どうしても叶えたい願いの為にその気になる綾小路と、別にどうでもいい願いでなんとなくいるオリ主   作:a0o

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 ギリギリ年内に間に合いました。


君の願いは。

 

 

 

 どんな願いでもたったひとつだけ叶えることのできる十二大戦と、どんな願いでもたったひとつさえ叶うことのない十二大戦--十二大戦と十二大戦の戦いは、戦士も戦犯も一人残らず居なくなる結果となって幕を閉じた……に思えた。

 

 ただ、いかなる形であれ物事には結末が必要--十二大戦は『たったひとつの願い』を叶え完結する。

 

 俺はその為に生み出された--戯れ同然に呟かれた本音か嘘かも定かでない『どうでもいい願い』を叶える為に。

 

 で、あまりにも面倒が起こり過ぎた故か--『特例』により願いの権利は他人に渡った。

 

 おめでとう、堀北。

 

 そして、さようなら--こうして役割は打ち切られ、俺は消える。それはもう綺麗さっぱりとね。

 

 

 

 ***

 

 

 

 三月二十四日、卒業式は滞りなく終わり教室に集まる一年生。

 

 少し遅れ、最後に戻った堀北鈴音は冷静さを保とうとして……やはりどうにも無理が表面に出てしまう。

 

「不景気な顔だな。兄貴がAクラス卒業したのに」

 

 綾小路が隣の席から淡々と言う--冷たくあしらわれると思って目を向け、えらく真剣な目で凝視された。

 

「本当に、なんなんだ?」

 

 予想外過ぎる反応--そして当の堀北は堰を切ったように答える。

 

前に(・・)同じ様なやり取りがあったのよ--尤も展開は逆で私の方が気に掛けてたんだけど」

 

「へぇ」

 

 昔話をするなど珍しいと思いつつ、興味など全く無い--しかし堀北は構わない。

 

「ちなみに綾小路くんは神を信じる?」

 

「宗教の勧誘にでもあったのか?」

 

「似たような物ね--兎に角、信心深くて、貴方以上に得体の知れない恐ろしい男だったわ」

 

「そうか」

 

 適当な相槌の繰り返し--全く喰い付かない姿に確信を抱く。

 

(本当に嬰児くんの事を忘れている……いいえ、あの一年間が消えてる)

 

 ドゥデキャプルから聞かされた時は眉唾だと一蹴したが、あの時から今に至るまでの周りの様子--そして特に牛井嬰児に強く執着していた綾小路清隆の無関心。

 

 示しているのは、牛井嬰児の消失--そして堀北鈴音は『どんな願いでも叶える権利』を手に入れたのだ。

 

「貴方はもし願いがひとつだけ叶うとしたら何を願うのかしら?

 ちなみにその人は現代において最も人を救った英雄を生き返らせたいそうよ」

 

 それでもと、駄目だしで訊く。

 

「思考ゲームか?それとも本物の詐欺師か、そいつは?」

 

「……凄い男よ、貴方以上にね。それより」

 

 どうやら嫌でも認めないといけない--余りしたくなかった確信と共に話を進める。

 

「願いか、そうだな--取り敢えずは、もう少し気の合う女と話したいな」

 

 なんとも投げやりで皮肉を込めた返し--ただ堀北としては聞き捨てならない内容に目を細めた。

 

(ああ、これは予想以上に怒らせたか?)

 

 綾小路はどんな非難が来るのかと身構え……再び予想外に見舞われる。

 

「貴方、小さい時の幼馴染とか、結婚を考えてる女性は居ないの--その人さえ居ればいいって感じの?」

 

「……急にメルヘ…………ロマンチックになったな。本当にどうした、変だぞ?」

 

 本気で訳が分からない--本当にカウンセリングでも必要かと流石に心配になって来た。

 

「……居ないなら別にいいわ。忘れてちょうだい」

 

 堀北は話を打ち切り、目を瞑り無言になる--綾小路も気にならない訳ではないが、これ以上は踏み込まない方が良いとの直感が働き従った。

 都合よく茶柱も来てくれたのも助かり--さっきの堀北の言からか、神の思し召しかと柄にもないものが一瞬心に浮かぶ。

 

 茶柱は教団に立ち、生徒たちに目を向ける。

 

「さて明日の終業式の前に簡単な総括をしておこう--まずは最終特別試験、Aクラス相手に善戦したと評価する。他の先生方もお前たちの成長には驚いていた」

 

「けどまたⅮクラスの落ちるんだぜ」

「折角Cクラスに上がったのに」

 

 無言で聞いていた堀北からすれば違和感しかない話--確かにAクラスとは戦ったが、それは綾小路と坂柳の一騎打ち(それも個人的なものを汲んで)でクラスとして戦ったのはCクラスだ。

 

 何よりクラス変動が起きたなど一回も無い。

 

 自分以外の全てが書き換わっている……と言う表現も違う。

 

 堀北鈴音の中にも今の確率世界の記憶はある--もっとも小説やアニメを観ての感覚に近いものだが。

 

 こっちでは三学期にCクラスに上がり、最終試験でAとC、BとⅮの一騎打ちの戦い--結果はAとⅮの勝利、BとCの敗北によりポイントが変動。

 

