クロスアンジュ ノーマの少女達と一人の少年が出会った 作:クロスボーンズ
今回は多少長めです。
お気に入りが20人を突破しました!
皆さま!誠にありがとうございます!
10人増える度にこのようにお礼の言葉をここで述べることにします。
果たしてこの作品が終わるまでにどれくらいのお気に入りと感想が来ているのでしょうか。
なお、基本感想には答える方針でいきます。
(感想募集中)
それでは本編の始まりです。
ジルに連れられて、アンジュは格納庫へと向かう。その後ろにはサリアが付いていく。
「本当に出すの?ジル」
格納庫前に待機していたメイが問いかける。
「そうだ。起動は出来るか?」
「もちろん!20分もあれば」
ジル司令の問いにメイが答える。
「こいつがお前の機体だ」
そう言ってジルは眼前にあった機体にかけられていたシートを剥がした。
「かなり古い機体でな。老朽化したエンジン。滅茶苦茶なエネルギー制御。いつ堕ちるか分からないポンコツだ。死にたいお前には打ってつけだろ?名前はヴィルキス」
ジル司令は目の前の機体の説明をする。
「死ねるのですね・・・これに乗れば・・・戻れるのですね・・・アンジュリーゼに・・・」
「・・・せめてもの情けだ。あの世にこれだけは持っていけ」
そう言うとジル司令はポケットから何かを取り出した。
それはアンジュから没収した指輪だった。
アンジュはそれを受けとると指にはめた。
(どうして?この機体は私が・・・)
サリアは何か思うところがあるらしい。
ジル司令はサリアの肩に手を乗せる。
「隊長としての初陣、期待しているぞ!」
「いっイエス・マム!」
そう言うとサリアとアンジュは格納庫を後にし、ロッカールームへと向かった。
サリアとアンジュがロッカールームに入ると丁度着替え終わったメビウスとナオミがいた。
「あなた達は先に発着デッキに向かって。直ぐに私たちも向かうから」
「イエス・マム」
ナオミがそう答える。
「アンジュ」
メビウスが呼ぶがアンジュは返事をしない。しかしメビウスは続ける。
「後悔する生き方だけはするな。俺の様な奴が。自分の事すらわからない人間もこうして生きる為に戦っている。その事を忘れるな」
その言葉にアンジュは何も返さない。
「それじゃあ先に行ってるね」
ナオミがそう言うと、二人はロッカールームを後にした。
「ねぇ?メビウスはなんで戦うの?やっぱり生きる為に?」
ナオミが歩きながら聞いてきた。
「それも半分当てはまる。だけどそうじゃない。
自分の事をを知るため。その為に戦っている。本当の自分を知る。それが今の俺の生きる意味だからな」
「メビウスは強いんだね」
ナオミは感心したように答えた。
発着デッキでナオミは新たな機体の説明を受けていた。
ナオミの新たな機体とは、なんとアーキバスだった。
話によると、ゾーラ隊長の機体が一番外装が使える状態だったらしい。そこに回収したココやミランダの内部のパーツを組み込んで、なんとか修復にこぎつけたらしい。
「ココとミランダがこの中にいるんだね。ゾーラ隊長も」
ナオミはそう呟きながら、アーキバスを見上げていた。
やがて意を決したかの様にメビウスの方を向いた。
「メビウス。私決めたよ。この機体で私は、仲間を守ってみせる。それが私の戦う。ううん、生きる理由だよ」
メビウスは多少驚きながら黙ってそれを聞いていた。やがて口を開いた。
「仲間を守る為に戦う。立派な理由じゃねぇか。
俺も手本にさせて貰うぜ」
そこにサリアとアンジュが来た。
皆がパラメイルに乗り込む。
「既にドラゴンはシンギュラーから出ているわ!各機は戦闘エリアに入ったら散開。各個撃破に持ち込む!」
「イエス!マム!」
「サリア隊、発信します!」
その掛け声とともに全機、戦いが待つ空へと舞った。
「なんであいつも来たんだよ!?お姉様をあんな風にした奴と出撃だなんて!」
「殺す・・・殺す・・・ぶち殺す」
ロザリーは愚痴を零す。クリスなど殺害予告宣言までしている始末である。
「死にに行くんだってよ、アイツ」
「へっ!?」
ヒルダのその言葉にロザリーとクリスは驚く。
