魔女共に告げる、抵抗は無意味だ。   作:木冬

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胸糞の量と復讐の量のバランスが取れていないから俺みたいなのが湧くんだ!
いいから黙って俺の満足の為に幸せになれオラァン!?


はんえいのへきち

「私の生涯で一番の成功は、彼を見付けた事だ。

  私の生涯で一番の失敗は、彼の育て方を間違えた事だ」

 

        ――――――――魔女 カサンドラの手記より抜粋

 

 

 

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彼女たちは何よりも優しかった。

 

遥か昔に交わしたとされる神との約定を真摯に守り、人の世のため、皆のためとその能力を惜しみなく捧げた。

 

 

彼女たちは何よりも強かった。

 

その身に宿した魔法の力は天災を跳ねのけ人を救い、争いがあればこれを仲裁し世に平穏を齎した。

 

 

彼女たちは何よりも賢かった。

 

その叡智は深淵すら見通し、己の欲望の果てを知るからこそ我欲を持たず、人間という種族と正しく共存する道を、誤ることなく選んできた。

 

 

 

だからこそ……彼女たちは何よりも愚かであった。

 

人を赦し、その過ちと傲慢を見過ごしてしまった。

己の力を深く理解するからこそ、その力を疑わず備える事を怠っていた。

自分たちの知恵を基準に考え、人間という種族が「度を過ぎて愚かである」という事に気付こうとしなかった。

 

超産業革命を経て魔法と呼べるほどに進歩した科学技術に思い上がった人類が突如として裏切る事も。

自分たちの全てを支える魔法の力を科学技術により無効化される事も。

その果てに捕らえられ、「魔女を畏れる時代との決別」などと称して自分たちが拷問の果てに虐殺される運命にある事にも……気付かなかった。

 

故にこそ、彼女たち……魔女という種族の滅亡は必然と言えた。

 

 

 

 

 

――――――――そこに偶然が無ければ。

 

 

 

 

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首都中央広場

 

 

世界帝国リディア。その23代皇帝であるゲーテが突如として世界に「魔女狩り」の開始を宣言して3日。

魔法光子抑制装置による魔法の封印により魔女族がその絶対的優位性を失い「狩られるモノ」へと堕してたったの3日で、数百人にも上る数の魔女が捕らえられ、今この広場に引き摺りだされてきた。

 

皇帝が演説する。人々が熱狂する。

魔女滅ぶべし、人という種族をを称えよ……我らは弱者を脱し、古き時代と決別する、と。

突如としての裏切りに困惑し、今まで向けられることの無かった人の悪意に恐怖し、人とも思わぬあまりの扱いに憔悴し……鎖に繋がれ薄汚れた彼女たちの顔に浮かぶのは絶望だった。

 

『どうして……』

翡翠色の髪の魔女が嘆く。時に嵐を弱め、心地よい風を保ち、風車の村の女神とまで崇められた片田舎に住んでいた魔女は、嵐よりも激しい人垣の興奮に唖然としていた。

 

『私たちが何をしたというの』

亜麻色の髪の魔女は、眼下の民衆から向けられる憎悪の視線にただただ疑問を持った。

彼女は街の中へ溶け込み、その魔法を工業製品の生産に役立てて生活していた彼女は、隣人の突然の裏切りを未だ信じられずにいた。

 

『……』

好んで身に着けていた闇色のローブすら剥ぎ取られ、囚人服を着せられた魔女は言葉すらなく、輝かんばかりの黄金色の髪が自慢だった魔女はぼさぼさに荒れた髪に頓着する事すら出来ない程に放心していた。

 

 

声が響く。

 

『これが俺達……人間という種族だ。美しい者も確かにいるが、大多数は流される者で、一部の醜い者の上げる無駄に大きな声にぼんやりと流され、そのうちソレが自分の考えだと錯覚しては煽る。魔女がその身を挺して捧げてくれた友愛と献身に最初は感謝すれど……そのうち慣れて胡坐をかき、さも当然とばかりに享受して、その果てに要らなくなったらポイと捨てる』

 

 

「――――――――」

皇帝が演説を続け、民衆の興奮が更に高まる。広場の温度は人々の熱気で実際に上がり、絶叫と興奮が汗を生み、人々を暑く熱く狂わせる。

やがて民衆の一人が口汚く罵った言葉が瞬く間に伝染し、よりドス黒い感情を交えて赤く灼け……魔女を殺せという叫びへと変成する。

 

「殺せ!」「魔女なんかもういらないんだ!」「人間の「魔女を殺せ!」」「死」「俺達が」「魔女は死ね!」「「素晴らしい」殺せ!」「魔女を」「死ねぇ!!」「殺せ!!」

 

