今日もいい月だ、曇りで全く空が見えないが……最近湿気が多い。刀の手入れにはかなり気を使っているが二本ほど長く持っていることもあり錆が出てしまった。
「雨の日は好きだが……それに付随する不便が嫌いだ。」
洗濯物が全く乾かないし、乾かせない。今はあらかじめ乾かしておいたものをひたすらに消費していく毎日。
血の汚れもとれりゃしない……
あっ勘違いさせたら悪いが人を殺し回っているというわけではない、刀の練習とかやるとよく自分の体を斬ってしまって血だらけになることがある。
独学以外の何者でもないから……自身で自身の首を撥ね飛ばしそうになったときはヒヤッとした。
でもちょっとやるぐらいなら自衛にもなってるしだいぶいい。
「雨の日って刀見るぐらいしか本当にない……空から水か降ってくるって幻想的で綺麗なんだけどな、実際に好きだし。」
今日は何を食べようか、猪でも食べようか獣の肉は心臓が一番好きだ。食感と味が強くて美味しい、だいたい生で喰ってる、人だったら腹でも確実に壊している自信がある。
まぁ死体喰らいで、新鮮さとかそういうものに最初っからあまりこだわってはいないのだが。
「……」
基本的に獣も食べるときは骨ごとバリバリ食べる、別に酷く硬いとは思わないし……気になりもしないでもさすがに皮までは食べないから。
ウサギやらの獣の皮をどうするか悩んでいる、今までは乾かし引っ張り伸ばして布団やらに直していたが……だいたい必要なものは作ってしまった。
「普通に捨てるか。」
そう短く決めた。思い返せば、餓集癖があるとはいえどそういうものを集める趣味ではないし特に必要もなかった。
「今日はすこし騒がしいなー、人さんが来てるのかな?大根とかはあるし干し肉は渡しても大丈夫だね。」
何となく人がいつくるか分かる、来るのは定期的だし……何より飢えた鬼達が騒がしい。だいぶ前では警戒の意味で使っていることが多かったが今はどんな話し相手がくるかの楽しみが多い。
首落とされかけるのは、相変わらず困るし怖いが。
それ以上の収穫がある、この山では娯楽が少な過ぎてなにもしてないと生きた屍になってしまう………
「いや 鬼 という時点で人の子にとっては生きた屍だ、我ながらなかなか面白く滑稽なことを思い付いた。
来たときに話の肴にしよう。」
とはっはっはと個人的に笑って噎せる、あーこの滑稽さを誰かと共有したい。だが今いるのは鬼一つ、返す人もここにはいない。
その事にまた鬼は嗤った。
「さて……来客か……」
おもえば人としていた頃もあったはずだが全く覚えていない、他の鬼たちもそんなものなのであろうか?
話さないし話にもならない奴ばかりなので分からないが、とりあえず狐の面で顔を隠し念のため刀部屋から一番使い慣れている刀を持ち出し呼吸をする。
「こんな雨の日に、登山とはなかなか大変だねーあと濡れた様子で家に上がらないでくれないかな木が腐る。」
「誰だっ!」
刀が引き抜かれる、だけども疲れもあるのか鈍く見える……たしかに雨のなかずっといるのは体力を持っていかれるのだろう。
こちらも刀を引き抜き、向かう刃を防ぐ………何回したんだろうかコレ深く考えると信用が全くなく悲しくなりそうだ。
「ここの家主だよ、山に住んでるんだ。あといきなり斬りかからないで…………ビックリするよ?というかビックリしてる。
お面つけてもダメかぁ……」
ここでお面の力が全くなかった事を知る、やっぱり一番は殺されかけること前提でそれなりにやっていくことらしい。うん泣きそう、というか泣きたい。
「……鬼だろ、お前……」
「いやぁ、こっちにも事情はあるもんだよ?」
「返答になってないぞ。」
「そちらだっていきなり斬りかかってきて返答になってないじゃないか、お互い腹を割って話そうじゃないかー
普通は腹を割ったら死にそうだが。」
お互い刀をギリギリとさせながら話をする、端から見たら片方は必死で斬りかかり……もう片方は余裕をもって煽るように捌いているように見えるだろうだが……
冷や汗は家主である鬼の方が凄い。
「鬼の言うことは、聞くに値しないっ!」
だいたいはそんなのが多いのに気がついた、当然と言えば当然なのだが……あんまり外を見ていないから感覚がずれていることははっきり分かる。
「いやいやそんなこと言わずに、ここで腹かっさばいて見せようか。」
敵意がないと思わせるためには、こういう風にやった方がいいのだろう多分きっと。
「頭おかしいのか?」
「いやだって、君は鬼に傷ついて欲しいのだろうからそれをするのが一番いいと思ったんだけど……?違うのかい。」
「俺は鬼がいるのが我慢ならないだけだ!」
なかなか難しい問題だ……どれを答えても鬼である時点で不正解とは、うん話ながらこの刀見ていたがなかなか波紋が綺麗だ……緑の線がよそ風のようにおぼろげに入っている。
どうしても話にならないし……アレやるか。
「わかったすこし……」
少し力をいれて、刀を弾き懐に入り込み肘で腹を突く……本来は刀でやる行為ではあるが。人間だと下手したら死んでしまう……ただ話し相手が欲しいだけなのに。
悲しいじゃないか。
「寝ててね。」
そして刀を持った相手の手首を強く掴み少し捻る……軽い捻挫ぐらいであれば三日ぐらいすれば治るだろうから許してほしい。
それから、頭を持っていた刀の柄の底で殴打した。
ちゃんと這ってはいるが大人しく寝ててくれたので、刀を取り上げ家の柱に縛っておく。何回ごだごだ言ってはいるが気にしない、今は雨だ晴れたらすぐに外に出す。
珍しく人が来ても……こんな風に追い出す回数の方が明らかに多いからなぁ……
気分転換に晴れるまで、新しい刀見てよ……ゆっくり見れるし。
たぶん女とか男とか墓守気にしてねぇぞ(性別忘れた。会話のドッジボールしてるよ……
話がつかなさすぎる人は、気絶させた日向に追い出します。