GBD-L_ガンダムビルドダイバーズ Lonely   作:杉村 祐介

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後悔

 レーダー上でマシロの熱源が残る二機と合流したのを確認して、僕は改めて気を引き締めた。ELSとの対話が成立するまでの時間を稼ぐ。それを叶えるにはまず無限に動き続けるELSに決定打を与えなければならない。こちらが殲滅するか、無限に戦い続けるか。今回は後者、マシロの必殺技さえ発動できれば勝ちも同然だ。

 だから僕は囮になることで、それを叶えようと考えていた。

 

「……やっぱり、おかしい」

 

 予想では無数のELSに囲まれ追いかけ回されることを推測していたが、そんな敵性反応もほとんどゼロ。目に見える爆煙と閃光は全てこのフィールドに貼られた映像でしかなく、その中は空の壺のように空間が広がっているだけだった。これでは囮もなにもあったものではない。

 

「ELSが居ない、どういうことだ?」

 

 その異変に気付いた直後、こちらに飛来してくる熱源反応が。それは味方ではなく敵性の、銀の水晶で型取られたモビルスーツ。モニターで目視したそれはまさしくゲイルシュナイデンと同じ武装、同じ装甲、同じシルエットだった。

 

「ELSが既に僕のゲイルシュナイデンを解析した!? ……いや、違うな。これは『そうなるように最初から設定されていた』か!」

 

 鏡写しの自分と戦うミラーミッションを彷彿とさせるそれは、まさしく高難易度に相応しく、それがELSであるならばまさに「無限に蘇る己との戦い」だ。そんなもの、地獄でしかない。

 

「くそっ、対策も何もあったもんじゃないな!」

 

 僕は真っ先に手持ちの大剣を投げ捨てて、右腕に内蔵されたビームサーベルを展開した。相手は僕が投げ捨てるという選択をした大剣をその手に握ったまま、大きく上に振りかぶる。

 振り下ろされた大剣は虚空を凪いだ。ゲイルシュナイデンの機動力なら易々と回避できる。そこへ置いてくるようにビームサーベルを振るえば、簡単にELSは一刀両断できてしまう。

 だが、それで終わりではない。ELSであるがゆえにそれは自己再生し、再びこちらに刃を向ける。僕はそれが分かっていながら、他に選択肢が見つからず、再びビームサーベルを振るった。

 

「ああ、くそっ!」

 

 二度目の太刀も、相手を切った。だが一撃目で「学んだ」のか、踏み込みが浅かったのか、それは形を歪に変えながらも個として残存していた。その手が伸びる。

 機体に触れられれば最後、ELSに取り込まれてゲームオーバーだ。血の気が引いていくのを実感しながら、僕は操縦桿を強く引いた。

 

「取らせて、たまるか……!」

 

 脚部ビームサーベルを展開、同時に右腕部サーベルとぶつけ合ってスパークを起こし、迫る水銀を弾く。同時に愛機が泣くように軋みをあげた。

 敵であるゲイルシュナイデンELSと距離を取る。さっきの軋みは、関節への負担が大きすぎたせいで起こったんだと理解するのに時間は掛からなかった。脚部関節にイエローアラートが表示される。

 

「――こんなの、何度も続けられないぞ」

 

 さらに接近する熱源反応。振り向けば、そこに飛来する新たなELS。ノルニエルの姿を象ったそれは、貧相なライフルをこちらに向けている。

 

「くそっ!」

 

 挟み撃ちと言わんばかりに両サイドから敵に迫られるのは得策ではないと、その場から大きく回避するゲイルシュナイデン。だが、その読みは大きく違っていた。

 直後ELS特有の、黒板を爪で引っ掻いたような甲高い鳴き声が響き渡る。ゲイルシュナイデンELSが、ノルニエルELSを大剣で貫いたのだ。

 

「……どういう、ことだ!?」

 

 フレンドリーファイアを連想させるそれは僕にとって気味の悪い光景だった。貫かれたELSは悲鳴を上げた。そして二つは混ざり合い、ゲイルシュナイデンELSは腕を四本に増やし、そしてそのすべてに大剣を構える。まるでイチョウの戦国バルバトスのように。

 

「からかっているのか、僕を、僕の在り方をっ……」

 

 愛機をもした目の前の機体は、味方を傷つけて喰らって己の物にした。そして四つ腕の悪魔を生み出した。まるで僕の行いを嘲笑するかのように、再びELSが叫んだ。

 その悲鳴に負けじと、僕も叫んでいた。

 

「ボクの行動が仲間を傷つける、そう言いたいのか!」

 

 やけくそに僕は大剣を拾い直して、全身のバーニアとスラスターを点火して突進する。牽制のミサイルを数発発射して、その爆煙に紛れて大剣で両断するつもりだった。だが最大速度で突っ込んでも、ELSにはそれが見えていたのだろう、四つ腕は悠々と構えている。

 爆発の光でモニタが白に染まる。そこにいるであろうELSに大剣を振り下ろす。実体剣での一撃はELSに取り込まれるのは知っていたから、侵食が腕に来るまでに内蔵のライフルを暴発させて自爆ぎみに離脱すればよいと考えていた。

 

「――居ない!?」

 

 だが、ELSは既に移動していた。大振りの剣は空を凪ぎ、その後隙を狙った四つ腕が不気味に笑っていた。完全に背中を取られた形だ。

 終わった。いや、そもそも冷静さを失っていた時点で終わっていたのだろう。後悔は先には立たない、いつも気づいた時には手遅れだ。

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