モンハン食堂【完結】   作:皇我リキ

30 / 34
このお話は以下動画作品のシナリオを小説にした物です。以下動画作品から視聴して楽しんで頂けると幸いに思います。

https://youtu.be/nkyIikloVTQ


side menu【番外編】
side menu01……こんがり魚


 ここはモンハン食堂。

 ハンターの皆さんが、狩りに行く前やクエスト達成後の打ち上げにご飯を食べる場所です。

 

 モンハン食堂は色々な街や村を旅しているお料理屋さん。

 今日はユクモ村にやってきて営業中なのですが、さっそくお客さんが来たようですね。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

『side menu01……こんがり魚』

 

 

 露店の賑わうユクモ村。

 何やらお祭りがあるとかないかで、私はタイショーさんに連れられて久し振りにユクモ村にやってきていました。

 

 

「なんだか賑わってますね、タイショーさん」

「大将だ。……んぁ、今日はなんでも色んな店が出店を出す祭りをやってるらしいからな。儲け時だ、客を取り逃がすんじゃねーぞ」

「流石タイショーさん! ガメツイ!」

「なんか言ったか?」

「いえなにも!!」

 これ以上言うとまた怒られかねないので、私は両手を上げて何も言わなかった事にする。

 既に若干怒ってる大将さんですが、お店の机に座ろうとしているお客さんを見るや私に「行け」と目で諭してきました。

 

 

「お、良いところに屋台があるじゃねーか」

「うん、良いね。今日のクエストの打ち上げはここにしようか」

「報酬もあるし、良いかもな」

「わーい! 飲みましょー! 飲みましょー!」

 どうやらお客さんはハンターさん四人組のようです。

 

 ユクモ装備の男性が一人、マッカォ装備の男性が一人、ウルク装備の女の子が一人に、ホロロ装備の男性が一人。

 席に座った四人の元に向かって、私はいつも通りこう口を開きました。

 

「四名様、いらっしゃいませ! モンハン食堂へようこそ! ご注文いかがなさいますか?」

 ここはモンハン食堂。

 

 

 アイルーの大将さんと、ウェイトレスの私が営業するお料理屋さんです。

 

 

 

「んー、あ! 採酒! 採酒ありますか!」

 ウルク装備の女の子が片手を上げてそう言うと、ユクモ装備とホロロ装備の男性が「俺は達人ビールで」「それじゃ、僕も達人ビールかな」と続きました。

 装備を見るに、中々実力のあるハンターさん達のようで。お店でご飯を食べる事に慣れているのか、注文を決めるのも早いですね。

 

「水あるか?」

「お水ですね、ありますよ!」

「そんじゃ俺は水で。あ、ねーちゃんおすすめってあるか?」

 マッカォ装備の男性は他の三人と違ってお酒が飲めないのか、お水をご所望のようです。

 

 お水は勿論ありますとも。渓流原産の天然水が。

 大将さんはその天然水でもお金を取ろうと言っていましたが、流石に評判に拘るので辞めましょうと頑張って止めました。しかし、渓流原産天然水はとっても美味しいお水なので()()()()です。

 

 

 さて、それはともかく()()()()ですか。確か───と、思い出しながら私は口を開きました。

 

 

「んー、今日は新鮮なお魚が入っているので、こんがり魚は如何ですか?」

 確か昼間の仕込みの時に、大将さんがクーラー活魚を用意していた筈です。

 

 曰く「こいつは新鮮なクーラー活魚だ。砂漠で昼間に食いたいな」なんて感じで喜んでいましたが、焼いたらただのこんがり魚ですけどね。

 それに砂漠には当分行きたくありません。

 

 

「あー、良いんじゃないか?」

「じゃ、こんがり魚を四人分。それと、おすすめ何品かで。とりあえずこれで良いかな?」

「はい! 良いですよー!」

 なんて事を考えていると、注文が決まったようです。私は四人が注文した飲み物とホロロ装備の男性が注文した料理を思い出しながら注文を復唱します。

 

 

「かしこまりました! 採酒がおひとつ、達人ビールがおふたつ、お水がおひとつ、こんがり魚が四人分と、今日のおすすめですね。少々お待ち下さい」

 注文を確認すると、私は大将さんにオーダーを通しました。

 さて、他にもお客さんは来るでしょうか。

 

 

 お店の外を覗いてみると、さっきの四人組のハンターさん達がこんな話をしていたのが耳に入ります。

 

