GBD-L_ガンダムビルドダイバーズ Lonely   作:杉村 祐介

15 / 35
二度目のすれ違い

「くそっ、離脱を」

「無駄だ……ここは離脱制限エリア。機体が尽きるかクエストをクリアするまで帰れない、地獄の釜の底さぁ!」

 

 高難易度作戦の一部に設定されている『離脱制限エリア』。基本的には戦線離脱からのリペアやチームでの作戦会議といった行動を封じるためのゲームギミックだが、イチョウはそれを逆手に取って、わざわざ高難易度作戦の救援を出して、援軍の離脱を制限した上で襲いかかってきたというのか。

 確信犯。この男はシステムを悪用してPVP(対人戦)を行う所謂『救援キラー』だ。

 

「ハメられたっ」

「ああ、ハマっちまったもんはしょうがねぇだろ。だから楽しもうぜ、今の境遇をよぉ!」

 

 再び黒鉄の刀を手にした鬼武者が追従する。コトノリ――ゲイルシュナイデンは膝からアーマーシュナイダーを武者の目、メインカメラに向けて射出する。そんな牽制を、機体をずらして肩口の黒い装甲で難なく受けた悪魔。勢いを殺すこと無く、敵を殺すために、鬼は爪を振るった。月光に照らされた黒い機影は、その白い鬼の攻撃を大剣をもって紙一重でいなした。鉄同士がぶつかり合い散らされる火花に、お互いの白と黒の装甲が両極端に輝いて見える。

 

「覚えているかぁ。オレと初めて会った時、その剣でばったばったと敵を倒していった自分の姿をよ……めちゃくちゃカッコよかったんだぜぇ。ああ、オレはあの時純粋だった!」

「覚えていない、そんな昔のことなんて」

 

 嘘だ、はっきりと覚えている。純粋だったころのイチョウは強かった。戦闘のセンスがあったというべきだ。つたない作りのバルバトス第四形態を、アニメ同様かと思わせるほど鋭く操縦し、そのメイスと刀を振るっていた。その当時のコトノリはというと、チームを離れて荒れているころで、どんな救援にも乱入して敵を――的を倒して去っていく。そんな横暴な男だった。

 

「ボクの救援が悪かったと、そう言いたいのか!?」

「いいや、てめぇがあの時見せてくれた太刀筋はすげぇ綺麗だった。オレにGBNでやるべきことを見せてくれた。生きる方法を、嬲るってことを!」

 

 今の戦国バルバトスが握る刀もその時振るっていたものだろう、太刀筋がまるで同じである。ゲイルシュナイデンは振り下ろされた黒刀を受けきれず、ライフルと実体剣の複合兵装を弾き飛ばされる。

 

「嬲るのは楽しいよなぁ、面白いよなぁ。こんな楽しいことを教えてもらったんだ。恩返ししなきゃあならねぇだろぉ!?」

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 二度目に出会った時のイチョウは、彼がGBNを始めた時とはすっかり変わっていた。戦国アストレイ頑駄無に乗り換え、数字ばかりを追いかけるプレイヤーになっていたようだった。プレイヤープロフィールが物語っていた。クエストのクリア率やランクよりも、撃墜数の方が明らかに多かったからだ。そして再び出会ったのは、救援ボードでの合流だった。

 コトノリが救援ボードのクエストをクリアすることに盲目的になっていたのと同様に、イチョウもまた、救援に駆けつける側として戦っていたようだった。同じ救援を同時に受注して、運悪く合流してしまった二人。

 

「コトノリ? お前、もしかして――」

 

 そんなイチョウからの通信をまたもや無視して、ボクは救援主の元へと一目散に飛び出していった。その時の記憶はあまり無い。ただ、イチョウの行動だけは覚えている。

 最初に出会ったときボクがそうしたように、イチョウは戦国アストレイを使って全ての敵を嬲り屠っていた。クエスト受注者の意向も武装も関係なく、ただ独りで敵を潰し続けた。もはやボクが居なくとも、その救援は成り立っていただろう。

 

「なぁ、お前コトノリだろう? あの時救援に来てくれたさぁ。どうだ、オレ、昔より強くなっただろ。PVPしないか?」

 

 そんなことを言われた覚えがある。だがボクは当時、対人戦どころか『他人に興味を向けることさえ』も嫌っていた。

 

「手合わせなら他を当たってくれ。ボクは興味がない」

「おい待てよ、せめてフレンド登録くらい――」

 

 厄介なことになりそうだったので、その時ボクは有無を言わさずログアウトした。

 

 

 ◇ ◇ ◇

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。