GBD-L_ガンダムビルドダイバーズ Lonely 作:杉村 祐介
「――だから、次のターゲットはこの先の市街地に向かう」
「なるほど。なら5分後に襲撃するわ。おたくらはその1分後に乱入、俺らを撃退して正義ってーのを演じりゃいいさ」
「いつもありがとよ。こいつは前金だ、受けとれよ」
じゃらり、と金属の音が響く。データでのやり取りが主流のオンラインゲームにおいて、コインそのものを物理的に取り出す理由はほとんど存在しなかった筈だ。だが通信傍受先の白服はそれを足下に投げ捨てた。そしてヴィランのメンバーがそれを拾う。
ログの残らない金銭授受、つまりこれは非道徳的な行為を隠蔽するためのものか、という察しにすぐにたどり着いた。
「なるほどな、黒幕はあのヴィランじゃない白服野郎か」
「そう。自分の動画チャンネルを伸ばすために賄賂を送って無害な人を巻き込んでいる……何も知らない人からしたら救世主だけど、その手品がバレたら、当然制裁が必要だ」
アズマは悔しそうに強く手を握った。その仕草は、言葉にすらできないほどの正義感の表れか。
耳元のイヤホンスピーカーからの音声は止まらない。
「おい、前金が前回より少なくねぇか?」
「リスクヘッジだよ。今回は後金をその二倍出す。結果的には特だろ?」
「……悪くはねぇ。けどこっちもボスにバレねぇように動くのはなかなか骨が折れるんでな。いつもの額でなきゃ話にならねぇぞ」
通信先の会話から、雲行きが怪しいことが伝わってくる。
「いいや、今回はこれだけだ。あとは達成後」
「舐めてんのか? 一昨日きやがれ……俺らはてめぇの手下じゃねぇ」
「へぇ、ここで手を切るのか? ならボスにこのボイスをメールしても良いってことかな?」
白服が小型の端末をチラリと見せる。高台の僕たちにはそれが何かは詳細こそ分からなかったものの、ボイスレコーダーの類だということは容易に想像がついた。
「脅迫のつもりか?」
「脅迫そのものだけど、何か」
「裏に誰が付いてるのか、分かってやってんのか?」
「そっちこそ、これがバレたら居場所なくなるんだろう」
通信機から聞こえる口調が段々と荒くなっていく。ギスギスとした空気がイヤホンスピーカー越しに伝わってくる。一触即発とはこのことだ。
このまま行けば交渉決裂、この場で戦闘もあり得るかもしれない。僕はゲイルシュナイデンの位置を改めて頭に叩き込んで、最短距離で行動できるように構えつつ、それ以外の精神をイヤホンの向こう側へと集中させた。
だが、その判断は間違っていた。敵は足元にいるヴィランと白服だけではなかったのだから。
「また会ったな、ヒーロー」
イヤホンの外からの声に、現実に引き戻された。