クロスアンジュ ノーマの少女達と一人の少年が出会った   作:クロスボーンズ

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予約投稿してみました。

前回と今回はこれまで本編で語られたフラグ回収のために若干御都合主義っぽくなった気がする。

前回のあらすじ!

まだメビウスでもシグでもなかった頃、少年には孤児仲間がいた。

ロイやミィだ。

少年は疑わなかった。この生活が長く続くことを。

己を無力さを知るまでは・・・




第73話 悪夢/ナイトメア 後編

 

 

ネロと出会ってから一年程度が経っていた。

 

少年は今日もいつもの様に食料を調達しに街へと行っていた。

 

そしてアジトへと帰って来た。

 

「おーいみんな。見てみろよ!すごいぜ!」

 

少年は皆に今日の戦果を見せようとした。

 

「・・・みんな?」

 

異変に気がついた。雰囲気が妙に静かだった。

いや、静かすぎる

 

「みんな?どうした?」

 

少し奥へと進む。皆はいた。地面に寝っ転がっていた。

 

「なんだ寝てたのか」

 

少年は笑った。

 

「おい。起きろよみんな!すげぇものが・・・」

 

「・・・みんな?なにしてんだ?」

 

少年は新たな異変に気がついた。

 

寝ていた地面の周りには赤い液体が流れていた。

 

少年の中にある想像が浮かぶ。嫌な想像が

 

「・・・ははっ!お前ら、トマトでも潰したのかよ」

(俺は信じない)

 

乾いた笑みが浮かんだ。嫌な予感が燻り出した。

 

「全く。俺を驚かせようとしてもそうはいかねぇよ」

(あれはきっと幻覚だ)

 

足が寝ている一人に向かって歩き出す。

 

近づきたくない。見たら戻れなくなる。だが足は止まらなかった。

 

「見ろよこれ!こんな沢山の食料がありゃ当分は困らねぇぞ!」

(嫌だ嫌だ嫌だ!)

 

少年は袋を寝ている人に見せた。

 

「・・・ふざけるなよ!貴重な食いもん粗末にして!」

(お願いだから返事をしてくれ!)

 

寝ている存在をひっくり返した。顔にビンタの一つでも入れてやろうとして。

 

そして見たのだ。その存在の目は虚ろであった。

そして腹は赤く染まっていた。

 

その子は死んでいた。

 

「頼む!返事をしてくれ!!」

 

「・・・・・・・・」

 

その子だけではなかった。寝ている孤児達は皆死んでいた。

 

「なぁ!何があった!生き残ってる奴は返事を

してくれぇ!!」

 

少年の叫びがその場に虚しく響いた。

 

すると奥で物音がした。慌てて音の方へと駆け寄る。

 

そこにはロイがいた。その奥ににはミィが泣きながら震えていた。

 

「ロイ!それにミィ!なぁ教えてくれ!一体何があった!?」

 

ロイはこちらを振り向いた。するとニタァと笑みを浮かべた。

 

そしてミィの方を振り返った。

 

ロイの右手は不自然な形をしていた。まるで熊の爪の様であった。

 

「まさか!!ロイ!やめろ!」

 

少年はロイを羽交い締めした。だがロイは凄い力でそれを振りほどいた。

 

少年の身体は瓦礫の山に突っ込んだ。その力はとてもじゃないが人間離れしていた。

 

確信した。ロイは何者かに操られている。

 

「どうすりゃいい・・・どうすりゃ!」

 

少年は必死に考えていた。

 

【コトン】

 

その時足元に何かが転がってきた。

 

それはちょっとだけ太い木の棒であった。

 

無意識のうちにそれを掴んだ。

 

「やめろロイ!!」

 

次の瞬間には、少年はロイの後頭部をそれで殴りつけた。意識を失わせ様とした。

 

【ガン】

 

「・・・えっ?」

 

次の瞬間、音がした。それはまるで重たい何かで

殴りつけた様な音であった。

 

更に手には冷たい感触が伝わっていた。

 

恐る恐る手に持っている物を見る。

 

 

 

・・・先程まで木の棒であったはずのそれは鉄パイプになっていた。

 

手から鉄パイプが滑り落ちる。それは乾いた音を

たて、地面を転がっていった。

 

目の前のロイは動かなくなっていた。彼は最初から死んでいたのだ。それが何者かによって操られていたのだ。

 

だがそれでも少年の心に深い傷を作るのには十分であった。

 

「・・・ミィ!ミィ!大丈夫か!?」

 

メビウスは前を見た。ミィは相変わらず蹲り震えていた。

 

生きてる。ミィはまだ生きてる。

 

一歩。また一歩とミィに近づく。

 

 

 

次の瞬間、ミィの身体を鋭い何かが貫いた。ミィの身体が血が噴き出た。少年の身体はその血を浴びた。

 

ミィの身体が宙に浮かんだ。少年はその先を見た。

 

目の前にはビーストがいた。その名はノスフェルス。特徴は両手部分にある鋭い爪の様な。その爪の部分にミィの身体はあった。

 

次の瞬間。ノスフェルスはミィの身体を口に放り込んだ。

 

そしてその光景を少年は見ていた。

 

「そんな・・・ミィ・・・

ミィィィィィィィ!!!

