藤襲山で暮らす鬼   作:夢食いバグ

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よく忘れたものは夢に見るというけど、寝たことないや。


人間だった頃どうだろう

とりあえずしばらく縛り上げていたが、刀眺めてたらだいぶ時間がたっていたようで起きたようでバタバタしている……そうだ大根茹でよう。

 

肉も殺したばかりの猪の奴いれて、グツグツ煮よう。

 

まだ雨が降っているから追い出そうとしても、追い出せないし。湿ってると火石打ちにくいからあらかじめ毎日燃えるようにしている火から取ってっと……

 

この山燃料となる、木とか葉っぱとかならいくらでも取れるからね……乾かす必要があるけど。

 

「………………♪」

 

ひたすらに煮る、ごぼごぼと沸き立つのがいいとかどこかで聞いたことがある知らんけど。さてコレは熱いのだろうか寒いのだろうか……肉を焼いて食べたことがないからあんまり熱を感じることは少ない。

 

さて、人の子は草のねやらも喰うが人だった頃は何をしてたのだろうか?こちらだって普通だったはずだ、今ではとっくに血肉以外の味を感じられなくなってしまったが。

 

「なかなか面倒だな……でも前に出したとき冷たいやら火が通ってないやらさんざん言われたからなぁ……」

 

水に火いれて大根切って煮たら怒られたから、ごぼごぼに煮れば今度はいいのだろう。

 

「後シオーシオー。」

 

で最後に大きい袋に入った白い砂を鍋のなかにぶちこんだ。白い砂は水に溶けて消えた小さい袋に入っていた砂もそうだが溶けるようだ。

 

「うーんこれでいいかなー、持ってこ。」

 

とりあえず鍋を掴み、縛った人の場所にいこう。

 

 

「………」

 

いま目の前で起きているそして生きている事実に混乱している。状況を整理しよう、俺は鬼と戦って首を落とせずに気絶いや倒されたはずだ。

 

鬼は人を食らうだからこそあそこで死ぬと思っていたのだが……

 

「はい口開けろー!煮込んだー」

 

目の前にいるコレはなんなのだろう、先ほど俺を気絶させられて縛り上げた鬼だが……何で地獄のように沸騰したお湯に浸かっている大根を鍋ごと持ってきているんだ。というよりは鍋の中身が赤いどす黒いほどに赤い。

 

「……………なんなんだコレは…なんなんだコレ!」

 

「えっ大根と猪そのまま突っ込んで塩で煮込んだー?まぁ味見してないけどというかできないけど大丈夫だと思うよー、とりあえず口開けろー」

 

鍋のなかで地獄のように煮たつ謎の物体を箸で口に突っ込まれる……始めに感じるのは只の熱さだ、鼻から抜けるのは圧倒的な獣臭さ。

 

煮え湯をそのままの方がまだましだ

 

そして最後に感じるのは、異常な塩分。海水でも使ったのだろうか……ジャリジャリとした砂の感触も混ざる。

 

「…………………夢か?夢だよな?」

 

訳がわからない、熱病の時に見る悪夢と非常に状況が似ている。だが動けない状況や頭の痛みが現実だと意識を引き戻す。

 

「うーん夢じゃないよー、というか選抜中だったかなぁー、いやぁ雨だし外にいきなりほっぽりだしても只喰われるだけだろうし……

 

日向でてから、追い出すから安心してねー

 

刀も後で返すよー飾りたいほど綺麗だけどねー。

 

ゆっくり眺めてみると少し刃零れしてだからちょっと研ぎ直したよーホラっ人を一人二人斬ると刀ってすぐ切れ味落ちるからねー

 

正直、刀の手入れ方法とかも教えた方がいいと思うんだけど。」

 

この鬼はやはり頭がどこか可笑しい、師匠から聞いた鬼もこんなものではなかった……というよりはまだ口のなかが獣臭い。

一言で言うならば、何を考えているのか全くわからない。

 

恐怖とは二つあるという、圧倒的な強者かそれとも理解不能なナニカか……俺が感じているのは明らかに後者だ。

 

そのナニカは、笑いながら俺の刀を引き抜き一閃を放ち薪を豆腐のように斬って見せる。

 

「どういうつもりだ。」

 

「何って得意意味ないけど?あえて言うのなら……

 

これから君に戻す刀は、研ぎ終わったよってだけ。刀って鈍器とかと違って消耗しやすい武器とも言えるからねー」

 

会話が通じていない…………

 

 

あっ天気晴れた、外に追い出そう。

 

ポカーンと何故か青ざめながら縛られている、奴を外して引きずり刀とともに日向の方に放り投げる。

 

疲れた様子だが……まぁここから先は死のうが生きようが別に興味はない。

 

「……なにもすることないからずっと煮込んでよ。」

 

焦げても洗うから気にしない。

 

ちなみに何回か家が火事になりかけたことがあった……それは山の狼煙やらと勘違いされた規模になりかけるところだった、まぁ焼畑として畑に直したけど。

 

ここに来てからだいぶ畑も広がってきたから、刀以外にも特に食べもしないのにやたらと増えているさつまいもやらを渡したりしている。なぜ選抜にくるひとは困惑しているのだろうか?

 

後盲目の住職さんにはものすごく喜ばれた、あと桜の子も喜んでくれた。甘くて美味しいしらしいね、さつまいも。

 

ゆでて小さい袋に入った砂を混ぜたものが、一番評判が良かったなー。やっぱり単純なのが一番いいのかなー。

 

「で余ったこれ、畑にでも捨てよ。」

 

いやー今日は雨ゆえに大変だった……、さて刀磨いでようかな手入れ大事にしないとだし。




柱に縛られて強制おでんチャレンジをさせられたあげくに外に放り出される鬼狩りの卵。

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