クロスアンジュ ノーマの少女達と一人の少年が出会った 作:クロスボーンズ
これまでの経緯を時間をつけて説明しよう。
昨日15時 ナオミ、メビウスに接触(第1話)
今日9時 メビウス、目がさめる(第2話)
今日10時、メビウス、発着デッキへ着く(第3話)
今日 11時、メビウス 取り調べ室へ(第4話)
今日13時ごろ メビウス、フェニックスでテストへ(第5話)
なお、今回は多少のご都合主義設定を使わせてもらいました。
アルゼナルでは、警報が鳴り響いていた。
「シンギュラー反応確認!総員!第一戦闘配備!繰り返す!総員!第一戦闘配備!」
「第一中隊は発進準備に!第二、第三中隊もいつでも出れるように待機してください!」
各員が慌ただしく動いているなか、ジル司令はある中隊のところへと到着した。
「全員集まったか」
「司令官に敬礼!」
第一中隊の隊長であるゾーラの掛け声のもと、第一中隊の全員がジル司令に敬礼をした。
「今回のミッションの内容はドラゴンの殲滅だ」
ドラゴンの殲滅。それはただドラゴンを殲滅させるミッションだ。
「ジル司令。今回の戦闘中域にはテスト中のメイルライダーがいると聞きましたが本当ですか?」
「確かにそのメイルライダーはテスト中だが、おそらく即戦力にはなるだろう。そのメイルライダーと協力してドラゴン殲滅にあたれ!」
「イエス・マム!」
全員がそう言い終わると、それぞれのパラメイルに搭乗していった。
そして、カタパルトへと運ばれていった。
(援軍は送っておいた。だが、間に合うか・・・)
今回の戦闘中域は、フェニックスからしたら4.5分程度でついたが、データによると、実際のパラメイルでは、その倍近くかかるらしい。果たして、彼女達が着くまで、持ちこたえられるのか。
(あとはあいつの腕次第か、最悪の場合、機体だけでも回収させるか)
ジル司令は色々と思いながら、司令室へと向かって歩みを進めていった。
第一中隊がそれぞれのパラメイルに搭乗した頃、こちらでは、激戦が繰り広げられていた。
「くそ!数の暴力ってのはやっぱし覆し難い!」
こちらではフェニックスのメイルライダーメビウスがドラゴンと戦闘していた。
先ほど10匹ほど倒したが、それでも数的にはまだまだ不利であった。
しかし、ここで背中を見せれば間違いなくレーザーの一斉掃射をもらうと理解できていたため、背中を見せれないでいた。
しかし、彼はあることを狙っていた。ただ闇雲にドラゴンに向かっては斬りつけているわけではない。
そしてそのタイミングがきた。フェニックスを後ろから追いかけるスクーナー級が10数匹ほど、まとまった時があった。
「今だ!」
彼はそういうと、右肩に背負っていたバスターを素早く取り出し、ドラゴンへ向けて放った。バスターからはサーベルと同じように、赤い粒子が放たれた。それらは固まっていたドラゴンへ向かって一直線に放たれ、それ直撃したドラゴン達は、海面下へと落ちて行くだけだった。
敵の数も半分くらいにまで減った。
(この調子なら・・・いける!)
この調子で一気に残りを蹴散らそうとした時だった。
「え?」
目の前で再び穴が開いたのだ。
(もしかしてドラゴンの奴ら、帰るのか?)
そのような期待が芽生えた。
しかしモニターから入った通信により、それは絶望へと変わった。
「新たなシンギュラー反応を確認!ドラゴン確認!数、スクーナー級48!ガレオン級1!来ます!」
耳を疑った、通信の答えが指し示す内容、その答えは明確だった。
「・・・まじかよ!」
1対51という絶望的な条件の中、なんとか25にまで持ち込めたのに、結果的に1対100という最初の数の倍に近い数と戦わなければならなくなってしまった!
