英雄よ、生まれ給ふ事勿れ   作:おーり

1 / 17
原作未読でも楽しめるように配慮しますが、原作を読むと面白さがきっと上がります


賢者の孫と烏丸イソラ(暫定)

「此処がアールスハイド王国かー、わくわくするなー」

 

 

 某野原さんのコラ画像みたいに、浅黒い肌の少年が街並みを見上げていた。

 その口調は間延びしたモノで、何処か棒読み感が拭えない。

 

 わざとらしいくらいに『自分は他国から来ました』と主張する在り方はむしろ『疑ってください』と両手を広げて会敵を誘っている(ナリ)なのだが、周囲の群衆はそんな少年の在り方に一切の疑念も抱いていなかった。

 この様相を『平和の証拠』と捉えるのは容易い。

 しかし、少年の抱いた感想は、

 

 

「(教育がなってねーな。お隣のブルースフィア(帝国)が禄でもない政策を強いていて、しかも侵略に乗り気なのに国交と境界線が緩々。踏み込まれてからでも勝てる、っていう自信の裏打ちかも知れんけれど、間諜の目が国内に少なすぎるし俺に対して働いてない。慢心し過ぎぃ、英雄王くらいに実力付けてから言ってよね!)」

 

 

 辛辣だった。

 心中でおどけた様に国政に唾を吐くロクデナシは、しかし露店主には笑顔で値段を聞く。

 小麦と羊毛と織物、串肉に白菜に果実。白菜!?(二度見。

 一人で抱えられる量を計って、時に値切って買ったり買わなかったり。

 

 値の変動を予測して、市場に出回っている品目を検めて。

 ちなみに魔道具は変動が無いので対象外だ。

 道具の精度によっては文化革新の気配を知れるが、よっぽどの『劇薬』でも投入されない限りは変わりはない。

 

 それも、『誰かが開発した』という程度では、本当に変動が無いのが魔道具流通の背景だ。

 制作側が利権を握っているので、国家が裏から手を回さない限りはいっぺんに換えられようも無い。

 この少年にとっては、あまり関係の無い話だが。

 

 路地向こうにある劇場への行列に、何処かの子供が驚いた声を聴いた。

 それに目を向ければ、少女が二人。

 厳つい半裸の男たちに取り囲まれている姿を、正面に見つけてしまっていた。

 

 

「あー、「お嬢さんがた、お困りですか?」……ん?」

 

 

 なんだか、科白がハモったような。

 

 

 

  ■

 

 

 

 お困りです! という返事は如何なモノか。

 

 さておいて。

 自分たちが魔物を狩って生活を守ってるんだぜヒャッハー! と声を張って、少女を襲う事への大義名分を主張した世紀末な方々であったが。

 

 ……いや、生活守っているなら猶更街中で迷惑行為に勤しむのは駄目だろ……。

 完全にチンピラ系の理論を発揮していたモヒカン、間違えた、モヒカンは居なかったが世紀末(モヒカァン)な御仁共。

 反対側から声を掛けていた少年の、「女の子を狩っちゃったら悪人だろ」という科白に逆切れし、殴りかかって返り討ちにされていた。

 

 うわぁ、この国、このレベルでハンターが成立するの……?

 

 

「蚊虻の如き、ってやつだね」

 

「ぶ、ぶんもう……?」

 

 

 おや、伝わらなかったか。

 要するに、

 

 

「クソザコ、ってことだよ」

 

「舐めてんのかテメェもぉアーーーッ!?」

 

 

 雑魚ぃチンピラでも、少女らを取り囲むことを取り止めてはいない。

 そりゃそうよね、初めから目的はこの娘たちなのだから、逃そうとするはずもない。

 

 こちらが少女らを壁際から連れ出して居なければ、どんな被害が広がるか。

 最悪、人質としてハラスメントな行為(コト)に及ぼされるのも精神衛生上好ましくも無いので、手早く(ひょいひょいと)モヒカァンな方々から引き離しておいた。

 

 そんな中で挑発を咬ましてしまう少年の、好戦性が普通に目に余る。

 こちらのツィートに反応した少女の漏らしたお言葉で、避難に気付かれて激昂したチンピィラの股間を軽く潰し早急に退避。

 金的とは、内臓なのだッ!