 

声が響く。

 

『こうなったらもう止まらない。止めるべき立場の者が率先して煽るならあとはどこまでも転がり落ちていくだけだ』

 

 

その言葉通りに、皇帝が更に言葉を重ねる。人々の興奮は血を求め、中継を通して世界中へ狂気が伝播していく。

優しかった者も、親しかった者も……魔女を朋友として迎え、暖かく共存していた者たちすら飲み込まんばかりの空気が光の速さで世界を侵す。

「――――――――」

皇帝がトドメとばかりに終わりの言葉を放つ。その一言を皮切りに、決別の瞬間が始まった。

 

 

声が響く。

 

『なぁ、頼むよ……これで人類を見限ってはくれないかな』

 

 

 

 

--------

 

 

 

振り下ろされた腕と共に数千にも上る鉛玉が吐き出され、並べ括りつけられた人型がその形を亡くす。

殺すだけなら両手の指で事足りるにも拘らず人差し指を離さないのは憎悪故か。

 

次に引き立てられてきた魔女たちは台に架けられ、長い槍で次々と串刺しにされる。

 

 

皇帝は叫ぶ。見よ、魔女などその魔法を奪えばこんなものだと。

只の兵士にすら勝てぬ弱々しい生き物であるのだと。

 

 

広場の別の一角では炎が焚かれ、中央に括り付けられた人型を黒い煙で覆い隠していく。

 

血と肉が飛び散り、魔女の命が一つ消えるたびに歓声が上がる。

 

 

皇帝が熱気を絶やすまいと言葉を重ねる。

魔女の魔法を科学が上回った歴史的瞬間であると。現に魔女たちは抵抗も出来ずに縊り殺されていくだけではないかと。

 

 

そして数百人の魔女たちが百数十へとなり、数十となり、十数人とその数を減らし……とうとう両手の数で足りる程になった。

 

 

声が響く。

 

『……止まらなかった。分かっちゃいたがこれが現実だよ』

 

 

同胞を、友人を、知己を……ほんの3日前までは笑いあっていたはずの存在が、今では鉄錆と臓物の臭いを放つ物言わぬ塊と成り果てるのをまざまざと見せつけられた彼女達には、言葉も無かった。

 

そして特に高名であった九人の魔女が、一人ずつ拷問され吊るされていく。

 

『許さない』

『あんまりだ』

『どうして』

『何も悪い事をしていないのに』

 

嘆きは届かず、とうとう最後の一人の首に縄がかけられた。

 

 

声が響く。

 

『……満足したか?皇帝はまだまだ満足してないらしいけどさ』

 

 

九つの死体が風に揺れる中で、皇帝が声を上げる。

これは終わりではない、始まりなのだと。魔女族という種族を、存在を、この世から永劫消し去る為の魔女狩りはこれからだ、と。

こうしてしまえば魔女など豚に劣る、今に全ての魔女をこの広場へと吊るして見せようと。

民衆が呼応し、声と拳を振り上げる。魔女殺すべしと、人類万歳と。

血と肉と死に染まった広場に、狂った叫びが広がる。

その光景は電波に乗って世界中へと広がり、SNS上で圧倒的なまでの支持の声が僅かな反論を押しつぶして世界から魔女族を殲滅する流れを生み出す。

 

そんな中、圧倒的な声の中に掻き消える程の小さな声。

 

『……もう、終わりね』

 

その声を『偶然』が拾い上げた。

 

 

――――――――声が、響く。

 

「じゃあ、終わらせよう」

 

 

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それは全くの偶然だった。

魔女カサンドラ……夢見の魔女と呼ばれた彼女に使えた魔法はちっぽけなもので。

その魔法が叶えるものは夢幻。人々の無意識に干渉し、夜に望むままの夢を見せるだけだった。

大した収入も無く、細々と日々を生きる彼女が世界を変える切っ掛けを拾ったのは、十数年前の事。

 

彼女がうっかりと踏みつけたカラッポの空き缶が滑り、絶望と暗澹の正史は空き缶と共にドブへと転がり落ちた。

そして強かに打ち付けた尻をさすりながら立ち上がった彼女は……その視線の先で『偶然』にも捨てられた赤子を見つけた。

本来見つかることなく、秋空に凍え消えたはずの命を見付け、元来お人よしである魔女がそれを放っておける筈もなく……

 

そして歯車は外れ、思わぬ部分で次々と噛み合い……二十余年の歪みが一つの結末を廻した。

 

 

--------

 

 

