どうにも定まりませんなあ

1 / 1
2-2の荘園公領制

1『朝廷』

 

 

 

電気つける。

 

舞台中央に後三条天皇が座っている、その横に匡房が控えている。

 

後三条「ん〜……」

匡房「どうしました?後三条天皇。」

後三条「おお匡房。財政を立て直すにはどうすれば良いかなって考えてたんだが……」

匡房「なにか思い浮かびましたか?」

後三条「……荘園、多くない??」

匡房「わかります!!それに、荘園の開発領主の中には税の負担を逃れるために権力者に荘園を寄進する者どもがいて……」

後三条「寄進地系荘園のことだな。上級の領主……本家なんかはそうとう裕福になってるぞ……」

匡房「はい。やはり荘園の増加が我々の公領を圧迫していると思います……。」

後三条「そうだよな……どうにか荘園を減らしたいな」

匡房「やっぱり荘園整理令じゃないですか?」

後三条「あー、醍醐天皇とかがやってたやつ…」

匡房「それは延喜の荘園整理令、ですね。そうですそうです」

後三条「あれで違法な荘園はなくせるしな……よし、荘園整理令を出すぞ!」

匡房「わかりました、すぐに記録荘園券契所を設置して、荘園所有者に書類を提出させます!」

後三条「書類不備のものと、あと年代が新しいものは権利を停止するんだ!」

匡房「はいっ!」

 

二人、下手に退場

 

 

 

2『とある荘園』

 

 

 

ナレーション「朝廷でそのような動きがあったのはさておき、とある荘園に、時実(ときざね)という下司がおりました。彼は、この時代農民の上に立つ者としては珍しく、農民達に人気がありました………」

 

農民A〜D、畑を耕す動き。時実、上手から入ってくる。

 

時実「みんなおはよう!」

農民A「おお、時実様じゃないですか!」

農民B「おはようございます!」

時実「みんな、作物の調子はどう?」

農民C「みんな順調に育ってますよ」

農民D「それもこれも時実様が無理なく勧農してくださるからです」

時実「君たちは税も納めなきゃいけないし、無理はさせられないよ」

農民A「さすが時実様!一代前はそうはいかなかったですよ」

農民B「時実様のお父様の頃は、ここを開墾したてでなあ、だいぶこき使われたっすわ」

農民A「お前!何言ってんだ!」

農民D「すみません時実様…決してお父様を侮辱しようとかは…」

時実「いいんだいいんだ。実際酷かったらしいしな。国司から任命されて田堵となった父さんは、開発領主としてこの土地を開墾した……けど、すぐ摂関家に寄進して、税負担から逃れ、その上自分は好き放題。農民の生活なんてまるで考えてたなかった……」

農民B「その通りだ!」

農民A「だからお前失礼だって!」

農民C「でも時実様、ここが寄進地系荘園なら、摂関家の保護がありますよね。お父様の頃より耕す量減ってますけど、その辺平気なんですか?保護がなくなったりとかは……?」

時実「ああ、何も言われていないから、保護されなくなったなんてことはないはずだ」

農民D「なら私達も安心です!」

 

匡房、文を持って入ってくる。

 

匡房「後三条天皇より、荘園整理令だ!!」

時実「まさか、この荘園を廃止する気ですか!?」

匡房「おい落ち着け、ここの下司か?記録荘園券契所を設置したから、そこに書類を持って来い。不備があればこの荘園の権利は停止するが……なければそのまま富として持っていて良いぞ」

時実「なるほど、わかりました」

 

匡房、下手に退場。

 

農民A「なんなんですかあれ……」

農民B「大丈夫ですか、時実様」

時実「ああ、平気だ。気にせず続けてくれ」

農民C「よし、向こうの方やるよ!」

農民D「よおし!」

 

農民下手に退場。

 

時実「まずいな…みんなの負担を減らすために甘めに支配してたから、書類揃うかな……いや、必ずこの荘園は残して見せる!」

 

時実、上手に退場。

 

電気消す。

 

農民F〜H、下手から出てくる。畑を耕す動き。

 

電気つける。

 

