GBD-L_ガンダムビルドダイバーズ Lonely   作:杉村 祐介

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虹の剣

 四肢のほとんどをもがれ、もう戦うことが叶わないゲイルシュナイデンを、蒼いファーストガンダムが後方へと押しやった。

 

「あとは任せとけ!」

「私も、いくよ。『黄を纏え、ピクシー!』」

 

 僕と入れ違いにピクシーが前に出る。彼女の機体もテンマと同じようにオーラを纏い――それは光り輝く黄色い姿で――その手には同じ光の剣を握り、さらに速度を上げてELSと渡り合う。

 ストライクも、ピクシーも、ファーストも、どれもこれも僕より数段上手じゃないか。「何が仕立て屋だ。こんなもの、僕が居なくてもとっくに仕上がっているじゃないか」と思わずため息が漏れた。

 

「コトノリさんも頑張ったじゃないですか。それで十分ですよ」

「……えっ?」

 

 すっかりエネルギーを出し切って準備万端のノルニエルと、通信モニター越しにその乗り手であるマシロがみえた。

 

「もしかして、声に出てましたか」

「ええ、ばっちり」

 

 僕は恥ずかしくなって、全ての通信を切断した。ぷつりと切れる前に彼女が何かを言っていたが、きっと聞かなくても良いことだろう。マシロさんが言いそうなことは、なんとなく分かっている。

 

 

 

 紅い剣士と黄色の剣士、そして蒼い大剣使い達の戦場は華々しかった。遠巻きに見ることしかできなくなった僕にはそれが眩しかった。

 そしてマシロの準備がやっと整ったようだ。

 

「行きます、これが私の必殺技――トランザム月光蝶(トランザム・ナノ)!」

 

 マシロのガンプラはそのほとんどのリソースを必殺技に当てていた。彼女のガンプラ、ノルニエルはナノマシンを拡散し、それをGN粒子によってコントロール、活性化させる。発動したら最後、すべての味方機体を癒し、同時に敵機体を蝕む対軍兵器にも劣らない力を有する新緑の風。

 

「なんだよこれ、スゲェー!?」

「機体が軽い!」

「ELSの動きも鈍ってるな、これなら!」

 

 それはELSにも多少なりと有効であった様子で、

 

「kiiiiiiiiii――!?」

 

 甲高い悲鳴が周囲に響き渡った。

 

「皆さん、お待たせしました! これで思う存分戦ってください!」

 

 マシロが高域回線で伝えると、瀕死だった僕のゲイルシュナイデン以外は、動きが著しく良くなった。残存エネルギーも気にせず大技を使える開放感に浸り、テンマはその剣をオーラで大きくして振り回し、アヤカは黄色のオーラを強化させて飛び回り、エスも宇宙狭しと飛び回りELSを翻弄した。

 

 だがELS達もすぐにそれを学習したようだ。小さな個体ではナノマシンに勝てず侵食されてしまう、ならば大きな個体となれば良いだけのことだと。そのコアとなる四つ腕のELSに、残りのELS達が食いつき、飲み込まれ、さらには今まで遠巻きに見ているだけだった母艦型ELSさえも加わりその形を変えて、それは厄祭戦を彷彿とさせる鋭利な爪を持つモビルアーマー、ハシュマルのそれへと近づいていた。小型機のプルーマもELSはしっかりコピーしており、その数ざっと二桁は固いほど、宙域を埋め尽くしている。

 希望が、絶望に変わった。

 

「嘘だろ……絶望的じゃないか、こんなの」

「面白くなってきたじゃねぇか!」

 

 だが、こんな状況でも、テンマは笑ってみせたのだ。

 

「正気か? あのモビルアーマー、ハシュマルに加えてプルーマが無数に湧いてるんだぞ、しかもELSで。こんな大群に五人で勝てるはずがないだろ!?」

「そんなもん、やってみなきゃ分かんねぇだろ!」

 

 だがテンマは諦めない。むしろテンマという人間は、こんな逆境でこそ輝くのだろう。僕にはない輝かしい長所だった。

 するとエスが空間跳躍でテンマに近づく。彼は愛機のバックパックをパージし、ファーストガンダムの背中に押しつけた。

 

「最後の一回をバックパックにのこしておいた。あとは頼んだよ」

「テンマ、私の力も使って!」

「……おうっ!」

 

 アヤカのピクシーも、その黄剣をテンマへと託す。

 二つの力を受け取ったテンマとファーストガンダムはその力を重ねて、魔法でも唱えるかのように言葉を紡いだ。

 

「戦いを終焉させる、一本の剣――『虹の剣』よ、我に力を与えよっ!」

 

 紅い剣と黄の剣、そしてバックパックの蒼とが混ざって、一太刀の虹の刃を作った。それはモビルスーツの身の丈を軽々と超える長い剣筋で、その美しさはオーロラのように揺らめいて輝いていた。

 

 

 

 超大型のモビルアーマー、ハシュマル型ELSはその嘴ともとれる先から超望遠ビームを放つ。だが、虹の剣とともにガンダムが身に纏った虹色のオーラにそれは阻まれる。弾かれたパーティクルが虹のオーラを引き立てるようで、さらにその背景にはGN粒子で活性化された緑色に輝くナノマシン。無数の光が煌めく宙域で、テンマは、ファーストガンダムはその剣を大きく薙ぎ払った。プルーマELS達は一瞬にして砕け散り、弾け飛ぶ。

 

「いくぞ、『空間跳躍』っ!」

 

 ストライクのバックパックに残された一回限りの跳躍で、大元となるハシュマルに肉薄するファーストガンダム。その剣はさらに輝きを増して、太さも、長さも、モビルスーツのビームサーベルとは比較にならないほど強大な、ライザーソードを思わせるほどの虹の剣で、

 

「これで、終わりじゃあーっ!」

 

 上から下へ、宇宙さえも真っ二つにしかねないほどの煌めく剣が振り下ろされた。ハシュマルELSは最後まで甲高い悲鳴を上げながら、その光の奔流に呑まれた。繋がろうとするELSの意思とは裏腹に、虹の輝きと緑色のナノマシンにより分断され、全てのELSが集結していたがゆえに、全てのELSが一太刀で消滅させられたのだ。

 背景のテクスチャには、無数の花が咲き誇っていた。ミッションコンプリート、こうしてELSとの激しい戦いは終わったのだ。

 

 

 

「赤、黄色、青。全部混ぜたら黒になるだろ、普通――」

 

 虹色に輝く宇宙に漂っていたゲイルシュナイデンに乗っていた僕は、独り言を呟いていた。

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