「そういえば聞かなかったけど、こんがり魚ってなんの魚だ?」

「普通にサシミウオとかじゃないですか? ハレツアロワナとかって食べれるんですかね?」

「ハレツアロワナは食べれるけど、食べた後に腹の中で爆発するぜ」

「えぇ!? 本当ですか!?」

「いや、嘘だよ」

「嘘なんですか!?」

 ハレツアロワナ、確かに私も初めて爆発するお魚だと聞いた時は既にお腹の中にあったハレツアロワナをどうしようと泣き喚きました。

 マッカォ装備の男性の冗談に目を丸くしたウルク装備の女の子は、騙された事に目を半開きにしてちょっと可愛いですね。

 

 

「魚っていっても色々いるよな」

「そうだね。三人はピッケル活魚っていう、変な名前の魚を知ってるかい?」

「ピッケル活魚? なんだその魚」

「多分尻尾がピッケルみたいになってるんですよ。それで鉱石を取れるんです、きっと」

「いやどんな生き物だよそれ」

「それと、虫あみ活魚っていう名前の魚もいるらしいよ」

「いやだから、どんな生き物だよそれ」

 続くそんな会話に、ユクモ装備の男性は訳の分からない生き物を想像して片眉を上げる。

 

 分かります。

 存在そのものが意味分かりませんよね、ピッケル活魚。クーラー活魚もですけど。

 

 

「あ、そうだ! お魚来るまでしりとりしませんか?」

 そんなユクモ装備の男性の葛藤は他所に、何故か突然しりとりを提案するウルク装備の女の子。

 

 あまりにも突然。

 どういうしりとりをするのだろうかと気になって視線を向けていたのですが、大将さんに「何サボってる、手伝え」と言われて泣く泣く私も厨房へ。

 

 

 ハンターさんのしりとりってなんでしょうか。普通にしりとりをやるんでしょうか。……気になるんですけど! 

 

 

 

「大将さん、何手伝えば良いですか?」

「そこのミリオンキャベツの塩漬けが盛ってある皿にだし巻き卵を作って乗せろ」

「はーい。ガーグァの卵割っても良いですか?」

 私の問い掛けに、大将さんは無言で頷きながら新鮮なクーラー活魚の下拵えを進め始めました。

 そんな大将さんを横目に、私は自分の頭よりも大きな卵を割ってだし巻き卵を作り始める。

 

 持って歩くのも大変なガーグァの卵。

 これ一つでだし巻き卵が何人分作れるのか。私は一人で食べちゃいますけど。

 なので、少しくらい食べてもバレない筈───

 

「分かってると思うが……つまみ食いするなよ」

「……わ、分かってますよ」

 ───そもそも疑われていたのでアウトでした。

 

 

 

 さて、だし巻き卵も完成したので私は頼まれた飲み物も合わせて先におすすめの品を運ぶ事に。

 どうしてか、大将さんも「客に挨拶に行く」と着いてくるようです。少しくらい持つの手伝ってくれても良いですよ。

 

 

「お待たせしましたー! まずは、今日のおすすめでーす」

「んぁ、悪いな。こんがり魚はもう少し待っててくれ。今下拵え中なんだ」

「お、キッチンアイルーか」

 大将さんの言葉に、マッカォ装備の男性が感心した声を漏らしました。

 なるほど、こんがり魚が遅れる事のお詫びを言うためについて来たんですね。

 

 

「こちらモンハン食堂の、タイショーさんです」

「大将だ、ゆっくりしていってくれ」

 私が大将さんを紹介すると、大将さんはそう言って挨拶だけしてサッと帰っていってしまいます。

 こんがり魚を待たせているのでしょうがないですね。

 

 して、他のお客さんもまだ来ないようで私は暇なのでハンターさんとお話しでもしていましょうか。

 

 

 

「ハンターさん達は、クエストの帰りなんですか?」

「まぁ、そんなところだな」

「砂漠でダイミョウザザミを討伐してきたんだ。そりゃもう大変だった。誰かさんがクーラードリンクを忘れてきたもんだからな」

 マッカォ装備のハンターさんがそう言うと、隣でウルク装備の女の子が「い、言わないで下さいよ! 私は夜だと思ってホットドリンクを持っていっただけなんです!」と抗議を漏らしました。

 

「俺は誰が忘れたかなんて、言ってないんだが」

 そんなウルク装備の女の子に、マッカォ装備の男性はここぞとばかりの表情でそう口を開く。

 思わず女の子は言葉にならない悲鳴をあげてマッカォ装備の男性の肩をポカポカと叩きました。

 

