GBD-L_ガンダムビルドダイバーズ Lonely   作:杉村 祐介

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終:混ざり合う色の中で

「あの時はほんと、すみませんでした!」

 

 いつものログインロビーに戻ってきて、テンマは早々に頭を下げて言った。僕は過ぎたことだと半ば忘れていたが、彼にとってあの時誤解して怒ったことは、忘れられないものだったのだろう。

 

「いえいえ……こちらも説明不足でしたし。というか、あの状況でよくすっ飛んできましたね」

 

 頭を上げたテンマの困りながらも笑っている顔を見ると、あの時、鬼の形相で怒鳴っていたのが同一人物とは思えないが、その両面がテンマという人物そのものなのだろう。心に素直でまっすぐだ。それは彼の目を見れば分かることだった。

 

「そりゃアヤカに何かあったら大変やし」

「あらあら、テンマさんはアヤカちゃんに惚れてるんですねー?」

 

 マシロが茶化して言う。こういうことを言う人だったのか、という驚きもあったが、今まで聖人化してたイメージを押し付けていただけだったのだと自制もした。彼女もまた、戦場の外では一人の女性ということか。

 

「そ、そんなんじゃないっすよ!」

「そんなんじゃないって何よ?」

「あー……ええと、それはだなぁ!?」

 

 テンマが照れ隠しに投げた言葉がアヤカに刺さり、それが火種になって喧嘩になりそうな雰囲気だ。ああ、そんな状況なのになんでマシロさんは笑ってられるんだか。

 

「お二人は仲が良いんですね。もしかして、恋人同士だったり……?」

 

 マシロがちょっと小声で尋ねたことに、あれやこれやとテンパっていたテンマが「はい! そうです!」と大声で返事をするものだから、隣にいた彼女は顔を真っ赤にして爆発した。

 

「ちょっ、何大声で言ってるの!恥ずかしいじゃない……!」

「すまん。でも違うって言ったら怒るんやろ?」

「大声だすのが悪いのよ!」

 

 賑やかだな、この二人は。こういう雰囲気は嫌いではないが、自分のペースではないので、とても疲れる。ストライク使いのエスさんは任務終了後早々に用事があるからとログアウトしたし、自分もそろそろ立ち去ろうか……などと思っていた時。

 

「そういうコトノリさんは、マシロさんと付き合ってるんか?」

 

 びっくりする質問が飛んできた。

 

「えっ、まさか。そんな関係じゃないけど――」

「あ、会ったのもまだ二度目ですし!」

 

 マシロも驚いている様子だった。茶化す側から急に立場が入れ替わったんだから仕方ないか。

 

「お二人なら良いカップルになれそうですね!」

「ほんまほんま。今度またダブルデートでもどうっすか!?」

「冗談はやめてくださいよ。僕は――」

 

 こういう話題は、ちょっと息が詰まる気がした。

 

「――誰かと仲良くなるとか、そういうことに向いてないんです。それじゃ、失礼します」

 

 僕はなんだか後ろめたくなって、三人があっけに取られる中、そそくさと逃げるように整備室へと歩き出した。激しい戦闘の疲れもあったが、なにより人間関係にも疲れた。感情をストレートに表現してくる人間は、苦手だ。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 コツン、コツンと足音が響くほど静かな整備室は、やはり僕にとって居心地が良い。独りになった僕はアルミ製の階段をイス代わりにして座る。ひんやりとした質感のそれは螺旋状に上へ上へと伸びていて、銀色の通路は両腕と片足を失った愛機ゲイルシュナイデンのコクピットブロックまで続いている。その足元からコクピットブロックを見上げて、モビルスーツの大きさを改めて知るのだった。

 こいつには無理をさせたな、と思った。自分にとってはお似合いの姿だな、とも思った。ボロボロになって、戦績も芳しくない。ゲイルシュナイデンは僕の写し鏡だ。

 

 ピコン、とメール通知が届く。マシロから「お疲れ様でした。また御縁があればご一緒しましょう」という短文だった。僕もそれに「縁があればまた」と短く返す。

 あの機体、ノルニエルも彼女の写し鏡と言えるのだろうか。あの必殺技は、本当に彼女の慈愛の心から生み出されるものなのだろうか。テンマのファーストガンダムも、心の強さを引き出して、虹色の光を放っていたのだろうか。

 

「……色を混ぜても、虹にはならないだろ」

 

 否定の言葉は、思考を切ろうとする自分の癖だ。

 虹を纏ったガンダムが脳裏から離れなかった。テンマという可能性に満ちた少年を目の当たりにして、その輝きが僕には眩しすぎて。すぐ横にあったゲイルシュナイデンの黒い脚部装甲を無意識に撫でていた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 終わり ◇ ◇ ◇




 この章は、赤い彗星氏による「ガンダムGPBクロニクル《ペガサスの飛翔》」の登場人物「テンマ」「アヤカ」並びに水槽学氏による「創造戦士ガンプラダイバーズ」の登場人物「エス・ブラックベイ」をお借りしたクロスオーバー作品となっております(キャラ敬称略)。
 この場を借りてお礼申し上げます。

赤い彗星氏 Twitter:@redcomet0303
「ガンダムGPBクロニクル《ペガサスの飛翔》」
https://www.pixiv.net/novel/series/977480

水槽学氏 Twitter:@lostfreedam
『創造戦士ガンプラダイバーズ』作品サイト
https://sites.google.com/site/enjoygunpraenjoyyourself/
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