ログ・ホライズン ~落ちた浮遊城アインクラッド~ 作:マスカルウィン
2章ではなく、外伝に近い形の2章に設定する事にしました。
というわけで今回はススキノに遠征している間置いていかれたシノンのお話です。
キリト達がススキノでの遠征中、アキバの街では。
「暇ね……」
シノンは空を見上げながらつぶやいた。
キリトとクラインは私に気をつかってか、私をアキバの街に留守番させたのだが。
正直なところ退屈で仕方が無い。
今日もこうやって空を見上げながら、のんびりと過ごしている。
とはいえ、やはり知り合いも無く、用事があるわけではないので暇なんですが。
エルダーテイルの世界に来て、殆どキリトと一緒に過ごしてきたので、他に知り合いなんて居るわけがないのだが――
「姉ちゃん、シノン姉ちゃん!」
そうやって空を見上げていると、知り合いが少ないはずのアキバの街で声をかけられた。
振り向くとそこには、武士の少年と巫女服を着た少女が居た。
「トウヤどうしたの?」
「シノン姉ちゃん暇してるんなら、一緒に冒険いかねーか? 直継師匠と一緒に色々教えてもらうつもりなんだ!」
「シノンさんすいません、トウヤが空を見上げてるシノンさん見つけて、急に走っていって……」
「気にしてないよミノリ、そうね私もこの世界の戦闘に慣れたいから、丁度良い」
「そっか! 30分後ログ・ホライズンのギルドホールに集合で!」
「わかったわ」
「無理言ってすいません、それじゃまたシノンさん」
用事が出来てしまった。
まぁ楽しめそうだからいいか、それにお姉ちゃんと呼ばれて慕われるのは嫌いじゃない。
20分後
ログ・ホライズンのギルドホールに行くと、アカツキがその場に居た。
「こんにちはアカツキ、アカツキも一緒に?」
「あぁ、ミノリとトウヤに頼まれてな。 シノンもか?」
「うん 大体同じ」
「そうか」
「ギルドはどう?」
「皆良くしてくれる」
「そっか」
アカツキと二人っきりになると、シノンではなく朝田詩乃として会話してしまう……素が出てしまいことがある。
見た目が幼いというのもあるのだろうが、近い年齢と言うのもあるのだろう。
それか朝田詩乃がリアルでは静かというのもあるのだろうか。
けどしかし私自身アカツキという女の子は嫌いではない、むしろ好意を抱いている。
そうこうしていると、5分が過ぎギルドホールから4人が現れた。
ミノリ、トウヤ、直継、アカツキ、シノン、シロエ。
このパーティーでミノリとトウヤの指導に当たるらしい。
「そういえばシロエさん今日は一緒なんですね」
「うん。 シノンが参加するって聞いてちょっと気になってね」
「何? 私に興味でもあるの?」
「うん。 まぁ色々聞いてみたい事もあるしね」
「主君はああいうタイプの女性が好みなのか……、そうなのか?」
「へぇ、シロエはシノンみたいなタイプの女性が好みだったのか。 むっつりと思っていたが意外にオープンだったのか!」
「え? いやいや、そうじゃないよ! アインクラッドのことか色々――」
「――へぇ、そうなんだ。 やっぱりシロエって私や、アカツキ、ミノリのような幼い容姿の子が好きなんだ?」
「そうなのか主君!」
「そうなんですかシロエさん!」
「いや、そうじゃなくて! そもそもやっぱりってなんだよシノン!」
直継が笑いながら先導し、その隣にトウヤは楽しそうに一歩一歩歩いている。
私はシロエ達の一歩前を歩きながら、恐らく三角関係の後ろの様子を見ている。
でもまぁ、三角程度ならまだ可愛いものよね。
キリトは何角って話よ。
でもうん、キリトはアスナ一筋だからね。
トウヤとミノリのレベルに近い狩場に到着し、改めてパーティーを組む。
今度は師弟システムを使ってだ。
レベルが一番低いミノリにあわせて、高いレベルのプレイヤーがレベルを合わせる。
使えるスキルは普通に使えるのだが、威力が全然違うので注意が必要とシロエからシノンに注意された。
「今回の目的は、トウヤとミノリのレベル上げと戦闘訓練もあるんだけど、親睦会も兼ねてるからね。 楽しくやろう」
シロエのぎこちない宣言に、ようやくシノンがこの場所に呼ばれた理由がわかった気がする。
知り合いの居ないこの世界で、シロエは気を使ってくれたのだ。
直継を見ると最初からわかっていたといった風な顔をしている。
アカツキは……表情無くこくこくと頷いている。
トウヤとミノリはこれから狩りという事なので、気合を入れているようだ。
