ログ・ホライズン ~落ちた浮遊城アインクラッド~   作:マスカルウィン

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設定と、この話をサルベージできたので。


二十二話

 五十鈴が手信号を送ってくる。

 奥に敵が1グループ、後60秒ほど

 

 これもパーティープレイを前提で覚えてシステム外スキルだ。

 必要じゃないかもしれない、けど必要になる時がくるかもしれない。

 役割は頭に叩き込んである俺のやることは遊撃だ。

 前衛がピンチだったら前衛の、後衛が危なかったらセカンド盾として。

 

 こうやって仲間としてパーティーを組んで話し合ってダンジョンに挑むなんてSAOの時には無かったことだ。

 いや、階層攻略の時は話し合ったがあれは何かが違う気がする。

 自分のステータスなんて公開するものでもなかったし、むしろ公開するべきものではななかった。

 周りを疑って、アスナと一緒になるまではそんな戦い方をずっと続けてたきがする。

 ようは忘れていたんだ。

 PCでキーボードを操作しながら戦って即席のパーティーだろうがいやな部分があったら言い合って、次の日同じパーティーで挑んだり、街に座り込んで戦わずずっとチャットしてた時代があった事を。

 あの時とは違うのは、操作しているのはキーボードではなく、おれ自身の体と言う事、

 正直なところ、最近ではVRゲームの自分が『なんとかすればなんとかなる』とずっと思っていたので、こういう体験は本当に懐かしい。

 

 五十鈴の合図ににトウヤが頷き、岩陰からスケルトンに向かって走り出した。

 

「お前らの相手はこの俺だ! 飯綱斬り!」

 

 勢い良く飛び出したトウヤは、敵グループ全体にヘイトをばら撒く為遠距離攻撃を行う。

 トウヤ曰く、ダメージは全然だけど、ヘイトを集めるにはうってつけの遠距離範囲スキルだそうだ。

 守護剣士のアンカーハウルより射程距離は長いが、範囲は狭い、しかしこういう洞窟の通路での戦闘ではそれでも十分。

 トウヤは全員が付いてきてるのを確認しつつ、後方に後退、俺達が居るところに走ってくる。

 無論敵も追いかけてくるし、弓スケルトンは弓を撃ってくる。

 飛んでくる矢は予めミノリがトウヤに掛けておいた禊の障壁でカバー、安全地帯付近までトウヤは敵を誘い込むと、射程距離外になったのか、弓スケルトンがトウヤを追いかけて隠れていた私達の前までやってくる。

 

「セララさんはトウヤのHP管理! ルディさんと五十鈴さんは弓を! 葵さんは弓のヘイトを!!」

 

 ミノリの言葉を受ける前に、行動を開始する。

 ダンジョンに入る前に散々話し合ったフォーメーションの一つだ、初めての試みだが、練習も重ねた。

 

「お前の相手はこっちだ! タウンティングシャウト!!」

 

 敵一体のヘイトを集めるスキルを使い、弓をこちら側に向ける。

 これでトウヤは近接型の敵だけを相手をすればいい、辛いかもしれないが、これが一番安全な立ち回りだ。

 そして俺の仕事は、弓の攻撃をいなしながら、弓を即効で倒し、直ぐにトウヤの援護に向かう。

 

「弓スケルトン、お前の相手は俺だ」

 

 弓に狙われると言うことは、矢を撃たれるとう事だ。

 骨の空洞に怪しく光る目がじろりと俺の左胸を見つめた。

 この葵の筋力では、矢を叩き落すことは出来ない、だが……、矢を防ぐ手段はある。

 

 カン。

 

 軽い音が洞窟に響く、放れた矢は敵の狙い通り俺の左胸を撃った。

 そこに大剣がなければだが。

 

「ルディ!」

「わかってるさ! フラッシュニードル!!」

 

 ルディの攻撃にあわせて、五十鈴の特技『マエストロエコー』が発動し、魔法をコピーして発動する。

 その上昇するヘイトは臆病者のフーガでヘイト管理をし、近接スケルトンを五十鈴やルディの方に行かないように調整する。

 

「敵視認0! 遊撃隊はそのまま前衛の援護を!」

 

 ミノリの周囲警戒の報告を受け、もてる全力でトウヤの元に急ぐ。

 

「待った葵さん! 武士の挑戦を数回済み! ルディ兄!」

「僕のソーサーラーの魔法の出番と言うことだな! オーブ・オブ・ラーヴァ!」

 

 火球が次々と敵に襲い掛かりその威力を持って、すべての敵を殲滅できた。

 ほんの数分の戦闘、しかし初めて、そう初めてパーティー戦での勝利であった。

 

 

「いやー、上手く行ってよかった、ダンジョン攻略も順調だし、もう少しでボスなんだろう?」

「はい、事前に貰っていた地図によるともう直ぐボス戦になります、障壁貼りなおしておきますね」

 

 最初の戦闘後、順調にダンジョンを攻略し、ボス部屋の間近まで来た。

 所謂ボス前の安全地帯である。

 何気なくメニューを開くと、特技アイコンが二重に…ぶれて見えたような気がした。

 

「どうしたミス葵? なにか問題でもあるのか?」

「いやなんでもないよ、ルディ」

 

 ステータスに以上はない、なにか変なデバフがかかってるわけではない、なら問題ないはずだ。

 ルディと話した後、再度特技アイコンを見ると、いつものアイコンに戻っている。

 

「それでは、ボスモンスター、『燃え盛る悪霊(バーニングデッド)』の特徴の再確認の後、ボスに挑みましょう!」

 

 『燃え盛る悪霊(バーニングデッド)』の戦いの注意点は大きく3つ

 魔法攻撃、バッドステータス、骸骨兵だ。

 

 魔法攻撃、怨嗟の青き炎は遠距離攻撃&範囲攻撃と言う結構強烈な効果を持っているが、それはタンク担当のトウヤが前衛で引き付ける。

 痛みもあるし大変な役目だが、トウヤは任せろ祭りだぜ! と胸を大きく叩いた。

 ダメージソースはルディと五十鈴の二人組みで挑む。

 氷関係の技は弱点らしく、ヘイトコントロールをしつつ、ルディの氷魔法と、五十鈴のマエストロエコーを組み合わせてダメージを稼ぐ。

 ミノリは後衛で全体を監視しつつ、パーティー全体のHP、MPを管理する、バッドステータスの管理も含まれるが…。

 

「火炎のバッドステータスなら、ルディに水魔法掛けて貰えば解決するのでは?」

 

 と言う俺の発言のお陰で、バッドステータスを受けた時は水魔法を受けに行くというパターンも用意された。

 そして最後の俺の役目だが、ボスモンスターと共に召喚される、骸骨兵の相手と、トウヤのHPが危険域に入った時にタンクを交代する役目だ。

 

 各々『燃え盛る悪霊(バーニングデッド)』の情報を頭に叩き込む。

 そして、自分がどんな役割をしたらいいか、どういう風に動くかもう一度思い浮かべる。

 

「それじゃ、ボス戦頑張ろう!」

 

 初心者パーティーの1つは、初めてボスの扉に手をかけ、その扉を勢いよく開け放った。


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