人類は滅んだ。今この場にいる4人が最後の生き残りである。
「というわけでどうにかして人類を再興する方法を考えましょ! わたしはひとつ思いついてるわ! 子作りしましょー!」
「ショックで股緩くなったんか」
「白々先輩、発言が最低のそれだと思いまーす」
「そして会長の発言も十分最低だと思います。なんでどいつもこいつも下ネタに走らなきゃいけないんですかね」
「パトスが奔り出したのさ!」
「抑えて禁欲してください」
「しずくちゃんさいてー! わたしに禁欲しろだなんて……! 三秒と持たない自信があるわ」
「あんたの脳みそジュゴンよりちっちゃいの? ババロアのほうが有意義なんじゃない?」
「うわひっど。わたしの頭の中には超うるとらミラクルでビックバンなナニカが詰まってるんですー!」
「欲望でしょうねぇ……」
と、いうことで始まりました第36回生徒会会議。実況解説は私
(なんてやってねーと気が狂いそうでやってられねーんだけれど、それはまた別の話としておいておく)
「会長、どうして今日はそんなにテンション高いんですか。普段もっ沈んでるじゃないですか」
「あーうん。せっかく世界から人が消えたんだから今まで行ったことなかった場所───具体的にはビデオ屋の暖簾の向こう側なんだけどね? そこで見た景色が想像以上に幻想的だったから友達が消えたショックなんか吹っ飛んじゃったよ。というか友達ってなに? そんなのあった?」
「エロに負ける友達とかめちゃくちゃかわいそうですね……」
「めっちゃおもしろいAVあったよ。女優にバズーカ撃つやつ」
「製作陣の気が知れねぇ」
早速AV談義で盛り上がってるあたりどうしようもない生徒会であるが、しかしこれでも人類最後の生き残りである。繰り返すが人類最後の生き残りである。
(正直素直に滅んだんじゃないかなぁってのが個人の感想なんだけれど、これはどうだろう。あながち的を外してない気がするぞ)
「AVはどうでもいいから、ちゃんと考えましょうよ」
「んーじゃあ全員で浣腸して考える?」
「ノータイムでその答えが返ってくるあたり副部長ドン引きだわ」
「白々先輩、生徒会長をどうにかしてくださいよー。頭の中エロしか詰まってません。つまり空っぽです」
「辛辣だね
「誰も罹ったことない病気に罹って三年くらい苦しんで死んでほしい」
「洒落にならねぇ!」
「そのピンク色の脳みそでもっとちゃんと考えたらどうですか? 一応あなた、頭だけはよかったでしょうに」
「うーん……昔の偉い神様は言いました、『汝今何時?』」
「思いついても言うなよ関係ない」
「股間がぴったんこカンカン」
「あんまりの風評被害に世界から怒られてしまえ」
「しらたきはおっぱいにならないと思う」
「だめだこいつ日本語考えてねぇ」
平木ちゃんがため息をついた。
(個人的な感想を言わせてもらうが、現在の気候は異常気象もよいところなので喉元を流れて胸へ伝う汗がグッドだと思う。思わず俺は笑顔になった)
「なに笑ってるんですか気持ち悪い」
「いやなにもおもしろくなんてなかったよ。しずくの下の雫について思いを馳せてただけ」
「自動ドアに挟まれて死ね」
現状、殺人行為に奔る者がいないし車もないから死因があるとしたら病気か機械事故かくらいである。なのでたしかに自動ドアに挟まれて死ぬ可能性もあるんだろうがそのチョイスはさすがに無茶があると思う。
(しずくはなかなかツンケンとしたところがあるから仕方ない。誕生日は6月13日と微妙な位置だ。13って数字に生まれてるからこんな性格になったんだろうか。それはそれとして身長は148cm、体重は42kgとなかなか小柄で軽い人間とは思えないほどであるくせにいったい何でその胸は構成されているのだろうか。中身亜空間なのだろうか。血液型はB。おっぱいは大きい。いっかい偶然を装って揉みしだいたら瓦礫と瓦礫でサンドイッチされかけた。まさか超能力持ちとは思いもしな)
「あの顔白々先輩が気持ち悪いこと考えてるときの顔だね。しずくちゃん気をつけたほうがいいよ」
「おっぱい見てますよねあれ」
「あの人には服なんて効果ないからね。普通に服程度なら透けて見えると思う。だからたぶん普通に私達は全裸姿で見えてると思います」
「え……本気で気持ち悪い」
「無駄に洗練された無駄のない無駄なセクハラ技術だよ。正直スペックはいいんだから会長も副会長もエロから離れてほしい」
「ん? スリランカのスリをスリしたらランカになって服剥いだみたいでなんかエロいって?」
「わけがわからないんですけど」
「世界の起源はおっぱいだよ。デモクリトスも言ってたよ」
