GBD-L_ガンダムビルドダイバーズ Lonely   作:杉村 祐介

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ラプラスの亡霊
序:贖罪


「貴方は何のためにGBNをプレイしてるんですか?」

 

 ある日の彼女の問いかけに、僕は何も答えられなかった。ただ黙ってその澄んだ瞳に魅入られていた。彼女のように慈愛からこのゲームをプレイしているわけではなく、またイチョウのように己の快楽を求めているわけでもない。

 

 ――贖罪。

 

 僕は言葉に出さなかった単語をゴクリと飲み込んだ。するとそれは体内で吸収されて血液に乗り、手先足先まで駆け巡った。言葉の鎖に繋がれて、音速に近い速さで移動するモビルスーツに乗ってGを受けるかのように息苦しくなった。全身に重くのしかかる重力が、僕を締め付けて離さなかった。

 

 

 

【GBD-L】ガンダムビルドダイバーズ−ロンリー

005「ラプラスの亡霊」

 

 

 

「やっぱり、ここはいつも静かだな」

 

 主相官邸ラプラスとは、端的に言えば、宇宙空間に漂う廃墟である。

 機動戦士ガンダムシリーズにおける宇宙世紀に存在し、宇宙世紀元年、その場で行われたセレモニーと大規模テロによって名を馳せた場所であると同時に、ガンダムUCにとってはLa+プログラムで示された座標の一つであり、作中でのダグザ中佐の活躍ぶりから、一定層のファンからの名所として好まれている場所でもある。だが普段は辺境な宇宙の片隅として、人の気もなく静かに漂っていることが常だった。

 僕はガンダムUCという作品も好きだったし、ダグザ中佐の活躍も、その後の展開も好いていた。しかし何より、地上の廃墟でもない、宇宙のデブリ宙域でもない、この極寒の世界にポツリと点で残されている廃墟という特殊な環境が、現実離れした異端であり、それが逆に僕の心を落ち着かせた。GBN内の個人的ランキングでは整備室の次に好きなスポットである。

 半壊した主相官邸ラプラスに愛機ゲイルシュナイデンを横付けして、僕は今一度ノーマルスーツがきちんと閉まっているか確認した。それが済み次第コクピットハッチを開けて、光を無限に飲み込む黒い海へと飛び込んだ。ざぶんという音こそしなかったものの、それは冷たくも僕を迎え入れてくれる。ノーマルスーツの上から背負ったランドムーバーという推進器を操って、僕は演説台へと近づいて腰掛けてみた。

 

「ラプラス事件、ユニコーンガンダム……宇宙世紀憲章か」

 

 ラプラス事件とはガンダムUCにおける重要事件であるが、ここでは「政治的陰謀の絡んだ事件」だということだけ伝えておこう。この場所に関しての情報は、宇宙世紀のお偉いさん方がまるっと焼け死んだ廃墟というだけで今はいいだろう。スペースノイド、選民思想、内部抗争、そういった人々の軋みが生み出した残骸がここにある。無機質なはずのラプラスに、そういう人間味の感じられる背景があることが僕は好きだった。

 そんな場所に好き好んで居座るダイバーはそうそう居ない上に、現在時刻は夜12に差し掛かろうという所だ。今日ものんびり、この大規模な廃墟を独り占めして、ここで日が変わるのを待とうと宇宙を眺めた。

 

 

 

 ――独りじめできると、思っていたが。

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