俺はずっと好きでいる   作:酉柄レイム

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A組 VS B組 対抗戦 ①

「制限時間は20分。時間内に決着がついていなかった場合は残り人数の多い方が勝ちだ」

 

 最初の対戦はA組上鳴、切島、梅雨ちゃん、口田に心操を加えた5人。B組塩崎、宍田、鱗、円場の4人の対戦。どっちが勝つかと考えてみたが、B組のやつらの個性を全く知らないので考えようがない。ただ見た目的に塩崎は髪の茨が個性で、宍田は獣みたいな個性だろう。

 

「第一試合、スタート!」

 

 ブラド先生の合図で、第一試合が始まる。その様子を試合に参加していない俺たちは試合の様子が映されるデカいモニターで観戦ができる。

 

 B組の誰が厄介かはあまりわからないが、A組で一番厄介なのは確実に上鳴だ。俺みたいな個性じゃなきゃまともにくらえば一瞬で終わりだろう。あいつはアホだが個性は本当に強い。使い方次第じゃ普通に追い抜かれるかもしれないのに、追い抜かれる気がまったくしないのは上鳴がアホだからだろう。本当にアホだな上鳴は。

 

「さて爆豪。俺らどう動く? 始まってみねぇとわかんねぇけど、ある程度の動きは決めといた方がいいだろ」

 

「俺に合わせろ」

 

「だそうだお前ら。爆豪に合わせろ」

 

「いや、期待してなかったけどよ」

 

「ただ正直それが一番勝率いいんだよな」

 

「久知は序盤役立たずだしね」

 

「おい耳郎。はっきり言うな」

 

 瀬呂、耳郎、砂藤は呆れ顔だが、瀬呂の言った通りそれが一番勝率高いってのがわかってるんだろう。爆豪は性格がクソだが、戦闘センスは段違い。爆豪について行ってサポートに徹するだけで勝利をもぎ取れる。

 

「でも夜嵐がいんだよなぁ。最低60は出さねぇと勝てる気しねぇよ」

 

「俺が殺しゃいいんだよ」

 

「あのなぁ、夜嵐以外なら対面すりゃすぐ勝てるだろうが、夜嵐は無理だ。アイツに時間取られて他のやつらの対処が疎かになったら意味ねぇだろ。まぁそうなったら俺らがどうにかするけど」

 

「わかってんならいちいち文句言ってんじゃねぇカス」

 

「この二人、戦闘ってなるとすげぇ冷静なのな」

 

「成績いいからね」

 

「いつもはクソなのになァ」

 

 俺たちに対する周りの評価がものすごいのはいつものことだから無視しておく。そりゃ一緒に組むってなっていつもみたいに喧嘩するわけにはいかないからな。チャンスがあったら後ろから潰そうかと思うこともあるが、そんなことしたら除籍処分されかねない。おふざけの範囲を超えている。

 

「お、上鳴やるじゃん」

 

 爆豪と話し合い……うん、話し合いながらモニターを観ていると、上鳴が珍しく活躍していた。

 

 宍田と円場にA組チームが襲撃された場面。デカい獣みたいになった宍田に上鳴がやられるかと思ったその時、心操の『洗脳』に宍田がかかり、動きが止まったその瞬間に詰め寄って電気を浴びせた。円場は上鳴が詰め寄ってきたのを見てすぐに離れたが、その隙を梅雨ちゃんにつかれベロで拘束される。

 

 心操の『洗脳』は衝撃で解ける。それを理解していたからか上鳴は油断することなく宍田から離れ、ポインターを宍田に付け、それを外す暇を与えないまま放電。電気に撃ち抜かれ、しかしまだ耐えようとしていたところを切島と口田のダブルパンチでノックダウン。

 

「やっぱ上鳴つえぇよなぁ。アホだけど」

 

「ちゃんとアホにならないよう出力調整してるしね。アホだけど」

 

 俺と耳郎にアホと罵られた上鳴は、画面の向こうでガッツポーズしていた。追い抜かれる気がまったくしないって言っていたが、そういや前の戦闘訓練でやられかけたことを思い出し、中々侮れないなと認識を改める。元々強い個性だからそりゃやる気出しゃ強いわな。

