き酒

 

 BARナザリックでは、ビール、ワイン、ウィスキー、清酒、焼酎、それらを合わせたカクテル。多種多様のお酒をご提供しております。

 

 それだけの在庫を保存しているからというのもありますが、それ以上にバーテンダーである私の特殊スキル、私が口にした(・・・・)ことがある液体をごく微量の魔力を消費することで生み出すことができるが大きいと自負しております。

 

 この特殊スキルは、一度覚えたものは、忘れないという補助的なものまであるので。これにより、生前の私が一口でも飲んだものに加え、魔導国二五〇年の歴史の中で生み出されたほぼすべての酒類や飲料水、果ては出汁やスープ(ただし具なし)などを、ほぼ無制限に生み出すことができるようになりました。さらに、料理のレシピと同じように、記憶したものは酒や食材に限り忘れないため、その数は増える一方。

 

 スキルの研鑽の末、さらに強力な存在となられたアインズ様。智謀の研鑽の末、未来予知にさえたどり着きそうなデミウルゴス様。武の研鑽の末、戦闘スキルの枠を超えたコキュートス様。

 

 料理やカクテルの腕は料理長など私を超える存在はいくらでもおられます。しかしレシピや食材・飲み物の知識量、飲み物の再現能力だけは私を超える存在はいないと自負しております。

 

 故にこのような利き酒も研鑽の一つといえます。

 

 そんな時、出入口の扉が勢いよく入ってこられました。

 

「こんばんわ。またきたわよ!」

「アクア、もう少し礼儀というものを考えてくれ」

 

 そいういうと長い青髪が印象的なアクア様と、背が高い金髪女性のダクネス様がご来店されました。

 

「ここってお酒やごはんは美味しいけど、悪魔の臭いがね~」

「こらアクア、さすがに失礼だろ」

「アクア様は女神でいらっしゃいますし、私たち異形種の天敵という点はかわりませんから」

 

 そんなことをいながらも二人はカウンター席にすわられます。

 

 アクア様は正真正銘の女神というか神族のため、悪魔など異形種の存在を臭いで判別することができるとうかがっております。そしてこの場は、それなりにアクア様曰くアンデットや悪魔に分類される存在の臭いがあるとのこと。

 

「でも、バーテンダーからは悪魔臭さはほとんどないのよね」

「わたしもインキュバスではあるんですが?」

「イ……インキュバスだと!」

 

 私が異形種であることは気にもされないアクア様はメニューを受け取ると、何を飲もうかと楽しそうに選んでおいでです。対してダクネス様は私がインキュバス様という情報に

 

「わ……わたしを酔わせてどうするつもりだ!」

「どうもしませんよ? 酔うのが嫌でしたら、耐酔いの指輪を御貸しいたしますが?」

「なんか、素で返されると悲しいものがあるんだが?」

「ダメよダクネス。この人の体から女性悪魔の臭いは一人しかしないから」

「なん・・・だと・・・」

 

 まあ、種族インキュバスではありますが、それらしいことは妻にしかしません。なにより、わたしの欲求や意義の大半はこの店で完結しますから。

 

「ん~どれも飲んでみたいんだけど、どうもピントこないのよね」

 

 アクア様はそういうとメニューを一回おかれます。そして何を思われたのか店をぐるりと見渡すと、私が先ほどまでしていた利き酒の器をみつけました。

 

「なに面白そうなことしてたの?」

「鍛錬と趣味を兼ねた利き酒ですね」

「なにそれ! おもしろそうね」

「何かやってみますか?」

 

 そういうとアクア様はキラキラした表情で頷かれておいでです。それをみたダクネス様も一息ついたのか同じようにうなずかれました。

 

「バーテンダー。わたしも一緒にいいか?」 

「では、何パターンかにわけてやってみましょうか」

 

 まず、お通しのミックスナッツを置きます。その上で大きなワイングラスにミネラルウォーターをそれぞれにお渡しします。

 

「こちらのミネラルウォーターは、舌のリセット替わりにお使いください。では簡単なものからやってみましょう」

 

 私は小さなグラスをお二人の前に3つづつおき、右から順に注ぎます。

 

 三つを並べると右から小麦色から茶色、最後に黒というように色合いも違うビールが並ぶ。

 