「原子論に土下座してください」
「あーそういえばわたし思うんだよね。歴史上の偉人って好奇心から絶対セクハラ決行したことあるよね。セクハラをする覚悟があるやつだけが偉人になれるのかな」
「そろそろ怒りますよ」
「題名 『先走れエロス』。メロスは激怒した。必ずあの邪智暴虐の王をファックすると決意した。メロスには政治がわからぬ。朝になれば股関の棒が熱り立つ程度にしかわからぬ。メロスは
「即興でそんなこと詠まないでください」
俺は小さく息を吐く。いや、なんだ。世界が滅んでからそんなに時間が経ってはいないが、なんというかいろいろ疲れも溜まるだろう? セクハラで無聊を慰めているのだ。それがセクハラなのだ。
(実直な話をすると───俺は好き好んで道化をやっているわけじゃあない。そうでもしないと、
「あー! みんな! クイズクイズ! パンはパンでも食べられないパンってなんだ!」
「フライパン」
「ドラゴンボールのパンちゃん」
「パンツかセックスの擬音」
「白々くんは天才だよ……」
「お、やっぱそうっすか。そう思いますか会長! そうです俺は偉大なんですよもっと褒めて讃えましょうその度俺は鼻が伸びます」
「褒めなかったら?」
「陥没して脳幹貫かれて死にます」
「きゃーすごい! この世界唯一の男さすが! さすが!」
「冗談ですよ」
「騙したな!!」
いくら俺でもそんなことありえるわけがない、と机に突っ伏しながら言う。
(いやまぁ、実際相手の服は透けて見えるわけだけどな。けどこれあんまり効果ないぜ。今は女子しかいないが、男がわんさかいたときは視界の暴力で何回か目が潰れたことがある)
「でも白々くんこの間『餞別だ』とか言って自分の腕千切ってたじゃない」
「俺の腕千切っても生えてくるんですよ。食べるとHP全回復しますが代償に三ヶ月くらい下痢に苦しみます」
「代償が大きすぎる……女の子捨てたつもりはないから食べないけど千切っていい?」
「あんた頭おかしいのか……ああっ!? やめてしずく! 腕千切りにくるのはやめて! 生えてくるけどすっげー痛いのこれ!」
「私は不死者を殺すことができます。あなたがどれだけ生き返ろうともかならずその息の根を止めてみせますよ」
「やめろォ!!」
やめろォ!!
その場は平木が収めてくれた。
平木───
(ちなみにこの間腕をあげたのはこいつだ。ナニに使っているのかはしらんが後日、『先輩の指すっごいよかった……』と言っていた。いやほんとにナニをしたのかしらんが)
「あ、そういえば平木ちゃん白々くんの腕どうしたの?」
「うぇぇっ!? えっ、あっ、あのぉ……」
「それは俺も気になるな。どうしたんだ? 俺の腕は」
「ぅ、ぅぅぅぅぅぅ……先輩の馬鹿……」
瞳に涙を溜めながら、
「刻んでうどんのトッピングにしました……」
(?????????????????????????????)
「しずくちゃんより美味しかったです……」
(?????????????????????????????)
「まっ、まさかッ!!」
「なにを愉快な想像してるのか知りませんけどお腹が空いて力が出ないって言ってた平木に血をあげただけですよ」
「母乳って血からできてるんだよね。つまり実質授乳プレイ」
「殺伐授乳プレイ……しずくちゃんやるね、さすがのわたしもそこまではやったことなかったよ……」
「あなた達を黙らせるのに五秒あればおつりがきます」
躊躇なく首を切り落とされた。めちゃくちゃ痛い。
生えてきた首であたりを見回すと、しずくが俺の首を抱えて座っている。
「なにしてんの?」
「ネフェルピトーのマネだってさ」
「耳生やしてから出直せよその胸に詰まってるもん全部出してよォ」
「やべぇこいつなんの躊躇もなく女の子のおっぱいに触れようとしやがった! ついに遠慮もなくなったぞ!」
「かかってくるのはいいけどいくらやっても私には勝てませんよ」
「じゃあバトルしようぜバトル! 腕相撲で俺が勝ったらお前は俺の家畜な」
「いいですよ……よーい」
開始と同時に負けた。
なにをされたのかすらわからなかった。それほど素早く腕が倒された。どういうことだ……ただひたすら当惑する。
「期待はずれです、先輩。では私が勝ったので約束どおり───死んでください」
「ぼくそんなこといってない」
「じゃああなたは私のペットです」
「あ、はいわかりましたんでどこマッサージします? 胸? 胸?」
「あなたは色欲の化身ですか?」
「……………………」
…………………………………………。
…………………………………………なぜバレた?