「見せてもらおうじゃないか。イタ姫様の死にっぷりをさ!!」
ヒルダがほくそ笑む。
「わー!なんじゃあの機体!?ねぇねぇサリア〜!あのパラメイル見ててドキドキしない?」
ヴィヴィアンがアンジュのパラメイルを見て興奮する。
「作戦中よ!ヴィヴィアン!」
そんなヴィヴィアンをサリアは注意する。
すると前方にドラゴンの群れが現れた。
スクーナー級の中に、ブリック級が一体いた。
「全機駆逐形態!スクーナー級の殲滅後、凍結バレットを装填!ブリック級に対して一気に・・・」
サリアが作戦を各機に伝えようとしたその瞬間だった。
目の前の空間に穴が空いた。
そしてそこからは例の機体が現れた。
「なっ!?あの機体!」
「たしかブラック・ドグマって名前だったわよね」
「あの機体!また来たのかよ!」
第一中隊に混乱が広がる。今最も出会いたくない敵と出会ってしまったのだ。
例の機体はドラゴンに気づいていないのか、それとも無視しているのか、こちらにビーム砲を向けてきた。
しかもそれだけではない。その機体は今度は五機もいたのだ。
「サリア!あの機体の相手は俺がする!その間にドラゴンを!」
そう言うとメビウスはフェニックスを目立つようにその場から離れさせた。
例の機体は五機全てがフェニックスを攻撃目標にした。
(ありがたい)
サリアは内心思った。
前回の戦いでは、あの機体二機と互角にやり合えたのはフェニックスだけだった。
ドラゴンもいる状況で五機とも乱戦状態になれば全滅の可能性が高いのだ。
「例の機体はメビウスに任せる!私達はドラゴンの殲滅後メビウスの後を追う!全機散開!」
「イエス!マム!」
そう言うと各機はドラゴンへと向かって進路を取った。
スクーナー級はあらかた片付け終わった。
「残りはブリック級!」
サリアが残されたブリック級に機体を向ける。
するとドラゴンの前面に魔法陣が出た。
次の瞬間、海面に同じ模様の魔法陣が現れ、そこから何かが飛んできた。それはウロコだった。
「ワナを仕掛けてたのか!?こしゃくなぁーっ!?」
ヴィヴィアンが驚く。しかしサリアの方はもっと驚いていた。
(海面からウロコ!?こんな攻撃は過去のデータにない!)
「くっ!?」
ウロコの攻撃は尚を続く。ロザリーとクリスが被弾した。
「ロザリー機!クリス機!被弾!」
オペレーターから通信が入る。
「2人とも下がれ!」
ヒルダはそう言うと二人のそばに駆け寄り、ウロコを撃ち落としていった。
(くっ動きが悪い!このままじゃみんなが!)
「ゾーラ隊長。私・・・どうすれば・・・」
「しっかりして!サリアちゃん!今の隊長はあなたよ!」
弱音を呟くサリアをエルシャが激励する。
「サリア!前!前!」
ヴィヴィアンに言われ前を見る。するとブリック級が迫ってきていた。
(やられる!)
サリアは本能で思った。
その時だった。急にガレオン級が振り返った。その先にはアンジュとヴィルキスがいた。
「アンジュ!?」
「もうすぐ、もうすぐよ・・・もうすぐサヨナラ出来る」
「アンジュ!避けなさい!」
サリアがそう言う。
ドラゴンの尻尾がヴィルキス目掛けて振り下ろされた。
「!」
次の瞬間、アンジュは機体を横にずらした。
尻尾は命中した。しかし直撃は避けれた。
「も・・・もう一度」
ドラゴンの周りに魔法陣が展開された。次の瞬間、魔法陣から火の玉がアンジュ目掛けて飛んできた。
「!きゃあ!!」
機体を動かす。今度は機体に当てることなく、全て避け切った。
「何してんだよアイツ・・・自分から突っ込んだりかわしたり・・・」
その行動はヒルダだけでなく全員が理解できないでいた。
アンジュも自分の行動が理解できていなかった。
「ダメじゃない・・・ちゃんと・・・ちゃんと死ななきゃ」
ドラゴンがヴィルキスに組みついてきた。
「ガン!」
組みつかれた衝撃で顔をモニターにぶつける。額からは血が流れる。
目の前にドラゴンの顔が映る。
「アンジュ!」
ナオミがドラゴンに向けてライフルを撃つ。しかし魔法陣で塞がれてしまう。
ドラゴンの顔が目前に迫る。
「ひっ!」
アンジュは反射的に目を瞑る。
その刹那、アンジュの脳裏に様々なものが浮かぶ。