 

 

「熱を持たせると生殖機能が著しく損なわれるから体外に出ているだけであって、急所なのは間違いが無い。なので、襲われたら真っ先に潰すべき場所、覚えておきなさい。でなければ眼球ね」

 

「エッグ……!」

 

「わ、わかりました」

 

「いやシシリー!? これ了承したらダメなやつぅ!?」

 

 

「……えーと、怪我は、無い……?」

 

 

 チンピィラの方々を、割と俺よりもエグぃ体術で潰して来た少年が、所在なさげに声掛け事案。

 受け身も取らせねぇ。

 おいおいおいおい、死んだわモヒカァン。

 

 

「こっちの科白だよ、そいつら死んでない?」

 

「お、俺は悪くないよ! こいつらが弱すぎただけで……!」

 

「犯罪者はみんなそう云うんだよー、さっきのそいつらも言ってたしね。とりあえず、詰め所にいこーか」

 

 

 この国の『臭い飯』にも興味があるんだ。

 尚も言い募る少年を引っ張って、俺はその場を後にした。

 烏丸イソラはクールに去るぜッ!

 




~白菜
 漫画版読み返すとホントに書き込んである
 違う野菜の可能性もあるけど、あの形状で白菜以外を思えないわ


~国境
 戦争時、示し合わせたように街道でもない場所を迎え撃った王国
 帝国の進撃情報を読んでいたから場所を捉えられた、とも取れるが、仮面ラ●ダーとショッカーがぶつかり合うような採石場を目指していた帝国の進軍方向も如何なモノか
 高所から攻め込んでいた形式は彼我の高低差から見ても最優の戦端であったのだが、司令官が無能だったために『距離を取って魔法で砲撃』という白兵戦に於いての優位戦術に臨めなかったのが痛い
 ちなみにその『司令官』が帝国の国王。控えめに見ても酷い


~魔道具
 魔力を流すと使える。文字を付与して造り手のイメージ通りの働きをする
 この世界ではその辺がデフォルトで成立している、『在り得ない』法則無視第一号
 イメージで固定できるって、魔法をその形で取って置ける、っていうこと…?
 あれ? エネルギー排出する魔石とどう違うの? 『そういう魔法』をイメージで付与すれば、魔石モドキも造れない? 電池みたいな
 形式としては同じモノだろうに、それらを『別物』に捉えている理屈が合わないキガスル…
 利権関係については妄想入ってるけれど、無駄に高価に取り扱えられるのは一般的にハンドメイドだから、という理屈が第一に挙げられているのではと解釈
 造り手が限られているので、著作権や特許なんかが無くても盗作の恐れが無い、とか
 だから高騰してるんだろ、とも取れる。そりゃあ造り手目指しますわ。ウッハウハですわ


~チンピィラ
 受け身取らないの!? と驚愕してたけど、相手がそれを取れないような手段で暴力振るうのはどうなの
 チンピィラの方々が先に攻撃して来たので対処しました。山賊は滅殺です!
 なろうではこの辺常套だけど、心構えはさておいて、マウント取って身動きできないようにして殴るのはどう考えても蛮族
 結局この世は弱肉強食と志々雄誠も言っていたので乗っかった。そんな自分が優位に立てない過去を引き摺ってマウントを取りたい人種の多いこと多いこと
 いえ、良いんですけどね。優越感は誰だって取りたいじゃない
 ちなみにそういう蛮族思考は普通に現代日本だと辟易の対象。取りたいのは解る。でも実行する奴ァ刑法だ。そんなのが現実。お疲れさまでした煽り運転


~烏丸(暫定
 この世界では名前をそのまま使えないので括弧仮
 大体此奴が居ると物事の原因じゃないのか、って邪推される
 大体合ってる

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。