 坂柳の率いるAクラス--1131ポイント。

 一之瀬率いるBクラス-- 570ポイント。

 堀北の率いるCクラス-- 347ポイント。

 龍園の率いるDクラス-- 508ポイント。

 

 となり一年を終えた。Aクラスを追う形で500の横一線に近かったポイントが変動--ポイント移動は0になるよう持ち掛けたのに。

 

(まぁ、Aクラスに負けたのもその通りで、その後でC(こっちでのⅮ)を下した--Aで大幅に負けたのをCから少し取り返したと考えれば収まりも着くけど)

 

 しかし釈然としないものが堀北の中に居座る--そんな堀北を置いて話は進む。

 

「Ⅾクラスには落ちたがお前たちは見違えるほど成長した--年間を通して最もクラスポイントを得た。ただ成長してるのは他クラスも同じ、上のクラスにいけるかはこれからの努力にかかっているだろう」

 

 茶柱の素直な賞賛と引き締め--ただ試験以上の戦いを志していた身としては少々虚しさがあった。

 

「明日は終業式だ--授業が無いからと学校の一日であることを忘れるな。以上、解散」

 

 宣言と共に席を立つ綾小路--ほぼ同時に堀北が訊く。

 

「急いでる様だけど約束でもあるの?」

 

「謝恩会までの時間潰しだ--お前は行かないのか?」

 

「ちょっと気分じゃないのよ--兄さんには日を改めて会いたいと伝えて貰えないかしら」

 

「ああ、分かった」

 

 恐ろしい程にあっさりとした会話--もう少し捻くれたものになると思っていただけに困惑が隠せない。

 

(さっきから、こんなのばっかりだな--これは本格的に医者を探した方がいいか?)

 

「それにしても坂柳さんに会いに行くと思ってたのに意外ね」

 

「誰に聞いた?」

 

 と、出掛かった台詞を必死に呑み込む--完全なる不意打ち、それも精神を揺らがせた瞬間に間髪入れずに。

 

 ポーカーフェイスを保ち、冷や汗の類も出ない様にしながら、冷静に台詞を分析--堀北が言っているのは坂柳有栖の方だ。

 協力を求めた父親、坂柳成守理事長ではない--そもそも謹慎中で会いに行く訳ではなく、会いに行くのは綾小路の後ろ盾になってくれるよう推薦された茶柱、そして真嶋。

 

 つまり今堀北が言ったのは、友達に会いに行くのか?と言う類のもの。

 

「確かに試験(チェス)では好勝負をしたが、それで一気に親睦を深めたって訳じゃ――――」

 

「なんだか照れ隠しに見えるわね--やっぱり気になってるんじゃないの?」

 

 またもや予想以上に喰い込んでくる--あまりにグイグイ来る様相に人が変わったとさえ思えて来た。

 

「仮に気になったとして、オレが坂柳に会うことに気になるのか?」

 

「質問を質問で返して来るなんて珍しいわね--動揺してるの?」

 

「ああ、ハッキリって今の堀北は異常の思える」

 

「……そうかもね。やっぱり彼の真似なんてするもんじゃないわね」

 

 悟ったような諦めたようニュアンス--まるで訳が分からない、この短い間にもう何度目か。

 

 その彼とやらをやたら気にしているようだが、ひょっとして今日が命日か何かなのかと突っ込んだ質問をするべきか迷う--もしそうなら納得がいくが踏み込み過ぎだし、違うなら突然の事に訳が分からないまま。

 

(どんなジレンマだ、これは?)

 

 時間にして二秒もないまま、極めつけの予想外が起こる。

 

「ごめんなさい。気分を害させたようね--私も帰るわ。それじゃまた」

 

 

 堀北からの謝罪--しかもしっかりと心が籠ってると実感できる。更に言えば‶また〟などと言う台詞が投げかけられたのも珍しい。

 

「ああ、また」

 

 抜けきらない困惑に返答も間抜けなニュアンスになってしまう--もう調理油でもそのまま飲まされた気分で脳が気持ち悪さに満ちる。

 

 そんな状態のまま、堀北が教室を出るのを見送った--気持ちを落ち着かせること数分、漸く収まって来て周りを見渡すと、さっきの綾小路と同じ様な顔をしたクラスメイトたちの姿が。

 

 どうやら同じ気持ちを共有していたようだ--直接対峙していた自分程じゃないだろうがと、声を掛ける気にもなれない綾小路は約束があると思い直し早々に教室を出る。

 

 

 

 

(オレが坂柳(・・)に、ね)

 

 自室の戻り、ベッドに横たわった堀北は完全に変わってしまった綾小路に妙な心情になってしまう。

 

 嬰児と同じくらい執着……いや、大切にしていたのに。何より堀北が知る限り、彼女の事は有栖と呼んでいるのが当たり前--挑むべき目標と最愛のお嫁さん(おさななじみ)が無くなるとこうも別人になるのか?

 

 ただこれがこの確率世界の現実--そこから言えば堀北鈴音の方が異常、綾小路の言う通りに。

 

 …………益体の無いことに思考も時間も掛けるのもバカらしい--考えなければならないのは、ひとつだ。

 

(たったひとつの願い--どうしたものかしら?)

