GBD-L_ガンダムビルドダイバーズ Lonely 作:杉村 祐介
視界がライトに照らされた整備室から一転、一面が光を吸収する暗黒の世界と、散らばる無数の星に誤認するほど、そこに瞬く火器によって引き起こされる爆炎の数々。遠巻きに眺めるだけでも、この戦いがすでに激しいものになっていることは容易に想像ができた。
直後レーダーに表示された、来援する一機のモビルスーツ反応。僕はこの間のイチョウを思い返し、すぐに乗機のメインカメラをUnknownへと向ける。機影は白く、宇宙空間では星に紛れてしまって、その形がハッキリと確認できるまで数瞬かかった。
それはまさしく、希望の星だった。
「どいてくださいーっ!」
流れ星のようにこちらへ猛進してきたUnknownは、そのままゲイルシュナイデンと衝突する。それが敵ではないことを知っていた僕は武器を手放し、優しくそれを受け止めた。
ガツンと鉄と鉄がぶつかる衝撃に耐えながら、開かれた接触回線に目をやる。
「あ、ありがとうございます、すみませんっ!」
「……ああ、びっくりしたけど、大丈夫だ」
接触回線から若い女性の声が通信越しに耳に届く。それに自分は半ばパニックになりながらも、冷静さを装って対応する。希望の星――彼女は過去に一度だけ遭遇したことのある、GBNでは珍しい「ヒーラー」だった。名前をマシロ、駆る機体の名はガンダム・ノルニエル。
「あれ、もしかして……コトノリさんですか?」
自分が相手のことに気づいていたように、相手も自分のことに気づいたようだ。自分はすっかり忘れられていると思っていたし、内心、忘れていて欲しいと思っていた自分もいた。かなり昔、僕が救援を始めたころに出会った強者ダイバー。
今でも昔の彼女を鮮明に思い出せる。僕がまだ荒れていたころのことだ。自分の過ちを諭すように、正すように、ただ自分の戦果よりも皆の勝利を求めて舞っていた。虹色のヴェールに包まれた彼女は、影のような僕には眩しすぎた。
「覚えてたんですね、僕のこと」
「ええ、当然です。一期一会、私にとってGBNでの出会いはどれも大切なものですから」
彼女はさらっと言ってのける。そんな純粋さも、そして操縦技術の下手さも昔と変わらないようだ。それが辛くて、僕は光から遠ざかったのだ。具体的に言えば、彼女との再接触におびえて、高難易度ミッションの救援を止めていた。低難易度のミッションばかりを受注していた。
バランスを取り戻した彼女の愛機が自分の手から離れ、その全貌がモニターに映る。ダブルオークアンタのボディに∀ガンダムを混ぜ、武装も最低限しか載んでいない白い機体は、ミキシングする一般モデラー達のよくやる「過積載・高火力・重武装」とは無縁の代物だった。
そんな非力な彼女とノルニエルは、非力だからこそ、今回は確実に希望の星となる。彼女を守り切ることこそが勝利へとつながる。彼女の必殺技さえ発動してしまえばこのミッションは勝ったも同然だろう。
彼女の必殺技は、フィールド全域に癒しの効果を与えるもの。理論は彼女しか知らないが、それが一度発動してしまえば(人工物としてはありえないことだが)乗機に永遠の命が備わるという――。
「良かった。貴方がいれば、このミッションはクリアできる」
ELSはほぼ無限に活動する。ならばこちらも無限に戦えるようになれば良いだけのこと。なんだ、簡単ではないか。僕はこの時、楽観的に安堵のため息を吐いた。