GBD-L_ガンダムビルドダイバーズ Lonely   作:杉村 祐介

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ヴィランとヒーロー

 広域回線、新手のモビルスーツ。その場にいる4機がアラートに気づくのと同時に投擲されていたフラッシュバン。左右を塞いでいた可変機の眼を見事に潰して、その上で一陣の風となったゲイルシュナイデンがギャンスロットを、メガ粒子砲の銃口から救い上げた。

 

「君は!?」

「話は後だ、状況が知りたい。この任務は護衛任務であっているな?」

 

 僕は状況が飲み込めないでいた。救援任務の内容は大量のNPCを相手取った輸送護衛の任務だったはずだ。僕が名乗らないことにアズマはぐっと胸を堪えていた様子だが、僕の問いかけには確かにうなづいた。その上で、ギャプランを指して言う。

 

「あれはおそらくヴィランの部隊長。何かの理由で僕を排除しようとPvPを仕掛けてきたんだ」

「なるほど――」

 

 悠長に会話する暇を与えてくれるほど相手は優しくない。そもそもゲイルシュナイデンの推力ではモビルスーツ二機分を持ち上げて飛行するなど無茶であり、一度飛び上がったものの今や二人は堕ちていくようなもの。そこへアッシマーとバウンドドッグがハイエナのように着地地点を逃さず見張っている。

 アズマがその剣を強く握って悔しがった。

 

「近づきさえできれば!」

「なら手を離すぞ」

「だったら、蹴って!」

 

 交わされた一瞬の言葉に全てを理解したわけではないが、僕は少なくない数のダイバー達を見てきた。その中でも彼は上位レベルの近接戦闘ができるタイプだ。直感はそう告げている。だがここで蹴るという選択肢が本当に必要かどうか、もっと別の選択肢がないか――などと考えている余裕もなく、僕は一か八か、手元のレバーを押し込んだ。

 ガツンと機体が揺れる。空中でもう一度ジャンプしたゲイルシュナイデンと、急加速するギャンスロット。

 鉄の騎士はその丸盾でバウンドドッグのビームサーベルを弾いていなし、その剣を真一文字に薙ぐ。動体を二分割にはできなかったものの、その独特なスカートを大きく抉った。

 黒の風は天から銃剣の光を一発、アッシマーの脳天をスナイプする。致命傷には至らなかったものの、メインカメラが爆散したそれはよろめいて膝をついた。

 

 瞬く間に陣形の崩されたヴィラン達に対して追い討ちをかけるべきシーンではあったが、アズマも僕も人間である。逆転の一手を打つのに精一杯で、地面に着地して呼吸を整える時間が必要だった。

 

 

 

「……時間か。プランBへ移行する。撤退だお前たち」

 

 ギャプランのパイロットがわざわざ広域回線でそう告げると、損傷した二機のガンプラが撤退していく。

 それはつまり此方への「手を出すな」という警告でもあるのだろう。さすが隊長格だというべきか、此方が動けば一発ぶちかますというオーラを出していた。

 僚機であり任務受注者がどう動くか、僕は横目に騎士を見た。こちらの気迫も高まっているようだが、そこから一歩進むことは無かった。

 しばらくの沈黙を重ねて、いよいよギャプランもその場から飛び上がり転身する。

 

「さらばだヒーロー。二度と会わないことを願う」

 

 見事なものだ。ライフルで狙えなくなる距離までずっと、ギャプランはこちらに背を向けることもなく飛行を続けていたのだ。

 

 

 

「……なんとかなったか」

「みたいだね」

 

 レーダーの範囲外へと消えた敵影。横の騎士もやっと構えを解いて剣を地面に突き立てる。精神的な疲労が激しかったのだろうか、ため息がこちらに届いた。

 回線が開く。アズマと名乗っていた青年は、画面越しに僕に礼をして言った。

 

「救援ありがとう。助かりました」

「それが役目だから、当然です。では僕はこれで――」

「待ってください! まだクエストは終わってないので」

 

 そこで言いどもったアズマは、おもむろに口を開いた。

 

「少し手伝ってもらえませんか?」

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 今、僕は先ほどの戦場からわずかに逸れた丘の上、崖がくずれてモビルスーツも隠れられるほどの影ができている場所が見下ろせる。そこに降り立って、アズマはモビルスーツから降りて自分の機体を端末に格納した。

 

「クエスト中に何のつもりですか?」

「コトノリさんも、早く」

 

 訳もわからない状況で、言われるがままに僕もゲイルシュナイデンから降りた。アズマという青年が信じきれていない自分は、機体を格納する代わりに光学迷彩を仕掛けておく。これでほとんどのレーダーからは探知されることもないだろう。

 

「それで、これに何の意味が?」

「ああ、その。悪いんだけど、クエストは単なる囮でね。本命はこっちの調査なんだ」

 

 アズマが下を指差す。覗き込むと、生身なら落ちれば即死するほどの高低差にクラクラとした。吐き気を何とか堪えて目を凝らせば、数名のダイバー達がモビルスーツも無しに顔を突き合わせている。向こうはこちらに気づいていない様子だった。

 

「あいつらは?」

「さっき交戦した『ヴィラン』のメンバー。ここがヴィラン達の合流ポイントって調べるのに相当時間がかかったけど、やっと突き止めたんだ」

「じゃあ、奇襲を掛ければいいのか」

 

 すぐにゲイルシュナイデンへと向かう僕を、アズマが慌てて引き留めた。

 

「ちょっとまって。ヴィランは倒したい相手だけど、そうじゃないんだ。問題は――」

 

 噂をすれば、という具合に鳴り響くモーター音。荒地用のビークルに乗って眼下のヴィラン達に近づく一人の男。白い服がやけに目立つ。

 

「あれは」

「ヴィランとは別のフォースメンバーだよ。あそこの通信を傍受する。片耳貸して」

 

 そう言ってアズマはイヤホンの片方をこちらによこす。それを右耳に装着すると、ノイズ混じりに声が聞こえてきた。

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