 

「こりゃもうA組の勝ちだろ」

 

「油断しなきゃな。あのアホだけなら油断してただろうが、カエルがいんならそれもねぇだろ」

 

「爆豪が人を評価してる……!?」

 

「優秀なやつは覚えるんだよこいつ。あとぶっ殺したいやつ」

 

 驚いている砂藤は覚えられているかどうか微妙だが、流石にクラスメイトだから覚えてるだろう。瀬呂と耳郎は間違いなく覚えてる。瀬呂の個性は優秀だし、地味に成績もいいし、耳郎の個性はめちゃくちゃ使える。相手に夜嵐さえいなきゃ勝ち戦だった。

 

 俺たちが予想した通り、A組はそのまま口田の索敵でB組の位置を割り出し、数の暴力で圧勝。最初に上鳴がちゃんと動けたのがデカかった。心操の『洗脳』と動いてくれることを信じてなきゃできない動きだった。

 

「でも上鳴にはやっぱり負ける気しねぇわ。よく考えたら俺にとっちゃあいつドーピングみたいなもんだし」

 

「勝ち方ダサくない? 上鳴も一発で倒そうとしてアホになるだろうし」

 

「勝てば勝ちなんだよ」

 

「お前爆豪に似てきてるな」

 

「俺はこんなダサくねぇわ!」

 

「俺もダサくねぇわ!」

 

 今まさに喧嘩が始まろうとしたその時、反省を終えた上鳴たちが帰ってきた。上鳴が俺と耳郎の間に、切島が爆豪の隣に座る。

 

「どうよ! 俺どうよ! よかったっしょ!? 惚れるっしょ!?」

 

 上鳴が俺と耳郎を交互に見ながら腕をばたばたと動かして「褒めて褒めて」と言っている。あまりのアホ加減に笑いを堪えている耳郎に変わって、俺が褒めてやることにした。実際、MVPっつったら上鳴……いや、上鳴の個性を考えたら当然の動きか。やっぱMVPじゃない。自惚れるな。

 

「確かに、上鳴やるじゃんって言っちまったしな」

 

「やっぱり!? 俺やるんだよ、実は!」

 

「くくっ、よかったね。そのアホ試合中に出なくて」

 

「アホって! 褒めてくれてもよくね!?」

 

 上鳴に犬の尻尾が生えているのが見える。勢いよく左右に振って耳郎を期待の眼差しで見つめていた。子どもかこいつ。どんだけ褒めてほしいんだ。

 

 耳郎は一つ咳払いして心を落ち着かせると、キラキラした目の上鳴を正面から見てまた笑いそうになりつつ「まぁ、よかったんじゃない?」と精一杯の褒め言葉を奉げた。それで満足したようで、「だろ!」と少年のような笑顔で喜んでいる。こいつの場合純粋って言えばいいのかアホって言えばいいのか。1:9でアホの勝ちだな。

 

「んじゃ爆豪。そろっと本気で動き決めとくか。お前主体に動くってのは間違いねぇけど、役割も決めておいた方がいい」

 

「俺が先頭。接敵したら俺がぶっ殺す。俺がヤバくなったらテメェらがどうにかしろ。クソヤニはたまったら俺とツートップだ。クソ風が出たら真っ先に潰す。そん時テメェがまだたまってなかったら邪魔がこねぇように他のやつらと周りのやつら潰しとけ。耳は索敵、唇はザコと障害物潰し、しょうゆ顔はその場の状況見て臨機応変に動け」

 

「はいよ」

 

「唇ってもしかして俺のことか?」

 

「この中で唇って言ったらお前だろ」

 

「てかやっぱ久知は特別なんだね」

 

 あいつが特別扱いすんのはダメージと疲労がたまった俺だけどな。普段の俺はこの中で一番弱いし。個性使えるのとそうじゃないのじゃ天と地ほどの差があるが、そんな言い訳が通用する世界でもない。爆豪は『たまってなかったら』って言ったが、言外に『死ぬ気ですぐためろ』って言ってるようなもんだ。