「うーん、確かに弓系ビルドとしてのシノンはかなり優秀だし、そのままでもいいとは思うんだけど」
しばらく戦闘をした後、シノンの戦い方を見てシロエはつぶやいた。
丁度休憩を入れようと思っていたタイミングだったのか、シロエの呟きからなし崩しに休憩に入る。
「なによ? また口説くつもり?」
「口説くといえば間違いじゃないんだけど……」
「主君は大人しく年上っぽい女の子の方が好みなのか!」
「いやだから、アカツキさん? 言葉どおりに受け取ってほしくないんだけどね?」
こほんと一つシロエが咳をすると、解説を始めてくれた。
「シノンは超遠距離からのスナイプが得意みたいなんだけど、恐らく近距離の回避スキルも高いんじゃないかなーって思うんだよね見てる限り」
「へぇ、どうしてか聞いてもいい?」
「さっき後ろから攻撃された時の、回避テクニックかな。 僕達<<冒険者>>は基本的にモンスターの攻撃をよけるっていうのが苦手だから」
「あぁ、なるほどね」
基本的に遠距離戦しかしてないが、それでもGGO等ではやむ得ず近距離戦をする時がある。
――決してアイツの真似をして光剣を使おうと思った影響じゃない。
そもそも<<冒険者>>はモンスターと敵対するのに慣れてない気質がある。
SAO帰還者の人たちの戦いを見れば、シロエとかは驚くのではないだろうか。
「私たちにとっては並以下の回避スキルなんだけどね、私の場合はスナイパーだから集中力が高いから少しの時間はよけれるだけであって、前衛は脳筋に任せるわ」
主に、キリトやクラインの事を言う。
「そうですか、もったいないと思ってね」
「直継は攻撃を防御するタイプだし、アカツキなら私と同じ動きが出来るかもしれませんよ?」
軽くシノンがいうと、シロエを初めとする<<冒険者>>が驚いてシノンを見る。
「それってどういう事?」
「簡単な話です。 シロエ達がやっていたエルダーテイルでは目線はありましたか?」
「キャラクターの向きはあったけど目線……?」
「私達のやっていたゲームでは、いくつかシステム外スキルって言われる物があるのだけど、その中の一つが目線なんです」
「目線っていえば、俺がこうやってシロエを見る事をいうんだろ? それが何が大事なんだよ?」
「えーっとそうね……。 アカツキ直継を攻撃してみてくれる? 勿論威力が無い武器で」
「心得た」
「え、ちょおまっ!」
アカツキは二つ返事で頷くと、小太刀を取り出し直継を斬りつけた。
勿論キチンと約束を守っていたらしく、ダメージは少ししかない。
「アカツキはアサシンなんだぜ? そんな勢いのある攻撃急に出されても、回避も防御も出来ない祭りだぜ!」
その言葉に、シロエとトウヤは頷く。
今までのエルダーテイルの世界だと、ステータスの値によって回避が出来、盾を持っていれば防御が出来る。
それはシステム上絶対に起こりうる事で、即ちゲームだった頃のエルダーテイルだと、ボーっと突っ立っているだけでも敵の攻撃は避けれるのは避けれたし、盾を持っていれば防御も可能だった。
「じゃぁ直継、次はアカツキの目線を見て行動してみて、アカツキは好きなときに攻撃してみて」
「心得た」
すぐに攻撃するかなと思ったが、アカツキは一定時間おいてから直継に斬りかかった。
直継はそれを辛うじて剣で受け止めた。
それを見たシロエはなるほどと頷いた。
「さすがシロエ理解が早いわね」
「おぉ! なんだかわからないがちみっこの攻撃を受け止めれたぜ! これで最後までおぱ――」
言い終わる前にアカツキにけられて、直継は宙を舞う。
「つまり、どんな達人でも攻撃をする瞬間は敵のほうを向く、目線を向けるって事?」
「そう、これはモンスターとかにも該当する。 タゲが直継から私に移ったとしたら、目線は直継から私に向けるでしょう? その目線を利用すればなんとなく次の攻撃が予測する事ができるってわけ。 私も完全に実践で使えてるわけじゃないから……でも少しでも使えるようになるとかなり便利なスキルよ」
「……」
「システム的必中のスナイパーの射撃を、スコープ越しの目線だけで弾丸を斬るプレイヤーも居るのよ? 不可視の魔法の攻撃を斬るプレイヤーだって居るのよ。 そこまで出来るプレイヤーが居るなら、その真似事ぐらいって……何よ?」
直継のにやけた笑顔に不満そうな声を出してしまう。
「いーや、シノンも大変そうだなってな、 青春祭りだぜ!」
「何その言い方、またアカツキに蹴られたいの? アカツキお願いできる?」