 

 まずは深く考えずにひと通り並べてみる――①Aクラスに上がりたい。②クラス全員が欠けることなく卒業したい。③どんな試験が来ても動じない精神力が欲しい。

 

(まず①はズルになって駄目ね。②は悪くないけど私たちだけなのは、ちょっと。③は良いよう気もするけど、私が私じゃなくなりそう…………)

 

 ついこないだ(堀北主観で)の対話でAクラスは自らの力で成すと宣言した--いきなり反故にする気は無いし、何より格好悪い。

 

 退学者にしても全員の協力である結果に対して不誠実……あくまで堀北の願いなのだから、これも傲慢か?

 

 そう考えるとブレる心をどうにかするのも魅力的に感じるが、既に今の時点で自分と周りは大きくズレてる--その上で心が改造されてしまったら完全に己自身じゃない。

 

 やっぱり気が進まない。

 

 そもそもこれは堀北鈴音個人に与えられたもの--いくら自己満足で良くても周りに影響を与えるのはどうかとも思う。

 

 叶えるなら自己完結するのがベスト。

 

 それを念頭に置き、単純に思い浮かぶのは④卒業後に大金がベター、それとも⑤有名人が来るイベントの開催。

 

(④は現実的に有りだけど美しくないし、なんだか勿体ない気もするわね。⑤はそもそも興味が無いし…………ああ、イベントと言えば)

 

 堀北の脳裏に蘇るのは都合二回行われた『結婚式ごっこ』--三度目は自分がプロデュースすることになっていたが、

 

(ああ。⑥結婚式ごっこ(それ)をこちらでもやりたいって言うのは)

 

 瞬間、雷に打たれたかの様な錯覚が起きた--極めて個人的にだが、凄く良い。

 

 その時、端末に着信が入り確認すると相手は綾小路--何の因果か?嬰児曰く神の思し召し?それともドゥデキャプルが見えない手でも回してるのか?

 

 複雑な心境のまま通話ボタンを押す。

 

「もしもし」

 

『何か余計に元気が無くなってるが、掛け直そうか?』

 

「少し疲れは感じてるけど、話が出来ないほどじゃないわ--それでどうかしたのかしら?坂柳さんとのデートの相談でもしたいの?」

 

『…………オマエ、予知能力でも身に付けたのか?』

 

「あら、と言うことは本当に坂柳さんと?」

 

 予想外の手応え、しかし堀北的には当たり前な事態に飛び起きた--必然的にテンションも上がり嬉しそうなニュアンスに表情も緩む。

 

(やっぱり二人が幼馴染なのは変わらないし、愛し合うのも――――)

 

 

 

 一方、受話器の向こう側では綾小路はついていけない展開の連続に困惑しながら少し前を思い出す。

 自身の今後の為に設けさせて貰った真嶋と茶柱との話し合いでの予想外--坂柳有栖の同席、並びに彼女の口から語られた‶幼馴染の様なもの〟の台詞を聞いた時は驚かされた。

 顔には出さないようにしたが、ついさっき堀北の口から見越したように示唆され--その後の謝恩会でも堀北の兄から‶髪を切った妹〟に何があったのか熱心に聞かれ伝言も頼まれた。

 

 全てが堀北中心となって起こっている--不覚にもそんな荒唐無稽な言葉も脳裏に浮かんだほどだ。

 

 ただそんな益体の無いことに浸ってはいられない--電話したのは頼まれ事があったから、

 

(にかこつけて堀北の様子と言うか、予知の種を知りたかったからか?)

 

 と自己分析しつつも、それもやはり時間の無駄と結論--早々に用件を口にする。

 

『違う。お前の兄貴から伝言を預かった--31日の正午に正門近くで待つと、ちなみにオレも一緒に呼ばれてる』

 

「そう、ありがとう。確かに聞いたわ」

 

『…………』

 

 要素以上に淡泊な返し、綾小路が知っている堀北では考えられない--最早、別人に思えて来た。

 

『お前、本当に堀北か?』

 

(私が綾小路くんでも同じ事を思ったでしょうね)

 

 質問者の気持ちを想像しながら、無言で何も答えることなく通話を切る--ついでに端末の電源も切って考えるべきことを再開した。

 

 ⑦綾小路と坂柳の両想い状態をこちらでも--話していて、ごっこ遊びなどでは満足できる気がしなくなった。

 嬰児消失に次いで違和感のある状態を無くすのは精神衛生上有意義……いや、この手の問題は本人たちの意思と遣り取りで成就するのがロマンチックで素敵なのだ。

 神の見えざる手のようなのは無粋--ならば⑧二人が互いの気持ちを意識する衝撃的な出来事が起きると言うのは?