 

 期待、というか信頼されて悪い気はしないから死ぬ気でためよう。わざとダメージくらいにいくんじゃなくて、スマートなやり方で。

 

「あと最初の方はぜってぇザコのクソヤニが狙われっからテメェらがサポートしろ。相手が普通に出てくるとしたら最初はクソ風がクソヤニ狙いにくる。俺がクソ風の対応してる間に他のザコもクソヤニ狙ってくるだろうからな」

 

「久知をほっとけば爆豪が二人になるみたいなもんだからな」

 

「瀬呂。その言い方はあんまり嬉しくねぇ」

 

「俺のセリフだクソが」

 

 飛びかかろうとした俺を砂藤が止める。切島と上鳴は「いつも俺らが止めてるけど、それやらなくていいのは楽だな」とのほほんと談笑していた。止めてるんじゃねぇよ止められてやってんだよ。ちなみに砂藤は力が強すぎて本気で動けない。力が強すぎて怖い。

 

 羽交い絞めにしてきた砂藤の腕をタップして拘束を解いてもらい、砂藤の前では爆豪に飛びかからないようにしようと心に誓った。ムキムキの大男に羽交い絞めにされるのがこんなに怖いとは思わなかった。この怖さをリセットするために今度被身子に羽交い絞めにしてもらおう。そうしてくれたら俺が被身子を羽交い絞めにしちゃうかもな!?

 

「どうした久知? 気持ち悪いぞ」

 

「ンだとコラ上鳴。そういや耳郎が前お前のこと好きだって言ってたぞ」

 

「うぇ!? マジ!?」

 

「ねぇ久知。今もしかして『気持ち悪い』とウチの『好き』を同じ意味で使わなかった?」

 

「はははそんな。ははっ、ぎゃあ!」

 

 笑っていると爆音をお見舞いされた。暴力はよくないぞ、暴力は。おかげでちょっとダメージたまったけど、こんな情けないダメージのたまり方嫌だ。上鳴はまだ「え、マジ!?」って言ってるし。嘘だよ気づけよアホ。

 

「ねぇ久知。このアホどうにかしてくんない? めちゃくちゃ詰め寄ってくるんだけど」

 

「知らねぇよ。切島お疲れ」

 

「知らねぇよって何あっさりしてんの! ちょ、バ上鳴! さっきのは嘘だって言ってんでしょ!」

 

「え、嘘なの!?」

 

 にぎやかな二人を置いて、切島の隣に座った。切島は「おう!」と笑って迎えてくれたが、苦笑しながら「オメーあぁいうのはよくねぇぞ?」と注意してくる。切島の言うことなので素直に頷いておこう。切島はいいやつだ。爆豪とつるんでいることからいいやつ加減がよくわかる。つまり俺もいいやつ。

 

「あんまりいいとこなかったなぁ」

 

「俺の個性って相手が喧嘩してくれねぇと意味ないからな。もっと戦いに持っていくような立ち回りしねぇと」

 

「追って殺せ」

 

「追わせて殺せ」

 

「おう、殺さねぇけど参考にするぜ!」

 

 『追って殺せ』という爆豪の意見も参考にするなんて、やっぱりいいやつだ。切島には絶対『追わせて殺す』方が向いてると思うのに。まぁ正直切島は放っておいても脅威になるような個性じゃないから、『追って殺せ』の方がいいのかもしれないが。

 ちなみに俺は『追わせて殺せ』が合っている。自分で言うのも何だが、放置するととんでもないことになるからな。俺すごい。

 

「それでは第二セットそれぞれ準備を!」

 

 そうして話していると、第二セットが始まろうとしていた。A組が八百万、葉隠、常闇、青山。B組が拳藤、黒色、吹出、小森。吹出漫画のコマみたいなツラしてるけどアレどうやって呼吸してるんだ? 個性知らねぇからまったくわからん。

 

 ……あとで他のやつに俺らの相手の個性聞いておこう。そう決めた瞬間、第二セットの開始が告げられた。

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