藤襲山で暮らす鬼   作:夢食いバグ

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人の出会いは一期一会、ならば鬼の出会いは?

そんなことを考えても意味はなく、同時に人であったのならばと考えるのも意味はない。

もう鬼であるのだから、そのようにしか生きられないだろう。


二人の刀 故人の刀

「これ、シオとサトウ。干し肉は適当に焼いたし喰えるとは思うぞ。腹壊したら知らないけど頑張れなんとかるやろ。」

 

そうやって二人の前に、適当に準備した料理というか食べ物とはちゃんと言えるであろうものをだした。

 

すると二人は、それぞれおもいおもいに肉や野菜に手を出してかじっていく。山ではそれなりに長くいるがやはり食料を探すのも一苦労なのだろう。

 

「野菜育ててたんだな、お前は喰わないのに。」

 

食べながら少年はこう聞いてきた、普通の鬼であれば家を建てたり野菜を作ったりとかはしないだろうから疑問になるのは当たり前のことであるが。

 

「そりゃあここにいれば、暇以外の何者でもないからね。ただ食ってるだけじゃ心が死んでしまう。」

 

鬼は野菜は喰わない、というよりは血と肉以外は受け付けない体だ。だが、ただ獣を狩り鬼の食べ残しを漁るだけでは精神が死んでしまう。

 

只でさえ、ここには娯楽が全くないのだ。野菜でも種まで採れば綺麗な花や身が心を潤してくれるような気がする。

 

食わないのに育てる理由はそれで十分だろう。

 

「ここに来る前の外で、種なんかはそれなりに持ってたからなぁ………ここの野菜にも山で直接取った奴はあるけど。

 

大体は、山以外で育ってた種を偶然持ってたからできた感じだなぁ……あと君たちのような人に渡されたりとかで。」

 

少し思い返しながら、勝手に話す。本当に毎回喋れる人がいないからこういう交流は勝手ながら楽しいものだ。

 

そもそも鬼ならばこう言うことさえも、毎回餓えて出来はしないのだから幸運と言うべきなのだろう。

 

「………本当にお前、この山に馴染んでるんだな。」

 

狐面の傷がついた少年は、呆れたような安心したような声で話してきた。

 

というかもう一人の子全く喋らないんだが、怖いのか俺が怖いのかそれともつまらなすぎて飽きてるの?!心配になってきたよ、特になにもできないけど。

 

「来てからずっとここにいるからね、居心地悪ければ何とかするようにするさ。

 

最初の最初は雨が寒かったから穴蔵探してそこに居座る事からだったからね。」

 

さて結構話したし、見てると野菜やらはまだあるのに手が最初より遅いし止まりかけてる。本来の二人の目的であろう刀を渡そう。

 

確実にあのままだと、残りの選別のためにこの山にいる期間で使ったら損傷が酷くて折れるだろうからね。

 

使える程度の拾った刀なら結構あるし渡しても特に損はない、同時に特もあまりないけど。

 

楽しそう、面白そう、気まぐれ の三つで大体動いてるから今更だろう。

 

「腹ごしらえもすんだかな?足りなければ、勝手に畑から引っこ抜いて野菜いくつかもって行けばいいさ。

 

さて集めた刀はそれなりにある、拾ったものでもある程度の管理は毎回している。切れ味は、見た目が綺麗だから集めてるだけだし保証はしないが使えはするだろう。

 

刀部屋を案内しよう、少し奥にあるからね。それに勝手にあるかれると困るし。」

 

そういって俺は立ち上がり、その部屋に歩いていく。その度にギシギシと床が音をたてる。作り方はきちんとしているのに不安定そう等もし言われたとしたら俺は怒ると思う。

 

人がもしこっそり入ったときにすぐ気づけるようにしているんだと、一人で建てた割りには立派だとも思うし。

 

よしここだ、ここ。

 

「ここだね。この中から選ぶといいよ、ある程度量はあるししっくり程度はくる刀は見つかるとは思うよ。」

 

俺は、しきいを引いて二人を刀部屋の中へ誘う。二人は大層驚いたように部屋をじっくり見ている。

 

どうだ凄いだろと思いきって言ったりしてみたいが、刀の形状とかの話はあまり詳しくはないだろうし。

 

興味のない話を長くされることの辛さはよくわかる、墓守をしていた頃こんな職ついてるからに、まともな職ない浮浪人やらごたごた言われて面倒くさかった。

 

「……この量集めるのに、何年いたんだ?」

 

「ずっと、でも今はまず君達に刀をあげるそれが大切だしね。」

 

実際数えてないし、今が何年なのだかここにいると分からないのだからそう言うしかない。実際刀集めし出したの、来て最初の頃じゃないし。

 

まだ最初の頃だったらある程度ははっきり答えられたかもしれないけど。

 

返答を聞くと、二人はめぼしい刀を取っては強く握り締め呼吸の型であろう動作をする。

 

その間に適当に試し切りする?と聞いて薪出して試し切りさせたりやってある程度時間がたった頃。二人は貰うらしい刀を決めたようだ。

 

「……俺はこいつと、義勇はこれを貰うらしい。」

 

二人は、そうやって貰うであろう刀を二つ手にとって見せた。蒼い刀、とても二人の最初に持っていた刀に似ている刀だった。

 

まるで同じ人物が渡した刀が何本も存在したかのように、そういえば天狗面の人もそんな刀使ってたっけ。

 

「うんそうか、そうか。蒼くて綺麗だよね、空いや水かな?君達の二人のもそうみたいだし、いいよ!持ってって。」

 

そうやって貰われて困るような特にお気に入りの刀はもう自分の手にあるので当然のごとく了承した。

 

二人は、また外に出ていくだろう。日が出てもいるしね、外に出ても安心出きる場所がある時間だ。

 

「後選別終わってから帰るとき、この場所から木が開けてる場所というか開いた場所があるから。そこに太陽の登る昼から帰れば安全に帰れるよ。

 

ある程度の止血とか怪我は治せるし怪我したりとか疲れたらいつでも来てね。

 

応援してるよ頑張ってね。」

 

元気に外に出ていく二人少年を見送る、そうやって自分が一度藤の花は綺麗だと言われて見ようと辿って失敗した人間であれば安全に帰れるだろう道を教えた。




さてこのあとどうなるのか、お楽しみに!

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