クロスアンジュ ノーマの少女達と一人の少年が出会った 作:クロスボーンズ
第1話 出会い
(・・・ここはどこだ?)
今、自分は現状が把握できていない。周りは真っ暗。いや、暗すぎる。これでは今いる場所を確認するなど不可能である。
いや、それだけではない。
(俺は・・・何をしていた?)(俺は・・・誰なんだ?)
自分の中で湧いてきた疑問を口にする。答える者など誰もいないが、言わずにはいられない。彼は自分が記憶喪失だと理解した。そして、自分がこれから死ぬということもなぜか確信めいていた。
いや、すでに死んでいるのかもしれない。だが男にとってはそんなことはもはやどうでもよくなっていた。
(自分が誰かも分からず、なぜ、ここにいるのかも知らず、なぜ死ぬのかもわからないまま死ぬ ・・・か)
もうどうでもいい、なるようになればいい。疲れたから、休ませてくれ。
半ば、自暴自棄に近い状態になっていた。
その時だった。ほんの一瞬だった。光が見えた。弱い光だ。だが、確かに光であった。彼の目には、たしかにその光が見えた。
(光?今確かに光が見えた)
彼はその光に向かって進もうとした。
しかし、彼は進めなかった。いや、進めなかったのではない
彼は体が動かないのが今になって理解した。しかし、進んでいる感覚はたしかにある。
(どうなってるんだ・・・なんで動かない)
だが進んでいる。理屈はわからない。しかし光の方に進んでいると直感的に理解できる。
また光が見えた、今度は大きかった。光に近づいている証拠だ。しかも今度は点滅している。まるでこちらを導くかの様に。
理由なんてわからない。あの光に向かわなければ。呼んでいるから。光に辿り着いたらどうする?そんなこと後で考えればいい。今は行かなければならない。
そして彼は光にたどり着いた。
その瞬間だった。
今度は眩しすぎるくらい周りが明るくなった。
男は反射的に目を閉じた。
「お前は行かなくてはならない」
声が聞こえた。いや、聞こえたは正しくない。正確に言うならば、脳に響いた。
「君に託そう。君の望みを叶える剣を」
さっきの人とは違う。別の声が頭に響いた。
(誰なんだ?行かなくてはならない?どこに?それに託す?願いの剣?それはなんなんだ?)
男にとってはあまりに唐突で理解が追いついていない。
「すまない。お前に危険な道を歩ませることになってしまう」
声の主が謝罪してきた。
(そんなこと聞いていない!それよりあなた達は誰なんだ!?俺のことを知っているのか!?)
「そろそろ時間ですね」
(そんな!こちらはまだ何も納得のいく答えをもらってない!)
「すまない」
(謝罪なんて求めてない!そんなことより!)
「時間だ」
こちらの言葉を遮るように告げると、次の瞬間、周りが一段と眩しくなった。それだけではない、自分の意識が朦朧としてきた。
(あなた・・・たちは?・・・)
次の瞬間、彼の意識は光に飲まれた。
「種は跳んだ。あとは」
「祈るだけです。それが、我々が彼にしてやれる、唯一の事ですから」
「そうだな」
二人の会話は、すでに彼には届いてはいなかった。
「テスト終了!ナオミ、どうだった?」
通信越しに明るい声が聞こえてきた。話しかけてきたのはメイ。
アルゼナルの整備士だ。
「大丈夫だよ、メイ」
通信に答える彼女はナオミ。
ナオミは今、空をグルグルと周りながら飛んでいる。
今日はナオミにとって特別な日だ。
ナオミは満面の笑みで空を飛んでいた。
おまけに心の中では
(これが!私の!私だけのパラメイル!)