『――――――――Hello,World!』

 

世界中へ発信されていた皇帝の顔が塗りつぶされ、画面いっぱいに違う男の顔が映し出される。

平凡な顔つき、へらりと浮かべた軽薄な笑顔に、赤く充血し真っ黒に縁どられた視線だけが鷹のように鋭く尖っている。

誰だこれは。放送事故か。魔女共の滅びの始まりであるこの素晴らしい日にケチをつけるな……世界中にそんな疑問が充ち溢れる、その狙い澄ませたかのような一瞬に。

 

『ようよう、下劣なオトモダチ。恩人の死体でマスかけて満足かい?』

 

彼は特大の燃料を投げ込んだ。

 

 

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カメラが回る。映し出す。

彼の姿を……彼が腰かける人類の虚栄の残骸を。

 

「醜く愚かな出し物だったなぁ。皇帝陛下のセンスが滲み出ている!そりゃあ魔女狩り宣言なんて気の狂った事を本気で言い出すんだ、マトモじゃないのは当然だが?」

 

唄う。踊る。歌劇のように朗々と、演劇のように大仰な身振り手振りを添えて。

 

「だからってあれはないよなァ!殺して殺して殺して殺す、手を替え品を替えて思いつく限りの殺し方で恩人に屈辱を与える……まったく品が無い、美学に欠けている!」

 

あちらからこちら、ひしゃげた漏斗を踏みつけて、こちらからあちら、割れた十二面体を跳び越えて。

 

「思いついたことを全部やればいい、カードを全部揃えればどんな手にも勝てる。そんな浅い考えで醜く膨れた思想……まるで贅肉まみれのフォアグラだ」

 

――――――――だからこうして動きが遅れる。

 

ぴた、と動きを止めたのはその残骸の一番頂上。

歪み砕け落書きまでされた、誰が見ても粗大ゴミにしか見えないそこは。薄汚れたガラクタの名前は。

 

「SDAM-2……人類の叡智の結晶。魔法光子抑制装置……に、見えていたゴミ。これが皇帝陛下の仰る『我々が手にした科学の力』だそうだ。バぁあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッカじゃねーの!!」

 

それこそが人類の希望だったはずだ。

魔法という絶対を打ち壊すための鍵、人類を魔女という鎖から解き放つ翼。

唯一にして絶対の武器。

 

 

ならばそれを壊すだけでいい。

 

 

「アヒャヒャヒャヒャ!ぶっははははは!フッフーゥ!!なぁーにが『地上の覇者』だバカバカしい!」

 

たった一手、ただ一点だけがどこまでも致命的だった。

魔法に対する絶対的な勝利を覆され、それがそれがよりにもよって世界中へと発信されている。

無論帝国も何もしていないわけではない。この放送を止めようと必死になって機械を操作している……そう『思い込んで』いる。

彼らが必死になってハッキング経路を絞り込もうと叩いているのはキーボードではなく自動販売機のボタンで、せめて音量を切らねばと押し込んだツマミによってトーストが焼ける。

 

「いや、大変だったよ、3日間ずっと!不眠不休で認識阻害魔法掛け続けてさぁ……見ろよこのクマ!」

 

黒々としたクマがべっとりとこびりつき、徹夜のテンションでハイになりきっている。

それでもなお彼の展開する魔法は寸分の狂いもなく、人々を惑わし続ける。

 

「魔女狩りを宣言して、直後に起動させた魔法光子抑制装置によって魔女は抵抗する術なく捕らえられ虐殺されました……本気で成功すると思ってたのか?ちゃんと秘密にしてたから成功を疑ってなかった?」

 

彼が右手をポケットへと突っ込み、取り出したのは何の変哲もないスマートフォン。その中でSNSアプリを開き、お気に入り欄をタップ。

記録されていたのは二つだけ……『魔法を封じる装置のテストが成功!今夜は呑むぞ~^^』というコメントと『私達の名前が歴史に残るまであと一週間。そんなに待ちきれないよ笑』という返信。

 

「素晴らしいねぇ、人類の叡智って奴は。技術ばっかりで中身が欠片も追いついちゃいない……先にぶっ壊しておいて、その上に異常なしって認識阻害かけたら見事に引っかかってくれる。魔女の姿をした豚肉にもちぃーっとも気付かない。素晴らしい皇帝陛下と臣民だよ」

 

すぃ、と手を振れば画面が一瞬のノイズの後に切り替わる。

中央広場……数分前まで狂騒の坩堝だったそこは一転して静まり返り、唖然、呆然と揃って口を開く民衆の前にぶら下がる9つの整形された豚肉の姿が映し出される。

 

