後々また雨が降った、すぐにやんだりまた降ったり忙しい天気だもっとゆっくりすればいいのに。
「ふぅ……この刀の名前結局なんなんだろうな?」
鬼を日光以外で殺せる武器やらとは分かるが、まぁいいか綺麗だし……磨いで楽しいし。ここに飾ってある刀はすべて使える、名刀をなまくらにはしていない……
「これどれぐらい時間たってるんだろうかなぁ?」
刀を集めだしてから、結構時間がたっている気がするから古いものも多い気がする……よく見てみるとだんだん刀の形も変わっているものだなぁ
新しいものになるにつれ、堅いものを割るというよりは肉を切り裂くのに適した形になっている。
外がどんな風になっているのかは知らんが……前まではまげやらもあったけ髪も変わってたなぁそういえば。
「ここから出てみたいな……外どんな風になってるんだろう、あと藤の花綺麗だから見たいでも苦しい。
苦しいものも慣れればいいのかな?」
綺麗なものは好きだ、いくら毒であろうとも見たいものは見たい。
「あー誰か藤の花こっちに持ってきてくれないかなぁー来ると苦しいからすぐに分かるし。」
簡単に言えば吐きそうになる、頭がぐるぐるする、目が真っ白になる。あっ目が真っ白になったら藤の花見れないじゃん……やっぱり少しずつ慣れるしかないのかなぁ。
「木を斬ってこようかな、薪用に乾かさないといけないし。」
◆
あの後密集しすぎたかなと思う木を斬って、家に持っていく。持っていく際には小さくして終わる。前までは殴って倒してたが斬る方が楽だと思った。
「あーこれ……そういえば初めて見るかなー。」
それは鬼が人を喰らう光景、腹が裂かれ頭が砕かれている。鬼は久しぶりの食事に乱れている、喰われている人は死んだばかりなのか痙攣している。
いつもは死体ばかりなので新鮮なものだ、二つの意味で。
目がこちらを見る、内臓の様子からもう事切れているだろうが……手が救いを求めるように延ばされた。
「……………………………」
この光景をどこかで見たことがある気がした、鬼が直接喰っている様子を見るのははじめてのはずだ。そうはじめてのはずだ……
景色が白くなり、懐かしい?声が聞こえる。女性の声だ、それか男の声だ。祭りの音かシャンシャン鈴の音がなり、ドーンと叩く音や風のような笛の音が重なる。
幻聴か、そして今目の前に広がる光景は幻覚か。
「ミコ様、ミコ様。」
そこにはさまざまな物があった、土で作られ焼かれた人形と稲穂のついたお米色の糸が編み込まれた布と豪華なのは見て分かる。底の中心にいた。
祭りごとだろうかと思わせるが、それは明らかに違う……目の前にあるのは……大量の血痕
生きたまま人が火になる斬られ肉になる。祭りのような音に叫び声が混ざり耳に残る、横にいる人達が死んだと確認するなりに勝手に肉体が動く……
そして焼けて皮膚などの肉が縮れ、焦げた臭いと血の臭いが混ざる。
「……♯♯♯♯♯♯♯♯」
口が勝手に開くでも、何を言っているのか理解ができない……目だけで手元を見ると手首に石が飾られており服も刺繍が凝っていた。
意識とは違う、やっぱり幻覚だ。
「ミコ様……かのものに♯♯♯♯♯♯を。そして大地に恵みの雨を、豊作を。」
無理だ、無理だ、そんなこと出来るわけがない。何で目の前で人が死ぬんだ。
「神の恵みあれ。」
それを最後に、視界が戻る。目の前にあるのは食い殺されたいや食い荒らされた只の死体。助けを求める手もおられたのかねじ曲がっていた。
「………おぇ……」
はじめて死体を見て吐き気を感じた、いや死体にでは無いことははっきり分かる。あの幻覚や幻聴だ、あれば人間の頃の記憶か何かか?
「何をしてたんだ?」
生前何をしてたのか全くわからない。いや理解したくはない………でも確実に言えることは、死体をいや死体になる様子を見てきたことだそれははっきりわかった。
「ミコサマか……それが名前か、それとも名称か。ご飯は持って帰ろう……、死んだのなら最後まで。」
……うんどう考えても墓守の方が耳に馴染む、ミコサマよりも墓守の方がな。目の前にある食い残しは貰おう、そのままにしても他の鬼が喰らうだけだろう。
人間だった頃を思い出してもろくなことがないかもしれないことが今わかった。
何で今少し思い出したのか全く訳がわからない。
◆
「さて、帰ったが……」
奇妙な幻覚を見たせいで、刀を見る気力すらない。あの持ってきた食べ物もまだ見たくはない……いつもならば食料だと喜ぶのだが。
しばらくは食べたくはないな……純粋にあの幻覚や幻聴がもう一回来そうだ……正直に言えばもう一回見たくない。だけど今まで見たことがなかったいや、見ててもすぐに忘れたのか。
「あーどうするか……」
もう寝るか……寝れないが。そう布団に入って目を閉じる、ただ目を閉じるだけそうやって時間が過ぎるのを待つだけ。
鬼の体に疲れはない、睡魔はない。
それは良いことだと思うが、それは地獄にもなり得る……意識を捨てる行為が全くできないことと同じとも言えるからだ。
「………………………………………」
目を閉じると暗くなる、そして音だけを感じる。そういえば、死ぬ前は音……聴覚が最後に残る感覚とどこかで聞いたことがある。
ならばあの過去らしいものを思い出したとき、音から思い出したのは死と同じように音からきたのだろう。
よく知らないし、考えることもないだろうと考えていたが……まさかこんなところでなるとはなぁ。もう夢は見られない、鬼は夢を見ない、生き地獄は慣れていたはずだったのになぁ……
「……弱いなぁ本当に。」
突然現れる、生前の記憶。