「善逸!また泣き叫んで恥さらしてるの?それって趣味?特技?私の隣を歩くんだからさ、もう少し偽物でもいいからシャキッとしてよ!」
「うるせえよ!?俺はな、明日に死んでもおかしくないぐらいものすごく弱いんだぞ!?飛鳥みたいに鬼の前だと豹変して我を忘れて最凶になるような、怖いもの知らずの心臓にマリモでも住み着いてるような図太い神経じゃないの!!」
「ごめん、飛鳥ちゃんはよく分かんない!」
「聞く気がまずないよね!?俺が恐怖に打ち震えた思いをさらけ出してるっていうのに、お前は呑気に栗饅頭を食ってるよね!?ちょっと!?それって俺の分の栗饅頭じゃないの!?」
「世の中、取るか取らないかだよ!そもそも、この私に食べられて栗饅頭も満足だって~!ほら、自慢の耳で栗饅頭に聞いてみてよ?」
「栗饅頭がどうやって喋るんだよ!!」
最終選別を生き抜いて、たった六人の同期となったうちの一人の雨園飛鳥。
鬼殺隊に嵐を巻き起こす少女、伝説の問題児、最重要注意人物、監視対象、最低最悪の自己中少女。
そして、俺が生まれて初めて好きになった子。
「飛鳥、好きだよ…すごく!すごく!」
「え?あ…え!?」
あの時の、驚いて君のその真っ赤な髪のように赤くなった顔を俺は一生忘れないと思う。
夕日が綺麗な帰り道で、俺は飛鳥に告白をした。
君の真っ赤な髪は夕日に照らされて星みたいにキラキラと輝いていて、それを独り占めしたいと思った俺は止まれなかった。
自分中心に世界が回ってて自信満々で散々周りを振り回すくせに、それなのにいざって時は誰より人を優先して平気で傷つきにいく。
「突然何?あ、善逸も、やっと私の溢れ出す魅力に気づいたわけね?まあまあ苦しゅうないぞ!」
「うん、とっくに気づいてた!そんで、俺は飛鳥を好きになって、誰にも渡したくないんだ!」
「う…あ…何で、そんな素直なの?」
「そうだよね!?思うよね!?俺だって飛鳥には誰より優しくしたかったし、甘えて欲しかったけど、自覚したらもう何か素直になれないの!!素直って何!?って状態なの!!」
「は、はあ…」
「そんで会う度に飛鳥だって意味不明なことばっかり言うからさ!!喧嘩ばっかりで、その度に炭治郎の布団に入って枕を濡らして、伊之助には弱味噌がって殴られて、カナヲちゃんには氷みたいな目を向けられて、玄弥からは毎日俺の長所を褒めてもらうみたいな生活をしてたんだよ!!俺の生活は無茶苦茶なの!!」
「地味に玄弥のがキツいかもね…」
「冷静な分析と感想なんていらないんだよ!!」
最初は気まずそうにしてた飛鳥も今は心底ドン引きしてる、その顔って炭治郎に似てるね!!
ごめんなさいね!?けどね、好きな子に告白したのにそんな顔向けられたら俺死んじゃうからやめて?
飛鳥からは苦しくなるような切ない音がする。
普段の様子からは想像も出来ないような、消えてしまいそうな切ない音が鳴り響いている。
飛鳥を好きになったのはいつだろう?
正確になんて分からないけど、気づいた時には手遅れになるくらい溢れてた。
飛鳥が笑顔を向ける全てを俺も分かち合いたかったし、飛鳥の涙や怒りの原因になる全てのものから守ってあげたかったし、隣にいたかった。
鬼に家族を殺されて、鬼を憎んで、他人の幸せばかりを優先して、自分の命をどこか粗末にする飛鳥を幸せにして、人生をかけて支えたかった。
誰からも心配されないぐらいに、せめて大好きな子は守れるぐらいに強くなりたかった。
「善逸、すごく嬉しいよ?嬉しいけど…」
「自分には幸せに出来ないって?」
「さすが善逸!分かってる~、あと、善逸のことをそんな風に見たことなかったし?」
「知ってたよ!!俺を意識してないことなんて百も承知ですよ!?片想い舐めんじゃねえよ!?」
「あ、ごめん…ね?」
「謝るなよ!!余計に虚しいわ!!そもそも、飛鳥は無防備なんだよ!!俺の布団で寒いから一緒に寝ようとか、寝巻きで俺の前ウロウロするとか、ところ構わず平気で抱き着くとか、俺がどれだけ理性と戦ってると思ってんの!?鬼と戦ってた方がマシ…前言撤回!!やっぱり、鬼は嫌だ!!」
「以後気をつけます…」
こんな俺を見捨てずに、どんな時も手を伸ばしてくれる優しくて温かい太陽みたいな子。
好きにならない方がおかしいよこんなの…
「善逸?息切れしてるところ悪いけど」
「誰のせいだと…」
「私はどうしたらいいかな?」
「え!?」
「あまりにも突然でびっくりしたけど、嬉しかったのは本当だし、これからはいやでも善逸のこと意識しちゃうと思うし…どうしたらいいかな?」
「可愛すぎ」
「は?」
「何でもないよ!!それに、俺は飛鳥にも俺を好きになってもらいたいの!!」
「…分かった」
「え、分かった?分かったって言った!?」
「とりあえず、手繋ご!」
「まままままま、待って!!心の準備を…!!」
今までの俺の人生の中で、あんなに幸せだった瞬間はきっとなかった。
これからだってずっと、大好きでたまらない飛鳥を守って2人で幸せになるって思ってた。
「飛鳥、飛鳥、起きて?目を開けて?」
「善逸…行こう」
「嫌だよ、飛鳥?嫌だ!!こんなの嫌だ!!」
「なあ、善逸!!」
「待て炭治郎、今はいいだろ」
「玄弥、けど…」
「好きだよ!!誰よりも好きだよ、飛鳥…」
「伊之助、あれは飛鳥じゃないよね?」
「ああ、絶対にちげえよ…」
「カナヲも伊之助も、そっとしとこうぜ」
「ねえ、飛鳥!?目を開けてよ!!分かったって、俺のこと好きになるって言ったじゃんか!!」
(愛しい君は眠ったまま)
――君のいない世界なんて生きる意味ないよ