 

少年は泣き叫んだ。

 

目の前のノスフェルスは笑い声の様な鳴き声をあげていた。まるで目の前の少年の行動が滑稽で、おかしくて、自分の思惑通りの動きを取った事が可笑しいかの様に笑った。

 

「何が・・・何がおかしいぃぃぃぃ!!!

 

少年はフェニックスに乗り込んだ。装備はサーベルとバスターだけであった。

 

少年は機体に乗り込みノスフェルに殴りかかる。

 

「お前は!お前は!お前はぁ!!!」

 

怒りに任せて戦っていた。サーベルでノスフェルの両腕を斬り落とす。

 

だがノスフェルは死んでなかった。

 

それどころか先程より高らかに笑い声の様な鳴き声を発していた。

 

その鳴き声がメビウスをより刺激する。

 

「黙れぇ!!!」

 

ノスフェルの脳天を突き刺した。それによってやっと笑い声が収まった。だが少年は止まらなかった。必死に胸をサーベルで突き刺していた。

 

完全に復讐に囚われていた。

 

すると背後から何者かに攻撃された。振り返るとそこにはビーストがいた。その見た目は腹に顔が付いている異様な存在である。その名はガルベロス。

 

「お前もビーストか!」

 

バスターをガルベロス目掛けて放つ。それはガルベロスの火球で相殺された。

 

だが次の瞬間には爆風からフェニックスが現れた。

 

手にはサーベルが握られていた。

 

「死ねぇぇ!!」

 

ガルベロスの体はサーベルをすり抜けた。

 

「なっ!幻影!?」

 

それだけではない。先程倒したはずのノスフェルもそこにはいたのだ。

 

実はノスフェルは自己再生ができるのだ。

その器官は喉にある。

 

再びサーベルで斬り付けようとする。だがそれは鉤爪に防がれた。

 

そしてもう一つの鉤爪でフェニックスを切り裂く。

 

機体の装甲は剥がされた。

 

「なめるなぁぁぁ!!」

 

フェニックスのサーベルが喉元に直撃する。

 

その一撃は喉の再生器官諸共貫いた。

 

ノスフェルは断末魔をあげて死んだ。

 

「後はあいつ!」

 

ガルベロスに一気に接近した。火球などが直撃するも決して怯まなかった。

 

バスターを腹部の顔めがけて差し込む。

 

「死ねぇぇ!」

 

ガルベロスは爆発を起こした。今度は幻影ではなく実体に命中したらしい。

 

ガルベロスは爆発した。

 

その場にはフェニックスだけが残された。

 

「・・・やった。やったぜ・・・みんな・・・仇・・・うったぜ・・・」

 

少年は涙を流しながら呟いた。その呟きに反応するものは誰もいなかった。

 

「・・・なんだよ、この気分・・・」

 

復讐で戦い、その復讐を成し遂げた少年に残されたもの。

 

それは虚しさであった。

 

 

 

夜となった。街で盗ってきた食料は全て潰されていた。メビウスはノスフェルの肉を焼いて食べていた。

 

味は全くしなかった。もしかしたら味があったのかもしれないが、今の少年にはそんなもの感じ取る

余裕などなかった。

 

孤児グループの壊滅。生き残ったのは自分だけ。

もう一度探しては見たが、他の生存者はいなかった。

 

「なんなんだよ俺・・・フェニックス持ってるのに・・・誰も・・・助けてやれなかった・・・」

 

「仲間がむざむざ殺されて・・・何のための力だよ・・」

 

己の無力に絶望した。膝に涙が零れ落ちた。

 

「・・・なんで泣いてんだ俺。俺が、殺した様なものなのに・・・」

 

少年は思う。もし自分が街に食料調達などせずにここにいれば皆が助けられたのでは?

 

その気持ちが少年をより苦しめた。

 

「ウッ・・・ウワァァァァァァァ!!!」

 

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」

 

少年は死体に泣きつき、そして必死に謝り続けた。

 

涙も枯れ果てた頃、疲れたのか少年は眠った。

 

 

 

少年は夢を見ていた。少年の前にはロイとミィがいた。

 

(ロイ!ミィ!)