 とても仲が良いパーティなんですね。

 

 

「あはは。でも、アイテムを忘れてしまう事は良くあるよね」

「あー、私もクーラードリンクだとかを忘れたって話は良く聞きますね」

 確かに、私も狩りに必要な物を忘れる事は結構あります。

 なんなら買い物で財布を忘れるくらいには他人の事を言えない人間なので、クーラードリンク忘れなんて他人事ではありません。

 

 

「俺は砥石を忘れた事があったな。クエストが終わる頃には武器が大変なことになってた」

「うわー、砥石忘れちゃうと大変ですよねー」

 ハンターにもやはり忘れ物は付き物のようで。

 

 ユクモ装備のハンターさんは砥石を忘れた事があったとか。

 切れ味が悪くなると、砥石を使わなければモンスターに傷を与える事すら困難になるので砥石を忘れるのは剣士にとって致命的でした。

 

 アレは本当に地獄ですよ。ランポスの鱗すら切れませんからね。

 

 

「俺は鉱石の採取クエストでピッケルを忘れた事があった」

「それはー、どうやってクエストクリアしたんですか?」

「いや、普通に……リタイアした」

「あはは、ですよねー」

 先程ウルク装備の女の子を揶揄っていた男性はピッケルを忘れていったのだとか。

 最近だと支給品のポーチにピッケルや砥石、クーラードリンクなんかも常備される事が多いので忘れ物は減ったと聞きますが、人間なので忘れる時は忘れるんですよね。

 

 まぁ、ある程度何か忘れてもなんとかなるというか、何とかしてしまうのがハンターさんなので。

 だからこそ、この人達はこうやって笑い話に出来ているのでしょう。

 

 

「僕の知り合いは、どうしてかなぁ。武器を忘れてきた事があったよ」

「大惨事じゃないですか!?」

 いや、それは笑い話じゃないですよね。

 なんで忘れたんですが。何をどうしたら狩り場に武器を忘れていくんですか。

 

 

「ほらほらー、やっぱり忘れ物ってあるんですよ! クーラードリンク忘れも仕方ないですね!!」

「いや忘れたのに威張るな」

 忘れ物は、やっぱり良くない。

 

 

 

「あ、料理が出来たようですよ」

 なんて話をしていると、調理を終わらせた大将さんが料理を持って来ました。

 私の顔よりも大きな、こんがりと焼かれた魚。

 

「へい、お待ち。こんがり魚だ」

 こんがり魚です。

 

「おー!」

「美味そうだな。大将、この魚はなんて奴だ?」

「んぁ? これか。コイツはクーラー活魚だ」

 テーブルの真ん中を占拠する大きなお皿に乗ったこんがり魚。頭も着いたままの丸焼きで、そのサイズはまさに金冠。

 魚を焼いただけの単純な調理ですが、身の焼けた香ばしい匂いが机の中心から広がって食欲が抑え切れない。

 

 

「出たな活魚」

「今度はクーラーだね」

 ところで、注文をした後にピッケル活魚の話をしていたハンターさんはそう言って苦笑いをこぼしていました。

 そうです、クーラー活魚です。

 

「クーラーですか? あ、もしかしてクーラードリンクになる魚だったりして!」

「そんなもん食って大丈夫なのかよ!?」

「魚なんて焼いたら全部こんがり魚ですし、気にしなくて大丈夫だと思いますよー。何食べても自然回復力アップです」

 サシミウオだろうがハレツアロワナだろうが、焼いたら全部こんがり魚ですからね。

 きっとピッケル活魚も焼いたら美味しく食べられる筈ですよ。

 

 

「あ、アバウトだな」

「あ、でも美味しいですよこの魚!」

「食うのはえーよ!」

 ハンターさん達の心配を他所に、ウルク装備の女の子はひとまず先にこんがり魚に手を付けていました。

 マッカォ装備の男性も目を細めて左手でツッコミを入れています。

 

 

「んぁ、見たところあんたらこの村のハンターか。狩りの帰りだって聞いたが?」

「そうですね。四人でダイミョウザザミを討伐してきました」

「誰かさんがクーラードリンクを忘れた事以外は特に問題なくクエストクリアだったな」

「クーラードリンクの話はもう良いじゃないですか!」

 先程聞いた話。四人はダイミョウザザミの討伐の帰りにお店に寄ってくれたとか。

 その狩りではウルク装備の女の子がクーラードリンクを忘れてしまったらしく、ちょっと大変だったらしい。

 