(なんて思わせぶりなことやってるけど実際にはそんな事実全くなくただの馬鹿である。といっても、わりとこの馬鹿やるのもしんどくなってきた。いったいいつになったらこの地獄は終わるのだと考え始めてきた今日このごろ)
教室の黒板に描かれた文字は、ある日を境に止まったまま。今からはるか過去の日付で停止している。
その止まった世界の中で、俺たち四人だけがたしかに存在している。
生徒会役員───などと言ったが、そんなのはノリとテンションで生徒会室を乗っ取って遊んでただけだ。俺はただの1生徒にすぎない。そんな俺が、どうして生き残ってしまったのか、わからない。
今でも思い出す───少し昔の記憶。
机を撫ぜながら、その硬い感触に懐かしい面影を見つけ、愚かしくもそれに縋りつこうとしてしまう。時は止まらず進んでゆく。たった一人になったとしても。そしてその記憶が、正しくはないとしても。
この世界が一体なんなのか。俺たちには何の役目が与えられたのか。それが終わったとき、俺たちはどうなるのか───わからない。わかるのは、一つ。
この世界は、俺たち四人が永久に続けるしかないこと。
「俺たちは死ねないのかもしれない───」
いや、きっとそうだろう。普通の人間が、頭ねじ切れて死なないわけがない。人の服を透視できるはずもない。そもそも
その記憶すら、到底疑わしいものなのに。
世界五秒前説というものがある。
そのとおり、世界は五秒前に誕生して、今までの記憶は強制的にインプットされただけで、実際にそんな出来事は起こっていないのではないか。
俺が抱えているこの疑問は、おそらく正しいだろう。きっと間違いない。そういう、漠然とした、しかし確信と呼べるものがある。
俺が抱えている過去の記憶は、いや、俺たち四人が抱えている過去の記憶は全て嘘っぱちのものだ。
俺の頭の中には、大切だっただれかの記憶がある。けれどその顔も思い出せない。髪の香りは、幽かに覚えているかもしれない。そんなもの、頭をこじ開けてみるまでわからない。それほどまでに、最近のもののはずなのに記憶が風化している。
俺たちに与えられた
この日常をつつがなく永遠に続けていくのが、俺たちの使命。役割。仕事。存在理由。それから踏み外すのは、どうしようもなく愚かしい。
「あ、白々くん。ここにいたんだ」
「ああ……会長」
「元気ないね? 大丈夫? おっぱい揉む?」
「揉みます」
「あ……ど、どうぞ」
なにこの気まずい雰囲気。
結局、俺は会長の胸には手をつけず、机の上に座った。この位置からじゃあ、黒板がよく見える。
「……………………」
彼女が息を呑んだ。それは、黒板に目をやってのことだった。
「これ……全部、白々くんが……?」
「…………内緒です」
そこに描いたのは、俺が疑問に思ったこと。
例えば俺、白々白水───白々、という言葉は、あんまりいい意味じゃあない。そしてこの名前はどうしようもなく白々しくも空々しく、享楽的に刹那的に生きようと馬鹿をやっている俺という役割に相応しい名前。
例えばしずく、あいつからはあんまり名前どおりの印象はないが───しかし、『血をやる』、など、名前に則った行動を取っている。
例えば平木。あいつは意外に開き直る節がある。名前どおりの行動だ。
───で、あれば。
それは───
「え……? あはは。なにこれ。本気で思ってるわけじゃない、よね?」
「ええ、勿論。……勿論───全部、本気の考察です」
「……残念、はずれなんだ」
彼女は、俺の隣に腰掛ける。
体と体が触れ合うほどひっついて、汗だろうか、瑞々しい肌の感触がそこにあった。すこしべたつくような、少し不快なようで、どうにも心地よいそんな感触。
そんな、ちょっとした感覚の共有。
その中で、彼女がゆっくりと口を開いた。
「わたしたちの役割ってなんだと思う?」
「道化だと、俺は勝手に推測してます」
「ふーん。道化だなんてえっちいんだ。あっそびにーん。わたしたち三人とも手玉に取っちゃう? ハーレム状態だよ? 男の浪漫だよね」
「生憎、女好きはキャラ立てでしてね。それに常に全裸が見えてる女子と付き合うというのも、新鮮味がないというか」
「やらしーんだ」
「いや、そういう意味ではなく。くそ、なんで俺は女子の裸が見えるんだ……」
「肖像権の侵害、プライバシーポリシーなってない、違法視聴は犯罪です、変態変態大変態」
「酷い言い草ですね……」
「でも君、女の子のデリケートゾーンを自由に見ることができるってことだよね? やらしーんだ、ひょっとしたら剃ってない子だっているかもなのに」
「女子って剃ってるんですか?」
「さぁ? 知らない」
「まぁ、たしかに会長は剃ってないですね」
「うわっ、ほんとに見えてるの? 変態さんだぁ」