 

 噂に聞いたカフェでの熱烈なキス--あれを再現するなら二人は互いを思いやる状態になるかも知れない。ついでに言えば今度は自分も立ち会いたいと言う欲求も湧いて来た。

 

(まるでと言うかまんま野次馬ね--私の中にもそんな低俗な気持ちがあったなんて)

 

 空想してるだけでニヤケてるのも自覚--流石にこれはよろしくない、他人の恋路をどうこうは馬に蹴られるかと一蹴。

 

(でも考えて行くと‶なんでも叶う〟って言うのも結構面倒ね)

 

 贅沢なことだとも思うが、実際にどうすればいいのか分からない--もういっそ、他の誰かに投げてしまいたいぐらいだ。

 

 そうなると一体誰がいいか?

 

(⑨やっぱり兄さんかしら?)

 

 敬愛する兄なら世を混乱させることも無ければ、私利私欲だとしても誰もが納得する使い方をしてくれる--しかし、それはそれで自分が心底、失望されてしまいかねない。

 

 そうなると他の誰か?

 

 当たり障りのないのも悪くないが、願いの使い方としても申し分ないのが理想--そんな事を思う者の願いを叶えるのは良い感じだ。

 

 他力本願だが、事の大きさを考えると自分一人でと言うのも気が引ける--最終的に自分の為だけに使うとしても見当の価値はある。

 

 となると直ぐに行動すべき……とも思ったが異常なまでに体が疲れており休みを欲していた。

 

(⑩このまま寝て、起きたらずっと元気でいさせて--なんてのも良い気がしてくるわね)

 

 完全に疲労で思考が鈍っている--その自覚と共に堀北は目を閉じた。

 

 

 

 

 目を覚ました時、外は真っ暗で時間を確認すると夜の十二時になろうとしていた--少し眠るだけのつもりが予想以上に疲れたのかと自嘲。

 

 ただその甲斐あって、気力体調はある程度は回復--それでも絶好調とは言えず、気分転換も兼ねて遅めの風呂を。

 

 湯船にお湯が貯まるのを待ちながら端末を取り、適当なニュースや掲示板を散策--特に目の止まるものもなく投げやりにベッドに放る。

 

 願いを決める切っ掛けやインスピレーションがあればと期待したのだが、そう上手いこと行く訳もない--諦めに似た考えを抱きながら待つが、どうにも長く感じてしまう。

 

 かと言ってこんな時間に誰かに連絡を入れる訳にもいかない--折角、精神的疲労も減ったのにと余計なストレスに晒された。

 

 漸くお湯が溜まり入浴--湯船に浸かりながらタオルで巻いた頭に手をやる。

 

 少し前まで髪を結い纏めなければならなかったのが楽になった--元々において短くするつもりでもあったが、嬰児との会話を機に彼にまつわる全てに蹴りを付ける。その決意の為であり、そして実行もして来たが……まさか、こんな事態になるとは想像だにしなかった。

 

(なんで彼の事ばっかり考えてるのかしらね?)

 

 もう消えてしまったのに……その結果、歩んで来た一年が大幅に変わってしまった。なんだかんだと体験し実感して来た時間に未練があるのか?

 

 ……しかしこれ以上は無いと思わせる力の介入は戸惑いがある。どうせイレギュラーを抱え込むなら少しでいいから影響は小さいものであって欲しい。

 

(⑪例えば嬰児くんほど異常でない者が最初からⅮクラスに居たことにするとか?)

 

 ただ個性や癖が強くてもクラスの害になるようなら結局マイナスであり断然却下--逆にそれが飛び切り優秀なら、何らかの異常な過去を抱えてなければⅮへの配属はありえない。

 よしんばクラスが崩壊せず順調に実力を伸ばしていったとしても、いつ暴走するか爆発するか分からない爆弾を抱えるのは恐ろしい。

 

 そう言う意味では外からの圧力と言う安全ピンがあった嬰児はまだマシか?

 

 今にして考えれば、それでも安心出来なかったかもしれないが、驚異の形が明確になって来ていたのはクラスを超えた結束を促す結果にもなった。

 

(…………いけない考えるべきことがズレてるわね)

 

 もしこれが実感して来た確率世界なら櫛田や軽井沢、一之瀬に何をされるのか?

 

「!!」

 

 少し想像しただけで背筋に冷たいものが走った--反射的に顔の半分まで湯船に沈める。

 

(こんな思いをしない為にも⑫もっと従順と言うか、私に懐いてくれる--出来れば同じ女性が居てくれるのがいいかしら?)

 

 しかしそれでもⅮクラスに初めから居るなら何かしら問題を抱えていることになる--仮に目に見えて分かり易いもので、十二分に対応が可能だとしてもクラスを上げていくのにプラスに出来るかどうか?

 

 出来ると仮定して想像してみる--堀北鈴音を慕い、自分も悪態付きながら満更でもない感じで期待通りに動いてくれる。もしそれに達しなかったとしても自分の力不足と割り切り、他とも協力することに前向きになるなら悪くない。

 

 …………出来うるなら容姿も美しくか可愛らしいものであるなら。

 

(って何を考えてるのよ、私は)

 

 今度は逆に顔が熱くなって来た--流石に浸かり過ぎた、とズレた(意図的な)言い訳を思い浮かべながら勢いよく湯船から立ち上がる。

 

 浴槽の鏡で自分の顔を見ると、らしくない照れている顔が……パンッと両手で頬を叩き、脳内のモヤモヤを出す。

 

 そのつもりだったが、どうにもスッキリしないものが残り、無意識に両腕を組んで身震いした。

 

(やっぱり私一人の考えで結論を出すのは危険かしら?)