数秒後、すぐに画面が切り替わり、今度はバンダナ姿の青年が画面いっぱいに映り込んだ。

すらりと伸びた健康的な肉体、適度に付いた筋肉が浅黒い肌と相まって体格以上の圧を与える。

 

「……あぁ、もう映ってるの?やあやあ帝国の皆さま、先ほどはツレが失礼をしたね。あいつはどうにも口が悪くていけないんだ」

 

カメラが引き、その青年の背後にあるものが映り込む。

黒い本体に色とりどりのケーブルが絡み付き、緑とオレンジの光がちらちらと輝き続ける……誰が見てもコンピューターだと分かる。詳しい者にはスパコンだと。

 

そして、ごく限られた一部の者は血相を変えた。

 

「余計な言葉など必要ない、行動で示せばいい……そう思わないか」

 

笑顔すら浮かべて青年は懐から一枚の紙を取り出し、背後の装置へ押し付ける。

不思議なことに紙片はぴたりとそこへ貼り付いた。びっしりと書き込まれているのは……

 

「ぬゥんッ!!!」

 

成年が野太い気合の声と共にその符を殴りつけた瞬間、青白い光が八方へ飛び散りサーバーが全て吹き飛んだ。白煙が辺りを包み込み、カメラががくがくと揺れた。

 

「げほっげほっ!ああ、臭い臭い!こんな臭いがするとは聞いていないよ!」

 

慌てて飛び出してきたのだろう、白煙を抜けた先で青年がにっかりと笑う。

その顔がアップになり……にこやかな糸目が薄っすらと開かれているのがくっきりカメラへ移り込んだ。

 

「さあ、これで魔法光子関連の研究資料は軒並み吹き飛んでしまったね。世間に広げられたのはダミーだし、今頃帝国大学の七号資料室で小火騒ぎが起きている頃だろう……いやはや、日頃から備えておくと言うのは大事だねぇ、僕も気を付けよう」

 

どこまでも冷たい眼をした彼はそれ以上語ることなく、またも場面が切り替わる。

 

 

――――――――『皇帝』の下へと。

 

 

 

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「我が夢幻、堪能してくれたかな、敬愛する皇帝陛下並びに親愛なる帝国臣民たち。そこな無能の用意した余興よりかはマシだっただろうか」

 

首都中央広場。

先程まで惨劇の舞台であったはずのそこは今、彼の独壇場だった。

 

既に幻惑は解かれ、魔女の死体は一つとして無く、代わりに大きな椅子が現れていた。

皇帝の背後、皇帝よりも高い位置にふよふよと浮く椅子に座るのは、これまた一人の青年。

 

「お初にお目にかかる。夢見の魔女カサンドラが一番弟子、偶然の子、メイルンという……さっきの口が悪いのはシトゥム、筋肉ノッポはダーツ。短い間だけどよろしくと言っておこうか」

 

――――――――どうせすぐに終わる。

メイルンと名乗った青年は椅子から立つ事も無く続ける。

 

「皇帝の暴走、魔女族への弾圧と虐殺、人類至上主義……しっかりと見せてもらった。実際俺達が気付いて介入しなければさっきまでの光景は現実となっていただろう」

 

心底失望した、と笑う。

彼は元より期待もしていないのに。

 

「魔女族はこれをもって神との誓約は果たされたと判断した。非力な人間を導いた果てに人間はその非力さを克服し、傲慢を手に入れたと」

 

失望したのは彼ではなく魔女だった。

あの光景を見てなお信じたくなかったと頭を振るほどに慈悲深い魔女たちが、ついに見捨てると。

 

「だから、今日が人類と魔女の決別の日となる……良かったな、望みが叶ったぞ、皇帝へ・い・か?」

 

そうしてメイルンが指を鳴らした直後、彼の背後がぐにゃりと歪んだ。

そこへ現れる影、影……影。

 

輝かんばかりの金髪の魔女がいた。

燃えるような紅の髪を揺らす魔女がいた。

ただ黙して語らぬ闇色のローブの魔女がいた。

 

ここに捕らえられ、『自分が殺されるのを見ていた』魔女たちが……いた。

 

一人が足を踏み出す。

最も名高く、最後に吊るされた魔女であった。

 

「……もう、終わりです。さようなら、人間たち」

 

ただそれだけを言い放ち、直後彼女たちの姿が歪む。

 

異空間QS転送……シトゥムがその仲間数人と襲撃を掛けた時、もののついでとばかりにコントロールを奪ったソレが魔女ですら成しえない奇跡を起こす。

ああ、やはり人類はもう魔女の手を必要とはしないのだ……そんな漠然とした実感に彼女は涙をひとつ零した。

 

