「ちょまって、えー。丁度人の子くるから野宿してしばらくやりすごそうと思ったのに。まさかここで首斬りもうやだ、泣きたい泣いていい?
来るならやるぞー、こっちだってやる時はやるからだからね見なかったことにしてどっか行って本当にさ。」
…………始めにこの鬼を見た感想はなんだこいつだった。
手作りしたのか継ぎ接ぎの布団にくるまり、髪をひとつに糸で結って止めている。人を見て直接襲うのではなくピャーピャーと鳴いていた。
「動きにくいか………さっむっやっぱり寒っ、よくこんな真夜中に薄着でいられるね風邪引かないのちょっと心配になるよ?あーも何もないなら逃げるからねついてくるなっ!
というか本当にさぁ、こっち来ないで。暖かい布団あげるから来ないで。」
「オイ!ちょっと待て。逃げるなっ!」
その鬼は視界を塞ぐように布団をこちらの方に放り投げて、後ろも視ずに一目散に逃げ出していく。
俺は、義勇を連れて勝手に言葉を捲し立てて逃げたその鬼を追いかける。確か師匠の鱗滝さんが言っていたやつだ、それに間違いはない。
あの最終選抜での噂の鬼。
この飢えた鬼ばかりの山で、ずっと生き続けている。不思議で可笑しな鬼。
◆
「なぁ知ってるか、必ずこの最終選抜では一人は生き残るんだってさ。本来ならば大怪我して帰った人が隠としてつとめたり、とかさぁ……
この山で暮らしているやつがいるとかさ、本当に暮らしてるんだったら鬼殺隊が調べてると思うんだけどなぁ……」
それは、訓練中ちょっとだけ他の鬼殺隊になるための訓練している奴から聞いた噂話のようなもの。
かなり前々から語られており……もし住んでいるというやつが人間だったら何回か寿命で入れ替わっている。
死んだと思われる奴が毎回入ってきているのか、それとも………
理性を持った鬼が、この山を根城にしているのか。
だが真偽は定かではない、鬼殺隊だろうとあの山に鬼は送りはするがわざわざ中に入ってみたりはしない。
「うん、知らないけど……鱗滝左近次師匠なら何か知ってるかも?」
静かに聞いていた義勇は、首をかしげてうーんと唸った。
「……そうかぁ?」
そんな感じで、軽い話をしていた。俺と同じ鬼殺隊を目指す仲間だ、ちょっと口下手な所がたまに傷であはるが…………
「後二日で最終選抜の日か、お互い鬼殺隊になろうな。」
「うん」
いいやつだ。しばらく寝て、鱗滝さんも熟睡する頃に起きる。そうやっていつもの修行をする場所に向かう。
「マコモいるか?」
「うん、いるよ。」
俺が修行した時からいつのまにかいる、不思議な少女。俺は彼女から色々な事を教えてもらったそのお陰であいつよりも今は強い。
義勇にも聞いたがあいつはマコモなんていないと言う、何故なのだろうかわからない。
「後二日で、最終選抜なんだ今まで教えてくれてありがとうな。」
「うん、二人とも鱗滝さんからの岩今までの人で一番早く斬り割ったきっと大丈夫。」
そうやって彼女は、木からふわりと落ちる。まるで水がポチャンと音をたてて静かになるように。
その体使いは、見た目とは違い何年も鍛練されたようなものを見せる。
「そうか、また手合わせいいか?最後まで教えてもらいたい。」
俺はまだ、鍛練が足りない。一日一秒でさえ休む暇等ない彼女から教えてもらう事はまだまだある。
呼吸、鱗滝師匠から教えてもらった水の呼吸。
それを彼女は俺よりも遥かに知っている。
「うん、もちろんいいよ。」
そうやって彼女も刀を構える、それはお互いに木刀。真刀は彼女は使わない俺も、岩を割れと言われたときに渡されたが、真刀は今は最終選抜まで取り上げられている。
最初の頃はよくマコモにぼこぼこにされた、呼吸は使えてたが練度がまるで月とすっぽんのように違う。斬ろうと向かうとまるで水に刀を奮うかのように流れていってしまってた。
「なぁ、あの山の鬼の話を知ってるか?」
「うん?義勇君と話していたのかな、知ってるよ。鱗滝さんも知ってる。不思議な鬼、人に近い鬼、お話はしたことないけど。」
「実際にいるのか?それは驚きだな………俺はてっきり鬼に喰われない変な験担ぎの噂だと。」
軽い会話をしながら、木刀がお互いに打つ音がバシンバシンと静かな森に響く。最初からマコモは疲れを知らない、汗すら流れない、呼吸を極めればこうなるのかといつも感じている。
「嘘じゃないと思うよ、鱗滝さんも昔鬼あの山に放つとき刀の破片もって帰ってた。」
「そうなのか…………」
こんな軽い会話をしながら、打ち合い続けてた。
「錆兎そろそろ戻らないと、鱗滝さんが起きる頃だよ?」
「あぁそうだな、怒られてしまうな。ありがとう。」
そうやって打ち合いを終わらせて、戻り狸寝入りに入る。何度か失敗してこっぴどく絞られた事がある…………今ではばれることは無くなったが。
「後一日か………」
◆
「はっやっ他の人よりはっや、なんなの?呼吸でも使ってるのそれとも素で?人間とは?
俺鬼だけどさ、鬼に追い付いてるって技術って恐ろしいね。このやろー動けや足ー、まだ首斬られたくないんじゃー
…………あたぁっ」
義勇と二人で追いかけると、その鬼は目の前の木に顔面からぶつかり倒れた。
どうして死んでないのだろうこの鬼は、他の奴等に今すぐ殺されてもおかしくはない。
「いや今は首を斬る目的じゃない。」
「今ってことはそのうち首斬るって事じゃないですかやだー泣いていい?俺泣くね今から?」
ちかずくとずりずりとその鬼は後退した、情けない声出しながら言っているがその手は拾ったのであろうか刀を持っているのに手を掛けてすらいない。
俺は、そのあまりにも情けない様子に少しいらっときた…………とりあえず頭に一つ拳骨を落とす。
「男がビャービャーいうなっ!」
「ヒィン、頭痛いー」
本当になんなんだこの鬼。
シリアスかギャクかわからなくなってきたぜ。
錆兎ドン引き鬼。