 

 改めて与えられた権利の大きさに慄き風呂場からでる--寝間着を着て、髪をドライヤーで乾かしながらも考えを中断できず、されど明快な答えが出てこない。

 

(それでも私の願いだから私が決めなきゃだけど、参考になる意見を聞くのも有りよね--キチンと考えを詰めなきゃ、嬰児くんにも顔向けできないし)

 

 この調子でもう少し考えに没頭したい--が短くなった分、髪は直ぐに乾いてしまう。

 

 仕方なく、続きはベッドで……と思った瞬間、今考えていたことと相まって、変なモヤモヤがぶり返した。

 

(ああ、なんで消えた人の事を考えながらベッドで…………)

 

 どんどん自分らしくない、今まで考えたことも無い妄想が次から次へと浮かび…………これ以上は、と無理矢理打ち切って就寝に付く。

 

 眠れるまで時間が掛かる、もしくは眠れるかとも思っていたが、存外直ぐに睡眠に入った--それだけ脳がすり減る程に疲れていたのだろう。

 

 

 

 翌日、終業式も滞りなく終わり春休みに入った--体調を幾分持ち直した堀北だが、出さなければいけない結論は全く進んでおらず憂鬱は増している。

 

 それでも行事がひとつ終わったのは気が楽になった--これからは個人的な事にしっかりと考えることが出来る。

 

 そう切り替えようとした時、ふと目に見えて気落ちしている一之瀬帆波が目に入った--堀北は記憶を辿る要領で、この確率世界の情報を引き出す。

 

(こっちではBも戦って、それでCに大敗を喫した--結果、クラスポイントはCに迫られて、リーダーとして責任を感じてるってとこかしら)

 

 これもまた堀北の中での齟齬に心が捩じれていく--堀北が知っている一之瀬は、嬰児に振り回されて自ら過去の汚点を暴露し‶こんなことは、もうウンザリだ〟と最初に堂々と抗議。自分の所為で余計な事態になっても元凶が違うと居直るような図太さを身に付けていた。

 

 要は甘さを完全に捨てて、平和主義者に似てる誰かじゃない個になる--そんな気概を見せられた。

 

 しかし今堀北の目に映っているのは正に敗残の将--参考までに話を聞けないかと思っていたのだが、どうしたものか?

 

 決断が出来ずに居ると、

 

「あの、顔色悪いけど大丈夫?」

 

 一之瀬の方から声を掛けられた--しかし内容は(堀北感覚で)もう何度目かになるもの、いい加減にウンザリしてくる。

 

 ただここで声を荒げたり突き放したりは無礼--ひと呼吸おいて平静を取り繕い振り向く。

 

「本調子とは言えないけどマシになって来てるから心配無用よ--それより一之瀬さんの方こそ元気が無いようね」

 

「にゃははは。そうだよね、今の私が言うのは変だよね」

 

 空元気なのが丸分かり--相当に参っているのにそれでも気に掛けてくれる。

 

(嬰児くんとの事が無ければ、善人も大変と同情してかしらね)

 

『綺麗事を舐めるな』

 

 一之瀬に似た『平和主義者』を語る際に出た言葉--もし嬰児がこの場に居たら言ってても可笑しくない。

 

 そして目下、堀北が考えて決めければならないのは、その後始末の肩代わり--ので訊いてみる。

 

「唐突だけど、もし今どんな願いでもひとつだけ叶うなら--貴女は何を願うかしら?」

 

「へ、なんでも?」

 

「そう、なんでも」

 

「……う~ん。そうだね」

 

 一之瀬は僅かに考えるのを見ながら堀北は予想--単純に考えれば、⑬世界平和とかの類。しかし出て来たのは、

 

「⑭昔に戻ってやり直したいかな」

 

 だった--気持ち的には分かるが、過去と蹴りを付けひと皮むけた一之瀬を知る身としては拍子抜け。

 

一気に話す気も失せた。

 

「そうなの……ごめんなさい。話を聞いてあげたいけど、本当に余裕が無くて」

 

「あ、いや、別に謝らなくても――――」

 

「少し風に当たりたいからもう行くわ」

 

 一之瀬が言い終わる前に足を進めて行く--失礼、無礼、不躾が総動員した行為だが双方気にしていない。

 

 方向性は違えども、心がいっぱい一杯なのは本当--幸か不幸か、気不味さもわだかまりもなく別れた。

 

 

 少し風に当たり頭も冷えた堀北--流石にさっきの別れ方には思うところが湧き後悔。

 

(……しきれないのがもどかしいわね。本当にどうしたらいいかしら?)

 

 そんな事を考えながら目的もなくただ歩く--歩きながらこのままじゃ、さっき以上の無礼を働いてしまうか、とも思い直ぐにそれは現実に。

 

「!?」

 

「ちょっと、気を付けてよ!」

 

「……ごめんなさい」

 

 ケヤキモールのカフェの前で出て来た客とぶつかりそうに--前方不注意は明らかに自分の方なので素直に謝るとそれ以上はなく状況的にはひと安心。

 

 ただ靄がかかり漠然とする思考のまま歩いてた所為か、気が付くと自分でも何でここに来てたのか?