夢で見た血塗れのゾーラ隊長。
自分のことをノーマだと罵る学友。
戦って死ねと言ったジル司令。
自分が逃亡しようとしたせいで死んでしまったココとミランダ。
自分が組み付いたせいで撃ち落とされたメビウスとナオミ。
様々な出来事が脳裏をよぎった。
「いっ・・・いや・・・いや・・・」
ロッカールームでのメビウスの一言を思い出す。
「後悔する生き方だけはするな」
母ソフィアの最後の言葉が脳裏をよぎる。
「生きなさい・・・アンジュリーゼ」
「イヤァァァァァァ!」
悲鳴と共にアンジュの中の何かが外れた。
額から流れた血が指輪に付着した。
するとアンジュの指輪が光った。
そしてヴィルキスもそれに応えるかの様に光りだした。
ヴィルキスはその姿を人型へと変えた。
「!?」
サリア達は驚く。
ジル司令は司令室から黙ってそれを見ていた。
「死にたくない・・・死にたくない・・・死にたくない!!」
アンジュはそう言うとライフルをドラゴンに向けて発射した。
それらは魔法陣で防がれた。
ドラゴンはウロコをヴィルキスに向けて放つ。
しかし、それらは全て斬り落とされた。
次の瞬間には、ヴィルキスはドラゴン目がけて加速した。
「おっ・・・お前が・・・お前が!」
ヴィルキスはドラゴンの喉元に剣を突き刺した。
ドラゴンは唸り声を上げる。
「お前が死ねぇぇ!!!」
ヴィルキスは凍結バレットを傷口に打ち込んだ。
すると傷口から氷の柱が現れた。
それは瞬く間にドラゴンの身体に広がっていった。ドラゴンは海面へと落ちた。落ちた場所を中心に海面が氷原に変わっていった。
「はっはは・・・あはっ・・・・あははは・・・」
涙を流しながらアンジュはなぜか笑い出した。
アンジュにも理由がわからない。
「こんな感じ・・・知らない・・・」
(昂ぶってんじゃねぇか)
ゾーラ隊長の言葉を思い出す。
「違う・・・!こんなの私じゃない!殺してでも生きたいだなんて・・・そんな・・・汚くて!・・・浅ましくて!・・・身勝手な!・・・」
「それがノーマだ・・・」
アンジュの耳にゾーラ隊長の声が聞こえた。
それは幻聴だったのかもしれないが、アンジュの耳にはたしかに聞こえた。
「うっ・・・うっ・・・くっ・・・うっ・・・あっ・・・うあああああああ・・・ああっ・・・うああああ!」
アンジュは泣いた。それを彼女達はただただ黙って見ていた。
ジル司令は横を向いた。その表情には満足な笑みが浮かんでいた。
そしてサリアは現状を思い出す。
「はっ!各機!ドラゴンの殲滅は完了した!これよりメビウス機の援護に向かう!」
そう、メビウスだ。彼は例の機体。彼の戦っていた敵、ブラック・ドグマの機体を引き離すために、単身で五機を相手にしているのだ。
(メビウス!大丈夫だよね!?)
ナオミは心の中でメビウスの無事を祈った。
ヴィルキスが覚醒する少し前。
メビウスは1対5というハンディ戦をしていた。
そして徐々にだが追い詰められていった。
「くそ!こいつら!連携がなされてやがる!」
後ろの三機がビーム砲で攻撃をする。そして前の二機はシールドを展開する。その戦法に対抗できるものがない。
例のコンバットパターンもたとえシールドを解除出来たとしても、突っ込んでいく盤面で間違いなく真っ正面からビーム砲が来るのが目に見えていたため、使用は極力控えていた。
そしてメビウスの心配は他にもあった。
それは出血だ。
彼は前の戦闘での怪我は決して完治してなどいないのだ。
出血に目が眩んだ。一瞬視界がぼやける。
無理な操縦もしているため、身体の所々から血は流れ出ている。
だからといって敵は待ってなどくれはしない。
ビーム砲が放たれた。制限時間があるとわかった以上、無闇なアイ・フィールドの展開はできない。命中する直前に発動させ、攻撃が終わった直後に解除する。
この防戦の繰り返しであった。
(ヤベェ、そろそろ体がもたねぇ)
こうなっては前の戦闘でやった180mm砲の零距離射撃も攻撃方法の一つに加えるかを考えた。
その時モニターに通信が入った。
サリア達だ。
どうやらドラゴン達を殲滅したらしく、こちらの援護に来るらしい。
(まずい!)