農民E、下手より手紙を持って出てくる。

 

農民E「時実様いらっしゃいますか??」

 

時実、上手から出てくる。(返事しながら)

 

時実「どうした?」

農民E「なんか、偉そうな人から文をもらいました」

時実に手紙を渡す。

時実「券契所からだ。どれどれ……『(小声で読む)書類不備のため、近々この荘園の権利を停止する』なんだって!?」

農民F「どうしました?」

農民G「なんですかその手紙?」

農民H「なんて書いてあるんです?」

時実「いや、なんでもない…」

農民F「もしかして、この荘園なくなっちゃうんですか?」

時実「いや、大丈夫だ。そうならないように頑張るよ」

農民G「お願いしますよ時実様」

農民H「時実様なら、大丈夫ですよね!」

時実「ああ、任せろ!」

 

農民は下手、時実は上手に退場。

 

時実出てくる。

 

時実「荘園の権利を停止されたら、みんなの生活が窮困する……!摂関家に保護の申し入れに行こう!」

 

時実、下手に退場。

 

 

 

3『摂関家基頼の屋敷』

 

 

 

基頼、上手よりに座る

 

時実、入ってくる。

 

時実「基頼(もとより)様!」

基頼「む?時実か。どうした…」

時実「実は、私の、私達の荘園が、荘園整理令によって停止されそうなんです!」

基頼「あー、それは大変だねー」

時実「どうにか朝廷側を説得して、私たちの荘園を守ってほしいのです」

基頼「うーん、まあ考えておくよ」

時実「ありがとうございます!」

 

琴の音

 

時実「む、この音は?」

基頼「ああ、娘の春だよ」

時実「春姫ですか…美しい音色ですね」

基頼「そうかい…さあ行った行った!」

時実「あ、すみません、失礼します」

 

時実、下手に退場。

 

基頼、上手に退場。

 

ナレーション「さて、月日は流れ、各地で条件に合わない荘園は停止、土地は整理されていきました。こうして、貴族の支配する荘園と、国司の支配する国衙領とが明確になり、荘園公領制という体制が確立されてゆきました。」

 

 

 

4『再び基頼の屋敷』

 

 

 

時実、中央に立っている。

 

時実「数日待っても動きがないから、もう一度来てみたが、どうにもあしらわれている気がする……」

 

琴の音

 

時実「この音……この先は春姫の部屋か(上手のぞきながら)……実は……前にも聞いたこの音が忘れられなくて、今日は文を書いてきてしまった……こっそり置いていこう……!」

 

時実、早足で下手に退場。

 

 

時実、下手から、春姫、上手から出てきて、お互い背中合わせに立つ(文通であることの演出)

 

時実「あなたの奏でる琴の音色、とても素敵ですね。私は……私はあなたに名を名乗ることもできない身分の者ですが……どうしてもそれだけ伝えたかったのです……」

 

春姫「それをわかった上で文をくれるなんて、面白いお方ですね。でも、あなた下司さんでしょう。今日来たお客さんはあなただけだから。よければ名前を教えてください。私は春です……」

 

時実「まさかお返事が頂けるなんて……嬉しいです。私は時実と申します。春姫の名前は存じております……基頼様からお聞きしましたから……」

 

春姫「お父様と会っているのですね……正直、自分勝手な方ですから、何か困ったことはないですか?」

 

時実「実は、この前朝廷が出した整理令のせいで私達の荘園の権利が停止されそうなのです。それをなんとか保護してもらおうと頼んでいるのですがなかなか応じてもらえず……」

 

春姫「わたし、たち?」

 

時実「ええ。土地は領主のものだけではありません、そこにいる農民みんなのものです」

 

春姫「それは……素晴らしい考えだと思います!時実さんはお優しいんですね。」

 

時実「いえ、当たり前の考え方ですよ…」

 

春姫、上手に退場。

時実、下手に退場。

 

電気消す。

 

 

 

5『不穏な農民』

 

 

 

「荘園整理令のお知らせ」みたいな紙を壁に貼り付ける。

 

電気つける。

 