 

少年は二人に近づこうとする。

 

次の瞬間。二人の体が消えた。

 

「ロイ!?ミィ!?何処だよ・・・何処だよ!?」

 

必死に二人の名前を叫ぶ。返事は返ってこない。

 

「なんで・・・なんでだよ!」

 

少年はその場に泣き崩れた。

 

そんな時、目の前に何かが現れた。

 

それは自分と同じ顔をしていた。

 

「・・・なにこの感じ・・・」

 

次の瞬間、少年の意識は失われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・どうだ?彼の容態は?」

 

ZEUXIS基地内の医務室。あの後、ZEUXISがあの付近を調査しに来たのだ。そこで大量の死体と意識を失っていた少年を保護したのだ。

 

「酷く衰弱しています。それに脳波も弱っています」

 

ジェシカがワイズナーに報告する。

 

「まさかあんな凄惨な現場に生き残りがいたとは・・・」

 

ワイズナーが驚きの声を上げる。

 

すると医務室にネロ艦長が入ってきた。

 

「ネロ艦長。こちらがビースト反応を確認した現場での唯一の生存者です」

 

ネロ艦長はその顔を知っていた。あの日。家族が全員死んだ日に出会った少年であることを覚えていた。

 

すると少年が目を覚ました。

 

「気がついた?よかったぁ」

 

ジェシカが少年に優しく語りかける。

 

「・・・ここは?」

 

「大丈夫。安全な所だ。君は我々が保護してから

丸三日は眠っていた」

 

「なぁ。あの機体。君のか?」

 

ワイズナーがフェニックスについて尋ねる。するとネロ艦長が口を開いた。

 

「すまんが君達は席を外してくれたまえ」

 

ネロ艦長が二人に頼む。

 

「わかりました。では外で待っています」

 

そう言いワイズナーとアンリは医務室を後にした。

 

医務室にはネロ艦長とシグが残された。

 

「久しぶりだな。少年」

 

「・・・」

 

「あの場でなにがあった?」

 

「あの場?あぁ。ビーストが現れた場所か」

 

少年の発した言葉にネロ艦長が若干氷つく。その声はまるで生きている実感が全くなかった。

 

「一年程度前だな。君は私と出会っている。あの時君は仲間を助ける為に私と戦ったな」

 

「・・・俺に仲間なんていない」

 

その言葉にワイズナーは完全に凍りつく。

 

実は少年に異変が起きていた。もっとも、その異変を少年自身は気づいていなかったが。

 

仲間の死に悲しくなくなっていた。

 

実はあの夢を見ていた際、少年の中で人格が二つにわかれていたのだ。

 

そう。今の少年の人格は本編に出てきたシグである。

 

仲間を失い、悲しんでいた人格は、無意識のうちに封印された。

 

そうしなければ、少年の心が壊れてしまうから・・・

 

「・・・少し休んでいたまえ」

 

ネロ艦長はそう言うとその場を後にした。

 

部屋には少年だけが残された。

 

(・・・なんだこの感じ。何か・・・大事なことを忘れた風な・・・)

 

シグは心に空いた穴を気にしていた。

 

その頃ネロ艦長は壁を叩きつけていた。それにワイズナーとジェシカが驚く。

 

ネロ艦長は自分への激しい嫌悪感が込み上げていた。

 

(・・・私は・・・奪ってしまった。彼から仲間と・・・優しさを・・・)

 

一年程前の記憶が蘇る。

 

家族を奪われ、自分は優しさを捨てた。私はその事を憎んだ。そして今、自分の復讐の為に、今度は彼からそれらを奪い去ってしまった。

 

この出来事がネロ艦長を苦しめた。

 

やがてネロ艦長は医務室に戻った。

 

「君。自分の名前だが、わかるか?」

 

「知らん」

 

「そうか・・・とりあえずシグと呼ばせてもらう。よいか?」

 

「構わない」

 

「君のいた孤児グループは・・・壊滅した。シグ。君はこれからどうする?」

 

「・・・」

 

シグは直ぐにはその質問には答えなかった。だがやがて口を開いた。

 

「・・・貴方達はZEUXISですか?」

 

「そうだ」

 

「俺を・・・ここにいさせてくれませんか?」

 

その言葉にネロ艦長が驚く。

 

「ビーフトへの復讐でもするのかね?」

 

ネロ艦長が重い口調で尋ねる。

 

「復讐とは違います・・・ただ、人間同士で戦うくらいなら、あいつらと戦った方が世界の為だと思って・・・」

 

しばらくの間沈黙が続いた。

 

「・・・よろしい。君を歓迎するよ。よろしく頼む。シグ」

 

こうしてシグはZEUXISへと入った。

 

これがメビウスに起きたZEUXISに入る前の出来事であった。






これでメビウスの孤児グループ時代の出来事編は
おしまいです!

次回からは本編に戻ります。

久しぶりにビーストを出した様な気がする。

因みに木の棒から鉄パイプのくだりは、ガルベロスが見せた幻影と考えてください。

皆さんはジルには幸せになってほしいですか?

  • 幸せに生きてほしい。
  • 不幸せになってほしい。
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