 

「クーラードリンクを忘れたならこのクーラー活魚をどっかで釣って来るといい。クーラードリンクの代わりになるぞ」

 四人にクーラー活魚をおすすめする大将さん。そんな言葉にウルク装備の女の子は「えぇ!? 本当にクーラードリンクの代わりになっちゃうんですか!?」と目を丸くしました。

 

「焼いたらただのこんがり魚ですけどねー」

 私のそんな言葉に、全員が一瞬固まってしまいます。

 

 

 あ、もしかして禁句でしたか。

 

 

 

「……んぁ、狩場じゃ色んなトラブルもあるだろう。例えばモンスターから深い傷を負わされた時とかな。そういう時は、ユクモの温泉たまごだとかモスジャーキーなんかを食うと傷がよく治るぞ」

 気を取り直して───とでも言うように、大将さんが狩場でも役に立つ食事の知識を披露してくれました。大将さんの言葉に、ハンターさん達は再び口を開きます。

 

 

「へぇ、詳しいな」

「んぁ、飯は狩場でも大切だからな。覚えておいて損はねぇ。……それに、狩場で食うこんがり肉は最高に美味いからな」

「お、それは分かるぜ!」

 確かに狩場で食べるこんがり肉は最高に美味しい。

 

 

 他にも、狩場で食べると色々な効果があると言えば───

 

 

「───他にもドキドキノコを食べるとスタミナが減らなくなったりしますよ!」

「ドキドキノコはそれ以外にも危ない効果があった気がするけど」

「死にはしません!」

 スタミナが減ったり、突然身体が痺れたりするかもしれませんが。死んだ事はありません。

 

 良く狩場に生えてる奴をつまみ食いするので。

 

 

「場合によっては死ぬよな?」

「死ぬな」

「え、死ぬんですか?」

 あれ? 死ぬんですか!? もしかして私が運良く死んでないだけで、死んだりするんですか!? 

 

「そのバカは放っておいて」

「酷い」

「せっかくだ、あんたらの狩りの話を聞かせてくれねーか?」

 驚愕する私を無視して、大将さんは身を乗り出すようにそう口を開きました。

 

「俺達の?」

「どうしてまた」

「モンハン食堂は旅する食堂で、色んな村や街を旅してるんです。そんな中で色んなハンターさんと話してきました。ハンター業の他にも、絵を描いたり物作りをしたり、記事を書いたり、物語を綴ったり。色んなハンターさんのお話を聞くのは、とても楽しいんです」

 ドキドキノコの話は後回しにするとして。

 

 

 私達が旅をしているのは、そんな理由です。

 

 以前、私達はこんがり肉Gを作り出すという目的の為に旅をしていました。

 そんな旅の中で、色々な人達からお話を聞く楽しさを私達は忘れられなくなってしまったのです。

 

 だから、こうしてお客さんのお話を聞くのは私達にとって恒例の行事になっていました。

 

 

「んぁ、そんな所だ。別になんでも良い。思い出とか、やりたい事でもな。自分の事を人に話す、誰かの話を聞く、これが面白いから俺はこの店をやってんだ」

「なるほど」

「良いですよ! お話しましょう!」

 私達の旅はまだまだ続きます。

 

 

「はい! ぜひ聞かせて下さい! あなた達のお話を!」

 色々な人達のお話を聞く為に。




今回のお話はアドベントカレンダーモンハン愛をカタチに2021の12月22日午前の部公開作品である下記URL動画作品のシナリオを、ハーメルン投稿用の小説にしたものになります。以下概要。
https://youtu.be/nkyIikloVTQ

企画主催様: https://twitter.com/kura_tong
他企画作品: https://twitter.com/i/events/1464838368559132672?s=20


本文はside menuとある通りモンハン食堂の番外編としても楽しめる内容にさせていただきました。動画を見た後でも楽しめるかなー、と思います。
どちらかというと企画は動画が本編ですので、そちらを楽しんでいただければ幸い。最終回のあとがきで言う発表とはこれのことであります。

とりあえず動画を見てください!!
凄いんです!本当に凄いんです!!私ちゃんが!!大将さんが!!



そんな訳で企画とは関係なく最終回を迎えた後もこうやってちまちま更新していくと思いますので、楽しんでいただければ幸いです。
読了ありがとうございました!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。