メビウスの心配はそれだけではなかった。彼は戦闘中に、何度かドラゴンの親玉と思われるガレオン級に戦闘を仕掛けてみた。しかし、シールドの一種なのか、謎の防御壁が出現してダメージがイマイチ通らない。
そんな奴がもう1匹増えた。しかも子分を48匹連れてきた。
(・・・勘弁してくれ・・・)
今更ながら自分の現状を嘆きたくなった。
しかしメビウスに嘆いているははなかった。穴からドラゴンが出てきた直後に、また高粒子バスターをぶち込んだ。散開されると間違いなくさっきと同じことの繰り返しになる。そうなると今度こそ数の暴力に屈することになるだろう。
しかしこの咄嗟の判断が良かったのか、増援のスクーナー級は、かなりの数が減らせた。
しかし、それでも楽観的な考えは持てない。なぜなら、例のガレオン級はほぼ無傷なのだ。
数で言うならばスクーナー級が25匹いた。それに増援の18匹が加わった。ガレオン級に関しては、丸々もう1匹が加わった。
1対45。その数字は、最初に出会った数よりは減ってはいた。しかし、敵の質に関してはグンと跳ね上がっていた。
残っていたスクーナー級のうち何体かが攻めてきた。しかもバラバラにだ。
(これじゃ高粒子バスターが使えねぇ)
高粒子バスターの弱点は、打った反動が大きいということ。おそらく一桁程度の敵の群れに撃っても、そのスキにバラバラな方角から攻められるだろう。
メビウスはバスターを右肩に背負うと、再び、サーベルを手にした。
サーベルからは、赤い粒子が放たれている。
近づいてきた奴にこちらから加速し接近して、どんどん叩き斬る。
敵の数が残り20をきったころだ。
メビウスは再び、ガレオン級に接近した。
バスターがダメなら、サーベルで脳天を貫く考えだった。
しかし、それは甘い考えだった。
例のシールドは、サーベルさえ防いでしまった。
暫くは互いにぶつかり合っていたが、やがて、数匹のスクーナー級が攻めてきたため、ガレオン級から離れ、そのスクーナー級と相手をした。
サーベルがスクーナー級の体を貫いた時だった。
視界の片隅に、さっきとは別のガレオン級が、レーザーを放つ動作をしていた。今の自分は、サーベルを引き抜いた硬直で直ぐには動けなかった。
ガレオン級が、こちらにレーザーを放ってきた。今の自分は動けない。回避行動がとれない。
「これまでか・・・」
メビウスは反射的に顔を守るために左手を前に出し、目を閉じた。
「・・・?」
違和感に気づいたのは直ぐだった。
「・・・?衝撃が・・・来ない?」
恐る恐る目を開けた。モニターから映し出されていた外の光景。それにメビウスは驚いた。
ガレオン級のレーザーが、目の前で逸れていたのだ。
「なにが・・・起きたんだ?」
するとモニターから何かの文字が映し出されていた。
モニターを確認するとそこには。
《 左腕 I FIELD 展開 》
《 INSTALL FANG SYSTEM 》
(アイフィールド!?ファングシステム!?)
その言葉にメビウスは混乱した。一体何なんだこれは!?
落ち着いて思考を整理する。
少なくても一つだけ分かる事がある。
もしこのアイフィールドが無かったら自分は死んでいたということ。
そしてこの場を切り抜けるには、これらがの力が必要だということ。
ガレオン級はご自慢のレーザーが塞がれたことに、慌てふためいているのか、見るからにあたふたしていた。
「今なら・・・やれる!」
そう思い、メビウスはギアを最大まで上げた。一気にガレオン級に接近した。そしてサーベルで貫こうとした。しかしそれは例のシールドで塞がれていた。
(思った通りだ!)
ガレオン級は、この間は動いていない。恐らくシールドを張ると動けないのだろう。
メビウスはこの時モニターのファングシステムをいじっていた。
一体これがなんなのかはわからない。なぜ急に現れたのかもだ。
しかしこれだけは言える。
(自分は、これを知っている!なぜ知っているのかはわからない。だが、身体が自然と動く。このシステムを使うために)
モニターには《COMPLETE》と表示された。
その瞬間、フェニックスの脚部から何かが8つ飛び出してきた、それらは空中で静止していた。そして次の瞬間には、それらが一斉に敵に襲いかかった。スクーナー級の何匹かは避けるが、後ろからブーメランのように戻ってきくると、それはスクーナー級の体を引き裂いた。
スクーナー級は全滅した。
「残るは!」
そう言うとメビウスはガレオン級にまた接近していった。ガレオン級はサーベルを防ごうとシールドを張る。
狙い通りだった。
シールドを張ったため、ガレオン級と鍔迫り合いになっていた時、後ろからのファングが、ガレオン級を貫いた。8つのファングが全てだ。しかも、赤い粒子を放ちながら近づいてきていた。
「後1体!」
メビウスはフェニックスをウイングモードにさせた。そして機体を反転させ、もう一体のガレオン級に迫っていった。ガレオン級はこちらにレーザーを放ってきた。だが、先程防げることがわかっていた以上、それはなんの恐怖でもなかった。モニターに触れ、アイフィールドを展開させた。レーザーはフィールドにぶつかりそのまま逸れていった。
一気に距離を詰めた。レーザーを放っていたせいか今度はシールドを張ることさえできなくなっていた。ファイティングモードに変形して、直ぐにサーベルを抜いて、ガレオン級に刺した。
ベチャ!!