「任せろ」
「ちょっっとまって!」
シロエは少し考えた間が合ってから、直継の言葉を理解したが、他のメンバーは頭にはてなマークを浮かべてるようだった。
「参謀、シノンをうちに引き込むのは無理そうだな」
「そう、だね。 口説くの失敗したみたい」
「まぁ仲間で居てくれるのなら問題ないんだけどな」
「うん、こういう関係でいてくれるほうがあってるのかもしれないね」
「ケット・シーだけに猫みたいに自由気ままってか?」
「そうかもしれない」
その後アカツキは目線を利用した回避、攻撃の仕方をなんとなく理解したようで、稀にモンスターの攻撃を視線だけで避けれるスキルを身につけた。
また攻撃に至っては、同じスキルを持っている相手に対して発揮できる、視界に入っていれば、目線を変えずに攻撃することが出来ると言った、面白い攻撃方法を思いついた。
思いついただけで成功率はどうしても2・3割程度で実践で使えるレベルではないとアカツキは嘆いていたが。
直継は防御に転用できないかとあれこれ頭で考えて実践をしているが、どうにも上手くいかないと頭を捻っていた。
この異世界に来てから、数回の戦闘をしたが防御に関しては体が勝手に動いてくれるという感じで意識的にここに防御する! というイメージがなかったからだ。
「でもまぁなんとなーくシノンの言いたい事はわかるんだけどなー」
と直継は笑顔で答えていたので、シノンはコツさえ掴めば何とかなるのではないか? と感じていた。
ミノリとトウヤにはまだ早いと判断したシロエは、目線の事は頭に入れてる程度でいいと説明し、今までどおりに狩りをしてもらった。
そんな中一番成長したのはシロエだとシノンは評価していた。
即ち、杖で着弾点を指すことなく意識した場所に魔法を放つ事が出来るようになったのだ。
杖で目標を指し、魔法を詠唱し撃つと言う動作の中に、途中で目標を変更できるという汎用性が生まれたと、シロエはシノンに語った。
SAOの世界では、この事をシステム外スキルという。
エルダーテイルでは、口伝と呼ばれるスキルに該当するのに気づいたのは、後の話だ。
帰路でシロエと話す機会があったので聞いてみた。
「ねぇシロエは、アカツキとミノリどっちの方が好きなの?」
シロエは飲み物を噴出した。
「シノン急に何!?」
「いや、明らかに二人共シロエに好意抱いてるでしょ? あっちにふらふらこっちにふらふらだと誰とも幸せにならないからと思って」
「それはまだ後回し……というわけには行かない程度には理解してるんだけどね」
「そっか。 まぁ二人を不幸にしたら怒るから」
「うぐっ……」
「まぁゆっくりと考えたらいいんじゃないかしら? あんまりゆっくりしすぎたら手遅れになるかもしれないけど」
シノンはトウヤ達に誘われる前みたいに空を見る。
澄み切った綺麗な青空だ。
「シノン姉ちゃん! まだキリト達帰ってこないんだろ? 一緒に飯食おうぜ!」
「トウヤ勝手にそんな事言っちゃ、ダメでしょ。 にゃん太さんの都合とか……」
「大丈夫だよミノリ。 班長にはシノンの事も連絡済だよ。 シノンさえ用事無ければ」
「わかったわよ。 ここで断ったら私が悪者みたいじゃない、お邪魔するわ」
「やったぜ! やっぱり人数多いほうが楽しいもんな! 今日は飯はなんだろうなー!」
そう言いながらトウヤは我先にと走ってログ・ホライズンのギルドホームに向かう。
ミノリはそれを追いかけて行った。
「新しい居場所……か」
そうつぶやきシノンはトウヤ達の後を追った。
シノンの喋り方と、朝田詩乃喋り方は若干違う気がする云々。
気のせいだったらすいません。
シノンって非常に書きにくい判明、書いていて一番楽しいキャラだったりします。
書きながら、姉ちゃんと呼ばれて照れくさそうな笑顔を見せているシノンを想像しながら書いていました。
別に私変態じゃないですよ? ✧*。◝(。╹▿╹。)◜✧*。
Q.システム外スキル?
A.SAOやALOプレイヤーが生き残るために編み出した技術のことを言う。
SAOで一番有名なシステム外スキルは、スイッチではないだろうか。
エルダーテイルの世界では口伝は強いスキルというイメージが強いが、手料理等も広い意味で、口伝に分類されるらしいので、システム外スキルは口伝に近い位置づけと個人的に解釈させていただきました。
次の話はクラインのお話→アインクラッドのお話を経て、合宿に繋げて行きたいと思っています。