メビウスは内心焦った。
今この状況で彼女達が来ても間違いなく状況は変わらないことは目に見えていた。一歩間違えば死人がでる。
ビーム砲が飛んできた。
その時視界が絡む。
出血量が危険ゾーンに到達したのだろうか。
アイ・フィールドは間に合わず、ビームが機体に当たる。
「がはっ!」
口から血が出た。意識が朦朧とする。
頭の片隅で自分が死ぬ事を理解した。
(俺が死ぬ?俺が死んだら、なぜこの世界に俺が来たのかが永遠にわからなくなる。
俺が死ぬ?俺が死んだらこいつらはどうする。第一中隊がどうにかするのか?いや、間違いなく死人がでる)
(人が・・・仲間が・・・死ぬ?)
前の戦闘の事を思い出す。目の前でココとミランダがビーム砲によって撃たれた。俺はそれを助けてやれなかった。
夢での出来事を思い出す。ココとミランダが自分の手からすり抜け、崖へと落ちていく夢を。俺は手を掴んでいながら助けてやれなかった。
ナオミの言葉を思い出す。
「この機体で私は、仲間を守ってみせる」
「・・・もんか」
メビウスは呟く。そして次の瞬間、叫ぶように言う。
「死ぬもんか!死なせるもんか!!死なせてたまるもんかぁ!!!」
次の瞬間モニターにある文字が表示された。
その文字を見るのは2度目であった。
《INSTALL FANG SYSTEM》
それはファングシステムモニターだった。
「へっ!やっと機嫌なおしたか!」
手がモニターへと伸びる。こいつの使い方が分かる。前回の時と同じだ。
モニターには《COMPLETE》と表示された。
その瞬間、脚部から8つの牙が飛び出した。それらは空中で静止していたが、次の瞬間にはそれらは例の機体目掛けて一斉に向かっていった。ビームを放ちながら接近していく。
当然機体はシールドを張った。しかしビームはシールドを破壊した。そして牙本体は更に別格の破壊力だった。シールドを突破したかと思うと、腹部に風穴を開け、その後機体の四肢を削ぎ落とした。
いかに戦略が有効でも、その戦略以上の武器が持ち出されると、その戦略に、もはや意味などなくなるのだ。
「おい!あれって!」「間違いねぇ!あの装備!映像で見た100体狩りの時にも使われていたものだ!」「うっひょー!かっちょいいー!」
どうやら第一中隊が来たらしい。第一中隊はファングに驚いていた。
その牙は残りの機体にも飛んで行った。機体は今度は撃ち墜とそうとビーム砲を撃ってくる。しかしそもそもが小さい武装かつ、機動性も抜群なそれらにその行為はなんの意味もなかった。
まずビームが飛んでくる。それらによって機体にダメージが与えられる。そして次の瞬間、その牙達は機体腹部を貫いた。腹部には穴が空いた。その後背後から機体の四肢をそれぞれ2個づつ別れて削ぎ落とす
そしてトドメと言わんばかりに首を削ぎ落とした。
「すっすごい」「圧倒的じゃない!」
第一中隊は援護に来たのだが、そんな事忘れ目の前のその光景に目が釘付けだった。
牙達はそのペースで一機、また一機と撃墜していった。残りは後一機だった。
「後一機!」
ファング達は最後の一機めがけて飛んで行った。
当然機体はシールドを貼る。シールドを貼っても、もはや無意味なのに貼ってしまうのは反射的なのか。ファング達はシールドを突破すると機体の胸の部分を貫き、中の機械を抉り出す。機体は火花を放っていたが、すぐに爆散した。
戦うべき敵が全部消えたため、全てのファングは脚部へと収納された。
「やっと・・・終わったか・・・」
メビウスはそう呟くと、口の血を手で拭った。
「諸君、ご苦労だった」
通信が入った。モニターを見るとジル司令からだった。
「全機アルゼナルに帰還しろ」
「イエス!マム!」
そう言って皆、アルゼナルへ進路を取った。アンジュもそこへと向かった。
メビウスはモニターを見る。そこには前回とは違い、ファングシステムのモニターがアンロックされていた。
(お前もこれから力を貸してくれるんだな。よろしく頼むぜ、ファング、いや、フェニックス)
メビウスは心の中でそう呟いた。
しかし今回の戦いでメビウスは一つだけ気づいていない事があった。
それはアンジュのヴィルキスが覚醒した時、フェニックスのモニターに謎の文字が浮かんだのを。その文字は直ぐに消えた。
その事に誰も気づいてはいなかった。
遂にアンジュとヴィルキスが覚醒しました!
ファングシステムも解禁できました!
タイトルは本来ならフェニックスも含める予定でしたが、あまりに長過ぎるのと、ネタバレを多少防ぐためにヴィルキスだけにしました。
そして最後に少しだけ今後の展開に絡みそうな不安を仰いで見ました。
果たして今後どのようになっていくのでしょうか!