 

 マシにはなっていたと思った調子もそうではなかったのか?

 

 後ろ向きな考えばかりが浮かび、それは顔にも表れる。

 

「あー、堀北さん。入るなら一緒にどう?」

 

 背後からの声に振り向くと心配そうな顔をした松下が--彼女だけでなく佐藤や篠原、それに軽井沢も。尤も彼女たちは気味が悪そうな目で見ていたが。

 

「お気遣いありがとう。ただお茶したい気分じゃないから」

 

「え、じゃ何でここに?」

 

「気が付いたら、いつの間にかね」

 

「えー…………」

 

 さっきから見ていたがフラ付いて明らかに調子が悪く、弱々しく謝罪し、問答してもドン引きするような返し……無理にでも医者に診せた方が。

 

(とか思われてそうね……)

 

 心配されたところで話せる事情ではない--寧ろ心配するなら、

 

「あの軽井沢さん」

 

「え、なに?」

 

 話していた松下でなく指名された--何が来るのかと身構える。そうして出て来たのは、

 

「もしどんな願いでもひとつだけ叶うなら何を願うかしら?」

 

 全く訳が分からないもので困惑が浮かんで来る。

 

 実に順当な反応を見ながら堀北は予想--困惑を感じながらも執着していた嬰児の残滓を感じ取り、それを感じさせる願い。

 

 ⑮圧倒的な実力を--のような感じなのをストレートか、準ずる形で。

 

 そんな期待を込めて待つ--当の軽井沢はしばし考えながら恐る恐ると言った風に口を開き、出て来たのは、

 

「⑯新しい彼氏、かな……」

 

 実に乙女と言うか、思春期の女子高生らしいもの--しかも本音であると実感させるニュアンス。とどのつまり、気になっている男子が居ると思させる仕草に一緒に居た女子たちも喰い付く。

 

「え、それって平田くん以上なのを見つけたって事?」

「なになに、水臭いじゃん--新しい恋、見つけたんだったら言ってよ」

 

「ちなみにその相手って、訳の分からないような実力者だったりとか?」

 

「いや、今一番訳分からないのは堀北さんだよ」

 

 普段の堀北なら決して混ざって来ないだろう話題--にも拘らず積極的に掘り下げて来た。その指摘に軽井沢も心臓を掴まれたかのような驚きを見せ、話題の継続は不味いと判断した松下が庇うように話の方向を強引に変える。

 

「一体何があったの?」

 

「少し昔を思い出して……神を信じないかとか、色々と命題を叩きつけられたわね」

 

「……宗教の話?」

 

 どこか遠い目をする堀北--語られた内容も相俟って更なるドン引きが。

 

「なんか気持ち悪いよ、今の堀北さん」

 

「ちょ、軽井沢さん。言い方」

 

 不可解さだけでなく不快感を含んだ棘のあるニュアンス--端的に自分は神を信じないと言っている。と、堀北は捉えた--同時に指摘も尤もだとも。

 

「そうね。私もそう思うわ」

 

 だからかの自嘲。この肯定にどうしたらの良いのか本気で分からなくなり軽井沢だけでなく他も戸惑う--ぶっちゃけ言えば、一刻も早く切り上げて去りたかった。

 

「櫛田さんもそう思うかしら?」

 

 淀んでいく雰囲気もなんのその、いきなりの指摘に驚き堀北が目をやるのにつられると。

 

「アハハハ。気付いてたんだ」

 

 カフェでお茶をしていた櫛田の姿--テーブルには王と前園の姿も。なんとも間の悪い--それでいて関わりたくなかった状況に皆、冷や汗が浮かぶ。

 

「ちなみに櫛田さんなら、なんでも願いが叶うならどうする?」

 

「う~ん、そうだな。⑰もっといっぱいの人とお友達になりたい--これしか考えられないね」

 

 櫛田らしい無難な解答--悪くないが面白くもなく今の流れを変える威力もない。堀北は遠くを見るを通り越して上の空状態。

 

 ……気不味さも増し、上手いことを言わなかった櫛田に非難が湧く。

 

 櫛田(とうにん)からすれば‶勝手な事を言うな!〟と内心で毒づいており、そんな心情を汲み取った堀北は、

 

(本当は⑱世界の頂点に立ちたい、でしょうね)

 

 堀北本来(?)の確率世界で堂々と宣言された、それも目の前で。更にその為に自分を利用するとも--自分が知っている世界ではないと分かってはいたが、このやり取りは極めつけで決定的。

 

 居心地の悪さ処ではない--あらゆる拒絶反応を総動員したようなショックが心身を襲う。言うなれば針のむしろに落ちたかのような、細胞のひとつひとつが悲鳴を上げているかのような錯覚。

 

 だからか話も中途半端のまま、無言で足を進めて去って行く。

 

「え、あ、ちょ……」

 

