GBD-L_ガンダムビルドダイバーズ Lonely   作:杉村 祐介

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 モビルスーツにしてみれば僅かな距離だが、救援は数十秒ほど移動しなければ戦域へ到着できない場所にスポーンするため、僕とマシロは救援主の元へと向かう僅かな時間、機体を列に並べてデブリ宙域を飛んでいた。マシロは大きくデブリを避ける癖があるため、その速度はあまり早くない。僕は不器用なノルニエルを一人にしないように速度を合わせて、その後ろを着いていくようにゆっくり進む。

 

「まだ続けていたんですね、GBN」

「あ、ああ」

 

 僕はミッションをどう攻略するか作戦を練ることで頭をいっぱいにしていて、彼女の言葉に中身のない返事だけをしていた。それはこちらの台詞だ、と内心思ったが、言葉には出さなかった。通信モニター越しの彼女の澄んだ瞳が、それを言わせなかったのだと思いたい。

 

「良かったです。フレンドになってから数カ月、あれからずっとお会い出来なかったので」

「フレンド登録は解除してなかったんだから、ログインしてるかどうかは分かってたでしょう?」

「それでも、こうしてお会いできたことは嬉しいですよ。数字や文字だけでなく、こうしてこの目でお姿を見れたのですから」

「大袈裟だな……」

「それにしても、本当に良かった。コトノリさんも続けていたんですね。人助け」

 

 ふふと笑みを交えて語る彼女の瞳を、僕は直視できなかった。

 

「マシロさんほど、大したものじゃない」

 

 マシロも僕も、救援依頼を見つけて駆けつけ、それをこなすことがメインのプレイスタイルだった。だが僕は前述の通り、理由の一つに彼女との再会を恐れ、低ランクの救援ばかりをやっていた。高ランクの救援ともなれば報酬は高いかもしれないが、修理時間やミッションクリア率、その難易度の高さ故に求められる救援依頼主との即興チームワーク技術など、高度なプレイが必要だ。そういう意味で「大したものじゃない」と言ったのだ。

 だが通信モニターに映る彼女は目を見開いて驚いていた。何か悪いことを言ってしまったか、大したものじゃないという表現が悪かったのかと思案して、謝るべきか、どう謝罪すべきかと思考を巡らせていたら、彼女がポツリと呟いた。

 

「名前、覚えてて下さったんですね!」

 

 マシロが少し嬉しそうに微笑んだ。

 

「……そんなの、今は気にすることじゃないですよ。集中して。そろそろデブリ帯域を抜けますよ」

 

 彼女の表情から逃げるように、僕は通信を切った。

 覚えていないはずがない。彼女のプレイスタイルは画一的なものだし、慈愛に溢れた行動はインターネットゲームプレイヤーの鏡だ。僕の数少ない一桁代のフレンドの一人だ。だが彼女は違うのだろう。僕よりはるかに多くのダイバーと関わり、時にはすれ違い対立し、今こうしてここに居る。その事実が僕にはよく理解できなかったのだ。だからその言葉を上手く受け止めて、返すことができなかった。

 

 

 

「さぁ、合流しますよ!」

 

 揚々と戦闘宙域――救援主の元へと向かう。デブリ宙域を抜けた先に多数の熱源反応があり。そちらに索敵レーダーを向ける。数機のモビルスーツがもつれあって戦い合っている様子が見て取れた。

 だが不自然だ。ELSとの戦いであるならばもっと無数の熱源があって当然のはずなのに、レーダーには片手でも数えられそうなほどしか反応がない。

 

「おかしい、このミッションはELSとの戦いじゃないのか……!?」

「コトノリさん急ぎましょう。このミッション、もしかしたら罠かもしれない」

 

 それの規模に違和感を覚えたのは、どうやら僕だけではなかったようだ。マシロもまた、その異常事態に驚いている様子で、愛機ノルニエルをさらに加速させた。

 この時僕は、マシロの「罠かもしれない」という言葉にビビっただけかもしれない。判断を間違えたのだ。マシロと同じように救援主と合流する方が良かったのかもしれない。

 後悔は先には立たない、いつも気づいた時には手遅れだ。

 

「マシロさん、ここからは別行動でお願いします。それでは」

「ええっ、コトノリさん!?」

 

 僕はそう伝えて通信を遮断した。たとえどんな敵であろうとも、どんなミッションであろうとも、僕はいつものように影で暗躍しこの戦場を仕立てる脇役であらねばならない。だからこそ救援主との接触はなるべく避けなければ。そんな思考で、ゲイルシュナイデンを直角に飛び上がらせて宇宙を駆けた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「この距離なら通信も届きますね! 救援に来ました!」

 

 マシロが合流した時、救援主は敵勢力ELSと互角に渡り合っていた。一機はファーストガンダムと呼ばれるRX78-2ガンダムにエールストライカーを搭載した白と青の機体。そしてもう一機がそのファーストに似た地上戦用のガンダムピクシーを、宇宙適性を底上げしたようなカスタムモデルだった。似通った二機は鮮やかなコンビネーションでELSの猛攻を凌ぐ。

 三機目のストライクは姿が見えない。もしかしたらすでに敗北しているのかもしれない……イヤな推測を跳ね除けるために、マシロは頭を横に振った。

 爆煙が広がり閃光が輝く宇宙空間で、とにかく時間と情報が足りない。目の前にいるELSはすでに小型のものではなくモビルスーツの姿を象っていた。

 

「おぉ、救援来てくれたんや!」

「よろしくお願いします! もう、テンマが三人で行けるなんて無茶言うから、ひどいことに!」

 

 パイロット達に疲労感は見えたものの、闘志は尽きるどころかなお燃えていた。これならば勝ち目もあると言うもの。

 マシロは再度レーダーを確認する。近くにある二機のモビルスーツと自分、そして遠のいていく僕の機体を見て、彼女は救援主のテンマに告げた。

 

「コトノリさんという心強い方も一緒に来て、今は別働隊として動いてもらってます。私も微力ながら援護します!」

「コトノリさん!? あの人も来てくれたんか! やっぱ救援出して正解やったなぁ!」

「諦めなくて良かったねテンマ! でもあの人、別行動ってどういうつもり!?」

 

 会話の途中にもELSの一機がピクシーに迫る。水銀の塊は剣のように伸びて振るわれ、それをピクシーがビームダガーではじき返した。そこにタイミングを合わせるようにガンダムがサーベルを突き立てる。銀色の塊がビームで裂かれ、機能を停止する。見事なコンビネーションで、一機のELSは両断されて動きを止めた。

 だがそれは一時的なもので、彼らが離脱すると分離した水銀は即座に融合、再合成されて元の姿――ストライクガンダムの姿へと戻った。

 

「……どういうことですか、これは」

「ああ、運営もおもろいこと閃くよなぁ!」

「ホンッと。性格悪いにも程があるわよ」

 

 マシロ、テンマ、アヤカに対峙するELSは同じく三機。それぞれストライク、ピクシー、ファーストを模した姿だった。

 これは単なるELS掃討作戦ではない。己と同じ姿で無限に活動し続ける存在と戦うミラーミッションを模したもの。

 よくよく見れば、数多くのELS達がソレスタルビーイングを筆頭に激戦を繰り広げているのは、このフィールドに貼られたテクスチャでしかない。敵勢力としてレーダーに表示されているのは僅かに三機。そして、母艦級のELSが一機。

 

「多分やけど、来るで……!」

 

 そこから絶望とも思わせる追加戦力が発進した。その姿は、マシロのノルニエルと、僕のゲイルシュナイデンと瓜二つだった。

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