GBD-L_ガンダムビルドダイバーズ Lonely 作:杉村 祐介
水槽学氏のツイッター:@lostfreedam
序:役割
「なんで戦ってくれないの。救援で来たんでしょ?」
通信から聞こえてきた少年の不平。その態度に、コトノリはため息をついた。
「キミには相性が悪かったんだ、今回は諦めてくれ」
コトノリが返すと、少年――ユウタが不満そうに、低く唸った。
コトノリはいつものように、誰も受けそうにない救援クエストを引き受けていた。今回の救援依頼は「ジェットストリームアタックを封じ込めろ」という簡素なクエスト。ダイバーズランクを上げるためのポイント稼ぎにはもってこいの、所謂「パターン化した敵を倒す作業ゲー」の救援依頼だった。
わざわざ救援を出すほどでもないこのクエストで救援を出したのだ。よほどの初心者が追い込まれて困っているのだろうと思って来てみれば、
「ダイバーズランクを上げないと、フォースに入れないじゃん。だから手伝ってよ」
救援を出したユウタの物言いに、コトノリはげんなりした。
「サポートはする。けれどキミは全く前に出ようとしないじゃないか」
そう。ユウタは自身でミッションを受けたにも関わらず、救援のコトノリが会敵したとき、ユウタのストライクフリーダムは射程範囲の倍ほどの距離でふわふわ浮いているだけだった。耐えかねたコトノリは、敵機の視界から外れる場所で、ユウタと「作戦会議」という体で互いの意見をぶつけ合っていた。
「そりゃあ、ストフリだもん」
ユウタは口を尖らせ、通信画面から目線を逸らす。
「後ろからバーってドラグーン出してさ、ビームライフルの二丁拳銃でフルバーストするのが僕の役目。ええと、お兄さん? が前に出て戦ってくれたら良いんだよ」
自分に恥じるところなどない、とばかりに通信画面に向き直った。そんなユウタの態度に、コトノリはまたため息をついた。
「ボクはあくまでもサポートだ。キミが戦う意志が無いのなら、ボクは戦えない」
「なんでよ、役目でしょ!?」
ユウタが叫ぶ。だがコトノリは動じない。
コトノリの乗っていたゲイルシュナイデンは籠手のようなスモールシールドが破損していた。一度は戦闘をしたのだ。だが、救援主であるストフリが、射程範囲の倍もの距離をとってふわふわと浮いているだけの姿を見てその内情を悟り、一目散に離脱した。それを見たユウタが追いかけてきたことで、今の状態に至るのである。
「そんな量産機みたいな見た目のガンプラ使ってるんだから、GBDが相当好きなんでしょ。お兄さんならあんな敵簡単に倒せるでしょ?」
堂々とバトルスタイルを語ったわりには、その根にある他力本願が丸見えの言動。コトノリは長々と喋るのも億劫になってきて、
「ボクは『仕立て屋』だ。それ以上でも以下でもない」
それだけの言葉を返した。コトノリの信条として「救援はあくまで救援、主役にはならない」と決めていた。
それと相反する存在がユウタだった。彼はGBDにログインしてこの方、救援ばかりを頼って自分はろくに戦いもしていない。
とにかく依頼人と請負人の相性が、絶望的に悪かった。そして相性が悪いのはそれだけでなかった。ユウタとストライクフリーダムもだ。
「このクエストは諦めることを勧めるよ」
進言だけをして、コトノリは手を止めた。クエストのリタイアは救援部隊であるコトノリには出せない。ユウタ本人の判断が必要だ。
だがユウタはまだ、コトノリ主導でクエストをクリアする気でいた。それが諦めろなんて思ってもみないことを提案してきたのだから、たちまち、カッと頭に血が上った。
「嫌だ! クリア率下がっちゃうじゃん!」
必死になって怒鳴る。救援に来てくれた人が助けてくれない――その事実だけが理不尽として見えていて、理由の方がまるで見えていないから怒る。子供の視界では、結局、それが限界だった。
「なら、戦うと良い。フォローはする」
コトノリも折れることはない。これが、これだけがこの「ダイバーズ」という世界でのコトノリの生き方である以上、曲げることはできなかった。両者の主張は平行線の一途を辿る。
「だから、前に出て一機か二機倒してよ。それが前衛の役目でしょ?」
「前衛の、役目――」