 咄嗟に引き留めようと手を伸ばそうともしたが、足が地面に張り付いたように動かず呆然と見送るしかなかった--当然、そのまま休みを満喫などと言う気分になれる筈もなく、暗黙の了解の様な形で解散。

 

 

 一方、半病人、夢遊病、もっと言えば幽霊の様な様相で歩いている堀北--心を占めているのは願いの使い道ではなく、今の世界と自分とのギャップ。

 目的もなくただ敷地内を歩き続けても自分の知らない景色は無い--それでもこの短い内に接した者たちは別人だとしか思えず、酷い落差に苛まれた。

 

(いいえ、違う--私の方がイレギュラーなのよね)

 

 頭では分かっていて言い聞かせようとしても実感を得られない--無意識から生じる軋みを思わせる音が脳内に響き、どんどん大きくなる。

 

 ⑲ならばこの音を消す--ひとつでもいいから問題は無くしたい。

 

(…………それで世界からはみ出してる実感がなくなるの?)

 

 この世界での過去も知っている--でも歩んで来たのは自分じゃないと自覚させられた。心が壊れないようにしたところで変わることのない現実--寧ろ狂うことすら出来なくなったら苦しみが続いて余計に辛くなるだけなんじゃないか?

 

 ひと度可能性を見出したら、どこまでも恐ろしく思えて来た--とうとう足を止め、その場に座り込んでしまう。

 

 

 

 どの位そうしていたのか?

 

 すっかり日が暮れてしまい、真っ暗の中、堀北鈴音はブツブツと独り言をつぶやき続けている。

 

 それを見て咎める者(・・・・・・)は居ない。

 

「願い事は決まりましたか?」

 

 背後からの声に振り向くとドゥデキャプルが、

 

「⑳ひとつだけの願いを百個に、でも構いませんよ--人の欲望が百、いいえいくつだろうと埋まる気はしませんが」

 

 フフフフ。

 

 不敵な笑いを聞きながら堀北は決心した--立ち上がり、正面に向き直る。

 

「私の願いは」

 

 堀北の顔は見えない--ドゥデキャプルは面白味と真剣さを持った顔で彼女の願いを待つ。

 

「私をこの世界の私にして!」

 

 叫びながら言う顔は恐れと悲しみ、寂しさと切なさ--マイナスの感情に圧し潰れられそうな一人の女の子。

 

 涙が溢れる顔を両手で覆い、胸の内を吐き出す。

 

「この世界に私の居場所なんかない……私が一緒に居たい人たちも居ないのに頑張れない…………私だけが違う、私だけ一人にしないで」

 

 後はもう泣き続け嗚咽を漏らすだけだった--ドゥデキャプルは涙が止まり乱れた気持ちが落ち着くまで待ってゆっくりと口を開く。

 

「OK。貴女様の心の叫び、それこそが戦士たちが守りたいもの--牛井嬰児もきっとしたり顔で肯いているでしょう」

 

 帽子を取り丁寧にお辞儀--それは建前でも社交辞令でもない本当の敬意が込めれていた。

 

「その願い--確かに聞き届けました」

 

 

 

 三月三十一日--卒業生たちが去る日、正門前で堀北学と綾小路清隆が握手した手を離した瞬間、

 

「兄さん!!」

 

 声の方を向いた堀北学は強く驚いた--綾小路も『初めて見る』髪を短くした堀北鈴音に言葉を失う。

 

「変われた--いや戻れたようだな」

 

「何年も掛かりました--そして今ここで誓います」

 

 意を決した妹の姿を見る兄--流石に無粋だと綾小路は正門から去る。

 

「私は兄さんの後を追わず、自分の道を見つけます--これからはクラスメイトの為に自ら前を歩けるようにと思ってます」

 

「本当にもう大丈夫のようだな--だからこそ言う。俺はお前を大切に思ってる」

 

「!?」

 

「故に俺を目標にしてしまったことを許せなかった--そして嘘もついた。昔言った長い髪の女が好みだと言うのも嘘だ--お前が真に受けるか確かめる為のな」

 

「酷い嘘ですね--でも許します。そのお陰で今があると思えるから」

 

 兄は妹の肩を抱き、顔を合わせる。

 

「二年後、正門の外で待つ」

 

「はい。精一杯、最後まで戦い抜きます」

 

 涙流しならの誓いに兄は優しく微笑む。

 

「また会おう」

 

「はい」

 

 堀北学は正門をくぐり学校を去る--見送る堀北鈴音、その顔は涙を流していた。

 ただその目に秘めていたのは力強い意志--まるで今の自分こそが願ってもない姿だと言う様にも見えた。

 

 どうしても叶えたい願いの為にその気になる綾小路と、別のどうでもいい願いの為になんとなくいるオリ主、完(仮)

 