と、盛大にガッツポーズを取っていた。
シュミレーターではなく、本物のパラメイルにのっていることも彼女が興奮している理由の一つでもあった。
ナオミは今日、メイルライダーとしての資格を手に入れたのだ。
自分の夢であったメイルライダーになれたために、今の興奮は最高潮に達していた。
因みにさっきシュミレーター用のドラゴンと対面した時に少しだけ漏らしたのはここだけの話。
これだけはいつまでも慣れない。
「それは良かったよ.それじゃアルゼナルに帰還して」
「もう少し飛んでちゃダメかな?」
ナオミがおねだりしてきた。彼女からしたらもう少し飛んでたいのだろう。
「って言ってるけど、どうする?」
メイは隣にいる人物に答えを求めた。
「帰還ルートを少し変える程度なら許そう。だが、それで燃料がなくなっても知らんぞ」
隣にいた人物がそう返答した。
彼女はジル。アルゼナルの総司令だ。
「えーっと・・・要は少しなら認めるってことだよ、ナオミ」
メイがそう解釈した。
「ありがとうございます!ジル司令!」
彼女は興奮しながらも、来た時とは違うルートで帰ろうとした。
その時だった。
それは、なんの前触れもなく、突然起きた。まばたきの瞬間すら違う。瞬きする間もなく、突然と現れた。
「・・・なに?・・・あれ?」
驚くのも無理はない。今、ナオミの目の前で、突然穴が空いたのだ。空間に。
通信越しでは、司令室が慌てているのがわかる。
「ナオミ!そのエリアにシンギュラー反応を確認した!今すぐ逃げて!」
さっきテストが終わったばかりのナオミのパラメイルには、実弾など積んでない。今、本物のドラゴンと戦えば負けは目に見えていた。
そして、メイの通信も今のナオミには届いていなかった。
体が動かない。今のナオミは緊張とは似て非なる者に支配されていた。
恐怖だ。今のナオミを支配しているものは。
興奮などは穴が開いた瞬間に冷めきっていた。
わかっていた。
メイルライダーになることを願っていた時点でいつかはこうなることは理解していた。それでもメイルライダーになりたかった。
テスト前にジル司令に、覚悟があるかと問われた事を思い出した。
明日、自分が死ぬかもしれない。お前に覚悟があるかとジル司令は聞いてきた。
その時、自分は覚悟があると答えた。
ノーマが世界を守り、マナの人が世界を動かすという役割がある。
なら覚悟もあると答えたことを思い出した。司令には面白い考えと言われた。
しかし、想像と現実は違っていた。
逃げたい、今すぐ逃げたい。でも腕が、足が、体が、恐怖で動かない。
「ナオミ!何やってるの!早く逃げないと!」
「待てメイ!シンギュラーの様子が変だ」
司令室では相変わらず慌てていたが、なにやら様子がおかしいようだ。
「ナオミ、今の状況を説明しろ」
「めっめっ目の前に、穴が開いてますっ」
恐怖で引きつった声しか出せないながらも、ジルの質問にナオミは答えた。
「ドラゴンはそちらに現れたか?」
「・・・現れてません」
少しだけ気持ちが落ち着いたのか、さっきよりははっきりと質問に対しての返事をする。
その時だった。
何かが落ちてきた。高いところから石を投げ落とした時みたいに、それはただ、落ちてきた。
それは海に落ちると、最初は水しぶきで見えなかったが、水しぶきが落ち着くと、仰向けになって浮かんでいるのが確認できた。
そしてそれが落ちてきたかと思ったら、穴は徐々に小さくなっていき、ついに、穴自体がなくなった。
しかし、こちらは多少パニックになっていた。
「!?今!私の目の前で!何かが落ちてきました!」
「落ち着いてナオミ!何かって何?」
メイが質問してきた。
その質問に割り込むようにジル司令が入ってきた。
「ナオミ、その落ちてきた物体だが、その様子はどうなっている?」
「落ちてきた物体は・・・浮かんでいます」
「待って!その落ちてきた物体から生命反応が確認できたよ!」
メイの一言にナオミは驚く。生命反応の確認、それはそこに生命があることを示していた。
しかし物体は動く気配がない。となると、可能性は1つしかない。
「・・・私、物体を調べてみるよ!」
意を決したようにナオミが言う。
「ダメだよ!危険すぎる!」
「構わん。ナオミ、調査を命じる。ただし危険と判断したら直ぐにその場から離れろ」
メイの反対をよそに、ジル司令は決断をする。
「イエス、マム!」
ナオミはそう言うと、物体に近づいていった。
その物体は黒色がメインだった。
物体は動く気配もなく、ただただ浮いていた。だが、その物体には、手となる部分と足となる部分、さらには、武器の装備も確認できた。
「・・・これって・・・もしかして?」
ナオミの中にその物体に対しての予測がたった。
「ジル司令、例の物体はパラメイルだと思われます」
自分の予想を司令室のジル司令に報告する。
「パラメイルだと・・・ナオミ、その機体を持って、アルゼナルに帰還できるか?」
「恐らくは可能だと思います」
「ならばその機体を連れてアルゼナルに帰還しろ。」
「イエス・マム!」
ナオミはその物体の腕部分を掴んだ。
その時、ナオミは胸部が開いていることに気づいた。そして、生命反応の件も同時に思い出した。
「まさか」
ナオミは胸部に機体を近づけて、中を確認した。
中は多少浸水していた。おそらく海面に落ちた時に飛んだ水しぶきが入ったのだろう。
そこでナオミが目にしたものは・・・。
顔の一部が赤く染まり、目も閉じていた。自分よりも小さい。
だが、僅かに動きがあった。うめき声も聞こえた。
ナオミは目の前の存在に独り言のように自分に問いかけた。
「・・・子供・・・なの?」
コックピットの中にいた者は答えず、ただ、血を流しながらうなだれていた。
記念すべき処女作の第1話!まだハーメルンに慣れてないけど、この作品の目標は完結することにしていきたいです。
ダメなところや直したところなどがありましたらバンバン指摘してください。直せるように努力します。(直すとは言ってない)
アルゼナルやドラゴンの説明については次の話の最中にしたいと思います。