GBD-L_ガンダムビルドダイバーズ Lonely 作:杉村 祐介
ボクが最初に記憶しているイチョウは、バルバトス第四形態に乗って戦っていた。ダイバーランクが低いながらもその格闘術にはセンスがあった。近接戦闘ならトップランカーを狙える操縦技術を感じていた。熱血漢でありながら精密なコマンドを入力できる冷静さと、敵対するモビルスーツの流れ、いや、『戦場の流れ』というものを読んでいるかのような眼を持っていた。そんな彼がたまたま泥沼となってしまったクエストに、救援として自分が入ったのが、最初の出会いだった。
「救援か、助かるぜ!」
そんなイチョウからの通信を無視して、ボクはゲイルシュナイデンを動かした。当時のボクは今のように冷静な仕立て屋ではなく、ただ乱雑に、主役であるクエスト受注者を捨ててでも救援クエストを突破する一陣の風に過ぎなかった。メンバーに無言でフォースから脱退して数日しか立っていなかった自分は、GBN内にどこにも居場所が無いような気がして彷徨う亡者だった。
「おい。お前ちょっとは反応しろよ!」
迫りくる敵機をなぎ倒すゲイルシュナイデンと、それなりにプレイを重ねてきたボクに難なく追いついたイチョウに違和感を覚えながらも、ボクは自機を動かし続けた。それを追従するイチョウのバルバトスは、満身創痍ながらもまだ健闘していた。
このときのクエストはグリプス戦役を模したコロニーレーザーの発射阻止が目標だったと覚えている。最もそれに気づいたのは、大ボスであろう百式やジ・O、キュベレイたちを全てボクが撃墜した後のことだった。
「これで、終わりか……」
「終わりなんかじゃないぞ、早く出ないと!」
「……なら、ボクのことは置いていけ。それでクエストクリアだろう」
遅かった。このクエストの目的が生還だということは、その時初めて気がついた。最初の通信で詳しく聞いていればこんなことにはならなかっただろう。
自分とて名高いモビルスーツ達と争って無傷でいられたわけではない。むしろその時は腕ももげて片足も切り落とされ、もはや自力で母艦に帰ることすら困難になっていた。だが当時のボクはそんなゲイルシュナイデン以上に、他人と上手く会話することができないほどに荒れていた。その時も、そうやってそっけなく返事をしたまま、自分がコロニーレーザーに焼かれるのを待つという選択をしたのだから。
だが、イチョウのバルバトスはボクの提案を無視して、ゲイルシュナイデンを担いだ。Zガンダムを倒したであろうバルバトスも損傷激しく、残された僅かなエネルギーを使って、ボロボロの機体を抱えて飛び上がったのだ。
「放っておけ、キミまで死ぬぞ!」
「死ぬもんかよ、死なせるもんかってんだよぉ!」
結局、コロニーレーザーの発射時刻までの撤退に間に合わず、バルバトスとゲイルシュナイデンは光に包まれて、その時のクエストは失敗に終わった。
◇ ◇ ◇