GBD-L_ガンダムビルドダイバーズ Lonely 作:杉村 祐介
◇ ◇ ◇
立て続けに二度のクエスト失敗というログを眺めて、コトノリは小高い森の丘に座りながらため息をついた。
完敗だった。あのフリーダム・ピカロという機体はとてつもなく強かった。正義という言葉を事実するには十分な実力だった。ギャプランもまた強者だった。ゲイルシュナイデンでは遠く及ばない。彼らの一騎打ちなら、どれだけ妄想しても決着がつかないだろう。
「……あー、コトノリさん」
「やっと来ましたね、アズマさん。いや『ヒーロー』って呼ぶべきかな?」
コトノリが待っていたのは、ログアウトしたっきりのアズマだった。いや、実際にはログアウト直後に参戦して、散々場を荒らした上に勝利をもぎ取っていった張本人なのだが。
「やめてください。あれはあっちのアカウントでのことなんで」
「そっか。では『騎士』さん、何か言うことはありますか」
「……ごめんなさい」
アズマは少し頭を下げて言った。
「貴方ならきっと素性に気付いて、味方についてくれると思っていたんだけれど」
「論理的に考えたら、僕もきっとそうするべきでした」
アズマが「横に座っても?」と聞くので、「もちろん」と返す。
「いつから気づいてたんですか?」
「……そもそもタイミングが良すぎたから、もしかしたらと考えていたよ。確信が持てたのは、ピカロが僕の名前を呼んだ時でしたけど」
「まあ、そうなりますよねー」
アズマが大きくため息をつく。
「僕のこと、怒ってますか?」
「全然、むしろ清々しい気分です。お互いの正義を真っ向からぶつけ合うことって争いに繋がるから嫌っていたけど、こういう気持ちにもなれるものかと」
僕は戦いでは負けてしまっても、何故か心は清々しかった。結局白いリゼルのパイロットはピカロに連れて行かれたし、アズマには事実上裏切られていて、今回得たものは疲労感くらいのはずなのに。
アズマが言う。
「きっとああいう奴はGBNの中にまだまだ沢山いるんです。ヴィランという公にされている悪いフォースも沢山。だからコトノリさん!」
「――遠慮しておきます」
その先の言葉は、浴びるほど聞いてきたであろうフレーズだろう。だから僕は、いつもの文句で切り返す。
「縁があればまた、救援で会いましょう。ヒーローさん」
◇ ◇ ◇
正義は天に掲げる剣であり、悪は身に纏う鎧である。正義は己から他人へ与えるものであり、悪は他人から己へと授かるものである。
さすれば善なる正義はもとより、悪なる正義もまた、この世界に存在しうる。
確かに救援任務は正しい行いだが、彼に言わせれば、正義とは単なる過程に過ぎなかったのだ。