 確率的『未』確定――――



「私の願いは」

 堀北の顔は見えない--ドゥデキャプルは面白味と真剣さを持った顔で彼女の願いを待つ。

「私を、私の知っている世界に戻して!」


 叫びながら言う顔は恐れと悲しみ、寂しさと切なさ--マイナスの感情に圧し潰れられそうな一人の女の子。
 
 涙が溢れる顔を両手で覆い、胸の内を吐き出す。

「この世界に私の居場所なんかない……私が一緒に居たい人たちも居ないのに頑張れない…………私だけが違う、私だけ一人にしないで」

 後はもう泣き続け嗚咽を漏らすだけだった--ドゥデキャプルは涙が止まり乱れた気持ちが落ち着くまで待ってゆっくりと口を開く。

「OK。やはり戦士でない者には早すぎる命題でしたか--と、そう言う訳です。牛井嬰児」

「え?」

 手を離し顔上げる堀北--するとコツコツと足音がして暗闇の中から誰かが現れた。

「……嬰児くん?」

「今まで見た中で一番ひどい顔だな」

 呆然としている相手に対し、開口一番の皮肉--以前にも同じ様なことがあったと思い出し、色んなものが一変に吹き飛ぶ。

「何よ、それ!少しは感謝しなさいよ!!」

「何をだよ--と言いたいところだが、その前にその顔なんとかしろ」

 嬰児はハンカチを差し出す--それをひったくる様に乱暴に手に取った堀北は無造作に涙を拭う。



 ***



 全く、綺麗さっぱり消えられると思ったのに。

「……余計なことをしやがって、って顔ね」

「そう書いてあるか?」

「クッキリとね--そんなに死んでた方が良かったの?」

「元々居ないんだよ--俺の責任、肩代わりしてくれるんじゃ無かったのかよ」

「誰かの命を使って願いを叶えるなんて聞いてないわよ!」

 別に俺の命なんて気にせんでいいのに……なんて言ったら激昂するかね。しかしそれでも勿体ないことしたよな。

 ……いや、そんな元気も無いかね。

「ああ、そうかい。取り敢えず今日はもう寝ろ」

 パチン--と耳元で指を鳴らして久々に『牡羊』を発動。瞬く間に崩れ落ちたの受け止めた--寝息を立ててるが安らかとは言えない顔。

 正直、何も言う気にもなれないな。

 ただこうなったなら、面倒も継続か--どうなるんだ、ドゥデキャプル?

「どうでしたか、一日だけの元の状態は?」

 聞きたくもないどうでもいい問いかよ--って態とやってるよな?

「そのままにしてた方が良かっただろ--全部が全部」

「しかし願いは正確に叶えられなければなりません--彼女が貴方の居る世界を望んだなら」

「違うだろ--プレッシャーに耐えられなくなっただけのありふれた話だ」

 俺も思うところが無い訳じゃないが、この娘にこれ以上のものは背負わせるべきじゃない--これは絶対に通すぞ。

「フフフ。ご心配なく、こうなることも想定していましたので、準備は滞りなく」

「信じていいんだよな?」

「はい。彼女との交渉の結果は‶まだ早い〟と言うことで保留と言う形で落ち着きます」

 まだって何だよ……いや深く詮索するのはよすか。

「で、外部からの干渉は最初に戻っての形で誠意を持つでいいかな?」

 じゃないと、どうなるのかは流石に想像が付かん--俺が責任を取るって形に落ち着くのがベストだが。

「誠意は尽くします--ただ、貴方への自由はありえません」

「ハッキリ言うな--で、結局特例はそのままってことか?」

「協議し選定した後、お伝えします--今はお休みを」

 やれやれ、としか言えない締まらない終わりだ--ま、ずっとこうしてる訳にもいかんし、堀北をおぶり寮に戻る。



 翌日の朝--眠い目を擦りながらロビーまで行くと、

「遅いわよ--女性を待たせるなんて紳士にあるまじきことよ」

「やめろよ……朝から突っかかるのは」

 開口一番に堀北のキツイひと言--元気になり過ぎだろう。ってか、俺が予定知ったのは、ついさっきなんだぞ。

「これには私の名誉が懸かってるのよ--初っ端ら躓いたら格好付かないじゃない」

「何もそこまでマジにならなくても」

「いいから行くわよ」

 そうして嫌々な形で外に出ると、

「遅かったな」
「もう少し後でも良かったんですが」

 朝っぱらから綾小路と坂柳(バカップル)の惚気シーン……絶対に約束よりもずっと前に来たのが窺い知れる。

 仲が良くて結構なことで。

 そして気合十分はコイツも同じ--俺が付き合わなくてもよかったんじゃ?

「揃ったなら行きましょう--次の式は前を超えるのをプロデュースするわ」

「はい。よろしくお願いします」

「有栖。はしゃぎ過ぎるなよ」

 うわ。転ばない様……と思うがしっかりと腕を組んじゃって。

「綾小路くんはもっと積極的になるべきじゃない」

 益々気合が入ったか、堀北--やり甲斐を感じるのは良いが、程々にして欲しいもんだ。折角の長い休みなんだから。



 一年生編(了)










 宣告通り、この作品はこれで切ります--続けたいモチベーションが得られなければ完全に打ち切り、(仮)を外して後の分岐は消滅。
 続けると決めたなら先の分岐を消滅させて、あとがきにある分岐を本文に上げます--どちらに確定するかは当然未定です。

 ので先に、長い間ご愛読ありがとうございました(仮)とさせて頂きます--それでは失礼いたします。
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