「でも会長、ちょっと考えてくださいよ。ガチガチのシリアスシーンなのに、俺からみるキャラクターは全員全裸なんですよ? どう思います? さすがに萎えるというか」
「女の子の裸を見て萎えるなんてしつれーな。あ、じゃあどうする? 実際に触ったら萎えないでしょ?」
「シリアスシーンでそんなことされたらガン立ちのガン萎えですよ」
冗談めかして言ったが、彼女は想像したのか黙り込んだ。
今日はやけに静かだ。この間のときが尋常じゃなかったというだけではあるんだが、しかしそれにしても今日は特に静かだと思う。
俺は黒板を見た。
そこには、会長を疑う文章の数々の羅列がある。
疑われた彼女は、一体なにを感じたのだろうか。俺への反感だろうか。あるいは罪悪感か、もしくはただショックを受けたか。
ひょっとすると───いや、しないでも落ち込んでいるのだろう。
俺が疑ったから。
俺が。
疑ったから。
「会長」
これは思うに罪悪感だ。過去を植え付けられた、実感の薄い俺でも、今の俺が覚える感情に名前を付けて分別することくらいはできる。
罪悪感からの行為だ。
「……ん、なに?」
「へこんでるみたいですね。どうです? 俺と一緒に、ベッドインを前提にベッドインするというのは」
「……あっははははははは!」
彼女は笑って、俺の頬を引っ張った。
「百年はやいよ、どーてーさん!」
翌日。
会長に呼び出され、向かった先は校門だ───そこに、一つ、普段ではみない異様な光景があった。
車がそこに置いてあった。
「会長、これどうしたんですか?」
「童貞には教えてあげません」
「えっ、白々先輩童貞なんですか!? かわいそう……」
「童貞……ふっ」
「俺が温厚だからと言って嘗めてるとケツに無効貫通するぞ」
「ひょっとしてホモだったの?」
「だれがそんなこと言ったんですかねぇ……それで、会長。これは?」
「職員室から車の鍵パチって確保なのです。ガソリンスタンドはあちこちである限り使えるし、車もたくさん転がってるし、だれもいなくなった世界を探検してみないかなって? わたしも? 思ったんだよね───AV漁ってるときに」
「そろそろAV漁るのやめなよ」
「やめられない……世界の闇がわたしを待っている……!」
会長が胸を強調して厨二ポーズを取った。
俺からしたら包み隠す場所を全部さらけ出したポーズになっている。
(これひょっとして強力な精神攻撃か? いや、たぶんそうだろ。いやーあぶないあぶない視線が吸い寄せられるところだったわあぶねー……会長、こうしてみるとおっぱい綺麗だよなぁ)
「視線を察知、バレてるよ童貞くん」
「ガッデムソクラテス」
「ソクラテスってなにした人でしたっけ?」
「考える人」
「頭が2つあるよ!」
「奴を示す名にbothというものもあるな」
「異世界転生の冒頭で出てくる神様の三十倍の強さを誇る天才だよ」
「嘘を吹き込むのはやめてほしいですね……平木の頭が穢れます。特にこんな変態二人とか……」
と、言葉の途中で俺は手を伸ばした。無造作に。すると、狙い定めた通りにしずくの胸に指が沈み込む。その感触を人は『しらたきに似てる』と言った……
「そう、これがおっぱいです」
「石の中に転送されて死んでください」
「やだねっ!」
「逃げやがった! まちやがれこのクソ!」
「え、想像以上に口悪いんですけど」
逃げながら、俺は小さくつぶやいた。
何度、この日々を繰り返すだろう。何度、この日々を繰り返しただろう。
いつかは世界を地獄だと感じるようになるかもしれない。永遠に終わらない世界の連鎖とは、だんだんと心を蝕むものだ。だけど、そんな世界だからこそ思ったことがある。
馬鹿やって、アホくせぇこと言って、くっそつまんねー下ネタで騒いで、時々シリアスして、セクハラして、笑ってりゃあ時間は過ぎるもんなんだって。
後に後悔してもいい。今はただ、
それが、今の俺が出した結論で。
あとのことは未来の俺が考えるだろうと全力で丸投げした結果の現状の解答でもある。
悩み悩んで新境地。面持ち新たに新天地。
ゆくぞ我らが生徒会! しかしその名は
カッコつかないお年頃なようで。それでは。
俺が去った後のこと。
会長は、ただ佇んでつぶやいた。
「しらたきはおっぱいにならないと思う」
昔ある企画に参加しようとしたときに書いた作品です。
あのころのぼくは正気を失ってたんだと思います。
補足
血液から母乳ができるわけじゃなくて母乳と血液の成分が同じってだけだったはずです。これ血液に限らず涙とかもそうだったはずので涙はすなわち男の母乳??
あと主人公が服を透視する能力を持っているわけではなく全員服を着てないだけです。そのことにだれも違和感を覚えない現実……