そして。

 

彼と、彼女たちは――――――――

 

 

--------

 

 

「正座」

「はい」

 

どれだけ時代が変わっても、あらゆる人種を越えて絶対に逆らえない摂理というものが存在する。

女の涙は魔法よりも強い最強の武器なのだ。

 

その武器を両の眼いっぱいに貯めて、夢見の魔女カサンドラは目の前の青年へ正座を申し付けた。

 

「メイ君。あれはなんですか」

「えーと、事の始まりは」

「メイ君。あの口調はなんですか」

「……すみませんでした」

「メイ君。あの態度はなんですか」

「あ、ダメ?激おこモードノンストップです?」

「メイ君?」

「はい」

 

転送によって送られた先は世界地図の隅っこにある、世界全体から見れば驚くほど小さな島。

しかし……全ての魔女を受け入れるだけならこんな島でも十分に余る。増してや彼女達には唯一無二の魔法の力がある。

きっと何とかなるはずだ。

 

「師匠」

「話をしているのはこちらですメイ君」

「いいから聞いて下さい、こちらへ」

「勝手に立つことを許可した覚えはありませんよメイ君」

「いいから。時間が無いんです」

 

そうして俺は立ち上がり、魔女たちから少し離れる。師匠もこちらへ向かってとてとてと付いてくる。

振り返り、少し屈み、視線を合わせた。

 

「師匠」

「はい」

「相談する暇が無かったことは謝罪します。ですが無礼を承知でもうひとつだけ」

「……言ってみなさい」

 

瞬間、天から光の柱が突き刺さり、俺の身体をふわりと持ち上げた。

 

「まだ他の魔女の皆さんの回収終わってないんですよ。ここの皆で協力して今夜の寝床の確保、お願いしますね」

 

にこり、と笑い、逃げるように転送へ飲み込まれる。

最後に怒鳴り声が聞こえたような気がしたが気のせいという事にしておこう。

 

――――――――ここから始めるんだ。

 

見たことも聞いた事も無い神との誓約を律儀に守り続け、友愛と献身でもって人類を支え続けた魔女族が……こんな終わりを迎えることを認めたりなんかしない。

あの日『偶然』に命を拾った俺に出来る事は。

助けてくれた、魔法を教えてくれた……自分がその才を凌駕している事を、怒らず嘆かずただ祝福してくれた、優しい母を生かすために打てる手は。

 

思考を止めるな。悪辣を極めろ。

魔法光子抑制装置は潰した。技師が生きていたとしても技術の復元には現時点からでは4年はかかる。

QS転送用の衛星は取り戻される可能性が大きい。魔女たちを全員集め終えたら早々に自爆させ、軌道上にデブリとしてばら撒き衛星の類を全滅させてしまうべき。

あらゆる手段をもってこの混乱を煽り拡大し、再び自分たちの下へ手が届く前に帝国を自滅させる必要がある。

 

幸いにして、魔女の弟子の間でのネットワークは強固だ。ディルフォッド、アドニス、ナムザレア……シトゥムとダーツ以外にも頼れる仲間は多い。

今回は急な動きのため弟子3人と協力者少々しか集められなかったが……魔女の弟子たる俺達が集まれば出来る事は、きっと。

救われた命、その偶然――――――――無駄にするつもりは、無い。

 

「待ってやがれ……俺らの手で一人残らずハッピーエンドにぶちこんでやる」

 

人の際限のない悪意に疎い魔女たちを守れるのは、きっと人類の裏切り者である俺達だけだから。




トゥイットゥーで流れて来てメンタルに多大なダメージを受けたため、書く予定無かったのにガッと書きました。
反省はしていますが後悔はしていませんあぁスッキリした!!

原作にどれだけ救いが無かろうが二次創作なら何でも出来る。
それが二次創作の素晴らしい所だ。君も書こうよ二次創作。

この後衛星使って魔女全員回収した後に衛星を軌道上で爆破、他の衛星を巻き込んで軌道上がデブリの海になることで空の目を潰し、環境破壊を癒していた魔女の恩恵が無くなることで資源不足に陥った帝国は、皇帝の求心力の払底もあり内ゲバ祭りになりめでたく滅亡、資源と衛星を封じられた世界は技術レベルを産業革命以前まで巻き戻すことになりましたとさ、めでたしめでたし。

弟子たち?魔女たち助けて惚れられて皆で円満ハーレム作ってるんじゃないかな。
ハッピーエンドなら何でもいいとも……


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