GBD-L_ガンダムビルドダイバーズ Lonely   作:杉村 祐介

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誰かのために戦う

 一つ二つと鍵を開け続け、とうとう親玉のトールギスへとあの二人が到達した。よし、あとは戦況を見るまでもなくクエストが終わるだろう。そう思った矢先、人間の殺気めいた何かを感じた。

 

「……何だ?」

 

 そこにはリーオーが独りで立っていた。その立ち姿はなんとも形容し難いオーラを持っていて、量産のそれとは違う出で立ちだった。まるでNPCに意思があって「戦おう」と喧嘩を売られているような気がした。

 本来なら一目散に逃げる性格だが、あいにくとこの先ではあの二人がボスと戦っている。今も戦闘の余波が届くほどに激しくぶつかり合っている。

 無い勇気を振り絞って、その異質なリーオーの前に立ちふさがる。僕はコクピットの中で震える脚をげんこつで叩いた。

 

「ここは、通さない」

 

 その言葉を理解したかせずか、リーオーは素手で高速に接近してきた。もはや大振りの剣を構える時間すら与えてくれない。一瞬の迷いもなくそれを横へ捨てて、右手の甲にあるビームサーベルを振るった。

 空振った。いや、回避された。身のこなしがNPCのそれではない。切れない水を切ったようにそれは動き、貫手を突き出す。

 

「くっそ……」

 

 驚く暇もない。肩バーニアでむりやり転がってみたものの、右脇腹を抉られた。その貫手はゲイルシュナイデンを動かしていなければ、たやすくコックピットを貫いていただろう。なんて強さ、なんて速さだ。

 相手のペースに呑まれてはいけない、とこちらからも攻める。背面、足裏のバーニアを全開にして突貫し、飛び膝蹴りを出す。リーオーはその膝をピンポイントに左手で受け止め、もう一度右手の貫手を繰り出そうと構える――

 

「かかったな!」

 

 トリガーを引く。それは弾を放つ銃のものではない、膝の先端に隠していた短刀、アーマーシュナイダーを射出するトリガーだ。それがパイルバンカーのようになって、膝を覆っていたリーオーの左手がはじけ飛ぶ。

 これには敵も驚いた様子で、構えた右手もすぐに引き、間合いを取る。こういった「初見殺し」は、ゲイルシュナイデンにとって得意中の得意だ。

 

「さぁ、こっからが本当の勝負だ」

 

 もう一本のアーマーシュナイダーも取り出して、それを逆手に握りしめる。

 

 次に仕掛けたのはリーオーだった。まるで武術家のように美しい間合いの詰め方だった。素人の僕にはそんなふうに見えて、攻撃に籠手を合わせるのだけで精一杯だった。

 ガンッと機体が揺れた。その攻撃は片手に収まるシールドで受け止められるほど安くはなく、鉄の塊であるモビルスーツを弾き飛ばすほどの威力だったのだ。その一瞬で敵を見失い、次に見えた時は右腕を掴まれていた。

 

「やばっ――」

 

 右腕を掴まれてぐるぐると振り回された末に、デブリの一つに叩きつけられた。目まぐるしく回る計器と景色に平衡感覚を失って、吐きたくなるほどに酔った。五感が鈍れば判断も鈍る。そうして次は右腕の肩から先を、手刀打ちで剥ぎ取られた。

 たかだかリーオー一機のはずである。なのにどうしてこんなに強いのか。理由は知れない。だが戦わなければならない。トールギスと戦っている彼らのためにも、こいつを通すわけにはいかない。

 

「……ははっ」

 

 我ながら滑稽だと思った。人間、誰だって「誰かのために戦う」と心に決めると強いのだ。普段以上の力が出せるようにできているのだ。神がこの世にいるならば、きっと人間が助け合うためにその機能を創ったのだろう。

 それを知ってなお、誰かを拒否して独りで居続ける自分という存在も滑稽だったし、そんな自分が誰かのために戦うと決めたことも滑稽だった。ああ、そうだ。僕は、

 

「誰かのために戦う」

 

 そう決めていたから、GBNで戦ってるんじゃないか。

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