「アクア様はビール系統もお好きなようなので、まずは飲み比べからはじめてみましょう」

「へー 面白い趣向ね」

「これは、どう飲めばいいんだ?」

「まずは、それぞれ飲み比べて、違いを楽しんでいただければよろしいかと」

 

 そういうと、アクア様はまず一番淡い色のビールに手をつけられました。

 

「うん、香りあるけど、すっきりしてておいしいわ。後味も引かないしビール特有の飲んだあとの気持ちよさもあるわ」

「はい。こちらはハーベストムーン ピルスナーという銘柄となります」

「じゃあ私は真ん中を飲んでみるか。ん? ビールなんだがほのかに甘い? 飲んで気が付いたのだが香りも違うな。何か華やフルーツのような」

「そちらはハーベストムーン ブラウンエールとなります。」

 

 私は三つの紙を並べます。 

 

 ハーベストムーン ピルスナー(淡い小麦色のビール)

 ハーベストムーン ブラウンエール(カラメルモルト由来の美しいブラウンカラーのビール)

 ハーベストムーン シュバルツ(黒ビール) 

 

「じゃあ最後のこのシュバルツね。ん~苦味と甘みが程よいバランスの濃厚なビールね」

「味もだがこのブラウンエールよりも香りをおさえているのか? より味を強調しているのだな」

「アクア様とダクネス様がコメントされましたとおり、一般にビールというカテゴリーでも、かなり違うということです。なによりこの三つは同じ工房で作られたものです。製法、ベース、時間、さまざまな違いで大きく変わることをお楽しみください」

 

 そういうと、お二人はあえてチェイサーを挟んでゆっくり味わいながら違いを感じられておいででした。

 

「ではステップ2といきましょうか」

「あら、私にお酒で勝負しようっていうの? どんどんもってきなさい」

「アクア。きっとそんなことじゃないぞ」

 

 私はお二人の前に二つのグラスを置きます。グラスには淡い琥珀色のビールが両方はいっておいでです。若干色合いが違うのですが、かなり見比べなくてはわからないレベルのものです。

 

「先ほど飲まれた、ピリスナーを当ててください」

 

 そういうと、お二人はチェイサーを挟みながら飲み比べをはじめました。最後まで悩むダクネス様をしり目に、アクア様は途中で片方を飲み切ってしまったのでした。

 

「アクア様。同じものをご用意しましょうか?」

「いえ、もう決まったから」

「アクアはわかったのか?」

 

 ダクネス様驚きの声にたいし、アクア様は得意げにな表情をされておられます。

 

「では、お答えをどうぞ」

「右よ」

「左かな?」

 

 アクア様は残された方の右を堂々と選択され、ダクネス様は左をまよいながらさされました。

 

「正解はアクア様です」

 

 私は一拍おき、ぱちぱちと手をたたきながら正解されたアクア様に質問します。

 

「どのあたりで気が付きました?」

「だって、左はしゅわしゅわでしょ」

「え? そうなのか?」

「はい。正解でございます」

 

 アクア様は先日私の能力を理解されると、どこに隠し持っておられたのか、最後の一本といっていたクリムゾンビアを持ち込まれました。そして「もうこの一本しかないの! 量産して」と、華麗な土下座をされました。実際、一口飲んで再現ができたので、来店されたとき、瓶で5本ほどお渡しさせていただいております。

 

「利き酒とは、酒の品質を判定するのが本来の意味となりますが、世間一般では様々な酒を味見し、その違いを楽しむことでも使われます」

「へ~」

「先ほどのように、似た見た目の酒でも味が違うのだから 酒の種類があるならそんな楽しみもあるのだろうな」

 

 私は、そんな話をしながらスライスした牛タンを塩であぶります。タンはすぐに焼き上がり、香ばしい見た目はそれだけで食欲をそそります。

 

「では、このタンに合うビールをお選びください」

 

 私はそういうと、最初になられば3つのビールに加えクリムゾンビアを並べます。

 

 アクア様とダクネス様は

 

「これそのままでも十分においしいのに、クリムゾンビアと一緒だと最高ね」

「いやアクア。シュバルツもいいぞ。苦味と甘みがさっぱりした味わいの肉によく合う」

 

 お二人が様々な組み合わせで議論されておいでですので、私は様々のおつまみの準備をはじめます。

 

 なんせ夜は長いのです。

 

 きっとお二人の好みとなる組み合わせが見つかることでしょう。

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