農民I〜L、上手から歩いてくる。(Iが先頭)

 

農民I「おいおい、この貼り紙まだ貼ってあるぜ?」

農民J「時実様がなんとかするって言ってたけど、本当に大丈夫かよ…」

農民K「そんなこと言わないで、時実様を信じよう?」

農民L「そうだよ、前の駄目ダメ下司と違って、時実様はできるお方だからさ」

農民I「それはわかんねえぞ?時実サマときたら、本家に説得に行くと見せかけて、あそこの姫さんに文を送ってんだ。」

農民J「本当かよ!俺らのことほっといて女とイチャイチャかよ……」

農民K「そんな…信じてたのに……」

農民L「それじゃ駄目ダメ下司と同じじゃないか……」

農民I「所詮蛙の子は蛙なんだよ……。」

 

全員上手に退場。

 

6『またまた屋敷』

 

 

 

ナレーション「時実と春姫は、頻繁に文を交わすようになりました。

(ここ雪ちゃん?)

そして、それと同時に時実は、何度も基頼に説得を重ねました。」

 

基頼、出てきて上手よりに座る。

時実も出てくる。

 

時実「もう日がないんですから、お願いしますよ!!」

基頼「わかってるって、何回来るんだよぉ」

時実「は、はい……」

 

時実、下手に退場。

 

基頼「いやいや、あそこの荘園で手に入る利益少ないし……他にも寄進された荘園いっぱいあるし……」

 

春姫「お父様?」

 

春姫、上手から入ってくる。

 

春姫「今のは、例の荘園のことですか?」

基頼「まあな」

春姫「それって、荘園を管理する本家の者としてどうなんですか…!」

基頼「それは……」

 

電気消す。

 

二人、上手に退場。

 

 

 

7『とある荘園』

 

 

 

電気つける。

 

農民A〜H、集まっている。

 

時実、下手から中央まで歩いていく。

 

時実「みんなどうしたんだ?」

農民A「時実様…俺らの荘園は大丈夫なんですか…」

農民B「権利が停止される日まであと数日ですよ…」

時実「それは……頑張って基頼様を説得してみたんだが…」

農民C「ダメそうなんですか?」

農民D「任せろって言ってくれましたよね…」

時実「すまない…はっきり拒否されたわけじゃないけど、どうしても良い返事が得られなくて……」

農民E「そんな……」

農民F「……でも、朝廷の命令だし、仕方ないんじゃない?」

農民G「そうだよ!それをひっくり返そうとしてくれたんだから、それだけでも感謝しないと!」

農民H「さすが時実様ですよ!何度も本家に通って!」

時実「みんな……ありがとう!!」

 

農民I〜L、登場。

 

農民I「それはどうだかなあ?」

農民J「説得に行ったんじゃなくて文通してたんでしょう!」

農民K「信じてたのに……」

農民L「裏切り者っ!」

時実「それは誤解だ!姫と文通したのは事実だけど、ちゃんと説得もしたんだ!」

農民I「それが本当なら、今頃このお知らせは撤去されてるはずじゃねえのか?だいたいよお……俺ら庶民がせっせと働いてる間にお前は女とイチャイチャしてたんだろ?その時点で許せねえよなあ?」

時実「落ち着け、まだ権利停止が決行されたわけじゃない」

農民I「ここまで待ってダメならもうダメだろ……それからお前ももうダメだ時実!この荘園から、消えろっ!」

 

農民I、時実を刺し殺す。

 

全員退場。

 

ナレーション「この衝撃的な事件から、一夜明け……」

 

農民A「おい、なんかまたお知らせみたいなのが来たぞ?」

農民B「なんて書いてある?」

農民A「『当荘園の停止勧告は撤廃とする。心して作業に励むように。』…」

農民C「これって……」

農民D「時実様は裏切り者じゃなかったんだ……」

農民E「お前なんてことしてくれたんだ!」

 

全員Iを睨む。

 

農民ら「許せねえ!」

 

Iをぼこぼこにする

 

ナレーション「時実の死と、農地の惨状は、春姫の耳にも入りました……」

 

 


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。