どうか、御容赦ください。
「危険だ!学生の領分を超えている!」
「私も反対よ。学外のことは警察に任せるべきだわ」
真由美も厳しい表情で首を横に振った。それは生徒会長としての立場上、生徒を危険にさらすわけにはいかないからだろう。
だが
「そして、壬生先輩を、強盗未遂で家裁送りにするんですか?」
達也の一言に、顔を強張らせて絶句してしまう。
「なるほど、警察の介入は好ましくない。だからといって、このまま放置することはできない。同じような事件を起こさないためにはな。だがな、司波」
炯々たる克人の眼光が、達也の眼を貫いた。
「相手はテロリストだ。下手をすれば命に関わる。俺も七草も渡辺も、当校の生徒に、命を懸けろとは言えん」
「当然だと思います」
「最初から、委員会や部活連の力を借りるつもりは、ありません」
「1人で行くつもりか」
「本来ならば、そうしたうところですが」
「お供します」
「俺も行くぞ」
「ゼロくんが行くなら、私も」
「あたしも行くわ」
「俺もだ」
深雪、陸久、あやな、エリカ、レオの順。
「司波くん、もしもあたしのためだったら、お願いだから止めて頂戴。会長の仰るとおり、警察に任せましょう。あたしは平気。罰を受けるだけのことをしたのだから。それより、あたしの所為で司波くんたちに何かあったから、そっちの方が耐えられない」
紗耶香が慌てて止めに入るが、振り返った達也の表情は、彼女の誠意に応えるには、相応しからぬものだった。
「壬生先輩の為ではありません」
紗耶香がショックを受けた顔で黙り込む。
「自分の生活空間がテロの標的になったんです。俺はもう、当事者ですよ。俺は、俺と深雪の日常を損なおうとするものを、全て駆除します。これは俺にとって、最優先事項です」
「しかし、お兄様。どうやってブランシュの拠点を突き止めればいいのでしょうか」
「分からない事は、知っている人に聞けばいい」
達也と視線を合わせ、俺は出入口の扉を開く。
「ですよね?小野先生」
「九重先生秘蔵の弟子と一高の代表には敵わなかったか」
「隠れているつもりもなかったようですが?」
「あんまり嘘ばかりついていると、その内、自分の本心さえも分からなくなりますよ」
俺と達也からツッコミが入る。
達也くん。君はブーメランって言葉知ってるか?
「気をつけておくわ。もう大丈夫みたいね」
「小野先生・・・・・・」
「ごめんなさいね、力になれなくて」
首を横に振る紗耶香の肩に手を置いて、そういった。
小野先生が壬生先輩から離れたところで達也が問う。
「小野先生。ここに至って、知らないふりはしませんよね?」
「・・・地図を出してもらえるかしら?その方が早いわ」
地図データを確認すると、ブランシュの拠点は目と鼻の先ということがわかった。
「達也、すぐに行くのか?」
「ああ、そんなに時間はかけない」
「車は俺が準備しよう」
克人が車の準備をすることになった。
車はオフロードタイプの大型車だった。
そしてその助手席には、見覚えがある顔があった。
「よう、司波兄」
「桐原先輩」
「あんまり驚かねえのな。俺も参加させてもらうぜ」
「どうぞ」
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