サーベルはガレオン級の喉元を貫き、その血がフェニックスに降り注ぐ。そしてトドメと言わんばかりに、ファング達はガレオン級の体を貫いた。
ガレオン級は唸り声をあげながら落ちていった。
敵がいなくなったためか、ファングは脚部に自動で収納された。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」
終わった、戦えた、戦い抜いた。生き残れた。
メビウスは今、生きていると言う実感が湧いた。
さっきまではあまりに理不尽な命のやり取りをしていた分。今、彼の感じている実感はとてつもないものだった。
「・・・おいっ!・・・おい!そこのパラメイル!」
気がつくと通信が入っていた。モニターを見る。
相手は見たことがない金髪の人だった。
「ドラゴンの攻撃によく持ちこたえたな。安心しな、後は私らがを片付けてやるよ」
「司令室!こちらゾーラだ!戦闘エリアに突入した。ドラゴンの残存数はどれくらいだ!?」
しかし司令室からは答えがない。
「?おい!?司令室!?聞こえないのか!?」
「えっ?」
オペレーターの少女が反応する。
「だから、ドラゴンの残りの数だよ」
「・・・ドラゴンは・・・全て倒されました」
「・・・・・・はぁ!?」
その答えにゾーラ以外の他の第一中隊のメンバーも声を上げて驚く。
「全部倒されたって・・・誰にだよ!」
「レーダーが騙されてるんじゃないの?」
茶髪の少女と水色の髪の少女が驚いている。
「みんな!下を見て!」
ピンク髪の人にそう言われて、第一中隊のみんなが下を見た。
そこには、スクーナー級の死体とガレオン級の死体が散らばっていた。そして、その近くの海は、少しだけ、赤く染まっていた。
「ウォォォォォ!これはすごーい!」
ピンクと赤の混じったようなの髪の少女がおどろいた口調で驚いていた。
「・・・まさかこれ、あんたが1人で相手したのか!?全部!?」
濃い赤髪のツインテールの少女が驚いた風に聞いてきた。
「ねぇ!?どうなの!?」
今度は青紫のツインテールの少女が問いかけてきた。
「落ち着きな!」
ゾーラの一言に第一中隊が静まる。
「ドラゴンがいないんならここに用はないね!第一中隊、帰還するよ!」
「イエス・マム!」
「あんたもどうせ戻るんだろう。一緒に来な」
やっと気持ちが少し落ち着き、モニターに触れ、返事をする。
「イエス・マム!」
「ははっ!なかなか元気がいいじゃない・・・」
突然第一中隊全員が機体の動きを止めた。
皆、ただただモニターを見つめていた。
「・・・・・・おとこー!!!???」
第一中隊の全員がはもる様にそう言ってきた。
司令室では、みな驚きで、開いた口が塞がらない状態であった。
これには流石のジル司令もただただ驚いていた。
フェニックスの機体データは司令室に送られていたが、結果的に数値はとんでもないものだった。
「ねぇ、パメラ?あなたどこまで意識あった?」
「・・・フェニックスのモニターに文字が浮かぶまで。」
「二人とも?大丈夫?」
オペレーターの少女達は皆放心状態に近かった。
一方ジルは、タバコをふかしていた。もっもと、驚きが勝っているのか、タバコに火が付いていないのに気づかずに、吸っていた。
「なぁジャスミン」
ジルは隣にいるバンダナを巻いた女性に話しかけた。
「・・・なんだい?」
「今回の燃料費だけど、無しにしてやってくれないか?」
「そりゃ難しい話だね」
ジルは「やはりな」と言うような顔をした。
メイルライダーは自分で稼いだ金で、弾や燃料などを購入する。それが決まりであった。
だが今回の件は余りにもイレギュラー過ぎた。
第一中隊が到着するまでにドラゴンを殲滅した。
10分以内にドラゴン系100体を倒したという事だ。
しかもガレオン級が2体もいた。単純な100体を倒すよりも難しい。
それを一人でやってのけた。機体が良いだけじゃない。
彼はその機体の良さを全力で活かせていたのだ。
第一中隊からしてみれば、今日の出撃はただの燃料費の無駄遣いもいいところであった。
「まぁ確かに燃料費代の代わりになるような凄いもん見せて貰ったし。わかったよ。今回だけだよ」
最終的にジャスミンも、納得してくれた。
ジル司令はここで、タバコに火が付いていないのをようやく認識し火をつけた。
(フェニックスにメビウス・・・か。これはとんでもない拾い物をしたかもな)
ジル司令は内心でほくそ笑む。
そこにエマ監察官が何食わぬ顔で入ってきた。
「エマ監察官、お暇ならすごいものをお見せしますよ。」
「暇じゃないです。これからミスルギ皇国で第一皇女 アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギの洗礼の儀を見るんです」
そう言うとエマ監察官はマナを展開した。
しかし、しばらくしてエマ監察官の顔色が変わった。
「どうしたんだい?」
ジャスミンが不思議そうに尋ねてきた。
「・・・第一皇女 アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギが・・・ノーマだと、兄によって公表されました・・・」
その出来事を聞き、司令室はざわめいた。
そんな中、一人ジル司令だけが驚きつつも、内心は冷静だった。
(皇族から・・・ノーマだと。ふっ。風は私に向いているということか)
今回新たに2つの装備を手に入れたフェニックスですが、残念ながらどちらかは暫くの間封印という形をとらせていただきます。
ちなみに燃料費のくだりに関しては書いてる最中に思ったので付け加えました。
そしてついに次回!あの人の前世?の人がアルゼナルにやってくる!